2021年 第49回衆議院総選挙の結果
2021年10月31日に行われた衆議院総選挙で、岸田総裁率いる自民党は小選挙区と比例代表あわせて「261議席」を獲得しました。この議席数は「単独過半数」と呼ばれる数字で、絶対安定多数といった言われ方もします。
なお自民党以外について、連立与党の公明党は「32議席」を獲得しました。
野党の立憲民主党は「96議席」、共産党は「10議席」、日本維新の会は「41議席」、国民民主党は「11議席」、れいわ新選組は「3議席」、社民党は「1議席」を獲得しています。
無所属は、「10議席」となりました。
「野党共闘」は失策に終わりました
今回の衆院選では、「立憲民主党」や「共産党」などの5野党が、289ある小選挙区のうち7割を超える213の選挙区で候補を一本化する「野党共闘」という作戦で挑みました。
しかし、野党共闘で闘った選挙区のうち、勝って議席を獲得できたのは「28%」にとどまり、その責任を取るかたちで立憲民主党の枝野幹事長は辞任を表明しています。
議席数は、小選挙区比例代表並立制という選挙で決められています
日本の衆議院選挙では、「小選挙区比例代表並立制」という選挙制度を採用しています。これは、「小選挙区選挙」と「比例代表選挙」という2つの異なる選挙が同じ投票日に行われる制度です。
小選挙区選挙とは
小選挙区選挙は、日本全国を289の小選挙区に分け、1選挙区につき1人を選出する制度です。小選挙区選挙では、全ての衆議院議員の定数465人のうち、289人を決定します。
選挙区は人口によっていわゆる「一票の格差」が小さくなるように設定されています。そのため、人口の多い東京では25区に分けられるのに対して、一番少ない鳥取県は2区に分けられています。
比例代表選挙とは
衆院選の比例代表選挙は、日本全国を11のブロックに分け、候補者ではなく「政党等」に投票する選挙制度です。比例代表では、全国で合計176人の衆議院議員を選出します。
比例代表では「拘束名簿方式」といって、政党が事前につくった候補者の当選する順番を決めたリストをもとに、獲得した票数に応じてリストの上から順番に当選者が決まる方式が採用されています。有権者は「どの党から何人当選させるか」を決めることとなります。
比例代表選挙で、各党が獲得した議席数は次の通りです。
「自民党」は、前回4年前の選挙の66議席を上回る「72議席」を獲得しました。
今回躍進したと言われている「日本維新の会」は、特に近畿ブロックで、自民党よりも多い10議席を獲得し、全国では前回の8議席から3倍を超える「25議席」を獲得しました。
そのほか、「立憲民主党」は、「39議席」、「公明党」は、前回より2議席多い「23議席」、「共産党」は、前回から2議席少ない「9議席」、「国民民主党」は、「5議席」、「れいわ新選組」は、「3議席」を獲得しました。
▼参考URL:NHK衆院選2021
(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211031/k10013329411000.html)
「一票の格差」とは
「一票の格差」とは、簡単にいうと、一票の重み、価値に不平等が生じる現象のことです。選挙区によって有権者数が異なるので、立候補する議員1人当りの有権者数が多い選挙区ほど、一票の価値は低くなります。例えば、1人を100人が選んだ場合と、10人が選んだ場合とでは、10人が選んだ地区の方が、一票の重みが大きくなります。
完全に平等になることは難しいですが、なるべく一票あたりの格差が生じないようにということで、選挙区は見直されてきました。
詳しくはこちらの記事もご覧ください。
》【選挙にいこう】今さら人に聞けない「日本の選挙制度」入門編
地方公務員にとって関わりの深い県知事や市長、市議会議員を、国家公務員にとっては、立法府「国会」の衆議院議員と参議院議員を決める「日本の選挙」、今回は、日本の選挙制度の基本についてと、押さえるべきキーワードを4つにわけて解説します。
議席数の呼び方について。自民党が今回獲得したのは「単独過半数」
「過半数」とは。今回、自民党は「単独過半数」の議席を獲得
衆議院の定数は465議席で「過半数」は233議席です。
選挙前に岸田首相は「与党で過半数が目標だ」としていました。与党ということは自民党と公明党の合計議席が233議席以上であれば目標到達ということでしたが、今回は自民党単独での「過半数」到達となり、目標を大きく上回る結果となりました。
「安定多数」とは? 自民党が「安定多数」の議席数も突破。
国会内に17ある常任委員会の委員長ポストを独占できるのが「安定多数」です。委員長だけでなく委員の半数を占める議席数が「244議席」でした。今回は自民党単独で261議席を獲得したので、安定多数となり、国会運営が有利になるという目標を達成しました。
「絶対安定多数」とは?2021年衆院選で自民党はここまで到達
国会の各委員会で、委員の数でも野党を上回ることになり、議決がスムーズに進むことから安定的に国会を運営できる議席数が「絶対安定多数」と呼ばれる数で、「261議席」が必要でした。
2021年の衆院選では自民党が単独で261議席を獲得し、絶対安定多数を達成しました。このため、この先、与党または自民党単独でも国会での議論を優位に進められることになりそうです。
「3分の2」の議席で憲法改正の発議が可能
衆議院定数の「3分の2」は「310議席」で、憲法改正の発議に必要な議席数です。自民、公明の与党での議席数は「293議席」で3分の2には及びませんでした。
しかし、憲法改正に意欲的とされる「改憲勢力」に含まれる「日本維新の会」、「国民民主」を加えた4党での獲得議席数は352議席で、3分の2を大きく上回る4分の3になりました。
このため、憲法改正への議論がより活発化することが予想されます。
過去の議席数について。2012年の衆院選以来、自民党が過半数の議席を守ってきている
2005年に小泉チルドレンと呼ばれる当選者が輩出された郵政選挙で圧勝した自民党が獲得した議席は296議席でした。その後、2009年の政権交代をかけた選挙では民主党が圧勝し310議席を獲得しました。
自民党が過去に最も議席数を確保したのは1986年の中曽根内閣の時の衆院選で300議席でした。
議員数が減少している現在、過去の記録を議席数で超えることは難しいですが、今回の自民党の獲得議席数は過去の勢いにも劣らない結果だったように思えます。
まとめ
今回は「自民党」が単独過半数の議席を獲得した2021年の衆議院総選挙について特集しました。
自民党が単独過半数、そして絶対安定多数の議席を獲得しましたので、今後自民党の政策に関する決議がスムーズに行われ、政策が実現しやすい、国会運営がしやすいという状況が続くでしょう。
また、与党と改憲勢力と言われる野党の維新の会と国民民主党の議席で4分の3に到達したことも、自民党が求めてきた憲法改正への議論を進めるきっかけになることが予想されます。
今後の国会運営には、改憲についても注目が集まりそうです。
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