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【中高年の再就職事情】イキイキとした第二の人生を送るために必要なこと

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今の世の中、管理職には厳しい現実が待ち受けています。私が以前在籍していた職場A社も例外ではありません。

ちなみにA社は、化粧品・トイレタリー業界で上位に入る上場企業であり、 社員数は3万人、売上高は1兆円に達する大企業です。

順風満帆に出世の階段を上り続けてきたのに、突然ポストから降ろされ部下無しに陥落する、社外から突然上司がやってくるなどなど、管理職には生き辛い時代になりました。

「いっそのこと転職して第二の人生を」そう考える社員も多いのですが、ここでも世渡り下手は割を食うのです。

目次

56歳から58歳で役職を退く

40代前半で部下が付く

A社では、超出世頭は別として、ある程度評価されていれば40代前半で課長級ポストに「任用」されます。

課長職と担当管理職(部下がいない)には、天と地ほどの差があります。課長職は部長から直接指示を受け、部の運営に係わります。交際費を含めた一定の予算権限や部下に対する人事権も握っています。

とくにマーケティング部門や事業部の統括部門の課長職(その上の次長職)は、巨額の予算や組織配置をはじめとして、業務執行面で幅広い裁量を握っています。

よく「働きすぎは過労死を招く」「ワークライフバランスが大切」といわれますが、サラリーマン最大のストレスは裁量によって大きく左右されるのです。つまり自分の裁量で仕事ができる社員は、たとえハードワークでもストレスはさほど溜まりません。

給料も、もちろん大きく変わってきます。A社は以前、職能資格制度を採用していました。ポストや部下の有る無しに係わらず、1級・2級といった資格で給料が決まる、ある意味牧歌的な仕組みです。

数年前、この制度がグレード制、つまりポストによって給料が変わる仕組みに完全移行しました。管理職に昇進しても、ポストに就けなければ満足な年収は得られません。まさに「管理職受難の時代」です。

56歳でポストを外れる

課長職に任用され、次長職に昇格し、と脂の乗ったサラリーマン人生を送っていても、課長職は56歳、次長職でも58歳でポストから外れます。俗にいう「役職定年」です。


任期途中で突然ポストをから放り出されるケースも、稀ではありません。ポスト任用されて半年で戦力外通告される場合もあります。

役職のポストのランキング説明

ここで、役職とポストのランキングについて説明します。「何歳で昇格するかの基準」は、A社の場合完全に既に消滅しているので、昇格年齢の目安は記載していません。

課長職(本社グループリーダー・支店のエリアマネージャーポスト)
次長職(本社室長・支店長ポスト)
部長職(本社部門長・事業部長ポスト)

最近は定年後も再雇用を選ぶ社員が増えた

部下もない閑職に追いやられ、満足な年収も得られず、これでやる気を出せといわれても無理というものですが、部下無し担当者の多くは、割り切って黙々と働いています。

さらに最近は、定年後も継続再雇用を選ぶ社員が増えてきました。年収は大幅にダウンします。A社の場合でも、現役時代の1/3前後の水準です。仕事も、社員の補助的な業務が中心です。

確かに家で奥さんの邪魔にされるぐらいなら働いた方がましなのでしょうが、何ともわびしい限りです。

社外から上司がやってくる

A社も多くの日本企業と同じように、社長以下の経営層、部課長層の殆どを生え抜き社員で占めていました、つい最近までは。

リーマンショックから東日本大震災にかけての景気悪化に加え、他業種からの参入や海外事業の不調も加わり、A社は業績低迷に苦しんできました。

そんな中、A社では社外より社長を招聘します。社長だけではなく、経営層も社外人材の存在感が増しました。今では取締役(社外取締役を除く)・執行役員のうち、社長を含め半分近くが社外です。一般的に生え抜きが多い人事部長も、外資系銀行から転じた人材です。

経営層だけではありません。今まで花形だった宣伝・マーケティングといった分野の部長・次長・課長クラスも、同業他社やさらには他業種から人材が採用されるようになりました。

そもそもA社は、個人営業の化粧品店を取引先として美容部員を派遣する、一方で大量の広告を打ちながら新製品を売りまくる、そんなビジネスモデルで伸びてきた会社です。

今では、化粧品ビジネスを取り巻く環境も様変わりしました。販売チャネルの中心はドラッグストアといった組織小売業、さらにはネットに移っています。TV宣伝一本やりといった、古いプロモーション手法が通用する時代でもありません。

そうした背景を踏まえると、生え抜き人材だけでライバルメーカーとの競争に打ち勝つのは容易ではありません。今後も化粧品を伸ばしていくには、どうしても幅広く人材を求める必要があります。社内で人材を育てている余裕はありません。

「今までのような純粋培養では立ち行かない」

そんなことは百も承知ですが、当事者たちには大問題です。とくにマーケティングといった部門は社内でも人気NO.1のセクションで、昇進スピードも恵まれていました。


そこに突然、落下傘部隊のように上司が社外からやってくる、しかも自分より全然若い、となれば面白くないのも当然です。

コネがものをいう再就職先

再就職は簡単ではない

それでも我慢して会社にしがみつくのは、その方が楽だから、つまり中高年の転職はそんなに簡単ではないのです。

もう10年以上前ですが、会社の業績がどうしようもなく悪化し、希望退職を募った時期があり、その時は予定を上回る1000人以上の中高年社員が手を挙げました。理由の一つは、定年退職までの給料の8割程度に相当する退職金を増額するという、異例の好条件です。

退職した社員の中に、派遣会社を立ち上げた先輩がいました。当時A社は社員が辞めすぎてバックヤードが人手不足に陥ってしまったのです。派遣されてくるスタッフも元社員の先輩方で、みなさん腰が低くなっていました。

それでも、こんな要領の良い社員はレアケースで、多くは再就職先探しに苦しんでいます。

金融機関は恵まれている

大手企業の中でも金融機関は、取引先・関連子会社・シンクタンクなど多くの出向先を抱えています。50代前半でほとんどの社員が会社を去りますが、出向・転籍後もそこそこの待遇が保証され、うらやましい限りです。

出向適齢期が近づくと人事部の担当者に呼ばれ、いくつかの会社が提示されます。その中から自分のキャリア・適性を考えて出向先を選びます。1-2年は出向元に籍を置き、その後転籍するのが一般的です。

退職時の職位にもよりますが、出向先では部長・課長といったポストが用意されるのが一般的です。支店長クラスなら、役員として出向というケースも珍しくありません。

学生時代の友人も54歳でリース会社に転籍し、名門ゴルフ場のメンバーとなって悠々自適の人生を送っています。

テレビ局・新聞社も、再就職先は豊富です。テレビ局(キー局)なら、ローカル局・番組制作会社から始まり、系列の遊園地・ゴルフ場といったところです。

関連会社は格好の再就職先

大手と言いながらメーカーで働く社員にとって、好条件の再就職先が提供されるなんて羨ましい限りです。A社の場合も、少なくとも人事部が斡旋してくれるなんて夢のような話はありません。転職は自分で何とかするのです。

ではどうすれば良いのでしょう。人気があるのは、企業グループと取引のある関連会社です。

大手企業の場合、大抵は警備・ビルメンテナンス・ファシリティ管理などの業務をアウトソーシングしています。

メトロ・JR・通信キャリア系の旧特殊法人系(以前は政府が100%株式を所有していた企業)は、社員向けの保険代理店をグループ内で運用していたりします。

面白いところでは、自動車メーカー(誰もが知っているグローバル企業)のサラリーマン社長が、長男にカーパーツショップ立ち上げさせたなんてケースもあります。もちろん、最大のお得意さんは当の自動車メーカーです。大企業は、偉くなればなんでも許されるんですね。

A社も、ご多分に漏れず、こうした関連企業が再就職先として人気です。

運良くこうしたグループ企業に営業本部長やら渉外部長といった役職に潜りこめば、現役並みとはいかないまでもそこそこの待遇で迎え入れてくれます(プロパー社員にとっては、たまったものではありませんが)。

まさに民間版天下りといった感じですが、元A社社員たちにルーティンワークが任されることはありません。プロパーから見れば昼間からブラブラとしているように見えますが、先輩社員たちには大切なお役目があるのです。

それは、古巣とのパイプ役です。こうした関連会社は優れた製品・サービス・ビジネスモデルを擁しているわけではありません。A社と資本関係があるわけでもなく、あるのは人的関係、つまりコネを頼って仕事を取ってくるのが唯一といってよい戦略です。


例えば最近の企業はどこも金を稼げないスタッフ業務には冷淡で、とくに総務系の業務はアウトソーシングの格好の標的です。先輩社員たちは、古巣でのネットワークを活用してこうした動きを早めに察知し、外注業務を獲得するのです。

先輩社員たちは、古巣にネットワークを張っていて、内示されていない異動情報を掴んでいたりします。逆に社内の異動情報を教えてもらった、なんて笑い話もあるぐらいです。

コネがないと再就職できない

では、こうした関連会社にどうすれば再就職できるのでしょうか。別に採用試験や面接が行われるわけでもなく、お声がかかるのを待つしかありません。つまり100%コネ入社です。

こうしたコネは、人事・総務・広報・秘書といったスタッフ系出身が圧倒的に強く、他には回ってきません。

例えば会議室・行事スペースの予約管理・レイアウト変更・設営といった仕事の請負も、社内の事情(会議の優先順位・大型の社内イベントが行われるタイミング等)に通じていなければ務まりません。こうした社内事情にスタッフ系は強いのです。

格付けも大事で、最低でも課長職経験者が暗黙の条件になっており、実際には事業所や部門の元責任者もゴロゴロいます。古巣と調整するにしても、格が低いとなめられてしまうからです。

取引先への再就職は経験がものをいう

財布を握っている部署は強い

企業は様々なプロダクトやサービスを外部から購入しており、その調達部門は、何百億という巨額の予算を握っています。

資材購買、広告宣伝、販促物、生産設備、ロジスティック、OEM生産など、さまざまな調達部門で業務に携わる担当者には、取引先から声がかかる自ケースが多いようです。

もちろん、今までお世話になったから迎え入れたという面もあるでしょう。それだけでなく、OBの受け入れは後任の担当者にも無言のプレッシャーとして働きます。つまり、波風を立てたり暗黙のルールを破れば、インナーサークルから追放されて再就職のチャンスを失うという恐怖です。

経験を活かす

もちろん、再就職を受け入れる理由は、他にもあります。それは経験です。

例えば化粧品のキャップ・ボトルといった資材の調達条件は品質・コスト・納期の3要素で構成されますが、サプライヤーはこの3条件のバランスを取りながら、発注先のニーズを満たさなければなりません。

件のどれが欠けても、発注先のサプライチェーンに支障をきたしかねず、今後の取引にも影響します。

ではどうすれば発注先のニーズが満たせるか、それが一番よくわかっているのが調達部門の担当者なのです。だからこそ、再就職を受け入れるのです。

特殊な経験が活きる

工場には、大型ボイラー・大型冷凍機(空調用の冷媒を作り出す設備)・特別高圧変電設備(家庭用電圧の70倍以上!)を備えていて、日常的なメンテナンスのためには一定の資格も必要です。

こうした仕事に長く携わった先輩たちは、意外と潰しが効くようです。昔のコネとかつながりとかは関係なしに、オフィスビルやホテルで再就職しているという話も聞きます。

最近は、OEM(original equipment manufacturer 他社ブランドの生産メーカー)への再就職も増えました。

お店で売っている化粧品のラベルを見ると、製造元に効いたことのない会社名が記載されていることがあります。これがOEMメーカーで、最近は生産を受託するだけでなく、
商品の設計まで請け負っています。

こうしたOEMメーカーは経験豊富な技術者の不足に悩まされており、品質管理や量産管理に携わってきたA社の社員は引っ張りだこです。

特に化粧品生産には、関連法規(薬事法)の理解したうえで、監督官庁(厚生労働省と各都道府県)との許可申請で交渉できるようなスキルも欠かせません。こうした能力は1年2年で身につくものではないのです。

とくに最近は、美容液の肌クレームによる回収・販売停止といった事件も起きており、監督官庁である厚生労働省の姿勢は以前より厳しくなっています。


人間、元気なうちは働き続けたいものです、しかも充実したやりがいのある仕事で。そのためには、一生使えるようなスキルを磨くにせよ、人とのネットワークを培うにせよ、若いうちから日々努力を重ねなければなりません。

本記事は、2018年7月7日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

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この記事を書いた人

公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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