気象庁の発表する情報の種類について
国土交通省気象庁が発生度合いに応じて発表
気象を始めとする注意報や警報などの情報は、国土交通省気象庁から発表されています。
気象庁が発表する各情報は、災害や情報の内容に応じて気象、地球環境・気候、地震・津波、火山、航空気象、海洋の合計6つのカテゴリーに分かれています。
気象情報について
日本全国のお天気に関する情報を発信します。現在、時系列、週間などの天気予報のほか、天気図、雨量、竜巻や台風、大雨などの気象災害に関する注意報や警報を発表します。また、熱中症予防の呼びかけや季節予報など、四季の気温差が激しい日本の季節ごとの情報も発表しています。
地球環境・気候情報について
日本の気候だけでなく、海外諸国の気象情報も発表しています。また、エルニーニョやラニーニャ現象など気候に関する情報、オゾン層や紫外線、酸性雨など地球環境全体に関する情報も発表しています。
地震・津波情報について
地震が発生した時の震源や震度の発表や、緊急地震速報や津波警報など地震や津波に関する注意報や警報を発表します。また、地震や津波の発生するメカニズムや地震に関する用語の解説、南海トラフ地震など今後予測される大地震に関する情報発表、大地震発生後の地震活動の見通し発表なども行っています。
火山情報について
火山の噴火警報や予報、噴火した場合には噴火速報、降灰や火山ガスの予報、現在の火山の噴火警戒レベルを発表します。また、火山噴火の仕組みや火山の種類、火山状況に関する用語の解説も行っています。
航空気象情報について
空港や観測所で観測した、飛行場や空域に関する気象情報などを発表しています。
海洋情報について
波浪や海氷、海洋汚染や海洋気候に関する情報を発表しています。
気象に関する3つの警報・注意報の基準や種類について
数十年に一度レベルの現象に対し、最大級の警戒を呼び掛ける「特別警報」
警報の発表基準を大幅に超える大雨や大雪などが予想され、かつ重大な災害が発生する可能性がとても高い時に、気象庁では最大級の警戒を呼び掛けるために「特別警報」を出します。現在6種類の特別警報を設けています。
▼大雨特別警報
台風や集中豪雨などで、数十年に一度レベルの降雨量が予想される時に発表されます。大雨によって予想される災害の内容が分かりやすいように、「大雨特別警報(土砂災害)」、「大雨特別警報(浸水害)」、「大雨特別警報(土砂災害、浸水害)」など、特に警戒の必要な災害の種類を表題にして発表します。また、雨自体が止んでもまだ大規模な災害が発生する危険性が高い場合は、特別警報発表を続けます。これらの大雨に対する定義は、以下大雨警報、注意報にも適応されます。
▼大雪特別警報
数十年に一度の降雪量が予想される大雪に対して発表されます。
▼暴風特別警報
数十年に一度の強度の台風や同程度の温帯低気圧による暴風に対して発表されます。
▼暴風雪特別警報
数十年に一度の強度の雪を伴う暴風が発生する可能性がある時に発表されます。暴風雪そのものによる災害の恐れに加えて、雪で視界が遮られることによって災害が発生する恐れについても警戒を呼びかけます。なお、暴風雪とは「大雪+暴風」という意味ではないので、同時に大雪による災害発生の可能性がある時には、大雪特別警報(または警報、注意報)も発表されます。これらの暴風雪に関する定義は、以下暴風雪警報、注意報にも適応されます。
▼波浪特別警報
数十年に一度の強度の台風や同程度の温帯低気圧によって高波が予想される時に発表されます。
▼高潮特別警報
数十年に一度の強度の台風や同程度の温帯低気圧による高潮が予想される時に発表されます。
重大な災害が発生する恐れがある時に発表される「警報」
重大な災害が発生する恐れがある場合に発表される7種類の警報があります。
▼大雨警報
大雨による重大な土砂災害や浸水害が発生する恐れがある時に発表されます。
▼洪水警報
河川の上流域で大雨や雪解けが起きると、下流域では河川の増水や氾濫の恐れがあります。河川の増水や氾濫への警戒のほか、堤防の損傷や決壊による重大な洪水や水害が起きる可能性が高い場合、洪水警報が発表されます。洪水に関する定義は洪水注意報にも適応されます。
▼大雪警報
降雪や積雪によって住宅や建物の倒壊などの被害や交通障害などの重大な災害が発生しそうな時に発表されます。
▼暴風警報
暴風によって重大な災害が起きる可能性が高い時に発表されます。
▼暴風雪警報
雪を伴う暴風によって重大な災害が起きる恐れがある時に発表されます。
▼波浪警報
高波による船舶の遭難や沿岸の建物被害などの重大な災害が起きることが予想される時に発表されます。
▼高潮警報
台風や低気圧等による異常な潮位上昇によって、重大な災害が発生する可能性が高い時に発表されます。
災害が発生する恐れのある時に注意を呼び掛ける「注意報」
天気予報や気象情報でも特に多く見かける注意報は、災害が発生する恐れがある時に注意を呼び掛けるために発表されます。注意報は全部で16種類あります。
▼大雨注意報
大雨による土砂災害や浸水害が発生する恐れがある時に発表されます。
▼洪水注意報
大雨や融雪による河川の洪水や水害が発生する恐れがある時に発表されます。
▼大雪注意報
大雪による災害が発生する恐れがある時に発表されます。
▼強風注意報
強風による災害が発生する恐れがある時に発表されます。
▼風雪注意報
雪を伴う強風による災害が発生する恐れがある時に発表されます。
▼波浪注意報
高波による災害が発生する恐れがある時に発表されます。
▼高潮注意報
異常な潮位上昇による災害が発生する恐れがある時に発表されます。
▼雷注意報
雷のほか、急な強い雨、竜巻などの突風、雹などの積乱雲の発達によって発生する気象現象により、人や建物への災害が発生する恐れがある時に発表されます。
▼濃霧注意報
濃い霧により災害が発生するおそれがあると予想したときに発表されます。具体的には、霧による視界不良によって発生する交通障害などの災害です。
▼乾燥注意報
空気の乾燥によって火災や延焼が発生しやすい気象条件になった時など、乾燥による災害が発生する恐れがある時に発表されます。
▼なだれ注意報
山の斜面に積もった雪が滑落し、なだれになることによって人や建物への被害が出る可能性がある時に発表されます。
▼着氷注意報
低温によって水蒸気や水しぶきが付着、凍結すると電線や通信線の断線や船体の転覆などの災害が起きる可能性があります。その際に出されるのが着氷注意報です。
▼着雪注意報
主に気温が0℃付近で発生しやすい、雪の電線などへの付着や通信線や送電線の切断や、送電線鉄塔の倒壊の恐れがある時に発表されます。
▼融雪注意報
既に積もっていた雪が融けることで、土砂災害や浸水などの水害が発生する可能性がある時に発表されます。
▼霜注意報
気温が下がって霜が発生し、農作物への被害を始めとする災害が発生する可能性がある時に発表されます。
▼低温注意報
気温低下による水道管の凍結や破裂などの災害のほか、冷夏を含めて低温で農作物への被害が出る可能性がある時にも発表されます。
警報・注意報の発表基準について
気象庁は気象に関する特別警報、警報、注意報をそれぞれの基準に従って発表しています。発表基準は風速、潮位や雨量指数などの災害発生に結び付いた指標を用いて設定し設定されます。更に市町村ごとの過去の災害を網羅・調査した上で、重大な災害の発生する恐れのある値を「警報」の基準、災害の発生する恐れのある値を「注意報」の基準、数十年に一度という極めて希で異常な現象を「特別警報」の基準としています。
発表されている警報・注意報はどこで確認できる?
大雨や防風など、気象による災害が発生する可能性が高いことがあらかじめ予測される場合、気象庁では実際の気象現象が発生する数日前から「気象情報」を発表し、当該地域の消防や警察、地方公共団体などの防災関連組織の円滑な活動および住民の安全確保のための行動や判断に役立つように努めています。
発表された気象情報は、その後の危険度に応じて注意報、警報、特別警報と段階的に発表していきます。発表中の気象に関する各警報、注意報は国土交通省気象庁のホームページや、インターネットブラウザに対応していない従来型の携帯電話(フィーチャーフォン)からは国土交通省防災情報提供センターの携帯電話サイト(http://www.mlit.go.jp/saigai/bosaijoho/i-index.html)で確認できます。
テレビやラジオの気象情報を始めとした各メディアや、気象情報の配信サービスを行っている民間の気象会社のサイトや市町村のサイトでも、随時各警報や注意報が確認できます。また、警報や特別警報が発表された時には、テレビやラジオで随時速報として放送される体制が整えられています。
津波に関する3つの警報・注意報の種類と基準について
特別警報に該当する大津波警報
予想される津波の高さが高いところで3mを超える場合に発表されるのが大津波警報です。特別警報に該当し、沿岸部や河川の近くにいる人はただちに高台への避難が求められます。
津波警報
予想される津波の高さが高いところで1mを超え、3m以下の場合に津波警報が発表されます。特に標高の低い場所では浸水や津波の襲来が予想されますので、大津波警報と同じく沿岸部や河川の近くにいる人は高台への避難が求められます。
津波注意報
予想される津波の高さが高いところで0.2m以上、1m以下の場合であって、津波による災害のおそれがある場合に発表されます。小型漁船は転覆の恐れがあるので、海上にいる場合ただちに陸上へ上がり、海岸から離れることが求められます。
予想される波の高さの基準は5段階
津波に関する各警報と注意報は、10m超、10m、5mが大津波警報、3mが津波警報、1mが津波注意報と、予想される津波の最大の高さを基準に発表されます。
火山に関する噴火警報、予報について
火山活動の状況と対象範囲予測によって警報、予報が出る
気象庁では日本全国の111の活火山を対象に観測、監視、評価を行い、これらに基づいた結果によって噴火警報、予報を発表しています。噴火警報、予報は噴火による噴石や火砕流などの、人命に影響のある火山現象が発生する可能性がある場合、警戒が必要な範囲(入ると命の危険のある火山周辺範囲のこと)を明示して、発表します。
噴火警戒レベルについて
活火山の中でも、当該地区の火山防災協議会の合意した避難計画に基づき、気象庁が噴火警戒レベルの運用を行っている場合があります。噴火警戒レベルの運用がされている火山に対しては、各噴火警報、予報発表時に5段階の噴火警戒レベルを合わせて発表します。
火山噴火警報の種類
▼噴火警報(居住地域)または噴火警報
火山による災害が居住地域および居住地域側の加工まで及ぶ場合には、噴火警報(居住地域)または噴火警報が発表されます。特別警報に該当し、当該地域の住民や入山者へは避難準備または避難指示が出されます。噴火警戒レベル4または5に相当。
▼噴火警報(火口周辺)または火口周辺警報
火山による災害が居住地域近くまでの広い範囲や火口から少し離れた周辺まで及ぶ場合には、噴火警報(火口周辺)または火口周辺警報が発表されます。火口周辺への立ち入り規制や、入山規制が行われます。噴火警戒レベル2または3に相当。
▼噴火予報
火山活動は行われていない静穏な状態。通常時だか活火山であることに留意する、もしくは火山活動を終えた火山の噴火警報を解除した後などに発表されます。噴火警戒レベル1に相当。
海上警報について
日本近海において出される6種類の警報
海上警報は、日本近海で24時間以内に基準の現象が発生する可能性がある場合に出され、6種類あります。
▼海上台風警報
台風による風が最大風速64ノット以上、気象庁風力階級表の風力12に相当する時に発表されます。
▼海上暴風警報
最大風速48ノット以上、気象庁風力階級表の風力10以上に相当する時に発表されます。
▼海上強風警報
最大風速34ノット以上48ノット未満、気象庁風力階級表の風力8又は9に相当する時に発表されます。
▼海上風警報
最大風速28ノット以上34ノット未満、気象庁風力階級表の風力7に相当に相当する時に発表されます。
▼海上濃霧警報
水平方向に見通せる視界距離が0.3海里(約500m)以下(瀬戸内海は0.5海里(約1km以下)に相当する時に発表されます。
▼その他の海上警報
海上着氷警報、海上うねり警報など、風、霧以外の現象を「海上(現象名)警報」として警報を行うことがあります。
緊急地震速報について
地震が発生した直後に各地での強い揺れの到達時刻や震度を予測し、迅速に知らせる情報が緊急地震速報です。気象庁が震源近くの地震計から震源などを計算、予測し緊急地震速報を発表すると、同時にテレビやラジオ、インターネットや携帯電話に速報が届きます。また、震度6以上の緊急地震速報は特別警報に該当します。
地震大国である日本にとって画期的な地震予測システムであり、事前の対応にも役立ちます。ただし、緊急地震速報発表から実際の揺れが到達するまで短時間しかないこと、震源付近では速報発表が地震到達に間に合わない場合もある、震度や時間はあくまで予測なので後の発表で震度の訂正が入ることがある、などの特性や限界があります。
災害発生時の避難に関する情報について
避難勧告とは
災害による人や建物への被害が予想される時に、対象地域の住民へ安全な場所への避難を呼びかけるために発令されます。強制力はありません。
避難指示とは
避難勧告よりも更に災害による人や建物への被害が起きる可能性が高い時や、その被害が甚大になると予想される時には、避難指示が発令されます。避難指示が発令されれば、ただちに非難をしなければいけません。
避難命令とは
避難命令は、当該地域の住民や滞在者全てに避難を命令します。強制力を持っているので、避難命令に従わない場合には避難をしない住民や滞在者を拘束の上での強制避難などの執行も認められます。
実は、日本には「避難命令」がありません。ですが、災害発生において危険性が大変高い地域は「警戒区域」に指定され、警戒区域に立ち入った場合罰則が与えられます。
非常事態宣言とは
避難に関するカテゴリーで最大級の警告で、不要不急の交通や外出が禁止されます。日本では、1948年に発生した在日朝鮮人と日本共産党による民族教育闘争に関する、テロや事件勃発時に唯一発令されています。
避難準備情報とは
あらかじめ避難勧告や避難指示の発令が予想される場合、高齢者や身体障碍者、子供などを早い段階で避難させるために避難準備情報が発表されることがあります。
参考:
国土交通省 気象庁
http://www.jma.go.jp/jma/menu/menuknowledge.html
まとめ
自然災害の多い日本だからこそ発達した、技術力の高い気象や自然現象の予測システムが警報や注意報です。大規模な災害が発生するたびに運用基準やシステムなども改良され、精度も飛躍的に上がってきています。発表上の限界もある緊急地震速報ですが、今後はより精度の高く、かつ早い地震予測も可能になるかもしれません。そして、私たち国民も、警報や注意報に従った適切、迅速な非難行動が大切と感じています。
(文:千谷 麻理子)
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