「自治基本条例」とは、「自治体の憲法」とも言われています
「自治基本条例」は、自治体によって「まちづくり基本条例」や、「自治と協働をはぐくむ条例(和歌山県橋本市)」など、さまざまな呼び方がありますが、その内容としては、「自治体の自治(まちづくり)の方針と基本的なルールを定める条例」のことです。
「自治基本条例」は、その自治体の他の条例や、施策の指針となることから、「自治立法の体系上の最高法規」や「自治体の憲法」と表現する人もいるようです。
「自治基本条例」は、2021年4月1日時点で、全国の397の自治体で制定されています。
》参考URL:
地方自治研究機構(外部サイト)
地方自治研究機構|自治基本条例(外部サイト)
全国で最初に「自治基本条例」を制定したのは北海道のニセコ町です
全国で最初に自治基本条例を制定したのは北海道のニセコ町です。2001年(平成13年)の4月に施行された「ニセコ町まちづくり基本条例」という条例が、日本で最初の「自治基本条例」に当てはまります。
ニセコ町のまちづくり条例は、「地方分権一括法」が施行された平成12年(2000年)に制定されており、地方分権改革の先駆け的な条例となったことがわかります。
地方自治研究機構によると、ニセコ町の「自治基本条例」についての研究では、「その自治体の地方自治(住民自治・団体自治)のあり方について規定し、かつ、その自治体における自治体法の頂点に位置づけられる条例」という定義もなされているようです。
国の方針より優先される、地方自治体それぞれの方針を生み出すというのは、当時はまだ新しい概念でした。
》参考URL:地方自治研究機構|自治基本条例(外部サイト)
地方分権化と「自治基本条例」
「自治基本条例」は、地方分権が進む流れの中で、各自治体が検討し、誕生してきました。
日本では、1993年(平成5年)から始まった地方分権改革により、国に権利が集まり、自治体より国が偉いというような「中央集権型」のシステムから、国と自治体の関係が「対等・協力」の関係に改められました。
地方分権化によって、自治体は自由度が高まり、さらに自治体の自己決定・自己責任の度合いも高まったようです。そして自治体は、地域の特性を生かした個性ある地域づくりを自主的、自律的に進めていくようになりました。
その中で、自治体の運営の基本ルールを、自治体自らが定めようとする取り組みから誕生したのが、全国の自治体で制定された「自治基本条例」です。
》参考URL:
地方自治研究機構|自治基本条例(外部サイト)
内閣府|地方分権改革のこれまでの歩み(外部サイト)
「自治基本条例」が制定されている自治体一覧
全国で「自治基本条例」を制定している自治体は397あり、そのうち43自治体が「外国人の参政権」を認めています。
全国の自治基本条例を設定している自治体の一覧については下記の公共政策研究所のサイトで確認できます。
》参考URL:公共政策研究所|全国の自治基本条例一覧(外部サイト)
「外国人参政権」を貸している43自治体については、別の記事でご紹介しています。
》外国人の「参政権」について - 日本や他の国ってどうなってるの?
Twitter上で、「在日韓国人は選挙権を持っていない」という発言に対し、「#在日韓国人は韓国の国政選挙権を持っています」というハッシュタグが話題となりました。日本では、海外にいる日本人の不在者投票制度がありますが、日本に住む外国人による参政権は認めておりません。参政権という日本の国家運営で重要な権利について、今回は、日本やその他の国で「外国人の参政権」というテーマでまとめました。
「自治基本条例」への問題提起
地方分権や、自治体の自己決定などの狙いから制定される「自治基本条例」ですが、その条例についてたびたび問題提起されるのが「外国人参政権」についてです。
自民党は、2014年の時点で、この「自治基本条例」が外国人参政権の代替制度として利用される懸念があるとして、全国調査に乗り出しています。
自民党としては地方の決定が国の制度を軽視する可能性について「国家の危機」とも捉えられると指摘し、全国の自治体に「自治基本条例」の制定には慎重になるよう呼びかけています。
自民党が調査に乗り出した2014年当時は約30の自治体が外国人参政権を認める自治基本条例を制定していましたが、2021年4月時点では43自治体に増加しています。
しかし、この自民党の呼びかけによって、外国人参政権を認める動きが鈍くなったという見方もあります。
外国人の投票権を認めている自治体について
「自治基本条例」を根拠に、外国人参政権を認めている例として、神奈川県の川崎市では、居住実績などの条件をクリアすれば住民投票への参加を認める住民投票条例を制定しています。
また、広島県広島市は、自治基本条例はないものの「外国人も住民であることに変わりはないという声があった」ということで、住民投票条例を制定しての外国人の参加を認めているようです。
上記の市も含めて、現在、外国人が住民投票に参加できる自治体は43自治体(2021年4月時点)あります。
現在、自治基本条例を制定している自治体はおよそ400あり、その中で「外国人参政権」を認めているのは43自治体と、およそ1割ほどにとどまっています。
このような状況から「自治基本条例」「まちづくり条例」=「外国人参政権」を認めている、というように議論するのは強引なことのようにも思えますが、それだけ同じ「自治基本条例」というカテゴリの条例であっても、その中身は自治体によってさまざまであるということかと思います。
》参考URL:産経新聞|「外国人参政権」の自治条例制定阻止へ 自民が地方組織に通達(外部サイト)
東京都武蔵野市の「自治基本条例」で提案されている「住民投票条例」について
2021年4月に、全国で397番目に施行された東京都武蔵野市の「自治基本条例」を根拠に、武蔵野市長は、市議会に「外国籍でも日本国籍と同じ条件で投票可能」とする「住民投票条例案」を提出したことが話題となっています。
武蔵野市の案では、日本国籍か外国籍かに関わらず、18歳以上で、市内に3ヶ月以上住所があると、住民投票に参加できるようになります。
住民投票者資格の要件を、日本国籍の住民と同条件としているのは神奈川県逗子市と大阪府豊中市の2市あるようです。
この提案については、国会議員などからも疑問の声が上がっています。
Twitter:自民党・佐藤正久
【これはダメ。中国からすれば格好の的。やろうと思えば、15万人の武蔵野市の過半数の8万人の中国人を日本国内から転居させる事も可能。行政や議会も選挙で牛耳られる→実質的参政権、懸念拭えず 武蔵野市の住民投票条例案 】 https://t.co/W9AF7uGtVD
— 佐藤正久 (@SatoMasahisa) November 20, 2021
》参考URL:NHK首都圏ナビ|住民投票条例案 外国籍の人も対象
(https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20211119d.html)
まとめ
このページでは、注目されている「自治基本条例」について解説しました。
地方自治研究機構によると、「自治基本条例」には以下の4種類があるようです。
1)理念型条例:まちづくりの基本理念、市町村の責務等抽象的規定を定める条例
2)権利保障型条例:住民の環境権、生活権、参加権等の基本的権利を保障する条例
3)住民自治型条例:住民の参加・参画や、住民投票等の仕組みを定める条例
4)行政指針型条例:行政施策の方向性や行政運営の指針を定める条例
この分類によれば、現在日本の多くの自治体で制定されている「自治基本条例」は、「住民自治ないし住民主体のまちづくりの原則を明確にする」ということと、「住民参加の機会を拡充・保障すること」を目的としているので、③の「住民自治型条例」に当てはまるようです。
その観点から、広島市の事例のように、「外国人であっても住民だ」という声が上がり、住民投票に外国人を含めるという動きにつながるということが起こるようです。
以上、「自治基本条例」と「外国人参政権」の関係についてご紹介しましたが、「自治基本条例」と「外国人参政権」が必ず結びつくかというと、決してそうではないということ、「自治基本条例」という1つのカテゴリであっても、自治体によって制定される方針や内容は様々であるということについては、慎重に捉える必要がありそうです。
また、「自治基本条例」を根拠に「住民投票条例」を制定するという武蔵野市のような動きもあり、2021年12月現在、市内外で賛否両論が巻き起こっています。
「自治基本条例」はその制定がゴールではなく、その先で住民がどのように住んでいるまちのまちづくりに参画していくのか、議論のきっかけをつくる条例でもあるようです。
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