【市役所の仕事】病院(公立病院)の「事務職」の仕事について

地方公務員の「事務職」として採用された際に、勤務先として市民病院や県立病院など、病院に配属されることがあります。病院というと医師や看護師など「免許職」の職員が多く働いている現場ですが、そこでの病院の事務職員の仕事とはどんなものなのか、具体的に解説します。

病院での事務職員の仕事とは?

おもに「診療の窓口部門」と「病院管理部門」に分かれる

病院で事務職員が配置される部署としては、自治体にもよりますが、おもに2つあります。1つ目は、診療の窓口である「医事課」と呼ばれる部署で、ここは普段私たちが病院で診察を受ける際まず初めに行く場所です。ここで診察券を出したり申込書に記入をしたり、また診察が終われば会計をしてもらいます。

病院の医療費の計算方法はかなり複雑で、この計算を行う作業を「医療事務」といいます。医療事務については後述しますが、実は最近の公立病院はこの医療事務を委託業者が請け負っていることがほとんどです。皆さんも病院の窓口で、制服を着て受付や画面操作をする職員を一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。

医療事務についてはそのほとんどを委託業者の職員に任せますが、それ以外の仕事は事務職員が行います。

2つ目は、病院管理部門である「管理課」と呼ばれる部署です。こちらは「病院の建物管理」と、「すべての職員のお世話係」といった仕事内容になります。

患者ではなくおもに職員相手の仕事になるので、事務室はたいてい患者の来ない病院の最上階や、「医師の職員室」である「医局」の近くにあったりするのが普通です。

それではそれぞれの事務職員の、ある日の仕事内容について、順番に見ていきましょう。

病院事務職員の一日

その1 医事課

9時前 : 病院の診察受付開始時間は自治体によってそれぞれですが、ほとんどの場合8時半~9時ぐらいの間に窓口を開けます。窓口が開くまでの時間帯は室内で今日の受付の準備をします。

9時~ : 窓口が開き、患者が続々とやって来ます。患者の健康保険証を確認したり、受付を済ませた患者を外来の診療科まで案内したり、また今日から入院予定の患者も大きなバッグを抱え次々と受付に来ますので、病棟の看護師に連絡をし患者を迎えに来てもらうなど、受付業務がスムーズに進むよう、あらゆることを行います。

また、医療事務を行うのは委託の職員ですが、ややこしいケースや患者からの訴えで判断が難しいケースなどは、すべて事務職員が対応します。つまり、事務職員は、医療事務の知識を委託職員以上にしっかりと持っていなければならないのです。

10、11時~ : この時間帯になると診察を終えた患者が会計窓口にやって来ます。会計窓口も基本的には委託の職員が担当していますが、やはり患者からの苦情があるものや個別に相談を受けるケースなど、重要な判断を伴うものについては事務職員が対応します。

12時~: 昼休みに入りますが、交代で医事課に残り窓口業務などを行います。会計窓口には引き続き多くの患者が並んでいます。

13時~ : 外来患者の受付はほぼ終了していることが多いですが、委託の職員は入院中の病棟患者についても10日ごとに締日を設けて医療費の計算を行い、請求書を作成します。内容について判断に困るケースについては事務職員に相談し、それに対し事務職員は指示を出したり代わりに処理をしたりします。

また、あってはならないことですが、患者やその家族からの「訴訟」の案件を病院が抱えていることもあり、そのための事務作業も行います。

16時~ : その日の会計金額の確認を行います。1円でも合わない場合は何度でも計算し直します。

また退院予定の高齢者やその家族から、老人ホームなど施設の入所先についての相談を受けたりもします。現在はどの施設も満杯であることが多く、相談に乗り適切な施設への入所につなげるには、職員が福祉関連の施設についても熟知していなければなりません。しかし病院によっては、この担当に専門のソーシャルワーカーを配置しているところもあります。

17時30分~ : 自治体によって差はありますが、この時間帯が終業時刻です。特にトラブルがなければ医事課の職員は比較的早く帰ることができますが、患者対応が長引いている場合などは、そのまま対応し続けます。

その2 管理課

9時~ : 給与計算の元となる、全職員の出退勤時刻の管理、入力作業

病院に勤務する医師や看護師は不規則勤務であり、また給与の計算方法も職種により違うので複雑なのですが、その計算の元となる「タイムカードの押し忘れ」や「押し間違い」は、医師や看護師など多忙な職種では意外と頻繁に起こります。それを修正しシステムに入力するなど、自治体により若干の違いはありますが、給与や手当計算の作業を行います。これには毎月締切日があり、遅れると給与を払えなくなります。

またこの時間帯には夜勤明けの看護師が続々と個人的な事務手続きの依頼に来ます。具体的に一例をあげると、「産育休を取りたいので私の出産予定日から計算した産育休期間の算出をお願いしたい」「在職期間証明書を発行してほしいので、私の在職期間15年間が、日にちで数えると何日分に当たるか数えてほしい」「引っ越しをしたので新しい通勤手当の金額を計算してほしい」など多岐に渡りますが、看護師だけで数百人いる病院も多いためかなり膨大な量になります。

現在学生の方であれば、この仕事について「学校事務の少し複雑なかたち」とイメージしていただけるとわかりやすいかもしれません。

12時~ : 昼休みに入ります。

13時~ : 病院に勤務するすべての医療従事者への感染症の抗体検査や、必要な職員へのワクチン接種

これは不規則業務ですが、万一職員が何らかのウイルスに感染し患者に感染すれば大変なことになりますし、また職員自身を守るための検査でもあります。この段取りはすべて事務職員が行います。またここには冬のインフルエンザワクチン接種等も含まれます。このように職員の安全と院内感染防止のために、日々何らかの衛生管理業務を行います。

また管理課で経理事務を行う職員は、営業に訪れる医療機器メーカーの社員への応対をします。多くの会社が自社製品の「売り込み」に来ますので、それらの価格や性能を確かめ、購入を決定した会社とは取引の手続きを行います。つまり事務職員であっても、注射器などの小さなものから大きな機材まで、病院で扱う医療機器に精通していなくてはならないのです。

16時~ : この時間帯からは外来診察を終えた医師が続々と事務室にやって来て、自身の医師免許証の更新手続きや、学会へ参加するための手続きなど、事務職員に対し個人的な依頼をするので、事務職員はいわば医師の「秘書」のような仕事もしています。

また、各製薬会社のMR(薬の成分や効能について説明し、新薬の売り込みなどを行う職種)が事務室に医師との面会を希望しやって来るので、その取りつぎ業務も行います。

17時~ : 病院を運営する自治体本体から、連絡事項や照会の文書が送られてくるので、それに対応します。締め切りがあるので時間に追われます。また一例ですが都市の病院には地方の病院などから、病院の運営方法などについて問い合わせがあることも多いので、その回答文等も作成しています。

また、これも実際はあってはならないことですが、看護師や医師の「針刺し事故」が発生した場合、それにも対応します。

針刺し事故とは、患者に使用した注射針を誤って自分の指などに刺してしまうことを言います。これは重篤な感染症につながる恐れがあり、中でもB型肝炎などの肝炎ウイルスは恐ろしいものです。

事故の報告を受けた担当事務職員は、ただちにガイドラインに従って、担当医師に事故者への免疫グロブリンの投与などの適切な指示を出します。

本来このような場合、医師や看護師の方が専門職ですが、指示を出すのはすべて事務職員であり、そのため大きな責任を伴います。また事故後の報告書作成やその後の経過観察なども、事務職員が行います。

17時30分~ : 本来なら終業時刻ですが、業務を終えた医師や看護師などへの個別対応が続き、また経理部門も常に忙しいため、定時に帰れることはあまりありません。

病院勤務になればこれだけは覚えよう!

医療用語は必須

病院を舞台にしたドラマで耳にしたことがあるかもしれませんが、病院では医療の「専門用語」が飛び交います。事務職だから自分は関係ないでは通じません。

例えば人手が足りず、看護師から、「この患者さん今からカイザーだから、すぐ家族に連絡して!」と言われて、きょとんとしていてはいけません。「カイザー」とは出産時の「帝王切開」のことです。

また、「今から1人アンギオするから担当に連絡して!」と言われ、「アンギオって何ですか?担当ってどこ?メモしておくので教えて下さい」などと悠長なことを言っていられないのが医療現場です。「アンギオ」とは「血管造影検査」という、本来は写らない血管内をレントゲン写真に写しやすくするための検査方法です。つまり、連絡するべき担当というのは「放射線科」になるわけです。

このように、専門用語の知識がないと業務にも支障が出ますし、知っていれば職員からの信頼も厚くなります。

その他に、「ウロ」→泌尿器科、「ギネ」→婦人科(産婦人科全体を指す場合もある)、「ケモ」→化学療法 などとを指し、専門用語といってもほとんどがドイツ語の略です。他にもたくさんあるので、ここはぜひ覚えておきましょう。

医療事務の知識

先述しましたが、職員は医療事務の知識を持っていなければなりません。最近では「医療事務の資格」というと、通信教育などで女性にも人気の資格として上がっていますが、資格といっても「公的な」資格があるわけではありません。通信講座などで自社の独自の認定資格を設けているところもありますし、特定非営利法人がこれも独自の認定資格を設けており、これに合格していれば個人が病院やクリニックで働きたい時に履歴書にその旨を書けば有利であるという程度で、「これに合格していなければ医療事務をやってはいけない」などという縛りはありません。

病院に配属になる事務職員は、当然通信講座のように長々と期間を設けて勉強する時間などありませんから、配属されてすぐ実践です。

医療事務って何をするの?

医療事務の内容について簡単に説明します。そもそも医療費は、本人が全額支払っているのではなく、患者にかかった医療費のうち、本人が加入している健康保険の規定による「自己負担額」(全体の2割とか3割など)は本人から病院に支払ってもらいますが、残りの部分は健康保険の運営団体に請求して、その健康保険団体から病院に支払ってもらいます。医療事務とはその「請求事務」のことをいいます。

請求事務としては、本人にかかった医療行為の内容(検査や治療など)について細かく記した「レセプト」(診療報酬明細書)を作成します。

医療費の計算は、検査や治療など、医療行為ひとつひとつで細かく金額が決められており(正確には点数で表し、例外もありますが1点=10円として算定します)、その合算なのですが、単純に足し算ではなくいろいろなルールがあります。

その金額(点数)、算定のルールなどが書かれた「診療報酬点数表」という辞書のような厚さの冊子があり、それをもとに算定していきます。

レセプトが完成しても、当然それをそのまま健康保険団体が払うわけではなく、まず審査機関にレセプトを送ります。そこで審査ののち医療費が病院に支払われるのです。

事務職員は病院の受付業務をしながらこれを覚えなければならないので、やはり大変です。

病院勤務の事務職員が知っておいたほうが良いことは?

実は人間関係が複雑?

病院には、医師、看護師のほかに、薬剤師、放射線技師、理学療法士、作業療法士(このような医師と看護師以外の医療従事者を合わせてコメディカルといいます)、また栄養士、調理師、電話交換手、各種ヘルパー、電気系統の整備を担当する技術職員など、公務員として採用された職種だけでもこれだけの職員が勤務しています。

さらに、警備員、清掃業者、洗濯業者、機材運搬業者や医療廃棄物処理業者など、出入りの業者も数多くあります。

これだけの職種が、病院という現場で一同に働くわけですから、立場により思いも違い、やはり一枚岩というわけにはいきません。当然そこには職員間での摩擦も生まれます。同職種間でもそうですし、一方がもう一方の職種を見下すようなことから生まれるトラブルも実は発生します。

看護師のトップである看護部長と、その下の中間管理職である看護師長の間にも、軋轢が生じる場合もあります。またヘルパーからは、看護師に見下され本来業務ではない雑用までやらされるという声を病院ではよく耳にします。またその看護師は、産休など長期休業の取得に対し、看護師長から露骨に嫌な顔をされ取りづらいと訴えます。また医師同士でも、あの人のやり方にはついていけない!どうにかならないか、などと愚痴にも似た訴えがあります。

そんな彼らがそれを訴える先は事務職員です。本来は公務員として「事務職」「看護職」「医師」などとして自治体から同等に採用されているわけなのですが、医療職の人たちの間では、事務職員をまるで「雇用主」と錯覚してしまっているような場合も実は少なくありません。ですから訴えはすべて事務職員のところに来るのです。

事務室に立ち寄った職員は事務職員に対し愚痴にも似た話から深刻な話まで打ち明けます。最近は職場のメンタルヘルスの問題も世間でよく取り上げられるようになりましたが、やはりストレスを溜め込むと鬱にもつながり、実際休職する職員もいます。ですから事務職員は、仕事の手を止め真摯に耳を傾け解決に向け動きます。実はこれが事務職員の日々の煩雑な業務の中で多くの時間を奪います。ですがこの「聞き役に撤してストレスを発散してもらう」ことは病院では事務職員にしかできない大切な役割でもあるのです。

病院の抱える問題点が見えてくることも

なぜなら、医療職は患者を元気づけ、普段は人を「癒す側」の立場です。ですから無理をしているしわ寄せが、どこかに出てきてしまいます。それを察知し、癒す側の職員を「癒す」ことは、病院のあらゆる業務を円滑に進める上で重要なのです。

また実は、職員の訴えの中から、組織として抱えている問題が浮き彫りになることもあります。先述した看護師の話を例にすると、看護師の産休取得を看護師長が良く思わないのも、個人的感情ではなく病棟の人員が明らかに足りておらず、責任を持って患者を看ることが物理的に不可能だからに他なりません。しかし産休は与えられた当然の権利です。こうなるともう「個人の頑張り」などの話ではなく自治体で組織的にどうにかすべき話です。しかしこの現状は、公務員削減の叫ばれる昨今なかなか自治体の事務方トップに届かないのも事実です。

これからの病院事務職員のあり方

病院の抱える問題は様々で、また近年ではどの自治体も公立病院の赤字に苦しみ、その結果、民間企業に(一定の要件を設定し)病院の経営を任せるところも多くなっています。ところがそこにもまた新たな問題が発生し、公立病院としてのあり方には答えが出ていないのが現状です。

そんな中これからの事務職員は通常業務のみならず、現場の声を聞き、常に問題意識を持ち、それを吸い上げ、しかるべきところに問題提起できる強さを持つ人物像が求められるでしょう。また先述したように、各種職員をまとめるコミュニケーション能力も必要になってきます。

まとめ

なかなか大変な病院事務職ですが、それだけにやりがいもあります。とくに、サービス精神が旺盛で、「人が好き」という人には向いている職場です。また、病院で勤務した実績があると、民間の病院でも採用されやすくなるようです。それほど病院は「経験」がものをいう職場でもあるのです。

このように民間の医療機関への転職も有利な病院の事務職に、機会があればぜひ一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

本記事は、2017年10月1日時点調査または公開された情報です。
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