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【アメリカ州制度】男女平等の精神が強い州「ワイオミング州」解説

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ワイオミング州


アメリカ西部にあるワイオミング州は「The Cowboy State(カウボーイ州)」と呼ばれるほど典型的な西部の印象が強い一方で「The Equal State(平等の州)」というニックネームもあります。これにはアメリカで最も早く女性に選挙権を与え、アメリカ初の女性州知事を選出したように男女平等の精神が強いことが関係しています。

どの時代でも平等を貫き、州のモットーも「Equal Rights(平等の権利)」とするワイオミング州は大自然にも恵まれた観光の名所でもあります。また、アメリカ西海岸の開拓の際に重要な要所でもあったことから、アメリカ史を理解するうえで同州の歴史は欠かせません。今回はそんなワイオミング州について特徴や歴史を交えてご紹介します。

目次

ワイオミング州の特徴

2018年現在、ワイオミング州の総人口は約58 万人です。アメリカで10番目に広い面積でありながら、アメリカで最も人口が少ない州として知られています。広大な大地は行けども行けども人に出会わないと言われるほどです。州最大の都市であるシャイアンですら6万人未満で、西部開拓時代の名残がいまも残っています。

州名のワイオミングはインディアンの言葉の「大平原」や「大きな大地」に由来しています。また、ワイオミング州の州民の85パーセントは白人で、10パーセントがヒスパニック系、次いでインディアンが2パーセント程度とされており、古くからインディアンが生活をしており現在でもインディアンとの縁が深い場所でもあります。

州の最大の特徴は1872年に世界初の国立公園に指定され、世界自然遺産でもあるイエローストーン国立公園や、全米で最も美しい山脈とされるグランド・ティトン国立公園などの自然遺産です。なかでもイエローストーン国立公園はアメリカで最も人気がある国立公園で、毎年アリゾナ州のグランドキャニオンよりも多くの人が訪れています。

イエローストーン国立公園では高く噴き上がる間欠泉などが有名ですが、グリズリー、オオカミ、バッファロー、ムースなど多くの動物が生息しています。1990年代にはこの地で暮らす白人によってオオカミが絶滅させられてしまいましたが、インディアンの手によって生態系の再導入が行われ、現在では本来の姿に回復しています。

また、この地で狩猟を中心に生活していたインディアンは1800年代後半からアメリカ政府にバッファローの狩猟を禁じられてしまいましたが、1990年に狩猟権を再び与えられた経緯があります。現代では観光名所とされるイエローストーン国立公園ですが、インディアンと密接な関係がある場所ということはあまり知られていません。

ワイオミング州は大自然の他にも女性参政権の実行にいち早く取り組み、全米初の女性裁判官や女性州知事を誕生させました。1870年頃から陪審員、廷吏、治安判事など数々の「女性初」の先駆けになりました。当時としては画期的だった女性の社会への参画はアメリカに大きな影響を与え、いつしか「The Equal State」と呼ばれるようになりました。

ワイオミング州は大自然に囲まれて人が少ないという一方で、古くから女性への権利を尊重してきた先駆け的な存在だったのです。

ワイオミング州の歴史

ワイオミング州は、1890年にアメリカ合衆国44番目の州になりました。ワイオミングの地での人類の歴史は古く、いまからおおよそ13,000年前頃にはインディアンの祖先であるパレオ・インディアンが生活していました。州内のビッグホーン山脈には西暦800年頃に作られたとされる石で輪を描いたメディシン・ホィールが残されています。

ワイオミングに白人がやってきたのは、記録が残っている限りでは1807年のルイス・クラーク探検隊のジョン・コルターとされています。この時点でアラパホ族やスー族などと接触したと考えられています。1812年にはアスター遠征隊のメンバーだったロバート・スチュアートが東への帰路の途中で、高度が低く馬車も通れるサウス・パスと呼ばれる道を発見します。


このサウス・パスと呼ばれた道は、後にアメリカ西部を切り開く際に重要な道となった「オレゴン・トレイル」になり、1868年に開通することになる大陸横断鉄道の大きな足がかりになりました。アメリカ西部の開拓はワイオミングの道を切り開いたことで大きく前進したと言えます。

1862年、アメリカ西部でホームステッド法が制定されます。これは一定の条件で農業を続ければその土地を政府から払い下げられる制度で、例外なくワイオミングでもホームステッド法を利用するため多くの開拓者が集まりました。同時に商人や強盗なども集まり、強盗団のワイルドバンチで有名なブッチ・キャシディのような当時の犯罪者の多くは必ずワイオミングに関係していると言われるほどでした。

1865年にはワイオミング領土の暫定政府が作られ、鉄道の開設で人口が増えたことを受けて1868年にワイオミング準州になりました。1869年、女性にも投票権を拡大する普通選挙法が成立し、アメリカで初めて女性に投票権が与えられました。ワイオミング州では後の1925年にはアメリカ初の女性州知事が誕生し「平等の権利」を貫く州として立場を確立します。

1872年には現在のイエローストーン国立公園地域を探検した結果、この一帯は保存すべき価値があると判断され世界で始めての国立公園に指定されました。また、1906年にはアメリカ初となるナショナル・モニュメント(国定史跡)であるデビルスタワーが登録され、アメリカ国内の自然環境保護の先駆けになりました。

1890年、人口が少なく女性に参政権を与えたことから州への昇格に反対する声を受けつつも、44番目の州に昇格しました。州に昇格以降、鉄道の発展やゴールドラッシュなどの影響を受けることなくほとんど人口は増加しなかったものの、大自然と穏やかな空気は健在で、現在ではアメリカ国内屈指の観光地として親しまれています。

ワイオミング州の政治情勢

ワイオミング州では2012年、2016年の大統領選で共和党が勝利しています。伝統的に保守的な風潮が強く共和党が強いものの、州知事選では民主党と共和党が交互に就任する状況が続いています。州の財政を支えていた天然資源の利用を制限するクリーン・エネルギー政策がオバマ大統領によって制定されて以降は共和党の声が強くなりつつあります。

ワイオミング州の経済

2018年時点、ワイオミング州の失業率は3.9パーセントです。州の経済は農業や鉱業が中心で、天然資源が豊富なことから石炭やエネルギー関連企業が最も多く雇用を生み出しています。しかし、クリーン・エネルギー政策の影響を受けた企業は多く、2014年頃から失業率が5パーセント代まで上昇しました。

現在では州政府の方針として地球環境を考慮した火力発電や、再生可能エネルギー分野の開発が進められており、新たな雇用を創出しています。同時に観光産業にも力を入れており、とくに国内の観光需要を取り込み毎年20億ドル以上の歳入を生んでいます。

ワイオミング州の税金

2018年時点、ワイオミング州の消費税は5.46パーセントです。連邦税が4パーセントで、地方消費税の平均が1.46パーセントです。同州では個人にも法人にも所得税がかかりません。税の優遇は他州よりも多いとされているものの、企業誘致は進まないのが実情で、長らく州の課題とされています。

ワイオミング州の銃や薬物問題

ワイオミング州ではマリファナは全面的に禁止されています。南に隣接するコロラド州では全面解禁されているため州を超えてマリファナを購入する人もいますが、ワイオミング州の人がマリファナを使用する理由のほとんどは睡眠促進であることが分かっています。

ワイオミング州では州民10万人に対する銃による犠牲者数は19名と全米で3番目に高い水準です。購入時のバックグラウンドチェックもなく、銃規制に対する取り組み格付けは最低ランクの「F」グレードです。

ワイオミング州の教育または宗教事情

ワイオミング州の教育水準は全米で15番目とされています。学費の安さは全米1位のため、必然的に2年制大学も4年制大学も卒業率は高くなっています。しかしながら、州内に4年制の総合大学はワイオミング大学の1校のみでほとんどの学生は州外の学校に通うのが一般的です。

ワイオミング州の宗教はキリスト教が80パーセント以上を占めていますが、モルモン教も5万人近くいるとされています。モルモン教が多い背景には西に隣接するユタ州がアメリカのモルモン教の中心ということが影響しており、東海岸から追われるようにしてユタ州を目指したモルモン教の人たちが途中のワイオミングを生活拠点にしたとされています。

まとめ

このようにワイオミング州はアメリカで最も人口が少ないながらも、女性参政権や国立公園の制定など様々な「アメリカ初」となることを打ち立ててきた歴史があります。現代では一般的な女性の社会進出の礎を作ったのはワイオミング州であることを知っておくといいでしょう。

本記事は、2018年9月19日時点調査または公開された情報です。
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公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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