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なぜ「Black Lives Matter」は、「All Lives Matter」とは言わないのか?

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はじめに - 「Black Lives Matter」と「All Lives Matter」

BLM運動が、人種差別をなくすための運動であるなら、なぜすべての人種を含めて「All Lives Matter(ALM)」とは言われないのでしょうか

確かに「Black Lives Matter」を日本語に直訳すると「黒人の命は(が)大事」となり、すべての命は平等のはずなのに、なぜ黒人の命“だけ”が大事なのかと言う疑問が湧いてきます。

そして“Black” 一色だけを強調するより「All Lives Matter」と言う事で、すべての人々の生活や命を尊重しているように聞こえます。しかしBLMをALMと言えない現実がアメリカにあります。

なぜ「Black Lives Matter」は「All Lives Matter」とは言えないのかは、フレーズの裏に隠された本当の意味を理解する事によって、初めて理解できます。

「Black Lives Matter」の本当の意味について

BLM運動を知るきっかけになったのが、2020年5月25日にミネアポリスで起った、黒人男性ジョージ・フロイドさんの事件だと言う人は、かなりの数いるのではと思います。実際、彼の死後、全米2000以上の都市で、次々と抗議行動が湧き起こり、その様子が各種メディアで報道され、そこで人々が訴えた「Black Lives Matter」のフレーズは大々的に有名になりました。

しかしアメリカでは、これまでも何度となくフロイドさんの事件と同じように、警察官の取り締まりで黒人の命が奪われています。

そのほとんどの場合、警察側は起訴を免れ、事件は闇に葬られてきていました。「Black Lives Matter」というフレーズが初めて使われたのも、2012年に起こった自警団の白人男性に17歳の黒人青年が射殺された事件がきっかけです。

その白人男性は正当防衛が認められ、無罪になりました。その事件のFacebook投稿の一つにハッシュタグがつけられ、そこからSNSでたくさんの人々に拡散し、支持されBLM運動が始まりました。

BLM運動の一番の目標は、アメリカ黒人がどれほど日々の生活の中で、警察からいわれのない暴力を振るわれているのか、普段取り締まりを受ける事のない、非黒人の人達にもわかってもらうことです。市民の安全を守るのが警察の役目のはずなのに、アメリカの黒人にとっての警察官は、むしろ普通の生活を脅かすきっかけになる存在で、恐怖の対象でしかありません。

アメリカ白人男性の主な死亡原因が、癌や心臓病など病気なのに対し、アメリカ黒人男性の死亡原因の1位から3位は不慮の事故、自殺、殺人によるもので、病気以外で亡くなる人が大多数を占めています。そして癌や心臓病など病気による死亡と続きますが、驚きなのはアメリカ黒人男性の死亡原因第6位は、警察官に殺される事だという事です。

さらに統計によると、白人と黒人の人口比率は約6:1なのに、非武装の黒人が警察官によって殺される可能性は、白人の約2.5倍であるという報告も出ています。しかしこれは職務中の警察官が報告した数なので、記録されていない、報告されていない、警察の横暴や差別の被害にあって死亡した黒人が本当はどれだけいるのか、正確な数は残念ながら分かっていません。


▼参考URL:ミシガン大学社会調査研究所
(https://isr.umich.edu/news-events/news-releases/police-sixth-leading-cause-of-death-for-young-black-men-2/)

アメリカ警察と黒人奴隷制度

なぜ黒人がこれほどまでに警察の標的になり続けきたのか、その理由はアメリカにおける警察活動の歴史が黒人奴隷制度と関係しているからです。

黒人が奴隷として扱われアメリカがまだイギリスの植民地だった時代、ごく初期の警察組織に、逃亡奴隷を追跡し反乱を防ぐのが任務の部署が設置されていました。

南北戦争後、奴隷解放宣言が行われ、黒人はアメリカ市民として認められ(表立っては)奴隷として売買されなくなりました。しかし奴隷制度が廃止されても黒人に現実的な平等はなく、社会的にも経済的にも最弱者の地位におとしめられました。

その後政府は黒人の差別と隔離を合法化したジムクロウ法を執行し、社会的地位向上を求める黒人に対し、各地の警察が私刑を支援していたため、アメリカ国内、至る所で黒人のリンチ殺人が多発しました。

1950-60年代になると、警察はアフリカ系アメリカ人公民権運動抑圧に重要な役割を果たしていて、特に南部では、警察が率先して活動家の行動を制限しました。リンカーン大統領による奴隷解放宣言が行われた後も、ジムクロウ法など合法的な人種差別は100年間ずっと続き、1964年にやっと公民法が制定され、人種差別は法律で禁止されました。

黒人のアメリカでの社会的地位

アフリカ系アメリカ人は、アメリカ大陸に開拓者としてやって来たヨーロッパ人を除けば、一番古い外国人労働者にも関わらず、彼らがアメリカ市民としての基本的人権を得てから、まだたった50年しか経っていません。

そして基本的人権を法律によって保障され50年経った今でも、経済格差から来る差別意識は払拭されていませんし、普通に生活していても、ただ肌の色が黒くて標準より体が大きいと言うだけで、突然警察官に不審者として扱われ、唐突に職務質問され、運が悪ければ連行されてしまいます。

このように多くのアフリカ系アメリカ人は、私たちにとっての非日常とも言えるような生活を送っています。何も悪い事をしていなくても、警察官に常に警戒され、いつも生命の危機に晒され、安心して生活することもできません。

「All Lives Matter」は本当に助けが必要な人から焦点が外れてしまう

人種を問わず、すべての命は貴重です。そういう意味では、「All Lives Matter」というのは正しいことかも知れません。

しかしアメリカ社会の中において、全ての人の命が平等に警察の横暴と体型的な人種差別によって、危険に晒されているわけではありません。そのためALMと言ってしまうと、実際に助けが必要な人々(主にアメリカ社会の中で暮らす黒人)から焦点を外してしまうので、特にアメリカでは、BLMをALMと言い換えることはできないのです。

BLM活動中、誰も他の命が重要ではないとは言っていません。白人至上主義の中で、ただ肌の色によって虐げられ軽んじられている黒人の命も、また同様に大事だと主張しているのです。

アメリカでの黒人の経験は、他の有色人種が受けた差別経験の比ではない、という悲しい現実があります。しかし今回このBLM運動をきっかけに、全てのアフリカ系アメリカが人肌の色に関係なく、安心して街の中を散策したり、買い物に行ったり、警察官に助けを求めることを恐れなくて済む、本当の意味での「All Lives Matter」の世界になってくれると良いなと思います。

まとめ - 編集部より

以上、なぜ「Black Lives Matter」は、「All Lives Matter」とは言わないのか?でした。

アメリカ合衆国の女性シンガーソングライター、ビリー・アイリッシュ氏はこの問題について、SNSを通して自らの意見を主張しています。以下はその一説と、それを要約したものです。


“if your friend gets a cut on their arm are you gonna wait to give all your friends a bandaid first because all arms matter? NO youre gonna help your friend because THEY are in PAIN because THEY are in need because THEY ARE BLEEDING! ”

「もし、あなたの友人が手にケガをしたとします。あなたは“みんなの手も大事よね!”と言って、友達全員に絆創膏がいきわたるまで待つの?そんなことない、あなたは怪我をした友人を助けるはず。だってその友人が今怪我で痛くて、その友人が今絆創膏を必要としていて、その友人が今血を流しているんだから!」

このように、「Black Lives Matter」は、「All Lives Matter」と言い換えることは出来ないのだと主張する人はアメリカ国内外を問わず多く存在します。もちろん、「○○の命が大事だと言ってしまうと、それは他の命は大事じゃないと言っているのと同義だ」という逆の意見もあります。

日本で人種問題について考える機会は、アメリカよりも少ない傾向にあります。しかし私たちは今一度、黒人差別に目を向けるべきではないでしょうか。

本記事は、2020年10月14日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

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この記事を書いた人

公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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