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広がる社会格差や扱い…「派遣社員」から見た非正規雇用の現実

女性の社会進出と共に、働き方も多様化しました。それに伴い、派遣社員を始めとした非正規雇用で働く女性の数も増えました。職業によってあってはならない社会格差がそこにはあります。派遣社員という立場だからこそ、不当な扱いを受けている女性がいる事を知らなければいけません。

2018年09月10日更新

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目次
派遣社員とは?労働者派遣法の改正を見よう
労働者派遣法の改正と共に浮き彫りになった問題
派遣社員でも輝いて働けるようにするためには?
広がる社会格差や扱い…「派遣社員」から見た非正規雇用の現実

派遣社員とは?労働者派遣法の改正を見よう

労働者派遣法の改正

戦後の働き方の一種として誕生した派遣社員は、その後色々な変遷を経て現在に至ります。派遣社員自身の保護や働き方の取り決めとしてある法律が、労働者派遣法です。
労働者派遣法が最初に制定されたのは1986年です。その後に色々な改正が世の中の動きに応じて変えられ、近年では2015年に改正が行われました。

派遣労働者の種類

派遣労働者として派遣される職種には一定の制限があります。
以前は労働者派遣法によって制定されていた職業となっていましたが、徐々に制限が撤廃され、2017年現在では港湾運送・建設・警備・医療以外の職種への派遣が認められています。
また、派遣会社には主にエンジニアなどのアウトソーシング事業などが多い、派遣元に常に雇用されている派遣社員を他社に派遣する特定労働者派遣事業と、派遣元に常時雇用されていない派遣社員を他社に派遣する一般労働者派遣事業があります。近年増えた登録制の派遣会社は、後者の一般労働者派遣事業に当たります。

派遣期限が改訂された

2015年の改正で特にクローズアップされたのが、派遣期限の制定です。
今までは、同一の職場への派遣は政令26業務(※)に携わる派遣社員の派遣期限は期限なし、自由業である一般派遣労働者に対しては「原則」3年という期限は設けられていました。
※ソフトウェア開発や機械設計、通訳や秘書などの26業務が政令で定める26業務となっている。(http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/12/dl/h1226-3c.pdf)

一般派遣労働者が同一の職場に長期派遣によって色々な問題が生じます。それを撤廃する為に、2015年の労働者派遣法の改正では、「原則1年、一定の手続きを踏んだうえで3年まで延長可能」と派遣期限が定められる様になりました。
なお、60歳以上は無期限などの例外はありますが、これにより派遣社員がより働きやすい環境整備になる事が求められています。

面接の禁止

労働者派遣法によって、派遣先の職場が事前面接などを行い、派遣される社員の選定を行う事は禁止されています。あくまで労働契約を結ぶのは派遣元企業と派遣社員だから、という理由からです。

労働者派遣法の改正と共に浮き彫りになった問題

一般的な職務も派遣の対象になった

労働者派遣法とは、元々専門的な能力を持ついわゆるスペシャリストの為の制度でした。例えば、エンジニアなどのアウトソーシング系の派遣会社に在籍している社員が、他の会社のIT業務の為に出向する、というのが本来の派遣の正しい働き方であるといえます。
ところが、事務や受付などの一般事務から飲食店などのサービス業まで、今では幅広い業種で派遣での働き方が認められています。それに加えて、登録型の一般労働者派遣事業が増えた事により、派遣社員が増加する事となりました。

今まで正社員として雇用されていた職種も派遣社員で賄われるようになり、派遣社員という立場で働く人が多くなりました。派遣社員は採用の時にも広告媒体などを打つ費用や手間もかからない、社会保険や年金の手続きも派遣元企業が行ってくれる、などのメリットがたくさんあります。何より、コストの面そして働き方の面でも一番派遣社員は企業側にとって「使いやすい」立場である事から、派遣社員を取り入れる企業が多くなりました。
派遣社員が増える事は、非正規雇用者が増える事になります。つまり、正規雇用者が減り、不安定な立場で働く人が多くなったのです。

正社員と同じ仕事を長い間任される事もある

2015年の派遣労働法改正前は、同一の職場で働く時には政令26業種は無制限ですがその他の業種は「原則3年間」の制限がありました。ところが、この原則が律義に守られる事は多くありませんでした。
派遣社員は、正社員と違って福利厚生の面でも派遣元企業が面倒を見てくれます。社会保険や年金、その他の手続についても派遣元が行います。ボーナスを支給する必要もなければ、有給休暇を派遣先企業が付帯する事もありません。(もちろん派遣社員にも有給休暇は付帯されますが、有給休暇時に支給されるお金は、派遣元企業が支払います)
正社員と比べても手間もコストもかからない派遣社員を、できるだけ長く雇いたいと派遣先企業は考えます。その為、原則3年と決められている同一の職場で「急な人員不足」などの理由をつけて派遣期限を延長する、もしくは3年後に隣の部署と派遣社員が契約を結び、また同じ仕事を続ける…といった方法で、どんどん派遣期限を延長されます。
長く仕事を続ければ続けるほど、派遣社員も正社員と同等の立場や仕事を任されるようになります。けれども、ボーナスや福利厚生は受けられず、同じ職場で働きながらも正社員と派遣社員で格差が広がっていく事となるのです。

使い捨ての働き方の横行

一番問題であるのが、「派遣社員はいつでも切れる」という、使い捨ての働き方が横行した事です。どれだけ長い期間同じ会社に派遣され続けても、例えば会社側の方針が「派遣社員の雇用を辞める」となった場合には、次の契約は更新されない事となります。同じ職場につくし、働いてきたとしても、契約を切られる時は一瞬なのです。

正社員の場合には、特定の理由がない場合には解雇の対象とする事はできません。けれども、派遣社員の場合には企業の都合によって契約を更新しないという事ができるのです。
乱暴な言い方をすると、派遣社員自体に何の落ち度もなかったのにも関わらず、企業の都合で契約を更新しない時には「派遣社員の態度が悪いので、契約を更新しない」という事もできるのです。

面接の禁止は言葉のみ

労働者派遣法では、派遣先企業が派遣社員の事前面接を行い、選定を行う事は禁止している事を定めていると前に触れました。けれども、実際には派遣労働の際にも事前面接は行われています。
もちろん、「面接」と呼ぶのは労働者派遣法で禁止されているので、多くの登録型派遣会社が派遣先企業と派遣社員の面接を行う際には「会社訪問」や「顔合わせ」といった言い方がされる事が多いです。「会社訪問」や「顔合わせ」といった言葉は、既に働く事が決まっているような言葉ですが、実際に行われているのは、面接である事がほとんどです。勿論、会社訪問や顔合わせという名目の面接ですので、不採用となる事もあります。
つまり、労働者派遣法では事前面接を禁止していますが、実際に派遣先企業に派遣される時には、派遣社員の選定である面接は行われているのです。

受けられるべき制度が受けられない

使い捨ての働き方ができるという事は、派遣先企業の都合に応じて契約の更新を打ち切る事ができる事です。これによって、派遣社員である事から本来受けられる制度が利用できなくなる事があります。

例えば、働く女性が妊娠・出産をする時には本人が希望すれば産前産後休暇を取得する事ができます。これは、正社員は勿論、本来は派遣社員でも取得できる制度です。産前産後休暇を取得する為には、産前は出産予定日を含む6週間、多胎妊娠の場合は8週間の休暇が取得できますので、それまでは仕事を続けなければいけません。多くの企業で、妊娠期間の32週目から36週目まで勤務を続けた後に取得するケースが多くなっています。
ところが、派遣社員の場合には産前産後休暇が取得できないケースがあるのです。実際に派遣社員として働いており、かつ産前産後休暇が取得できなかったAさんのケースは、妊娠が分かり安定期である12週ごろに派遣元と派遣先企業に妊娠を報告した所、次の契約を更新されなかったのです。
Aさんは勤務態度も至って普通で、何の落ち度もない派遣社員でした。けれども、妊娠した事を報告すると、派遣先企業からは「妊婦を雇っていて、仕事上で何かあっても責任取れない」と言われ、派遣元からは「派遣先から、勤務態度でクレームが出たので次の契約は更新しないと言われました」と言われました。そして、次の契約は更新されず、産前産後休暇を取得する事ができなかったのです。
派遣社員でも、妊娠や出産を理由として解雇や契約更新を行わない事は不当解雇となります。その為、「派遣社員の態度が悪い」とクレームを出されて契約を切られたのです。
産前産後休暇が取得できないと、本来なら支払われるはずの出産手当金などの支給も受けられません。
また、産前産後休暇と同じく、育児休暇も取得する事ができますが、育児休暇は原則「復帰前と復帰後に同じ職場で勤務する場合」に取得できます。派遣社員の場合には、産前産後休暇は取得できても、そのまま契約解除となる場合が多いので、同じ職場に復帰できる保証はありません。その為、育児休暇を取得できる確率も低くなっています。

子供がいても働き続けるのが難しい

派遣社員は、正社員と同じように働きながらも、妊娠すると産前産後休暇や育児休暇が取得できない事が多い事が分かりました。その為、派遣社員は妊娠するとそのまま退職せざるを得ない、という方が多くなっています。そして、妊娠や出産後にまた新しい仕事をしようと思っても、子供が小さい事からなかなか正社員での仕事は決まりにくく、派遣社員としても採用されない事が多くなっています。
妊娠や出産後にも戻る場所が保証されている正社員とは違って、派遣社員は復帰ができない為、子供を育てながら働く事がとても難しくなっています。

これは、一度正社員というレールから外れてしまうと、その後妊娠や出産を経る中で、働き続けるのが難しいと言う女性の働き方の問題も反映しています。

派遣社員でも輝いて働けるようにするためには?

紹介予定派遣の充実

派遣社員が派遣社員という立場のままで、同一の職場で働き続ける事には色々な弊害が出る事が分かりました。とはいえ、派遣社員を正社員として迎え入れる時には、企業側もその派遣会社を二度と利用できない、違約金を支払うなどのデメリットが大きすぎる為に、どうしても派遣社員をそのまま長く使わざるを得ないという悪循環となっています。

この問題解消に効果的なのが「紹介予定派遣」です。紹介予定派遣とは、派遣社員が派遣契約満了後には、その職場と直接雇用を結ぶ事が前提となっている働き方なのです。勿論、企業側にペナルティもありませんし、派遣社員も今度は直接契約として働けますので、「いつ契約が切られるか分からない」といったリスクも軽減できます。

ところが、紹介予定派遣は直接雇用とはいえ、必ずしも正社員としての採用ではない事も多い為、注意が必要です。場合によっては契約社員やパートとしての雇用の事もあります。その際には、派遣社員として働いていた時よりも賃金が下がってしまうなどのデメリットもあります。
また、紹介予定派遣自体がまだまだ一般派遣事業者の中では少なくなっています。紹介予定派遣での正社員雇用を増やす事が、派遣社員の増加を食い止める事にも繋がるのではないでしょうか。

罰則を厳しくする

労働者派遣法では禁止されている事前面接が、実際には行われている事や、妊娠や出産を理由にした解雇が禁止されているので、何の落ち度もない妊娠した派遣社員にクレームをつけて契約を更新しないなど、労働者派遣法の網目をくぐった不当な扱いを受けている派遣労働者も少なくありません。
これらを防ぐ為には、派遣先や派遣元企業にも罰則規定を設ける、さらに厳しくするなどの措置が必要と考えます。また、厳しい罰則は抑止力にもなりますので、不当な扱いを受ける派遣社員を減らす事にも役立ちます。

派遣社員が声を出して訴えられる場所を作る

不当な扱いを受けた派遣社員は、目に見えないだけで想像よりも多くいます。多くの派遣社員が不当な扱いを受けた経験や、社会的な格差の広がりを感じていても、訴えられる場所がないからです。
多くが匿名で、インターネット上の掲示板やブログ、SNSなどに書き込んでいます。けれども中には「正社員になれなかったから、派遣社員をやっているんだろう?派遣社員になった自分が悪い」という意見も残念ながらあります。
派遣という働き方を選ぶ理由は人それぞれあります。けれども、派遣という働き方に後ろめたさがあるから、なかなか不当な扱いを受けても声を出せない人がいる事も忘れてはいけません。

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