新型コロナウイルス感染拡大で「非常事態宣言」をしたアメリカの行末

「新型コロナウイルス」の感染拡大をうけ、アメリカのトランプ大統領が、「国家非常事態宣言」を発表しました。

この記事では、「国家非常事態宣言」とはなにか、そしてこの宣言によって、アメリカ国民の生活はどう変化するのか、解説していきます。

はじめに

2020年3月13日、アメリカのトランプ大統領は緊急記者会見を開き、新型コロナウイルスに対する「国家非常事態宣言」を発表しました。アメリカでは2月下旬からカリフォルニア州をはじめとする各州が「非常事態宣言」を発表していましたが、いよいよアメリカ国家全体として「非常事態宣言」をする事態になりました。

みなさんはこの「非常事態宣言」についてどれくらいご存知でしょうか?

トランプ大統領が発表した「国家非常事態宣言」はアメリカにとってどのような影響があり、日本を含む世界各国にどんな影響が及ぶ可能性があるのでしょうか。

今回は新型コロナウイルス感染拡大を受けて発表されたアメリカの「国家非常事態宣言」について、アメリカ在住の筆者が現地の反応も含めて解説します。

アメリカの「国家非常事態宣言」について解説します。

アメリカの「国家非常事態宣言」は「武力攻撃、内乱、暴動、テロ、大規模災害、疫病などが対象で、警察や軍隊など公務員の動員、公共財の徴発、法律に優位する政令の発布、令状によらない逮捕・家宅捜索などを許し、報道や集会の自由など自由権の制限を可能にする」という定義があります。

また、「非常事態宣言」にはカテゴリーがあり「軍・国際経済制裁・公衆衛生・貿易・武力・経済・法」などに分類されています。これらのカテゴリー内で非常時を迎えた場合に大統領が自ら署名および宣言をします。「非常事態宣言」は必ずしもアメリカ全土が対象になるわけではなく、特定の州にのみ適応される場合もあります。(地域内非常事態宣言)

「非常事態宣言」は特定の国や団体、個人を対象にした経済制裁や、反対が多い政策を押し切るために使われることもあります。例えば、2018年11月にはトランプ大統領が中米ニカラグアでの混乱に対して「非常事態宣言」をして、敵対する人物の資産を凍結しました。

また、同じくトランプ大統領が2019年2月にメキシコとの国境に壁を建設するために「非常事態宣言」をし、議会を介さずにおおよそ8,800億ドルの予算を取り付ける強引な手法を取りました。(世論調査では61%がこれを不支持)

そして、2020年3月には新型コロナウイルス感染拡大を受けて「国家非常事態宣言」をしました。このようにアメリカの「非常事態宣言」は「非常時」と「政治的利用」のふたつの側面があることを知っておくと良いでしょう。

「国家非常事態宣言」の効力

アメリカにおける「国家非常事態宣言」は、ごく簡単に言うと「国家非常事態宣言」を発令することで様々な法的効力が増し、国や州が強制力を持って事態の収集に挑めるようになるということです。

「国家非常事態宣言」という言葉だけで判断すると、国が異常なパニック事態に陥っていて緊迫した状態をイメージしがちですが、実際には「法律の効力を強める理由」と捉えて良いでしょう。

とくにアメリカでは自由を主張する文化や訴訟が日常的なため、非常事態で統制を図るにはある程度の強制力が必要になります。「国家非常事態宣言」は、国や州政府が強制的に物事を運ぶための大義名分と言えるかもしれません。

事実、2011年の「国家非常事態宣言」ではオバマ大統領が大型ハリケーン「アイリーン」による被害を防ぐために、ニューヨーク州の公共交通機関を強制的に全面停止しました。このように、政府が平常時にはない権限や効力を持てるようになるのが「非常事態宣言」なのです。

「非常事態宣言」は大統領の特権

アメリカの「非常事態宣言」は大統領特権のひとつで、議会の承認を得ずに実行できる行政手続きです。アメリカの「非常事態宣言」は、その時の大統領ひとりの権限で決められるということです。この背景には緊急事態に「速やかな対応」が出来るようにする意味もあります。

アメリカとは対照的に、日本の緊急事態宣言は法案の提出、審議、成立、宣言という行程を踏まねばならず、スピードが大きく異なります。ちなみに、日本では新型コロナウイルス感染拡大を受けて、2020年3月13日に政府が緊急事態宣言を可能にする法案が成立しました。多くの人がアメリカの対応とスピードの違いを痛感したことでしょう。

これまでのアメリカの「非常事態宣言」

ここでは主にどのような時に「非常事態宣言」が出されたのか参考程度にご紹介します。

過去に出された「非常事態宣言」

・2001年09月14日:同時多発テロ
・2009年10月24日:新型インフルエンザ(H1N1亜型)感染拡大
・2016年10月06日:大型ハリケーン「マシュー」
・2019年02月15日:アメリカとメキシコとの国境問題
・2020年03月13日:新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大

アメリカではNational Emergencies Act(国家非常事態法)が成立した1976年から現在までに様々なカテゴリーで60の「非常事態宣言」が発表されています。さらに、2020年3月時点で34の「非常事態宣言」が継続しています。

「非常事態宣言」には先述した「非常時」と「政治的利用」のふたつの側面がある訳ですが、日本でも知られているのは「非常時」のものがほとんどでしょう。ちなみに、新型コロナウイルスは「非常時」に該当します。

「政治的利用」にはベネズエラ政府高官の入国拒否、サイバーテロに関与している人物の財産差し押さえ、ロヒンギャ紛争で人権侵害に関与したヤンゴン市の市長マウン・ソーの財産差し押さえなどが該当します。同じ「非常事態宣言」でも政治的な圧力や制裁に使われることもあるのです。

新型コロナウイルスの「国家非常事態宣言」でアメリカはどうなるの?

アメリカの「国家非常事態宣言」の仕組みが理解できたところで、新型コロナウイルス問題を受けて発表された「国家非常事態宣言」は、具体的にアメリカ国民にどのような影響を与えるのかを見てみましょう。

公共機関や教育機関の封鎖

日常生活で最も大きな影響を受ける可能性があるのが公共機関や教育機関の封鎖です。突如、アメリカ全土で全面的に閉鎖されるようなことはありませんが、感染者数が多いエリアでは外出禁止や移動制限などが法的な拘束力を持って実施される可能性があります。

また、スポーツやエンターテイメントなど多くの人が集まるイベントも必要に応じて強制的に中止される可能性があります。主催者の判断ではないところがポイントです。

医療機関の支援強化

医療機関は政府の財政支援を受けやすくなります。新型コロナウイルス感染拡大で最も人手を必要とするのが医療機関です。医療機関では人だけでなく、医師や看護師を感染から守るための自衛手段を用意せねばならず、これらの財政支援を受けることになります。

その他に、医療機関の施設外での活動、臨時施設の設置、ベッド数の上限撤廃、遠隔診療の実施、無保険でも検査が受けられる仕組みなどが医療機関の判断で実施できるようになります。「非常事態宣言」がされたことでこれらに関連する速やかな財政支援が実施されることでしょう。

経済支援

トランプ大統領は「非常事態宣言」をした記者会見で「戦略石油備蓄のための原油を大量購入する」ことを明言しました。さらに、500億ドル(約5兆4,000億円)の連邦資金投入を決めています。これにより失業者支援、融資、企業の損失補填などが実施される予定です。

アメリカの中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)は、短期金融市場に1兆5,000億ドル(約150兆円)の資金供給、さらに毎月600億ドル(約6兆円)を超える国債の買い入れをして市場を安定させるとしています。これらの効果は不透明ながら「非常事態宣言」をしたことで、速やかに実施されます。

医療品や食材などの収容および保管

「非常事態宣言」が発表されたことで、医療品や食料などの生活必需品を保管または売り渡すことが強制力を持って実行可能になります。これにより販売業者や製造業者は政府の指令に従って製造または販売することを強いられます。(指令が発動した場合のみ)

輸出入の制限

新型コロナウイルス感染を防ぐために一時的な輸出入の制限がかかる可能性もあります。対象となる物品はこれから判断されますが、生鮮食品、肉類、野菜などは規制の対象になりやすいでしょう。

出入国の制限

アメリカはすでに欧州からの渡航を30日間禁止していますが、「国家非常事態宣言」を受けてこれまで以上に厳しい条件になる可能性があります。日本が対象になることもあり、仮にそうなると日本の航空会社や旅行会社をはじめとする、日系企業は大きな影響を受けることになります。

上記でご紹介したものはあくまでも一例です。また、「国家非常事態宣言」の有効期限である180日間を迎えた時点で事態がどれほど終息しているかによってはさらに延長される可能性もあります。(「国家非常事態宣言」は延長可能)

アメリカの「国家非常事態宣言」は日本にどんな影響がある?

アメリカの「国家非常事態宣言」を受けて日本にはどのような影響があるのでしょうか?

最も懸念されることは「経済への影響」でしょう。輸出入の制限や渡航禁止措置が起こりやすい状態になるため、もしこれらが起きたらアメリカに関連する企業は大打撃です。当然ながらアメリカの追加予算500億ドルはアメリカ企業のために使われますので、日本企業は日本政府を頼るしかありません。

日本にとって大きな問題になるのが「オリンピック」です。トランプ大統領は「国家非常事態宣言」に先だって東京オリンピック1年延期案を口にしています。そして「国家非常事態宣言」をしたことで、より一層開催に慎重になる可能性もあるため、日本は2020年に東京オリンピックを開催できないことも現実的な影響として考えられます。

実際のアメリカの様子は?

アメリカでは「国家非常事態宣言」を受けて心理的な動揺が広がっており、あらゆる面で保守的な動きが見られます。例えば、食材や生活必需品などの買い占めがすでに始まっており、「国家非常事態宣言」後(3月13日以降)はこの傾向がより顕著になって、スーパーマーケットは混雑しています。冷凍食品や缶詰などの保存食は棚から消えてしまいました。トイレットペーパーや消毒液、石鹸、薬も同様です。

さらに、あらゆるイベントが中止または延期を発表しています。ゴルフ、野球、アメリカンフットボール、バスケットボールなどプロスポーツも学生スポーツも一斉に中止を決めています。ニュースではどのチャンネルもコロナウイルスの件を伝えており、握手やハグを控える場面も目立ちます。このように「国家非常事態宣言」を起点にしてアメリカ国民の危機感や雰囲気は大きく変わったと言えるでしょう。

まとめ

アメリカの「国家非常事態宣言」は「非常時」と「政治的利用」のふたつの側面があり、新型コロナウイルスに対して出された「国家非常事態宣言」は正に非常時のものです。今後、感染拡大がどのようになっていくかにもよりますが、「国家非常事態宣言」を受けてアメリカ国内は緊張状態にあります。政府の対応、感染の状況、そして経済の状況を注視したいところです。

「新型コロナウイルス感染症(covid-19)」に関する記事一覧はこちら

本記事は、2020年3月16日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

気に入ったら是非フォローお願いします!
NO IMAGE

第一回 公務員川柳 2019

公務員総研が主催の、日本で働く「公務員」をテーマにした「川柳」を募集し、世に発信する企画です。

CTR IMG