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【グローバル企業は国家を超える?】21世紀の国家と企業の関係性

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目次

はじめに

世界一売上の多い企業はアメリカのウェルマートで、年間の売上高は、約50兆円だと言われています。

50兆円と言えば、カナダやオーストラリアの国家予算に匹敵する金額で、グローバルに活躍している企業の中には、小国の国家予算よりも多い売上高の企業は珍しくありません。

国家の方が企業よりも強い権力を持っているというイメージを、漠然と抱いている人も多いかもしれませんが、実は近年、企業が国家以上の影響力を行使できるようになっています。

本記事では、21世紀の企業と国家の関係性について説明します。

企業活動は国家を超える

21世紀の国家を考える上で、重要なのはグローバル企業との関係性です。

冒頭のウォルマートの例からもわかる通り、小国の国家予算を超えるグローバル企業と言うのは珍しくありません。更に注目するべきなのが、企業は国を越えて活動できるということです。

国が国家規模を拡大する為に、近隣の国家を植民地にするのは、第二次世界大戦以降の価値観では、認められない施策になっています。つまり、国家が直接影響力を持てるのは国内だけであり、他の国家の運営に対しては直接的に関与できないというのが常識となっています。

グローバル企業は特定の国という枠には収まらない

活動が制約されている国家と比較して、グローバル企業は国の枠組みを超えて活動する事が可能です。例えば、日本の市場が頭打ちになっているので、これから成長しようとしている東南アジアの新興国に進出しているという企業は、グローバル企業に限らず中小企業にもたくさん存在します。つまり、企業がその気になれば事業規模の小さい会社でも国をまたいで活動できるという事です。

例えば、自動車メーカーのTOYOTAは元々日本の企業ではありますが、全世界で自動車の開発・製造・販売を行っていて、必ずしも日本企業と言う枠に収まっていません。他にもマクドナルドが元々、アメリカのハンバーガーチェーンであったという事を意識することなく、私たちは普段からマクドナルドを利用しています。

企業の活動は国家という枠を超えて、その国々の国民の生活に大きな影響を与えます。

グローバル企業の影響力は国よりも大きいのか

ここで問題となるのが、グローバル企業が国家に対してどのような影響を与えるのかという事です。もちろん、影響力の大きいグローバル企業だからと言って、小国に戦争を仕掛けたり、その国の主権を脅かしたりする事はできません。


グローバル企業が発展途上国に進出すると

ただし、グローバル企業の活動によって、その国の経済は大きな影響を受けます。国家を運営するための資金は国民や企業からの税金です。すなわち、自国内の企業を育成して、多額の税金を納めてくれる企業を育てるのが国家の重要な役割の一つです。

しかし、十分に成長していない国の市場にグローバル企業が参入すると、グローバル企業が圧倒的なシェアを獲得するので自国内の企業が成長しません。

よって、発展途上の国々は外資の参入規制や商品に関税を掛ける事によって、グローバル企業の影響力から自国の産業を保護しようとします。世界的な潮流としては自国の経済や産業を保護するというのは良くない事で、自由貿易協定などを結んで外資、貿易規制は緩和するべきだという流れが大勢を占めてします。しかし、これは必ずしも正しいとは限りません。

中国の深センでなぜ世界的なIT産業都市になったのか

例えば、中国の深センがシリコンバレーと並んで世界のIT産業をけん引していると言われていますが、本来ならばIT産業後発組の中国でここまでIT産業が成長する可能性は少なかったと言えます。

仮に中国のIT市場が海外にも開放されていたとすれば、日本の市場でグーグルやフェイスブックが高いシェアを誇っているように、中国でも先行している外資系のサービスがシェアを獲得して、現在のように中国でIT産業が盛んになる事はなかったと考えられます。

情報統制を行う為に国策的に中国国内でのグーグルやフェイスブックなどの外資系ITサービスの使用を制限して、中国市場が外資に浸食されなかったので中国のIT企業が成功したと考える事ができます。

グローバル企業がもたらす国の成長

もちろんグローバル企業が来ると言う事は悪い事ばかりではありません。

産業が未発達な国では、グローバル企業を誘致する事によって雇用が生まれ、技術が発展して、国としての産業の基盤が整うからです。

シンガポールがなぜアジアの金融都市に成長したのか

例えば、アジアで成長著しい国としてよくシンガポールが挙げられますが、シンガポールは立地的にも資源的にも決して恵まれているわけではありません。海外企業を誘致するために法人税を引き下げて、電化製品の組み立てなどの労働集約型のビジネスでまず経済の基盤を作った後に徐々に高付付加価値型の産業にシフトして、発展していったのです。

日本にも存在する元々外国資本だった大手企業

日本でも、国内の重要企業が元々は外資系企業だったと言う例があります。例えば、自動車部品の最大手メーカーであるアイシンAWは元々アイシン精機とボルグワーナーというアメリカの会社の合弁会社として設立されました。

そして後にボルグワーナーが抜けてアイシン精機、トヨタ自動車が2大株主となりトヨタグループを支える日本の重要企業となったのです。また、コンビニ大手のセブンイレブンは元々アメリカの老舗のコンビニチェーンでしたが、日本法人がアメリカの親会社を吸収し、日本の企業となりました。

外資が来たから企業が育たないのではではなく、シンガポールのように外資を積極的に誘致して経済発展を遂げる例もありますし、アイシンAWやセブンイレブンのように元々は外資系企業でも発展していく過程でその国の産業を支える重要な内資企業に転換する可能性もあります。国家にとって重要なのは、グローバル企業や海外資本をうまく利用する事です。

国家とグローバル企業の対立

グローバル企業が国家にもたらす影響には良い面があるとはいえ、近年国家とグローバル企業を巡る対立が激しくなっているのも事実です。代表的な問題がタックスヘイヴンを巡る問題です。

タックスヘイヴンを利用した企業の租税回避

タックスヘイヴンとは租税回避地と呼ばれていて、一定の条件を満たすと、無課税、もしくは課税額が著しく軽減される地域の事を指します。

代表的なタックスヘイヴンはイギリスのケイマン諸島やアメリカのデラウェア州などで、タックスヘイヴンには活動実態のないたくさんのペーパーカンパニーが存在していると言われています。このようなタックスヘイヴンを利用することによって本来企業から納税されるはずであった税金が減少し、不透明なお金の流れがテロリスト等に流れているのではないかと指摘されています。世界の国々はタックスヘイヴンを利用しての租税回避の防止や資金を透明化するために法律や条約による規制をおこなっています。


国境をまたぐITサービスにどのように課税するのか

タックスヘイヴンの問題と並んでIT産業に対する課税も大きな問題となっています。

IT産業の特徴は会社の場所を問わずに全世界に対してサービスを提供できる事です。例えば、アメリカの企業が日本の書籍を電子書籍化として日本国内の日本人に販売した場合、日本人が日本国内で日本の本を購入しただけなのに、サービスを提供しているのがアメリカの会社なので電子書籍の販売による利益とそれに伴う税金はアメリカのものとなります。

カリフォルニア州がフランスと同等の経済規模を誇っていると言われていますが、その理由はシリコンバレーを中心としたIT企業が本来現地国で循環するはずだったお金をIT企業の特性によってカリフォルニア州の富にしているからです。

IT企業の国を跨ぐサービスについてどのように課税すべきかについて国際的な課税ルールが必要であるという所まで合意はされているものの具体的なルールの設定については各国の思惑があるために実現されていません。先行しているEUではIT企業の越境取引の売上3%に対してデジタル税を導入しようという事で加盟国で調整しています。

グローバル企業の下請け企業による労働問題

最後に、グローバル企業がもたらす労働問題についても考える必要があります。

商品の製造に関わるコストを抑えるために世界中から製造コストが安価になる国や下請け企業を探します。しかし、このようなグローバル企業の要望に応えるために発展途上国では労働問題が深刻になっています。例えば、1990年代に問題になったのが、ナイキが商品の製造を委託していた東南アジアの工場の労働環境問題です。委託先の工場の長時間労働、児童労働、強制労働などの問題が発覚し、ナイキ製品の世界的な不買運動に発展しました。

他にも近年の代表的な事例として、バングラディッシュのラナ・プラザ崩壊事故が挙げられます。バングラディッシュは、世界中のアパレルメーカーの下請け製造を行っていますが、2013年に縫製工場のビルが倒壊し、死者だけでも1,000人以上、負傷者2,500人以上、行方不明者500名以上の大規模な事故となりました。

このようなビルの倒壊の原因としては欧米のアパレル企業のコストカットに対する要望に応えるために従業員をすし詰め状態で働かせて、十分な設備投資を行っていなかった事が挙げられています。

まとめ

以上のように、21世紀の企業と国家を巡る問題について説明してきました。グローバル企業は国家が成長する為の原動力になりえる反面、利益に対する課税や労働環境が世界的な問題となっています。課税や労働についてきちんと法的な整備をしないと、企業を誘致した事によってかえって国民の労働・住環境が劣悪になりかねないと言えます。

地方自治体と企業の関係性について

国家とグローバル企業を巡る問題は、よりスケールを小さくして、地方自治体と企業の問題にも置き換える事ができます。地方自治体が存続するためには雇用を生む事が必要で、雇用を生むために一番直接的な効果がある手法は企業を誘致することです。

しかし、企業に依存した地方自治体はしばしば窮地に立たされます。

地方自治体が工場を誘致した事によって、周辺の自然環境が破壊されたり、過疎地域に一店しかないスーパーやバス会社が、採算上の理由から撤退した事によって、買い物難民が発生したりと、いざとなったら地域から撤退してしまうかもしれない企業に依存する事には、リスクがつきまといます。

第三セクター、国策企業は必ずしも悪いわけではない

国や地方の雇用や生活環境を守るという観点から言えば、第三セクターや国策企業が必ずしも悪であるとは言えません。地方の生活環境を維持するためには、地方が出資してでも安定した交通・生活インフラを作る必要がありますし、国の発展のためには、外資を誘致するだけではなく、国策企業に集中投資し国際的な競争力を持った企業を作る事も有効です。

時代が進んでいくにつれて企業の持つ力は日々強力になっています。国とグローバル企業、地方と企業の関係性について考える事は、今後ますます重要になってくると考えられます。

本記事は、2018年4月13日時点調査または公開された情報です。
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この記事を書いた人

公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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