2020年10月26日、アメリカ議会は賛成多数により最高裁判事としてエイミー・バレット氏(48)の就任を承認しました。

トランプ大統領再選が現実的に?最高裁判事にエイミー・バレット氏就任!(2020年11月記事)

2020年10月26日、アメリカの最高裁判事にエイミー・バレット氏(48)が就任しました。

本記事では、エイミー・バレット氏のアメリカ最高裁判事就任について、そして2020年11月に控えた大統領選挙におけるトランプ大統領の再選の可能性について、アメリカ在住の日本人にレポートいただきました。


はじめに - エイミー・バレット氏の就任でアメリカはどう変わる?

2020年10月26日、アメリカ議会は賛成多数により最高裁判事としてエイミー・バレット氏(48)の就任を承認しました。

これにより、9名で構成されるアメリカ最高裁判事は「保守派6名・リベラル派3名」というバランスになります。さらに、最高裁判事は「終身制」のため、保守的な最高裁が当面続くことが確実になりました。

アメリカでは、大統領選と同じくらいに最高裁判事を巡る動向が注目されていましたが、結局はトランプ政権の思惑通りに決着したかたちです。

今回は、アメリカ最高裁判事にエイミー・バレット氏が就任することで、アメリカはどう変わるのか、さらには大統領選への影響などについて解説します。

エイミー・バレット氏、最高裁判事就任までの背景

今回、最高裁判事にエイミー・バレット氏が就任した背景には、これまでリベラル派の最高裁判事として30年近く活躍してきたルース・ギンズバーグ氏が9月亡くなって、最高裁判事の席にひとつ空席が生まれたことがあります。

アメリカでは、最高裁判事の選出は「時の大統領による指名」そして「議会での承認」というふたつの行程を経なければいけません。つまり、今回のケースではトランプ大統領が判事候補を直接指名し、議会で決議する流れを辿ったことになります。

トランプ大統領は保守的な共和党ですから、出来るだけ共和党支持者や保守的な思想を持った「政権寄りの判事候補」を選びます。

そして、民主党優勢の下院議会、共和党優勢の上院議会という「ねじれ議会」で採決する訳ですが、共和党の方が議席数の過半数を占めているため、共和党の思ったようになりやすいのが実情です。

トランプ政権としては大統領選前までにこの問題を決着させておきたい考えでしたが、民主党は次の大統領こそが判事を選ぶべきと主張し、議会での承認を遅らせるための動きを続けていました。

しかし、民主党の抵抗むなしく、正常な手続きを経てエイミー・バレット氏が最高裁判事に就任しました。アメリカのリベラル派からすれば、民主党による採決を遅らせるための抵抗が「最後の砦」だったにもかかわらず、決め手を欠いた結果になりました。

保守派が多勢を占める最高裁は、今後長期間にわたって保守的な判決が続くことを意味するため、今回の民主党の失態は大統領選に負けるよりも痛手と言えるでしょう。


エイミー・バレット氏、最高裁判事就による影響

最高裁判事にエイミー・バレット氏が就任したことで、大統領選の結果をはじめ、アメリカの保守化、そして保守の長期化といった影響が生じることが予想されます。

2020年11月のアメリカ大統領選の結果が変わる

エイミー・バレット氏が就任したことで、最も大きな影響を与える可能性があるのが「大統領選の結果」です。

トランプ大統領はかねてから「郵便投票による不正選挙」を問題視しており、再三にわたって「正当な選挙にならない」と主張しています。さらに、自身が敗北した場合「平和的な政権移行」に同意する明言を避けています。

つまり、11月3日の投票結果で勝敗をつけるのではなく、不正選挙を理由に裁判を起こし、最高裁で決着をつけようとしていると見られます。

事実、2000年の大統領選では、開票を巡る問題が起こり、投票日から1ヶ月以上法廷闘争が続き、最終的には最高裁の判決によって大統領選が決着しました。

仮に、大統領選の結果を最高裁に委ねるとした場合、トランプ政権や保守的な共和党寄りで構成される最高裁判事団であれば、トランプ陣営にとって優位な結果に動く公算が大きいのです。これはトランプ大統領がエイミー・バレット氏を早く就任させた隠れた狙いとされています。

保守的なアメリカへと転換する

エイミー・バレット氏就任によって、今後アメリカは保守的な国に転換していく可能性が高くなります。

例えば、アメリカを二分している代表的なテーマである「人工妊娠中絶問題」や「銃規制」などを巡っては、最高裁は保守的な判決を下すことが予想されるため、今後アメリカでは「中絶は違法」や「銃の保有は合法」となる可能性があります。

とくに、中絶を巡る論争はアメリカでは活発で、リベラル派の女性たちは中絶を認めるよう運動を起こしています。しかし、国の最高意思決定機関である最高裁が「中絶は違法」とすれば、従わざるを得ないでしょう。

今後のアメリカではこのような「保守的な判決」が頻発しやすくなるのです。最高裁が保守的な判決に偏るということは、アメリカの分断が一層加速する可能性があると言えます。

ただし、保守的な人たちからすれば当面は安定した国が続くとも言えることから、保守的な最高裁が悪いとは言い切れません。トランプ政権下では「隠れ保守層」と呼ばれる人たちが多いことが浮き彫りになっているので、保守的な最高裁を歓迎している人が多いことも事実です。

保守的なアメリカが長期化する

エイミー・バレット氏が就任したことで、保守的なアメリカが長期化します。

先述したように、アメリカ最高裁は9名の判事で構成されており終身制です。判事が死亡するか、自ら退くまでその立場が保証されます。

つまり、最高裁判事の顔ぶれは滅多に変わらないということです。このことは、最高裁が下す判決の傾向も滅多に変わらないことを意味します。大統領の任期は最大で8年間ですが、判事の平均在職期間は16年のため影響力が長期化する訳です。

仮に、トランプ政権が終わり、民主党が与党になったとしても、最高裁は保守的な構図のままですから、保守派つまり共和党寄りの司法判断が続くことになります。


言い換えれば、今回の判事就任によって、共和党は大統領選で勝利する以上の価値を生み出したとも言えるのです。トランプ大統領が判事承認を急いだ背景には、長期的な保守派判事団を作り上げたという保守層へのアピールもあります。

最高裁判事を巡る一件で露呈した民主党の失態

今回の最高裁判事を巡る一件で露呈したのが「民主党の弱さ」です。

トランプ政権に徹底対抗する民主党ですが、最高裁判事を巡っては実質的に何もできないまま承認することとなり、大統領選で優勢との評判に陰りが見えつつあります。

司法委員会による公聴会で不発に終わる

民主党は「議会での決議を遅らせる」ことや「公聴会でバレット氏を攻撃する」ことで、判事就任を阻止する計画でした。

しかし、10月12日から1週間にわたって開催された司法委員会による公聴会では、バレット氏の印象を下げることはできず、かえってバレット氏の精悍さや意思の強さを引き立てる始末でした。

公聴会でバレット氏は「政策や価値の判断をするのは選挙で選ばれた政治家であり、最高裁判事の仕事ではない」と発言し、懸念されていたバレット氏の保守的な思想と司法判断を分離した考えを強調しました。

民主党としては公聴会でバレット氏の失態を誘いたかったところでしょうが、何も出来なかった印象は否めません。

黙る、民主党の大統領候補バイデン氏

民主党の大統領候補であるバイデン氏は、最高裁判事承認については参加に消極的です。

バイデン氏は最高裁判事を現行の9名からさらに増員する「コート・パッキング」について意見を聞かれた際に明言を避けました。

また、最高裁は100年以上も現在のかたちを続けていることから、例え民主党やリベラル派が不利になるからといって、安易に増員することで対応すべきではないと考えているとみられます。

さらに言えば、コート・パッキングを支持することで既存の支持者を失う懸念もあることから、選挙前に波風を立てないようにしているのが本音でしょう。

民主党のリーダーであるバイデン氏がこの問題に消極的なことから、公聴会での追及が甘かったのかもしれません。選挙前にあまり過激なことはしたくないバイデン氏の意向と、その隙をついた共和党の戦略は共和党の勝利と言わざるを得ないでしょう。

まとめ

以上、「トランプ大統領再選が現実的に?最高裁判事にエイミー・バレット氏就任!」でした。

アメリカでは結果がまったく予想できない大統領選よりも最高裁判事の動向が注目されてきましたが、エイミー・バレット氏が正式に就任したことで、一気に「共和党寄り」の風が吹いてきました。

共和党支持者や保守派の人たちからすれば、大統領選での勝利よりも大きな成果と言えることから、トランプ大統領への支持はより厚くなったでしょう。

劣勢と報じられるトランプ陣営ですが、バレット氏を最高裁判事に就任させたことで、これまでで最も効果的なアピールに成功したと言えます。

本記事は、2020年11月5日時点調査または公開された情報です。
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