各都道府県・政令指定都市に設置される「児童相談所」とは?

虐待は決して許される行為ではなく、児童虐待を防止することは、社会全体の責務です。虐待を防止し、虐待を受けている子どもを守るための行政機関に、「児童相談所」があります。 本記事では、「児童相談所」の機能や、現在の課題についてまとめました。

「児童相談所」とは?全国にある専門機関

「児童相談所」は各都道府県、政令指定都市には1箇所以上設置されている子供の成長を見守る、児童福祉の専門機関です。「児相(じそう)」と略して呼ばれることもあります。

全国各地の都道府県や政令指定都市レベルの自治体が設置しており、2006年からは「中核市」にも「児童相談所」が設置されるようになりました。

「児童相談所」には全国共通の緊急通報用電話番号「189番」があり、ダイヤルすると24時間365日いつでも、相談者本人による子育ての相談や、本人以外からの児童虐待の疑いに関する通報も受け付けています。

児童虐待を受けている可能性のある子どもを発見した時に、「児童相談所」や「福祉事務所」「市町村役場」に速やかに通報することは、国民の義務のひとつとされています。

「児童相談所」の管轄は「厚生労働省」

「児童相談所」の管轄省庁は「厚生労働省」です。

「厚生労働省」は、地域ごとに設置されている「児童相談所」の連携を図るための体制強化や、「児童虐待防止対策」を中心とした全体としての政策立案や運営、全国フォーラムなどの研究会を主催するなどして、児童福祉分野の国の政策のリーダーを担っています。

毎年11月を「児童虐待防止推進月間」と定め、この期間には「児童虐待防止」のための啓発活動を重点的に、全国を通して実施しています。また、児童虐待防止のための「オレンジリボン運動」についても推進しています。

参考:厚生労働省ホームページ「児童虐待防止対策」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/dv/index.html

「児童相談所」の機能

「児童相談所」とは、18歳未満、つまり0歳から17歳のすべての児童に関する、あらゆる福祉問題に対処する専門機関です。

問題を抱えている児童本人や保護者、学校などからの相談に応じるほか、子どもにとって最善のかたちになるよう、児童や保護者に最も適した援助や指導を行います。

「児童相談所」には、一般の行政事務職員のほか、「児童心理司」や「児童福祉司」などの専門職員が勤務し、案件によっては「児童相談所」の専門職員によって、相談業務などに必要な調査が行われることがあります。

今後の方針を決めるために児童や保護者について医学的、心理的、教育学的、社会学的、精神保健上の判定が行われます。

また、「児童相談所」には緊急の場合や行動観察のために児童を一時保護する機能もあり、一時保護ができる期間を過ぎると、日本では育児について指導を行った後に家庭に戻すことが多いのですが、その他にも児童養護施設や乳児院、児童自立支援施設、障害児施設等への入所の措置を行うこともあります。

「児童相談所」の相談業務の種類

「児童相談所」が行う相談業務には、「養護相談」「保健相談」「心身障害相談」「非行相談」「育成相談」の5種類があると言われています。

「養護相談」は父母など養育者が家出や死亡、離婚、入院などによって養育困難になった場合の相談や、虐待を受けている疑いのある子どもについての相談で、子ども本人や保護者、学校、地域の人などあらゆる人からの相談を受けます。

「保健相談」は未熟児や虚弱児、小児喘息などの子どもについての発育・発達の相談で、保護者からの相談が中心です。

「心身障害相談」は 障害や発達障害、重度の心身障害などを抱えた子どもについての相談を受ける業務です。

「非行相談」は、子どもが虚言や家出、浪費癖、性的な逸脱、違法行為など、非行に走った場合の相談業務です。

「育成相談」については子どもの性格や行動が主な相談内容であり、近年相談件数が増加している不登校や引きこもりなどの相談についても「育成相談」に含まれます。

「児童相談所」は一時保護施設

「児童相談所」はあくまでも一時的な保護施設であり、保護された子どもはずっと「児童相談所」にいられるわけではありません。

「児童相談所」で保護できるのは原則2ヶ月までで、その後は「児童養護施設」に入所する手続きを行なったり、「里親」や「特別養子縁組」などの手続きを行なったりして、子どもが安心して生活できる環境を整えます。

ただし、日本の場合は家庭に戻されるケースが最も多いことが課題とも言われています。

その他にも「児童相談所」の課題としてあげられている問題をご紹介します。

課題1:「児童相談所間の連携」

「児童相談所」は基本的に管轄内の子どもや保護者について担当するため、引っ越しをして都道府県をまたいだ家族については、転居先の「児童相談所」に引き継ぎをする必要があります。

しかし、引き継ぎがうまくいかずに、転居先の「児童相談所」で重大なケースが軽視されてしまったり、家庭によっては転居先が不明になってしまい「児童相談所」では追えなくなったりと、連携不足も指摘されています。

最近も、転居前の地域の「児童相談所」の転居した先での「児童相談所」の対応が不十分だったために、幼い命が虐待によって奪われる事件が相次いでいます。

地理的な問題から、どうしても文書による引き継ぎが中心になる「児童相談所」をはじめとした行政機関の間やり取りの中で、どのように重要な情報を伝えればよいのか、どうにかして元担当者から次の担当者へ問題解決への思いが伝わる方法は無いのか、模索が続いています。

課題2:「児童相談所」の「人手不足解消」

「児童相談所」では「人手不足」も問題になっています。現在、日本の「児童相談所」の中には「児童福祉司」が1人あたり100件以上の案件を担当している自治体もあり、諸外国と比べても抱える案件数ではトップクラスのようです。

平成11年度に比べると、虐待の相談件数は約11倍にも跳ね上がっていますが、「児童福祉司」の職員数は約2.6倍ほどしか増えただけにとどまり、十分な職員数に追いついていません。

政府は虐待の問題に対応する「児童福祉司」を全国で5,000人増やすプランも提示していますが、それでもまだ足りないと言われています。

児童相談所をはじめとした児童福祉に関わる公務員の採用や配置が急がれています。

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課題3:「児童相談所」の用地確保

新たな「児童相談所」を建設・設置する用地確保も深刻な課題です。

「児童相談所」については、新たに建設しようとする自治体で住民説明会を開くと、非行少年などの悪いイメージが結びつき、「治安が悪くなる」「イメージが下がる」「騒音が心配」といった理由で反対されるケースが相次いでいます。

地域で子どもを守るためにも、「児童相談所」といった専門施設の充実は不可欠ですが、いざ自分の近所にできるとなると、なんとなく敬遠してしまう住民が多いようです。

最近の例では、神奈川県横浜市で、「児童相談所」の開設が1年遅れた例や、大阪府大阪市では開設自体を断念したケースもあります。いずれも住民の反対があったようです。

まとめ

このページでは、全国にある「児童相談所」という行政機関についてご紹介しました。

「児童相談所」は全国の都道府県や政令指定都市には必ず設置しなくてはいけない、子どもの成育に関する専門の相談機関です。

「児童相談所」には「児童福祉司」や「児童心理司」といった専門職員がいて、様々な相談を受け付けるとともに、必要があれば子どもの一時保護も実施します。

子どもの虐待相談件数が増加している中で、ますますその役割が重要になっている「児童相談所」ですが、連携不足や人手不足、用地不足など、課題は山積みです。

課題が解決され、一人でも多くの小さな命が救われるだけの環境が整うよう、厚生労働省や各自治体の公務員が努力を続けています。

参考:厚生労働省ホームページ「児童相談所全国共通ダイヤルについて」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/gyakutai/index.html


本記事は、2019年10月5日時点調査または公開された情報です。
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