はじめに
「市役所職員の出世は年功序列」と言われますが、全員が管理職になれるわけではありません。
市役所の職員は出世に対してどのような想いを抱いているのでしょうか。
実際のところ、出世争いは激しいのでしょうか?
市役所で働いた経験を持つ、元市役所職員の井上さんに答えてもらいましょう。
質問)市役所の職員は、出世争いが激しいんですか?
今年から市役所で働き始めました。
どうせ働くなら出世して、市民のためにバリバリと仕事をしたいと思っています。
市役所の職員は、周りも同じように出世欲の強い人が多いのでしょうか?
今のところは、まだそこまで周りの方の考えを把握できていません。
やはり出世争いは激しく、それによって職員の仲が悪くなったりするのでしょうか?
回答)実は、若手世代には“出世したくない”人が多いんです。
まず、質問者さんのように「市民のために働きたい」と考えられる方は出世しても出世しなくても、市にとって貴重な職員だということを忘れないでくださいね。
では、改めて出世について回答していきます。
組織で働く上で、“出世”できるかできないかは重要な問題ですよね。
「〇〇課に異動になったら出世コース」、「出向して帰ってくると役職が上がる」
私も色んな話を聞きましたが、結論から言うと、市役所職員の出世争いはあまり激しくありません。
むしろ私の周りの若手職員は「できるだけ出世したくない」と話している方が多かった印象です。
私の勤めていた市役所では、係長に昇進する段階で昇任試験を受ける必要がありましたが、対象になってもあえて受験しない、という方もいました。
入庁したときは「出世してやる!」と意気込んでいても、働いていくうちに出世したくなくなる、という方もいます。
若手職員は、なぜ出世したくないと思うのでしょうか?
答えは「出世は割に合わない」と感じることが多くなってしまうからなんです。
割に合わないとはどういうことなのか、具体的に説明していきますね。
市役所職員が「出世は割に合わない」と感じる理由
理由1:給与以上に責任が重くなる
管理職まで昇進すると、それぞれの業務の責任者になることが多くなります。
例えば、実務は担当者が行っていても、課長が決裁していた場合、その業務での過失などは課長が責任を取らなければいけません。
また、部下が不祥事やミスを起こしてしまうと、責任をとって一緒に懲戒免職を受けるなど、「責任」の部分が大きくなるため、給与が上がるというメリット以上に出世を負担だと感じるようになってきます。
理由2:時間外手当がもらえなくなる
時間外手当とは、いわゆる「残業代」ですね。
一般的に、管理職になると残業代が支払われなくなります。
代わりに「管理職手当」がもらえるようになりますが、残業の多い部署で働いていると、残業代がもらえていた若手の頃の方が給料が高かった…ということも起こり得ます。
さらに、見落としがちなのは「休日出勤」。
市では様々なイベントを休日に行っており、運営するための人員として管理職が出勤することが多いんです。
ですが、時間外手当がもらえないので、休日出勤をしても給与は変わりません。
私は広報担当の部署にいたので、休日にイベントの取材に行くことが多かったのですが、一緒に同行してくださった課長や課長補佐が「休日はタダ働きみたいなもんだからな…」とぼやいていたのが印象に残っています。
理由3:議員対応の比重が重い
課長級以上になると、「議員対応」という仕事が重くのしかかります。
普段の業務に加えて、議員の要望への対応や市議会が開かれている際の答弁書の作成などが発生すると、大幅に時間を取られてしまいます。
議会の答弁書の作成は夜遅くまでかかることも多いうえ、議会中は議員に厳しく追及されるため、精神的に疲れてしまうことが多くなります。
「議員は選挙で選ばれているから、市民の声を代弁してるだけだ…」と、頭ではわかっていても、忙しいときに議員に対応する必要が出てくると、勘弁してほしいと感じるのが本音でしょう。
以上をまとめると、出世した際に「増えるストレス」と「受け取れる報酬」の間に開きが出てくることが、若手職員に出世は割に合わないと感じさせる原因になっています。
まとめ
今回は少しネガティブな話になってしまいましたが、ワークライフバランスの重視や育休取得率向上など、働き方改革が進められる中で、出世に対する考え方も多様化しています。
その中で出世したくない、と考える人が増えるのは当然なのかもしれません。
ただ、出世したくないと思っていても、周りが実際に出世しだすと焦りを感じてしまうのも事実。
また、市役所で出世するにあたって、他にもメリット・デメリットの両方があります。
自分が働く上で出世したいと思うのかどうかは、そのメリット・デメリットを踏まえて考えていく必要があるでしょう。
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