アリゾナ州の特徴
アリゾナ州は総人口が約693万人で、1912年に州として正式に認められた歴史が浅い州です。アメリカ合衆国の48番目の州として認められましたが、アメリカ本土のなかで一番最後に州になったエリアです。
広大な砂漠地帯に街が出来ていったことから、どの街も土地をふんだんに使って計画的に整備されており、住みやすい街が多いことでも知られています。なかでも、州都であるフェニックスやその近郊都市は、リタイアした後に住みたいエリアとして全米1位になったほどです。
近年では、税金が高く、生活し辛いカリフォルニア州からの人口流入が多く、人口は10年に100万人以上のペースで増加です。人だけでなく、企業の進出も盛んで、カリフォルニア州などから多くのIT系企業が引っ越しをしてきています。
IT系企業を支援する州法も整えられていて、Googleが開発中の完全自動運転の車の走行を許可したり、Uberの無人運転などの新サービス開発を積極的に支援するなど、企業に優しい側面もあります。実際に、州都のフェニックスでは街中を自動運転の車が走行しているのを見られます。
1年中快晴が続く気候や広大な土地の魅力に加えて、人口上昇率や企業の進出が示すようにアリゾナ州は、アメリカのなかでも住みたい州、訪れたい州として人気がある州と言えるでしょう。
しかし、近年では隣国のメキシコからの不法移民が絶えず、不法移民の人口増加が止まりません。トランプ大統領が国境沿いに壁を作るという政策を打ち出して以降、治安などのイメージの悪化が止まらずに、アリゾナ州は危険なところという印象に変わりつつあります。
事実、銃による犯罪や薬物の取引は日常茶飯事で、日本では報道されることはないものの、生活をしていると銃と薬物が身近な州であることを実感するとされています。
アメリカのなかでも住みたい州として名高いアリゾナ州ですが、不法移民や犯罪が身近な州という側面もあるのです。
アリゾナ州の歴史
現在のアリゾナ州は、もともとはメキシコの領土でした。1853年の米墨戦争でアメリカがメキシコに勝利した際に土地の領有権を主張し、最終的に1,500万ドルで購入することで決着しました。
スペインからの独立、アメリカとの戦争で疲弊していたメキシコは、アメリカのこの条件をのまざるを得なかったと言われています。このアメリカの横暴なやり方は多くのメキシコ人の怒りを買い、現代にも続くアメリカとメキシコの険悪な関係の元になっています。
1861年、現在のニューメキシコ州の一部だったアリゾナ州は、ニューメキシコ州から分離してアメリカ合衆国の準州に昇格します。昇格したそのエリアは、1862年に初めて「アリゾナ」という単語が用いられて、アリゾナ準州になりました。現在のアリゾナ州は、メキシコからの買収、ニューメキシコ州からの分離、準州への昇格、そして州として認められる長い行程を踏んできたのです。
近代では、広大な土地と絶景が広がることからアリゾナ州は世界中から観光名所として知られるようになりました。事実、アリゾナ州は観光産業が盛んで、観光による収入が他州よりも多いとされています。
グランドキャニオンやセドナがその代表格ですが、元々は先住民族であるインディアンのアパッチ族の領土でした。
1890年から1900年頃にかけてグランドキャニオン周辺で金鉱が発見され、多くの白人が押し寄せてきました。そこで生活をしていたアパッチ族は土地や食料となる家畜を奪われ、壊滅状態になりました。わずか20年足らずで、そこに生息していた鹿やレイヨウなどの生き物は絶滅したと言われるほどです。
現在では観光地として人気を集めるグランドキャニオンやセドナですが、白人による侵略の歴史があり、悲しい場所という一面もあります。とくにセドナは、パワースポットとして人気ですが、ネイティブインディアンからすると、一族のお墓という概念があることを知っておくといいでしょう。
このようにアリゾナ州は正式に州として認められるまで長い道のりがあり、現在では観光地として知られている場所には暗い歴史もあるということを知っておくといいでしょう。
アリゾナ州の政治情勢
アリゾナ州は2012年と2016年の大統領選の際には共和党を支持しています。2016年の大統領選の際には、メキシコ人の不法移民を目の敵にしているトランプ大統領に反対する人が多かったものの、有権者の多くはトランプ大統領を支持する結果になりました。
メキシコ人が多く生活しているアリゾナ州ですが、選挙結果だけを見るとトランプ大統領を支持する結果になったのです。この背景には、アリゾナ州で生活している白人種の多くが不法移民やメキシコ人に悩んでいることや、いまだに排他的な思想が残っていることなどが挙げられます。
アリゾナ州は不法移民に悩むものの、不法移民の労働力に支えられている側面もあるため、政治的には中間にあるのが実情と言えます。
アリゾナ州の経済
アリゾナ州の失業率は4.5パーセントで、アメリカの平均よりもわずかに高い程度です。2010年の10パーセントから減少を続けており、景気回復を示しているとされています。
アリゾナ州の平均年収は約4万ドルで、世帯所得は5万ドルとアメリカの中間と言える数値です。政府機関や教育機関が多いアリゾナ州では、これらの関連先に勤める人が多く、次いでサービス業、観光業などが主力産業です。
アリゾナ州の広大な土地には金鉱や銅山が多くあり、現在でも銅の採掘が行われています。銅はアメリカの3分の2を占める産出量があります。また、銅の掘削中に発見されたターコイズなどの鉱物も有名で、アリゾナ州の各地で発見されたターコイズは世界的なブランドになっています。
他にも綿業も盛んで、現在はテキサス州に抜かれていますが、アメリカで最大の産出地にもなったほどです。年間を通じて温暖な気候は観光地としても好影響を与えており、通年で観光客が訪れることから観光収入も大きな割合を占めています。
アリゾナ州の経済は銅や綿に加えて、観光業も賑わっています。これらを実現させるのが、恵まれている自然や気候なのです。
アリゾナ州の税金
2018年時点のアリゾナ州の消費税は8.33パーセントです。州税が5.6パーセントに加えて、地方税の平均が2.7パーセントです。お隣のカリフォルニア州の8.54パーセントやユタ州の6.77パーセントと比較すると、消費税は割高な印象があります。
所得税は2.87から5.04パーセントまでの5種類で課税され、他州と比較して消費税と所得税ともに割高です。ホテルやモーテルなど観光に関連する部分にも課税されており、アリゾナ州に滞在すると最低でも1泊7.27パーセントの税がかかります。
ただし、食料品は課税させず、ガソリン代も製油所があるテキサス州が近いため他州よりも割安とされています。日本のように一律で消費税がかからない分、生活がしやすいと言えるかもしれません。
アリゾナ州の税金は割高に感じるものの、食料品には課税されず、物価も割安のため、他州よりは生活しやすいようです。
アリゾナ州の銃や薬物問題
アリゾナ州ではマリファナは医療目的のみ使用可能です。医師による診断書と処方箋があれば購入可能で、娯楽目的での販売や購入は厳しく罰せられます。
メキシコから違法に持ち込まれたマリファナなどの薬物が流通しやすく、法律で禁じられているものの、薬物は非常に身近な問題とされています。娯楽目的での使用が禁止されている分、犯罪が起きやすいと指摘する声もあり、選挙の度にマリファナを解禁すべきかどうかが問われ、揺れに揺れている状況です。
薬物問題と比例するように銃犯罪も頻繁に起こります。日本で報道されるような銃乱射事件は起きていませんが、日常的に銃事件が起こりやすく、口論や交通トラブルで銃が関連することは他州よりも多いのが実情でしょう。
なかには不法移民がマリファナを持ち込み、自衛のためとして銃を持ち歩き、就労できないため犯罪を起こすと決めつけている人も多く、マリファナも銃も頭を悩ます問題とされています。
アリゾナ州では薬物や銃は日常的な問題です。それに加えて、不法移民問題もあるため悪いイメージが定着しているのです。
アリゾナ州の教育または宗教事情
アリゾナ州にはアリゾナ大学やアリゾナ州立大学などがあります。不法移民の子供たちも通えるようなプログラムがあるコミュニティカレッジも多く、教育を受けやすい州でもあります。
しかし、US News社の統計によるとアリゾナ州の教育水準は全米で43位と最低ランクになっています。多くの学生は学ぶものの、学位や卒業というステータスを手にしていないことが原因とされています。
アリゾナ州の5人にひとりはキリスト教とされています。メキシコからやってきた移民はカトリックが多く、週末はどの教会も多くの人が礼拝に訪れています。信仰心が強い人が多い州と言えるでしょう。
まとめ
アリゾナ州はアメリカのなかでも歴史が浅く、州として成立するまでに様々な段階を踏んで来た過去があります。移民問題などを抱えている反面、世界中から多くの人が観光に訪れる魅力がある州です。
アリゾナ州を知る上で、もともとはメキシコの領土であったことや、米墨戦争がきっかけでアメリカがメキシコから買収した場所であることを知っておくといいでしょう。
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