はじめに – コロンビア人にとっての、日本人とは?
「コロンビア人」と聞いて、どんな見た目でどんな性格で、どんなものを食べている人たちなのかを明確にイメージできる日本人は、さほど多くないと思います。コロンビアという国が、地図上のどこにあって、どんな気候のところで、有名な観光地は何がある、などもあまり知られていないでしょう。
それと同じで、コロンビア人にとっての「日本」や「日本人」とは、自分の人生とはあまり縁がない国や人々、といった存在と言えるのではないかと思います。
「アジア人=中国人」というイメージ
恐らく世界経済や政治におけるその存在感などから、コロンビア人の多くは「アジア人=中国人」であると思っている、というのは私の夫の発言です。
確かに実際、道を歩いていると「China?(中国人?)」と聞かれることはあっても、日本人か、韓国人か、と聞かれたことはなく、また「ニイハオ」と挨拶されたことは一度ではありません。日本で、「外国人=アメリカ人」と無意識に思ってしまうのと似ているような気がします。
では実際に、中国人がコロンビアにたくさんいるのか、と言うとそうでもありません。ボゴタの観光地周辺でも、日中韓からと思われる人たち(私は、平たい顔族と呼んでいますが)はめったに見かけないのが現状です。多くの観光客は、私の主観では中南米周辺やヨーロッパ近辺からで、本当にたまに、中国人らしき人たちを見かける程度です。
ただし、カルタヘナ出身の人によると、カルタヘナには日本人観光客が多く、中国人は逆にほとんどいないそうです。見た目だけでは、平たい顔族の人たちの国籍を明確に区別を付けることが難しいはずなので、現地の人たちが何をもって日本人と中国人とを見分けているのか、今度聞いてみたいと思っています。
「アジア人=中国語を話す」というイメージ
同様に、「平たい顔族」の人たちは中国語を話す、という先入観もあるようです。私のことを日本人だと知っている人も時々、「●●は中国語で何と言うの?」と聞いてきます。確かに、「コロンビアの公用語」と聞いて、スペイン語だとすぐに答えられる人が、日本にどれだけいるかは疑問でしょう。実際、日本の友人・知人に「コロンビアって…コロンビア語?」と聞かれたことは何度もあります。
私たちが、アルファベットで書かれたロゴや文章をなんとなく「クール」「格好いい」と感じるのと同じで、コロンビア人も漢字が好きです。車やバイクのデザインとして使ったり、タトゥーにしたりしている人も多いのですが、たいていが何と書いてあるのか、どういう意味なのかは日本人にはわかりません。中国語なのか、それとも何かが間違っているのかは、中国語がわからないことには判明しません。
「日本人」に対する差別はあるか?
カルタヘナなど一部の地域を除いて、珍しい存在である日本人、そしてアジア人。実際に住んでみると、人種差別をされることはあるのでしょうか。
まず、コロンビア人と日本人の平均身長はほとんど変わりません。コロンビアは中南米の中でも最も混血が進んでいる国の1つで、地域などにもよりますが、髪は黒く、肌も日本人に近い色の人がとても多いです。
つまりここで言いたいのは、ぱっと見の見た目は、コロンビア人も日本人も、あまり大きな違いがないということ。例えば日本人ばかりの街に1人、典型的なゲルマン系の人がいたら、その肌や髪の色、体格からかなり目立つと思いますが、コロンビアに日本人が1人入っても、その見た目からはさほど目立ちません。ただし、「よく見ると」やはり顔つきが違い、「アジア人だ」とわかるようです。
少し話がそれましたが、私が実際に、「差別された」「人種を理由に、嫌なことを言われた」と感じたことは、実は一度もありません。特に私が住んでいるのはボゴタから離れた田舎町で、ボゴタ以上にその存在は目立ちますし、さらに最近は新型コロナウイルス問題で、世界のあちこちでアジア人に対する嫌がらせがあったとも聞きますが、私は被害に遭ったことがありません。
街を歩いていると、じろじろと見られることは日常茶飯事、前述のように「ニイハオ」などと言われることはありますが、それ以上のことはないのが現状です。
買い物や公共料金の支払いの際、50ペソ(日本円で、1.5円くらい)をちょろまかされそうになったり、実際ごまかされたりしたことはありますが、それは「アジア人だから」という理由ではなく、その人はきっと誰に対してもちょろまかすと思っています。
外国人だとわかると、偽札をお釣りとして渡されることもあるから気を付けるように、と家族に言われていますが、今のところはその被害にも遭っていません。
コロンビアでもやっぱり「SUSHI」は有名
多くの海外諸国同様、やはり「SUSHI」は有名です。一度、夫の友人が「SUSHIって中華料理だっけ?」と言っていて唖然としたことがありますが、ボゴタには日本食レストランが何軒かありますし、田舎町にもSUSHI屋さんはあります。
私が「寿司」と言わず「SUSHI」と言うのはもちろん、日本のお寿司とはまるで違うことが多いからです。特にボゴタは内陸地なので、新鮮な魚介類を手に入れることが難しく、日本人にとってのおいしいお寿司を食べることは、とても難しいです。
一度、ボゴタの日本食レストランでサーモンの握りを頼んでみたところ、ちょっとしたおにぎりくらいの大きさが3貫出てきました。これだけでお腹いっぱいです。冷凍のサーモンは水分を含みすぎていてべちゃべちゃになっていて、正直食べられませんでした。海外のSUSHIあるあるで、このレストランでも、巻き寿司や握りを頼むと、お醤油の他にTERIYAKIソースも付いてきます。
コロンビアで有名な日本人
このように、コロンビアで非常に存在感の薄い日本ですが、実は、多くのコロンビア人が知っている有名な日本人がいます。イチローでも本田圭佑でも、渡辺謙でもありません。横井研二さんです。
日本では知られていない、日本人「横井研二氏」
横井研二、と聞いて、知っている日本人はほとんどいないのではないでしょうか。本名はKenji Orito Yokoi Díaz、日本人の父とコロンビア人の母を持ち、コロンビアで生まれました(正確には日本人ではなく、日系人なのだと思いますが、どちらの国籍を持っているのかは、明確にはわかりませんでした)。
10歳のときに日本へ引っ越し、24歳まで過ごしました。日本語がほとんどわからないまま日本の小学校で勉強したそうですが、そのときに、日本の子どもたちが「起立、礼」を揃って行ったり、おしゃべりもせず先生の話を聞いたりしていることに驚いたと、とある講演で話していました。
その後、結婚してお子さんを育てながら、コロンビアのボゴタにあるスラム街に住み、日本の「規律」「しつけ」について広めることで貧しい人たちの支援を行ったり、日本と中南米の人々の交流をさせるNPO法人を設立したりといった活動を行っているそうです。
YouTubeのチャンネル登録者数は、現在234万人。著書も出しており、コロンビアに限らず、中南米各地で有名な活動家の1人なのです。
私が引っ越しをして「日本人です」とご近所さんに話したとき、「日本?ああ、Kenjiの国ね!」と何人かに言われたので、日本人と言えば横井研二、という図式ができあがっている人も多いのではないかと感じました。それだけ、インパクトのある活動をされている人なのでしょう。
まとめ
以上、「コロンビアにおける、日本人の印象」でした。
日本や日本人という存在は、距離的にも精神的にもとても遠い存在でありながら、私たちにとっては意外なところを知っていることがあり、一方で、「そんな話、誰から聞いたの?」と聞きたくなるような勘違いをしていることもあります。
横井研二さんまでとはいかなくとも、日本とコロンビアが、もっとお互いのことに興味を持って、深く交流できる間柄でいられるよう、私も貢献していきたいなと思っています。
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