【新型コロナウイルス】2020年3月13日 特措法成立、対策本部設置で「緊急事態宣言」も可能に

新型コロナウイルスの日本国内の感染拡大への懸念から、「改正新型インフルエンザ等対策特別措置法」が国会で可決、成立しました。この特措法により可能になった「緊急事態宣言」によって、私たちの生活がどのように変わるのか解説します。


「改正新型インフルエンザ等対策特別措置法」とは

2020年3月13日に参議院本会議で可決、3月14日により施行される「改正新型インフルエンザ等対策特別措置法」は、一般的に「改正特措法」などと呼ばれています。

「改正特措法」は元々、2013年に施行された「新型インフルエンザ等対策特別措置法」を改正した法律です。

改正前の「新型インフルエンザ等対策特別措置法」では、新型インフルエンザや、全国的に、かつ急速にまん延するおそれのある「新感染症」に対する対策の強化を 図ることを目的に策定されました。

この特措法により、新型インフルエンザや、新感染症から、国民の生命・健康を保護し、国民生活や国民経済への影響が最小となるようなあらゆる対策を取ることが法的にも可能になりました。

「特措法」で可能になった具体的な対策

まずは2013年に施行された特措法について、感染症蔓延防止のために可能になった対応に部分を紹介します。

1)国民の権利に制限をかけることができる

国や地方公共団体、指定した公共機関が「行動計画」を作成すること、そして必要最小限であれば国民の権利に制限をかけること、国や都道府県に対策本部を設置すること、また緊急事態には市町村にも対策本部を設置することです。

2)対策の要となる医療従事者への支援を優先することができる

さらに医療従事者など特定の事業者について厚生労働大臣の判断で予防接種を優先的に行うこと、海外からの感染症の侵入を防ぐ水際対策を的確に実施できること、なども含まれます。

3)新型コロナウイルスはまだ有効なワクチンがない状況で打つ手が制限されている

ただし、予防接種についてはワクチンが開発されている場合には有効ですが、新型コロナウイルスにはまだ予防接種は開発されていない状況です。

そして、さらに事態が深刻化した場合、「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」を発令できるとされています。

「特措法」に規定されている「緊急事態宣言」について

特措法に規定されている「緊急事態宣言」とは、国民の生命・健康に著しく、十代な被害を与える新型インフルエンザなどの感染症が国内で発生し、「全国的」かつ「急速なまん延」によって、国民の生活や国民の経済に甚大な影響を及ぼすおそれがあると認められるときに発令される宣言です。

「緊急事態宣言」の発令には前段階の手続きとして国の「政府対策本部」の設置が必要なようです。


具体的に「緊急事態宣言」では、次の9つの対応が法的に可能とされています。

「緊急事態宣言」で可能となる法的対応

1)外出自粛要請、興行場、催物等の制限等の要請・指示(潜伏期間、治癒するまでの期間等を考慮)
2)住民に対する予防接種の実施(国による必要な財政負担)
3)医療提供体制の確保(臨時の医療施設等)
4)緊急物資の運送の要請・指示
5)政令で定める特定物資の売渡しの要請・収用
6)埋葬・火葬の特例
7)生活関連物資等の価格の安定(国民生活安定緊急措置法等の的確な運用)
8)行政上の申請期限の延長等
9)政府関係金融機関等による融資
など

上記のように「緊急事態宣言」には、本来自由な国民の行動について、国が外出自粛をお願いしたり、遊園地や映画館、コンサートホールなど人が集まる娯楽施設の営業短縮や閉館をお願いしたり、イベントの中止や延期をお願いしたりするなど、ある程度の生活の制限を国が国民に「要請」することを法的に認める力があります。

「要請」ということで、罰則などは規定されていませんが、国が国民の自由を制限するようはたらきかけるということは、民主主義国家にとってはとても重いことだと言えます。

「緊急事態宣言」には、国民行動制限の他にも、予防接種など医療体制を確保するよう特別予算を組んで財政負担ができることや、緊急物資の運送を民間に指示できること、特定の物質を民間の一部によって買い占められることを防ぎ、国に売り渡すように要請することなどで、国の権限を拡大して国民の生活をある程度公平に守ることができるような項目が用意されています。

また、感染症による死者が増加した際、通常の手続きでは追いつかないことが考えられ、その場合の埋葬や火葬の特例を定める項目もあります。

そして生活物資の価格を安定させたり、行政上の各種手続きや申請期限の延長を認めることや、政府関係金融機関などによる融資の措置を取ることができるなど、国民の生活を守る対応についても明記されています。

新型コロナ対策によって可決された「改正特措法」で何が改正されたのか

2020年3月14日に改正、可決された「改正特措法」では、それまで特措法に記載されていなかった「新型コロナウイルス感染症」についても暫定的に追記されました。

「暫定的」とされたのは、どのくらい拡大するかわからない未知のウイルスなので一時的な措置が必要とされ、改正の時点では今後2年間のみ「新型コロナウイルス感染症」についても特措法が適用できると定められました。

また、「新型インフルエンザ」など従来、特措法に規定されていた感染症と同様に、「新型コロナウイルス」でも国民生活や経済に甚大な影響を及ぼす可能性があると判断されれば「緊急事態宣言」が発令できることも定められています。

「緊急事態宣言」が発令されれば、全国の都道府県知事は外出自粛を要請することができます。

国の「緊急事態宣言」の発令前に取られた措置もある

「新型コロナウイルス感染症」について、2020年3月27日の時点では「緊急事態宣言」は発令されていませんが、それに先駆けて行われている感染症対策の措置が取られています。

例えば、全国的な学校の「休校措置」、都道府県ごとの「外出自粛要請」、感染予防用にマスクを「特定物資」として国に売り渡すよう事業者に要請し、必要な医療機関等へ国が配布する措置、電気・ガス・水道などの公共料金の支払い期限を延長するように事業者に要請するなどの措置がその一例です。

また、北海道は2020年2月28日から3月19日まで独自の判断で「緊急事態宣言」と「外出自粛要請」を道民に向けて発令していましたが、この「北海道の緊急事態宣言」には法的根拠がなく、「改正特措法」に規定されている国の「緊急事態宣言」とは別のものだと捉えるのが妥当と言えるでしょう。

ただ、北海道の「外出自粛要請」は法的根拠が無いものの多くの道民に支持され、国の専門家会議でも感染拡大防止について一定の効果があったと評価されています。国の判断を待たずとも、地方自治体のリーダーによる適切な呼びかけが一定の効果をもたらした例の一つです。


「緊急事態宣言」について懸念する専門家もいます

「緊急事態宣言」について、政府や都道府県知事が国民の権利を制限するという、大きな権力を持つことを認めることになるという点で、その影響を懸念する専門家もいるようです。

非常事態だからといって、政治や行政の権限をむやみに大きくしてしまうことは、国民の私権を脅かす可能性があり、ひとたび濫用されると最悪は独裁国家のような状態を許すことにつながる恐れもあるためです。

その事態を避けるために「新型コロナウイルス」について特措法が適用されるのは2年間のみという期間限定の規定がされています。

しかし、感染症の拡大の状況によっては延長されることも大いにあり得るため、一度認められた政府の大きな権力がむやみに濫用されないよう、国民は意識し、監視している必要があるでしょう。

いち早く「非常事態宣言」を出したアメリカについて

「新型コロナウイルス」については世界的に流行が広がっており、各国が対策を強化しているところです。

アメリカでは日本より後に最初の感染者が確認されたものの、その後急激に感染が広がっており、2020年3月13日に「非常事態宣言」が発令されました。

アメリカの新型コロナウイルス対策と状況についてはこちらもあわせてご覧ください。

新型コロナウイルス感染拡大で「非常事態宣言」をしたアメリカの行末

「新型コロナウイルス」の感染拡大をうけ、アメリカのトランプ大統領が、「国家非常事態宣言」を発表しました。

この記事では、「国家非常事態宣言」とはなにか、そしてこの宣言によって、アメリカ国民の生活はどう変化するのか、解説していきます。

まとめ

このページでは、「新型コロナウイルス感染症」の感染拡大をうけて、改正された「改正新型インフルエンザ等対策特別措置法」と、それに規定されている「緊急事態宣言」についてご紹介しました。

「改正特措法」が可決した当初は、発令するかは当時の状況では未定であり、「新型コロナ」についても「緊急事態宣言」が出せるよう念のため準備しておく、というニュアンスだった政府ですが、2020年3月26日にはついに「全国的な蔓延の恐れが高い」として、「政府対策本部」が設置され、全国的な「緊急事態宣言」の発令も現実味を帯びてきたと言えます。

国の「緊急事態宣言」が発令されれば、これまでのように学校の休校や、百貨店や映画館など多くの人が集まる施設について使用制限などの要請や指示を行えることに加えて、医療体制の確保・強化のために必要がある場合は、臨時の医療施設を整備するために、土地や建物を国の権限で「所有者の同意を得ずに使用できる」とか「医薬品を国に収用する」ということまで可能になるようです。

日本の民主主義国家としての歴史上、ここまで政府が権限を持つことは例がなく、まさに非常時の対応と言える「緊急事態宣言」ですが、このまま「新型コロナウイルス感染症」が収束に向かい、発令されないに越したことはありません。

今後「新型コロナウイルス感染症」の対策のために決められた「改正特措法」や「緊急事態宣言」によって私たちの生活がどのように変化するのか、注視していくことが、日本国民の一員としては大切になりそうです。

ですが、その前にまず感染を拡大させないようひとりひとりができることをして緊急事態に持ち込まないような努力を続けることも同じく大切だとも言えるでしょう。

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本記事は、2020年4月3日時点調査または公開された情報です。
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