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新型コロナウイルスはアメリカの生活にどんな影響を与えているか(2020年3月)

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はじめに

世界中で大流行している新型コロナウイルス(COVID-19)はWHOによってパンデミック(感染症が世界中で大流行すること)として認められました。これに合わせるようにしてアメリカでは30日間のヨーロッパ渡航禁止措置を取るなど、アメリカも対策に追われています。

日本やアメリカの政府レベルでの話はメディアの報道を通して聞こえてくると思いますが、実際にアメリカで生活をしている人にはどのような影響が及び始めているかご存知でしょうか? 今回はアメリカのアリゾナ州で生活している筆者による「実生活への影響」をレポートしたいと思います。

新型コロナウイルスに対するアリゾナ州の反応

2020年3月11日、アリゾナ州のDoug Ducey(ダグ・デューシー)知事は「Public health emergency(非常事態宣言)」を発表しました。発表した時点でアリゾナ州での新型コロナウイルス感染症は2名とされていますが、隣接するカリフォルニア州やユタ州などが早い時点で非常事態宣言をしていたことを受けてそれに続く形になりました。

Doug Ducey知事によるとアリゾナ州の非常事態宣言は、医療施設、老人ホーム、介護施設を中心に感染から防ぐための措置としています。アリゾナ州で生活している人たちの反応や関心は薄いものの、教育機関や公共施設は非常事態宣言を重く受け止めています。

実際に、アリゾナ大学やアリゾナ州立大学などはすべての授業を4月6日までオンライン授業に切り替える措置を取りました。アリゾナ州の教育機関のほとんどは3月9日から3月15日までが春休みのため、春休み明けから多くの教育機関がオンライン授業になる予定です。また、アリゾナ大学では3日間春休みを延長する措置も取っています。

他にも、アリゾナ州で開催が予定されていたイベントのキャンセルが相次いでいます。アリゾナ大学のキャンパス内の広場で毎年開催されている「Tucson Festival Of Book」が1週間前にキャンセルになりました。アリゾナ州の書籍店100社以上が集まる名物イベントだっただけに、損失は大きいとされています。

2020年11月に実施される大統領選挙に関しても影響が出ています。アリゾナ州で開催予定だった民主党の討論大会が感染拡大を防ぐためにワシントンD.C.のCNNのスタジオ内で開催されることになりました。多くの有権者が参加予定だった注目イベントだけに選挙結果にも影響しそうです。

3月17日はカトリックの祭日である「St. Patrick’s Day」ですが、これに合わせてアリゾナ州各地でパレードやイベントが予定されています。しかし、大規模なパレードを伴うため中止になる可能性もあり、各地で開催の是非が分からない状態が続いています。

公共施設でも対応に追われています。とくに問題視されているのがホームレスの人たちが集まるシェルターと呼ばれる施設で、人道上閉鎖する訳にもいかず、職員の安全も確保しなければいけないため問題になっています。非常事態宣言を受けてこれらの施設は優先的に人員確保、消毒、検査などの様々な支援が行われることになっていますが、これらが行き渡るまでに時間を要するため現場では混乱が続いています。

このようにアリゾナ州では非常事態宣言を受けてから一気に影響が広がりました。とくに教育機関、公共施設、大型イベントなど人が集まりやすい場所から影響が広がり、混乱が生じているようです。

新型コロナウイルスがアメリカの生活に与えている主な影響

多くのアメリカ人にとって最も大きな影響と言えるのは生活必需品が手に入らなくなるということでしょう。実はアメリカでも日本と同様にトイレットペーパーやマスク、消毒液などが品薄状態になっており、必要な人に行き渡らない事態になっています。


ここでは新型コロナウイルス感染拡大を受けて、アメリカ全土でどのような影響が出始めているかを項目別にご紹介します。

生活必需品

アメリカでは新型コロナウイルス感染が確認されてから比較的早い段階(2020年3月上旬)からトイレットペーパー、ペーパータオル、除菌グッズ(ハンドサニタイザーなど)、石鹸、マスク、使い捨てグローブ、消毒液、風邪薬、ビタミン剤などが売り切れています。

常に大量の在庫があることで知られているCostco(コストコ)でもこれらの商品だけは売り切れており、そこで働くスタッフも「こんなこと初めてだ」と言うほどの状況です。各州の非常事態宣言や、WHOによるパンデミック認定よりも以前からこれらの生活必需品は品薄状態になっていたため、アメリカ人も日本人と同じで備えや行動は早いと言えます。

ちなみに、スーパーマーケットのような対面販売を避けた人や、多忙な人たちがAmazon.comなどのネット通販を利用するため、これらの商品はインターネットでも品薄状態が続いています。アメリカで広く知られたブランドから売り切れており、現在は中国語表記の中国製の商品が流通しています。日本のように高値で転売する行為などはないようです。

飲食業

アメリカでは飲食業にも新型コロナウイルスの影響が及んでいます。筆者の個人的な経験や肌で感じた印象の話になりますが、どのレストランもいつも空いています。

本来であれば賑わうディナータイム(午後6時から午後8時)でも空席が目立ち、お客さんの大半は「お持ち帰り」を選択しています。店員さんに尋ねると、同一空間に長く滞在することで感染リスクが高まるという懸念から普段よりもお持ち帰りを選択する人が増えているそうです。暇なのでアルバイトの数も普段より少ないとのことでした。

また、アメリカのどこにでもあるスターバックスでも、普段であれば勉強をする学生やインターネットをする人などが溢れていますが、この時期は空席が目立ちます。対照的に「ドライブスルー」には行列が出来ているので感染を警戒している人が多いようです。

飲食業のなかで最も影響が大きいのが中国や韓国、日本などのアジア系レストランです。実際にアメリカの一部ではアジア人差別が起きており、それに付随してレストランの利用も敬遠される事態になっています。

これを受けてアジア系アメリカ人による組織団体であるNCAPA(National Council of Asian Pacific Americans)は、差別による人権侵害や経済への影響を是正する具体的な行動を取るように州政府や連邦政府にウェブサイトを通じて訴えています。

観光

観光産業も大きな影響を受けています。アリゾナ州はグランキャニオンやセドナなど世界的に知られている観光地が多く、温暖な気候なため冬から春にかけて観光産業が盛り上がる季節です。

しかし、収益の大半を生み出すとされる中国人の団体観光客や富裕層などが一斉にキャンセルをしているため、観光地は深刻な経済打撃を受けています。また、観光客の50%近くがアジア系というネイティブアメリカンが運営するアンテロープキャニオンなどの観光地も客足が鈍り、観光以外に職がないネイティブアメリカンにも大きな影響を与えています。

アリゾナ州にあるモーテル経営者の話によると、アリゾナ大学の敷地内で開催される予定だった「Tucson Festival Of Book」のキャンセルによって$4,000(約44万円)の損失があったとのことです。観光やイベントの際に利用するホテル業界も大きな影響を受けています。あくまでもアリゾナ州の一例であり、全米でこのような事態が発生しているのです。

航空産業

新型コロナウイルスはアメリカの航空産業に影響を与え続けています。アメリカの航空会社最大手のデルタ航空は2020年2月6日から中国の北京や上海便を4月30日まで全便運休、日本便も大幅に減便しています。2020年3月12日時点で、太平洋路線65%減、大西洋路線15-20%減、アメリカ国内線10-15%減の対応を発表しており、輸送能力は通常時の半分です。

同様に国際線を多く運用しているユナイテッド航空も減便または運行停止をしており、ロサンゼルス/成田便、ヒューストン/成田便は4月24日まで運行停止になっています。アメリカの国内線に強いサウスウェスト航空は減便などの措置は取らないものの、深刻な事態を受けてCEOが自らの報酬を10%カットすることを発表しました。アメリカは飛行機を使った国内移動が多いだけに感染拡大が懸念されており、航空会社存続の危険性も指摘されています。

3月11日に発表された「欧米間30日渡航禁止措置」によって、さらに減便や運行停止に弾みがつくことが予想されており、アメリカの航空産業への打撃は深刻です。


スポーツ

アメリカ人の娯楽であるスポーツにも影響が広がっています。NBA(アメリカプロバスケットボール)はユタ州を拠点にしているチームの選手が感染したことを受けて4月中旬まで開催される予定だったレギュラーシーズンの全試合を中断することを決めました。

また、大学のバスケットボールリーグNCAAも男女ともにすべての試合を無観客試合で開催することにしています。アメリカではプロスポーツ、大学スポーツともに経済効果が大きいだけに経済損失は免れません。

この他にも、アメリカのプロサッカーリーグMLSではシアトル・サウンダーズがFCダラスとの試合を延期しました。メジャーリーグでは大谷翔平選手が所属するロサンゼルス・エンゼルスが日本からのトレーナーのインターン受け入れを取りやめています。NBA、MLB、NHLなどはファンとのハイタッチ禁止やファンイベントの自粛などを公表しており、スポーツ観戦好きのアメリカ人にとっては辛い状況でしょう。

音楽イベント・フェス

アメリカ人の若者にとって残念な結果になったのが音楽イベントやフェスの相次ぐ中止、延期発表です。3月13日から22日までテキサス州のオースティンで開催予定だった「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」は開催1週間前になってキャンセルされました。

SXSWは音楽、映画、テクノロジーの総合祭典で、アメリカを代表するFacebook、Amazon、AppleなどのIT企業も参加予定でしたが、感染拡大を受けて参加を見合わせました。海外展開を狙う日本のスタートアップ企業にとって、大きな機会損失になったことでしょう。開催地のオースティン市はSXSWのキャンセルによって3.8億ドル(約400億円)規模の経済損失が起きるとしています。

この他にも、3月20日から3日間フロリダ州のマイアミで開催予定だった「Ultra Music Festival」が同州の非常事態宣言を受けてキャンセルされました。(来年の同時期に延期としている)また、アメリカ最大規模で日本からも参加者が多い、カリフォルニア州のインディオで開催される「Coachella(コーチェラ)」が10月に延期され、開催自体が危ぶまれています。25万人が集まるイベントだけに地元経済への影響も大きいでしょう。

エンターテイメント

エンターテイメント業界では、カリフォルニア州に拠点を置くソニー・ピクチャーズの「ピーターラビット2」が上映延期になりました。2018年に世界中で大ヒットした作品の続編だけにファンの落胆は大きいでしょう。(前作では収益の7割はアメリカが占めている)

ニューヨークのブロードウェイ劇場では名物プロデューサーのスコット・ルーディンによる作品のチケット代が$50に値下げされました。通常時であれば$200は下らないチケットですが、客足が伸び悩んでいることを受けて苦肉の策です。しかしながら、ブロードウェイ劇場の観客の大半は旅行客のため、多くの作品で観客の数が減っている状態です。

その他

アメリカの一部の地域では新型コロナウイルス感染拡大の影響で「銃弾」の売上が伸びています。NRA(全米ライフル協会)は広報誌に「2020年2月の売上が記録的だった」と掲載しました。事実、ミシガン州からの注文は前月比で566%増、フロリダ州で383%増、ケンタッキー州で304%増、そしてニュージャージー州で241%増だったとしています。

この背景には生活必需品の買い占めによる略奪や暴動が起こることに対する備えがあるとしています。銃弾の売上が大幅に伸びた州はいずれも非常事態宣言を出している州であることから、アメリカ人の防御反応の行動結果と言えます。

一方で、アメリカ国内で歓迎されている影響と言えるのが「ガソリン代の低下」です。中国経済の減速による石油需要減少や、サウジアラビアによる石油増産発表など複合的な要因でアメリカ国内のガソリン代が安くなりました。

直近では、全州の平均が1ガロン$2.32で前月比で10セントほど安くなっています。州やお店によって異なりますが、1ガロンあたり最大30セントほど安くなっているケースもあり、乗用車であれば満タンにして$3ドルほど安くなる計算です。

まとめ

ご紹介したようにアメリカでは新型コロナウイルスによる影響が急速に進んでいます。日常生活で影響を実感する場面が多いため、アメリカ人の精神的な焦りや疲弊も早いスピードで広がっているように思います。

新型コロナウイルスは感染拡大による健康被害だけでなく、経済問題、外交問題、そして11月に控えている大統領選にも影響を及ぼしそうです。とくに、アメリカ経済への影響は一時的なものではないので日本からも注視すべきでしょう。

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本記事は、2020年3月16日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

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この記事を書いた人

公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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