はじめに - ベトナムの婚姻率
2019年7月発表の国税調査速報によると、ベトナムの人口は2019年4月時点でおよそ9600万人。この人口は世界15位、東南アジア内で3位の多さとなっています。そんなベトナムでの婚姻率は66.9%。15歳以上のみに絞ると77.5%の人が結婚をしています。
婚姻率は農村部の方が高く、65.6%。都市部では34.4%と大きな差があります。ベトナムは若年層が多く、平均年齢は31歳。日本の平均年齢は40代後半くらいですので、非常に若くて活気がある国だと言えます。
人口増加や都市の発展が著しい国ですが、結婚に関する考えや対策などはどうなっているのでしょうか。
20代前半での結婚・出産が多いベトナム
ベトナムでは、20代前半に結婚・出産を経験する女性が多いです。20代後半になると自身のことを自虐的に「おばさん」と言うベトナム人女性も少なくありません。結婚年齢が年々上がっている日本では20代前半の結婚というと「非常に早い」というイメージですが、ベトナムではまだ当たり前のようです。
前述の通り、婚姻率は農村部の方が高いですが、結婚時期が早いのも、農村部などの地方。地方にいくと、未成年の未婚での妊娠なども珍しくなく、妊娠を機に結婚したものの、離婚をしてシングルマザーとして実家に戻る、というケースもあります。また、ベトナムとカンボジアとの国境付近の地域では未だに親同士が結婚相手を決め、ほぼ初対面同士で結婚する、という風習が残っているところもあるのです。
地方の方が結婚が早く、婚姻率も高いというのは日本とも共通した部分だと言えます。日本にも「許婚(いいなずけ)」制度はかつて存在していましたが、現在も残っている地域はほとんどないのではないでしょうか。
一方で都市部では30代の独身女性も
地方では若年での結婚がまだまだ多いベトナムですが、ホーチミンをはじめとした大都市では、キャリアを求める、良いと思う結婚相手がいない、といったさまざまな理由から独身でいることを好む女性が増加しており、日本同様結婚年齢が遅くなっている傾向にあります。
しかし、ベトナムには若いうちに結婚・出産をすることが「当然」と考える人が多いので、都市部に住む独身女性にも当然、家族や親せきといった周囲からのプレッシャーがのしかかります。自分でお金も稼げて、若いうちにそれなりに恋愛経験を積んで、しかもいいと思う男性の多くは結婚していて、自分は年を取っていって、周囲には結婚しろと言われて…。独身女性も「独身を貫きたい」と必ずしも思っているわけではないので、結婚に対する葛藤は大きいようです。
日本でも30代で独身の場合、家族や周囲からのプレッシャーは避けられない部分があります。結婚年齢が高齢化してきている日本では、30代前半になると既婚者と未婚者の割合が逆転する、というのが昨今よく見られるパターンです。生涯独身者も徐々に増加してはいるものの、女性は20代の終わり頃から、男性も30代中盤を迎えるまでには「結婚」に向けて具体的に動き出すことが多くなっています。
ベトナムの婚活事情
地方と都市部で結婚事情が大きく異なるベトナム。そんなベトナムでは多くの人が恋愛結婚をします。
日本での恋愛結婚で避けて通れないのがプロポーズですが、ベトナムにもプロポーズ文化は存在します。日本人のように婉曲的な表現でプロポーズをするベトナム人男性も存在しますが、多くは「結婚してください」「私の奥さんになってくれませんか」というストレートな言葉を選びます。日本人女性はロマンチックな雰囲気や特別な場所での、心に響く一言をプロポーズに求めている人も多いので、もしベトナム人男性からプロポーズを受けたらシンプルで嬉しいものの、少し物足りなさを感じてしまうかもしれません。
恋愛結婚の多いベトナムでは日本のようなお見合いパーティーなどは行われていません。お見合いアプリ、マッチングアプリといった類もゼロではありませんが、多くの人が利用したりテレビCMを流したりするような有名なものではないようです。
しかし、ベトナムには「zalo」という、日本のLINEと似たアプリが人気を集めています。多くのベトナム人が利用するzaloは、LINEのようにチャットや通話ができるだけでなく、位置情報を利用し、近くに住んでいる人を見つけることも可能。そこで友だちを作ったり、恋人探しをしたりする人も少なくありません。「オンラインで出会う」ことは、日本のみならず世界共通で「当たり前」になってきているようです。
日本にはベトナム人女性を出会うためのマッチングアプリやサイト、紹介サイトなどが複数存在します。ベトナムは美人が多い、親日である、日本語学習者が多いという理由などから、ベトナム人女性との国際結婚を希望する日本人男性が増えているようです。日本人との国際結婚に関しては、ベトナム政府公認の結婚相談所もあるほどで、国をあげて日本への信頼度が高いことがわかります。
また、近年はホーチミンなどベトナムの都市部で働く若い日本人男性も増えており、彼らを結婚相手として求めるベトナム人女性もいるようです。しかし、こちらの場合は始めの方のデートで家族に紹介されたり、結婚観や結婚に対する意識を聞かれたりと、「結婚」を全面に押し出してくるベトナム人女性も多いことから、日本人男性がベトナム人女性との恋愛に積極的でなくなることもあります。
ベトナム政府の婚活や結婚後に対する政策
都市部での婚姻率低下などを受け、ベトナム政府は女性に
・30歳前までの結婚
・35歳までに子どもを2人出産
ということを呼びかけています。
しかし、現状ベトナムにおいて結婚や育児に関する手当や支援といった具体的な政策はありません。婚姻率の低下が問題となっているものの、未だベトナムでは若くして結婚し、子どもを2~4人儲ける夫婦も多いです。よって、深刻な少子化などには陥っていないため、結婚・出産・育児に政府が深刻に取り組むまでに至っていません。
日本は出生率アップのために、「児童手当」の給付や保育園・幼稚園や高校の無償化など様々な政策がなされます。こういった日本の制度について、在日ベトナム人は「日本では子どもを生んだらお金がもらえるから助かる」と言うほど。今後、婚姻率や出生率に大きな変化が訪れることがあれば、ベトナムでもより具体的で国民の助けとなるさまざまな政策が発表されるかもしれません。
まとめ - 若者の多いベトナムは婚活よりも恋愛がメイン
以上、「ベトナムの婚姻率や婚活事情について」でした。
平均年齢31歳という若者の国、ベトナムは人口の伸びや婚姻率の高さは世界上位に入るといえます。ベトナムでも、都市部における婚姻率低下がしばしば問題視されますが、それを補う農村部をはじめとした地方の力が強く、婚姻率や出生率に大きな影響は出ていません。婚活に関しても、恋愛をメインとしている人が多く、日本との違いを感じます。
しかし、ネットを使っての出会いにも積極的な部分を見ると、ネット社会の重要性や、リアルな場面での出会いの少なさを痛感せざる負えません。徐々にではありますが、ベトナムも恋愛や結婚、出産などの在り方に変化が起こっています。
今後もベトナムの婚姻率や出生率、恋愛スタイルなどに注目していきたいですね。
参考資料サイト
厚生労働省|平成27年人口動態統計月報年計(概数)の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai15/
厚生労働省|平成27年版厚生労働白書 – 人口減少社会を考える –
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/15/backdata/01-01-03-029.html
コメント