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市民が職員を襲撃?「行政対象暴力」の事例と対策 2019年度版

地方公共団体やその他の行政機関とその職員に対する暴力行為を「行政対象暴力」といいます。

かつては、暴力団や反社会勢力による暴力が問題になっていましたが、現在は一般市民による暴力もあるようです。

この記事では、そんな「行政対象暴力」の事例や対策をまとめました。

2019年07月25日更新

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目次
はじめに 「行政対象暴力」とは
「行政対象暴力」の事例
事例1:2001年「鹿沼市職員殺害事件」
事例2:2007年「長崎市長射殺事件」
事例3: 市民による暴力事件
「行政対象暴力」の自治体による対策例
まとめ 自治体ごとの対策が急がれる「行政対象暴力」

はじめに 「行政対象暴力」とは

「行政対象暴力」とは、市役所などの役所の窓口や、そのほかの場所で、行政機関に勤める職員が暴力団や反社会勢力による暴力行為の被害に遭うことで、近年の特徴として、一般市民による暴力行為も増加していることが挙げられます。

それをうけて、自治体側も、職員を守るため、それぞれ暴力行為を防ぐためにマニュアルを作成したり、万が一暴力行為を受けた時を想定しての訓練を実施したりしています。

この「行政対象暴力」は「対行政暴力」や「官対象暴力」、「官暴」などとも呼ばれており、現在、その対策が急がれる問題として社会的に注目されています。

「行政対象暴力」の事例

今回は、「行政対象暴力」の事例について、ご紹介します。

「行政対象暴力」はその多くが、「不当要求」といって、暴力を起こす人の個人的利益などのために行政に便宜を図らせようとして発生しているようです。

事例1:2001年「鹿沼市職員殺害事件」

多くの自治体が対策を考えるきっかけとなった「行政対象暴力」の事例が、2001年に起きた「鹿沼市職員殺害事件」です。

この事件は、2001年に栃木県鹿沼市での産業廃棄物処理に関わるトラブルを巡り、担当者の鹿沼市職員が帰宅中に暴力団員のグループに襲われ、殺害されたという痛ましい事件です。

市役所の職員が適正な業務にあたっていたにもかかわらず、反社会勢力に逆恨みされ、危害を加えたれたという事実は、社会に衝撃を与えました。二度と悲劇はが繰り返されないために、多くの自治体が具体的な対策を考えるきっかけとなった「行政対象暴力」の代表的な事件です。

参考:全国暴力追放運動推進センター「ジャーナリストによる行政対象暴力の実態報告」
http://fc00081020171709.web3.blks.jp/iken/kako/kotoba/kotoba02.html

事例2:2007年「長崎市長射殺事件」

2007年には、長崎市の当時の市長だった伊藤一長氏が、暴力団の男に銃撃され亡くなるという事件が起きました。

当時の報道では、犯人の男が長崎市が発注する公共工事を巡って市を恨んでいたという情報や、男が運転する車が長崎市の発注した道路工事現場で事故を起こした際に、車両保険が支払われなかったことを恨んでいたなどという情報があるようです。

長崎市の事件では現職の知事が、銃犯罪という暴力で倒れたこと、暴力団の男に襲われたことで、「行政対象暴力」の恐ろしさが改めて社会に認識され、対策の必要性がますます訴えられるようになりました。

参考:NHKアーカイブス「長崎市長 選挙期間中に銃殺される」
https://www2.nhk.or.jp/archives/tv60bin/detail/index.cgi?das_id=D0009030777_00000

事例3: 市民による暴力事件

事例1と事例2では暴力団関係者から行政に対する暴力事件を取り上げましたが、最近では一般の市民が、役所の窓口で職員に暴力を振るう事件が多発しているようです。

一般市民による「行政対象暴力」の例を一部取り上げます。

2012年 大阪府・藤井寺市での事例

2012年に大阪府の藤井寺市の藤井寺市役所での事例です。男が生活保護をめぐり、市役所に恨みを持ち、ペットボトルに入ったガソリンを市役所内の床にまいて火をつけようとしたとして逮捕される事件が起きました。

2013年 大阪府・大阪市鶴見区役所での事例

2013年には、大阪府の大阪市鶴見区の鶴見区役所内で、生活保護関連の手続き中に事件が起きています。手続きをしていた男は、ノコギリを持って窓口の内側に入り込み、そのままノコギリを振り回して、職員にけがをさせたようです。

2013年 兵庫県・宝塚市での事例

2013年には兵庫県宝塚市でも事件が起きました。宝塚市役所の市税収納課を訪問した男が、担当職員と口論となり、かばんの中から火炎瓶2本を取りだし、窓口のカウンター越しに投げ込んだようです。

火炎瓶の1本目は火が付いておらず、2本目は火が付いていました。その後、男は持ってきたポリタンクからガソリンのような液体もまき、延焼面積は広範囲に及びました。

男はその後逃走しましたが、宝塚市役所の職員3人が追いかけて、庁舎内で取り押さえたようです。

宝塚市によると、事件を起こした男性は以前にも市の窓口に何度か訪れ、税金未納で預金口座を差し押さえられていたようです。男は警察に「マンションの固定資産税を滞納していた。何度も督促状を受けていた。文句を言いにいった」と話しました。

この事件で、25~50歳の市職員の男性3人と来庁中の45歳と50歳の市民の女性2人が負傷する事態となりました。このうち44歳の男性職員はのどにやけどを負いました。

参考:日本経済新聞「兵庫・宝塚市役所に火炎瓶 逮捕の男「督促に立腹」」
https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1201Q_S3A710C1CC0000/

2015年 東京都・稲城市「市役所放火事件」

2015年には、東京都の稲城市で市役所の放火事件が起きています。

まず、男が原付バイクで市役所1階に侵入し、大声で騒いだため、稲木市役所の職員が警察に通報しました。

その後、男が油のような液体をまいたため、職員は手分けして消防署へも通報し、屋内消火栓の非常ベルを鳴らし、火災の危険があることを庁舎内の職員や市民など来庁者に知らせました。

そして警官が駆けつけた頃には、ついに男が火を放ち、さらに刃物を振りかざしてパトカーを強奪して逃走しようとしました。最終的に男は市役所敷地内で警官に逮捕されたようです。

この事件については、稲城市が報告書を作成し、今後の対策についてもまとめられています。

参考:稲城市ホームページ「稲城市市庁舎放火事件検証報告書」
https://www.city.inagi.tokyo.jp/shisei/keikaku_hokoku/sonota/houkaziken_houkoku.html

2018年3月 石川県・金沢市役所での事例

2018年には、石川県の金沢市役所で、刃物を持った男に男女4人が刺され負傷する事件が起きました。環境局長を含む市役所の職員が被害に遭ったようです。

参考:産経新聞「金沢市役所刺傷事件の男、少なくとも刃物5本を所持 計画的犯行か」
https://www.sankei.com/west/news/180316/wst1803160008-n1.html

2018年5月 京都府・京都市右京区

京都市右京区で、生活保護の実態調査に訪れた京都市の職員に対して、調査された側の男性が暴行を加え、公務執行妨害容疑で逮捕される事件がありました。

犯人の男性は、京都市職員の対応に腹が立ったことを理由に、市職員のメガネを外し、胸ぐらをつかみ、壁に押し付けるなどの暴行を加えたようです。

2018年6月 岡山県・美作市での事例

2018年6月、岡山県美作市では、男が市議会の委員会を傍聴していた際に、傍聴席を乗り越えて議員に包丁を突きつけ、脅迫する事件が起きました。

男はすぐに取り押さえられました。男は右手には刃渡り17センチの包丁を持ち、さらに3本の包丁を腰のベルトに差し込んでおり、用意周到で計画的な犯行だったようです。

参考:NHKニュースウェブ「キレる市民 狙われる役所」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180628/k10011498821000.html

「行政対象暴力」の自治体による対策例

それでは、続いて、「行政対象暴力」についての自治体の対策の一部をご紹介します。

石川県金沢市の対策

金沢市では、刺傷事件の後に、庁舎内の防犯カメラをこれまでのおよそ2倍にあたる34台に増やしました。また、警察や「行政対象暴力」に対応する専門職員への通報装置を大幅に増やすなど、対策を強化しているようです。

石川県能見市の対策

石川県能美市では、同じ石川県の金沢市役所で起きた事件を受けて、網を発射して動きを封じる「ネットランチャー」や、催涙スプレーといった防犯器具を、新たに市役所や市立病院などに配備しました。

兵庫県宝塚市の対策

宝塚市は、市役所の出入り口など全9か所に防犯カメラを設けるほか、警察OBの嘱託職員を1人から3人に増員やしたようです。また今後、もし市民から不当な要求があった際に備え、ICレコーダーを窓口に配備しました。

職員の対応に力を入れるのも、「行政対象暴力」を生み出さないための大切な対策の一つです。「宝塚市接遇マニュアル」を作成し、丁寧語の使い方から、相手とのコミュニケーションを円滑にするための言葉遣い、誤解を生まないよう曖昧な表現を避ける等を紹介し、指導しています。

また、宝塚市では市への不当な要求などがあった場合には警察OBに相談するなどして、職員だけで問題を抱え込まないようにしています。宝塚市では職員がよりきめ細やかに対応することで、来庁者の要求が不当なものに変わりるのを防ぎ、結果として「行政対象暴力」を減らそうと対策しているようです。

北海道警察の対策

北海道警察では、「行政対象暴力」に対する有効な対策として「組織的な対応」と「毅然たる対応」を掲げ、紹介しています。これは、相手が反社会勢力であっても、市民であっても同じことが言えると思います。

参考:北海道警察「行政対象暴力」
http://www.police.pref.hokkaido.lg.jp/info/keiji/center/gyosei2.html

大阪府暴力追放推進センターの対策

大阪府暴力追放推進センターでは、「行政対象暴力」を「権限行使要求型」と「金品要求型」に分類し、紹介しています。

主に暴力団等、そしきてきな「行政対象暴力」での手口ではありますが、このような不当な要求があるかもしれないということを、自治体職員や市民は知っておくといざという時に役立つと思われます。

参考:大阪府暴力追放推進センター「行政対象暴力の形態」
http://www.boutsui-osaka.or.jp/04taiou/taiou08.html

まとめ 自治体ごとの対策が急がれる「行政対象暴力」

このページでは、「行政対象暴力」の事例や対策についてご紹介しました。「行政対象暴力」には従来のような暴力団や反社会勢力等による組織的なものから、近年では、刃物など凶器を持った一市民による事件も頻発しています。

その対策として、各自治体の市役所庁舎などには、防犯カメラの設置によって暴力を抑止しようという動きが広がっています。しかし、役所は職員と市民が生活相談など周囲の人に知られたくない話をすることもある場所です。そのため、カメラでは録音はしない、市民の後ろのカメラアングルにして、市民の顔が分からないようにするなど、プライバシーに配慮する動きもあります。

より具体的な対策として、窓口に刃物を持った人物が来た場合に備え、さすまたを使って取り押さえる訓練を行なったり、これまでに発生した放火などの事態に備えて、消火器の使い方を学ぶ研修を行ったりする自治体も増加しています。

事件の際に、市民を避難誘導するマニュアルを備える自治体もあれば、言葉遣いなど基本的な対応の見直しを図る自治体もあるなど、その「行政対象暴力」への対策は多種多様です。いずれにせよ、自治体は職員や来庁者を守るために「行政対象暴力」への予防・対策が急務になっています。

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