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公務員でも非正規はツラいよ!官製ワーキングプア問題

「官製ワーキングプア」と呼ばれる、公務員における非正規職員は、日本において深刻な問題です。

本記事では「官製ワーキングプア問題」について説明します。

(本稿は事実をもとに筆者の考えをまとめたものであり、本メディアの意見と必ずしも一致するものではありません。)

2019年08月24日更新

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目次
はじめに
そもそも非正規職員とは何か?
公務員でも増加する非正規職員問題
非正規雇用問題をどのように解決するのか?
岐路に立っている公務員という働き方
まとめ

はじめに

民間企業では正規職員と非正規社員の待遇格差が問題になっていますが、公務員の中にも非正規職員は存在し、正規職員との間の待遇格差が存在します。

公務員における非正規職員の問題は「官製ワーキングプア」と呼ばれており、あまり報道されていませんがむしろ民間よりも深刻な問題になりつつあります。

そもそも非正規職員とは何か?

まずは、社会問題になっている非正規職員(社員)とはどのような存在なのかについて説明します。

非正規職員とは?

非正規職員(社員)は一般的に、契約社員、嘱託社員やパート・アルバイト、派遣社員のような立場の職員のことを指します。非正規社員に対して、期間の定めのない労働契約、フルタイムで働く人のことを正規社員(正社員)と呼びます。

「非正規」という言葉にはどちらかというとネガティブな印象が含まれていますが、本来は正社員以外の働き方をする人のことを指す言葉なので悪い意味はありませんし、法律的にも問題はありません。

増加する非正規職員

労働者に占める非正規職員の割合は増加しています。

出典)https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0202_01.html

上の表は、独立行政法人労働政策研究・研修機構が作成した、労働力人口や就業者、常雇、正規の職員・従業員の推移を1948年から2018年までの70年間まとめた表です。

雇用者(正社員、パート、派遣社員などを全て含めて雇われている人)は右肩上がりで増加していますが、2000年以降、雇用者、常雇(長期間雇われている人)の数が増加している割に、正規の職員・従業員の数は今一つ増加していません。この差はアルバイトや派遣社員などの非正規の職員が増加していることを示しています。労働者のうち、38%程度は非正規社員だと言われています。

正規職員と非正規職員の待遇格差

非正規職員の増加を巡って問題となるのが、正規職員と非正規職員の待遇格差です。正社員は労働法により厳しい解雇制限があるのに対して、非正規職員の中には比較的解雇されやすい傾向があり、雇用が不安定になる可能性があります。

また、給料についても正規職員と非正規職員では待遇格差があると言われています。正規職員に対して非正規職員の賃金は7割程度だと言われていて、有期契約の社員は会社の業績などが不審だった時に、無期契約の正社員よりもリストラされやすい傾向もあります。

このような理由から一般的に正規職員として働くか、非正規職員として働くかによって生活の安定性は大きく変化します。

公務員でも増加する非正規職員問題

非正規職員の増加と、正規職員との待遇格差という問題は民間だけではなく、公共団体でも発生しています。公務員における非正規職員問題について説明します。

朝日新聞が運営しているWebメディアの論座(RONZA)によれば、非正規公務員は8年間で5倍に増加しており、現在64万人が非正規職員として公務を行っていると言われています。しかし、正社員の半分から4分の1程度しか賃金が支払われず、契約更新されなければクビになってしまうという立場の弱さからハラスメントに近い行為が行われているケースもあると言われています。

[45]非正規公務員、仰天の「クビ」の理由:https://webronza.asahi.com/business/articles/2019041600001.html?page=1

公共も民間企業もコスト削減に躍起になっている

コスト削減に躍起になっているのは、民間だけではなく公共も同様です。地方自治体の多くは産業と人口が都心部に流出しているので財源確保とコストカットに苦心しています。しかし、正規職員の待遇は厳しくルール化されており、簡単にはコストカットできないので、委託しやすい業務からコストの安い非正規職員に委譲するようになっています。

民間企業であれば、経営と社員の努力により会社の業績を向上させ頑張った社員の報酬を高くすることは可能ですが、公共はどうしても売上を上げたり、業績を上げた社員にたくさんの報酬を渡すといった柔軟な賃金・雇用待遇が困難なので、限られた人件費の中でいかに安い労働力を確保するかということに意識が向きがちです。

実は公務員の方が労働に関する意識が希薄になりがち

「公務員は優遇されている!」という批判はあっても「公務員の労働環境が酷い!」という切り口でのメディア報道はほとんどないため、非正規公務員の問題はどうしても見落とされがちになります。

しかし問題は公務員の方が深刻です。公務員は一部の労働法の規制を受けません。民間の非正規労働問題を解決するために、労働者派遣法やパートタイム労働法のように非正規労働者に対して特別の保護を行う法律がありますし、判例も充実しています。一方で非正規公務員はこのような労働法の適用を受けられず、判例の蓄積もないので、社会として十分に保護されていると言い難いです。

民間のように労働に関するコンプライアンスを求められることも少ないので、どうしても公務員の労働権に対する意識が低くなりがちです。

つまり、民間のワーキングプア問題よりも官製ワーキングプアの方が深刻な問題だと言えます。

非正規雇用問題をどのように解決するのか?

もちろん、このような非正規雇用の問題は解決すべき問題として国会でも議論されています。この問題の解決策として期待されているのが「同一労働同一賃金」というルールです。同一労働同一賃金のルールと官製ワーキングプアの解決策について説明します。

同一労働同一賃金とは?

2020年4月1日から施行される、パートタイム・有期雇用労働法の中には同一労働同一賃金というルールがあります。従来の法律からの改正点は以下の3つです。

1. 正社員と非正規社員の不合理な待遇差を禁止する
2. 労働者に対する待遇に関する説明義務を強化する
3. 行政による事業主に対する助言・指導、裁判外紛争解決手続の整備

参考>https://www.mhlw.go.jp/content/000473038.pdf

これにより、職場内で同じような労働は同じような賃金になるように労働環境を整備しようとしています。

ただし、この法律は公務員には適用されないと定められています。よって、民間のワーキングプア問題の解決策にはなるかもしれませんが、官製ワーキングプアの解決にはつながりません。

地方公務員は会計年度任用職員制度が新設される

公務員にはパートタイム・有期雇用労働法は適用されませんが、官製ワーキングプア問題の解決のために、地方公務員法・地方自治法の一部を改正して、会計年度任用職員制度が新設されます。

この法律により今まで臨時職員や嘱託職員など雇用方法によりさまざまな待遇を受けて来た非正規職員の待遇が一本化されます。この法律が施行されることにより、「同一労働同一賃金」を目指す政府方針に従い、非正規職員の待遇も改善されるのではないかと言われています。

非正規の地方公務員の待遇改善は義務ではない

ただし、法律の改正理念とは別に、条文は決して非正規公務員の待遇を良くするものではありません。たとえば、新制度ではパートタイム職員には退職金や特殊勤務手当が支給できないとされていますが、現行制度では一定の条件を満たせばパートタイム職員に対職員や特殊勤務手当を支給している場合もあるので待遇の切り下げが発生すると考えられます。

また、正規職員と非正規職員の待遇格差は存在するのに、フルタイムで働く会計年度任用職員には兼業の禁止や規律、処罰ルールは正規職員並みに厳格されています。そして、住民の暮らしに関わる多くの業務が会計年度任用職員に置き換わる可能性を秘めています。
自治体の方により、非正規職員の待遇がさらに悪くなる、さらに非正規の公務員が増加する可能性があります。

【論文】「会計年度任用職員」導入による公務員制度の大転換:https://www.jichiken.jp/article/0080/

岐路に立っている公務員という働き方

「働き方改革」が叫ばれていますが、民間だけではなく公務員にもその波は訪れようとしています。これまでの公務員という働き方が変わろうとしているのです。

正社員を雇わずにプロジェクト単位でチームを組む民間企業

民間企業の中には正社員をあえて雇わないという企業も増えています。

企業にとって正社員を雇うことは経営上の大きなリスクとなるので、会社の中枢を担う社員は正社員として雇用するけれども、プロジェクト単位で必要な人材をフリーランスや派遣会社から雇って、簡単な業務は賃金の安いパートタイム労働者に任せるというように、正規社員をできるだけ雇用しない経営スタイルが注目されています。

業務効率を追求すれば公務員も中枢以外は正社員として雇う必要はない

公務員も業務効率だけを追求すれば、民間企業と同じように組織の効率化が行われると考えられます。

自治体や国家運営の戦略を構築、条例を制定したり、国家や地方自治体の権力を行使する業務は正規公務員が行って、プロジェクトによって足りない人材は民間の専門家を登用、市役所の窓口業務や公民館の運営など同じようなことを反復する業務の現場職員は非正規雇用とするのが業務効率を追求する観点からは合理的です。

非正規公務員に要注意!?

公務員を目指している方には色々な夢や目標があると思います。

たとえば、地方の観光行政に携わりたい、保育園で地域の子供たちの成育に関わりたいなど色々な動機があることでしょう。ただし、自分がどのような公務員を目指すかによって、待遇は異なります。

たとえば、公立保育園の保育士の52%は非正規職員だと言われており、中にはクラス担任や主任などの責任者クラスで働いている人もいると言われています。

参考>
増加する「非正規公務員」とはなにか?:https://synodos.jp/politics/16217

つまり、どのような公務員になるかによって待遇は大きく違うのです。公務員という夢は目指しつつも、非正規公務員の待遇は改善される兆候は見られないので、公務員の採用に応募する際は雇用形態についてはきちんとチェックした方が良いでしょう。

まとめ

正規職員と非正規職員の待遇の差は社会問題となっていますが、民間よりもむしろ公務員の方が正規職員と非正規職員の待遇差格差に関して根深い問題を持っています。労働法が部分的にしか公務員には適用されない、会計年度任用職員制度は解決策にならない可能性が高い以上、官製ワーキングプアの方が根は深い問題だと考えられます。

公務員という仕事に崇高のイメージを抱くのも良いですが、自身の生活を守ることも社会人にとって同じ位重要です。公務員を目指す場合は雇用条件についてもよく確認した方が良いでしょう。

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