アメリカ大統領選、民主党副大統領候補に名を連ねる女性たち

アメリカでは、2020年11月に大統領選挙が行われ、次のアメリカのリーダーを決める時期が近づいてきています。

今回は、アメリカ大統領選に関連して話題となっている「民主党副大統領候補」について、アメリカ在住の日本人にレポートいただきました。公務員の方も、公務員志望の方も、是非ご参考ください。

はじめに - 「副大統領は女性」の可能性

2020年11月3日はアメリカの大統領選です。

これに伴い、アメリカ国内でも大統領選に関連する話題が増えてきました。なかでも大きな話題になっているのが「民主党副大統領候補」です。

民主党の大統領候補であるジョー・バイデン氏は「副大統領は女性を選ぶ」と公言していることから、誰が副大統領候補になるのか連日のように報道されています。

仮に当選すれば、副大統領が女性になることはアメリカ史にとって大きな一歩になり、これまで以上に開かれた政治を世界にアピールすることが可能になります。

そこで今回は、アメリカ大統領選で民主党副大統領候補はどんな人がいるのか?副大統領を選ぶ流れ、民主党の選挙政策など、大統領選に向けて知っておきたい知識も含めて解説します。

公務員や公務員志望の方はアメリカの政治情勢を知るための参考にして下さい。

アメリカ大統領選の流れと副大統領選出まで

はじめに、アメリカの大統領選がどのような流れで開催されて、どの時点で副大統領候補が選出されるのかを見てみましょう。

アメリカ大統領選の大まかな流れ

大統領選は以下のような流れを辿って実施されます。

・予備選挙(2月から6月)
・民主党全国党大会(8月17-20日)
・共和党全国党大会(8月24-27日)
・本選挙(11月3日)
*すべてアメリカ時間

アメリカ副大統領選出は党大会

2020年の大統領選では共和党のトランプ大統領が続投を表明しているので、共和党は「現状維持」ということになります。つまり、共和党の大統領候補はトランプ氏、副大統領候補はマイク・ペンス氏です。

一方で、共和党のライバルとなる民主党は、予備選挙の結果、ジョー・バイデン氏が大統領候補に選ばれましたが、副大統領候補はまだ決まっていません。

民主党副大統領候補が正式決定するのは、8月17日から4日間の日程で開催される「民主党全国党大会」です。慣例では党大会最終日に副大統領候補が発表されます。

それまでに、全国から有望な人材の選出や、大統領候補(バイデン氏)との面接などが実施され、数名に絞り込まれていきます。

ちなみに、アメリカは日本のように複数の政党が存在する訳ではないので、実質的に「共和党か民主党か」の二択です。

アメリカ副大統領候補はこうやって選ばれる

副大統領候補の選定は、大統領候補が指名した組織の「副大統領候補選定委員会」によっておこなわれます。

バイデン氏は、元民主党上院議員や元ロサンゼルス市長など民主党の重鎮4名を指名したとみられています。選定委員会は、おおよそ130項目に及ぶ調査内容を精査したうえで、バイデン氏に最終候補者数名を提示します。

調査項目は公表されていませんが、先4年間にわたって大統領の腹心となるにふさわしい人材であることや、控えめで目立たないこと、そして何よりも大統領候補との相性が良いかなどが重視されると言われています。(政策だけでなく思想や性格も)

アメリカ副大統領選びに見る民主党の計画

民主党は副大統領候補を選ぶのにあたり、長期的な計画に基づく人材選びをすると見られています。

アメリカ副大統領に求められる素質とは?

2020年の大統領選に向けて、民主党陣営は以下のような素質を持った人材を選ぶ可能性があるとされています。

・若く、活発で精力的
・失言や政治スキャンダルに無縁
・リベラルな思想の持ち主
・白人種以外
・人種差別問題に取り組んできた実績
・バイデン氏が引退後も意志を継いで活躍できる

バイデン氏よりも重要な副大統領候補選び

民主党大統領候補のバイデン氏の最大の懸念点は「77歳」という高齢にあります。(大統領就任時には78歳)仮に、大統領職を1期のみに限ったとしても、次の大統領選の時には82歳です。

そのため、民主党としては高齢のバイデン氏に活躍してもらうよりは「4年間の繋ぎ役」として任務に就いてもらうことを考えている可能性があります。

さらには、バイデン氏に対する根強いアルツハイマー病の疑い、失言癖、時折見せる人種差別主義者の一面などの政治的なトラブルリスクも懸念材料と言えます。

つまり、民主党は高齢でなおかつ政治的なトラブルリスクを含んだバイデン氏よりも「次世代の大統領候補」を作り出したい思惑があるのです。

そのためには、副大統領候補となる人物が、そのまま次世代大統領になることを見越した計画が必要になります。

この結果「非白人種、女性、若くて活発」といった素質を持った人材を選ぶ必然性が出てくる訳です。ただし、この点はバイデン氏も重々承知しており「副大統領候補とする人は自身の後を引き継ぎ、大統領になる準備ができている人を選びたい」とコメントしています。

民主党としてはバイデン氏に対する期待よりも、未来の大統領候補になる「副大統領」を選ぶことの方が重要と言えるでしょう。

アメリカ民主党副大統領候補5名

ここまでご紹介してきたような副大統領選出の流れや、民主党の計画を考慮し、すでに5名の有力候補者が選ばれていますので、ひとりずつ特徴と懸念点を見てみましょう。

Kamala Harris(カマラ・ハリス)氏について

数いる民主党副大統領候補の中でも最有力候補とされているのが、現カリフォルニア州上院議員のカマラ・ハリス(55歳)です。

ハリス氏は、2020年大統領選の民主党候補者選びに立候補した人物で、予備選挙が本格化する前に資金不足を理由に撤退を表明しています。

インド系移民の母、ジャマイカ系移民の父の間に生まれ、多人種が集まるカリフォルニア州バークレーで育ちました。幼い頃には両親と一緒に公民権運動にも参加したことがあり、人種差別問題には理解があります。

地方検事補、地方検事、州司法長官などを歴任してきた実績があり、警察制度問題にも詳しいことが強みです。なかでも、カルフォルニア州司法長官では「女性初・アフリカ系初・インド系初の就任」を実現したことから話題性も申し分ありません。

懸念点としては、民主党候補者選びに立候補した際、バイデン氏の政策を批判していたことです。撤退後にはバイデン氏支持を表明しているものの「バイデン氏との相性」に不安が残ります。

ケイシャ・ボトムス(Keisha Bottoms)氏について

有力候補のひとりとして注目されているのが、現ジョージア州アトランタ市長のケイシャ・ボトムス(50歳)です。

黒人女性であるボトムス氏が副大統領候補として脚光を浴びるようになったのは、ジョージ・フロイド窒息死事件に端を発する抗議デモがアトランタ市にも及んだ際のことです。

破壊や略奪行為が発生した同市では、ボトムス氏が抗議デモ隊に対して演説をおこない、それを受けてデモが沈静化したことで「街の秩序を守った」と評価されたのです。全米のあらゆる都市で暴徒化したデモですが、ボトムス氏率いるアトランタ市だけは沈静化が早かったのです。

また、6月12日には同市で、警察官が黒人男性を射殺する事件が発生しましたが、ボトムス氏は即座に警察署長を免職処分にして、事件の沈静化に成功しました。ボトムス氏の的確で迅速な指揮力、熱意がある演説力など、高い政治手腕が評価されています。

懸念点としては、若さと知名度でしょう。直近で急激に注目されるようになったものの、全国区での知名度は決して高いとは言えません。

スーザン・ライス(Susan Rice)氏について

オバマ政権時代(バイデン氏が副大統領)に国連大使、大統領補佐官を務めた経験がある黒人女性のスーザン・ライス(55歳)も民主党副大統領候補のひとりとして根強い評判があります。

ライス氏は、他の候補者よりもバイデン氏に近い存在であることや、外交を得意とすることが強みです。トランプ政権によって世界各国の輪から孤立してしまったアメリカを、再び協調性がある国に戻すのに一役買うと見られています。

スタンフォード大学、オックスフォード大学院、マッキンゼー・アンド・カンパニー社に勤務するなど、経歴も素晴らしく「キレ者」の異名をとる一方で、周辺の人物からは生意気で権威主義者などと厳しい評価を受けています。

また、2012年9月にリビアのベンガジで起きた領事館襲撃事件について「計画的ではなく自然発生した」と発言し、国民に誤った情報を流したとして批判されました。

この結果、国務長官就任を辞退することになり、いまでも政治生命に影響を与えかねない「アキレス腱」として不安視されています。

バル・デミングス(Valdez Demings)氏について

民主党にとって選挙人獲得数に大きな影響を与える可能性があることから無視できない存在とされているのが、現フロリダ州下院議員のバル・デミングス(63歳)です。

デミングス氏は清掃員の父親とメイドだった母親の元に生まれた貧困層出身の黒人女性議員です。1983年に警察官になってからは、2007年に女性初となるオーランド警察署長まで登り詰めました。そして、2017年からは同州の下院議員を務めています。

デミングス氏が拠点としているフロリダ州は、大統領選の度に支持政党が入れ替わる「スイングステート」のひとつです。さらに、選挙結果に大きな影響を与える「選挙人(29名)」が多いことから、選挙戦略上で大きな意味を持つ州のひとつとされています。

黒人女性であること、元警察署長、そしてスイングステート出身ということから、民主党陣営はその価値の高さを認めざるを得ません。デミングス氏を副大統領候補にすることで、スイングステートで優勢になれる確率は上がるため「ダークホース」として注目されています。

懸念点としては、他の候補者と比較して政治的なキャリアが少ないことです。デミングス氏は州知事や上院議員の実績がないため、副大統領として見劣りする感は否めません。

ミシェル・ルーハン・グリシャム(Michelle Lujan Grisham)氏について

黒人以外で非白人種の副大統領候補として注目されているのが、現ニューメキシコ州知事のミシェル・ルーハン・グリシャム(60歳)です。

グリシャム氏はヒスパニック系の女性議員として知られており、アメリカで白人の次に多いヒスパニック層から支持されています。下院議員時代にはヒスパニック議員連盟の議長を務めた経験もあることから、ヒスパニックの問題にも精通しています。

仮に、グリシャム氏が副大統領に選出された場合、アメリカ史上初のヒスパニック系副大統領ということになります。トランプ大統領によって冷遇されてきたヒスパニック系の移民からすれば「希望の星」として映っているかもしれません。

懸念点としては、ジョージ・フロイド事件以降、黒人に対する人種差別問題に揺れるアメリカで、ヒスパニック系を優遇すると、民主党に対する黒人層からの支持率を失う可能性があることでしょう。

アメリカの大統選挙、今後の注目ポイントは?

民主党の大統領候補はバイデン氏、そして副大統領候補は黒人またはヒスパニック系女性となることはほぼ確実です。

今後、11月の本選挙に向けてどのような点が注目されるのでしょうか?

失点狙いのバイデン陣営

3月以降、バイデン氏は新型コロナウイルス感染拡大を理由に、表舞台に出てくることを控えています。

しかし、これにはトランプ大統領の失点が目立つようにすることや、バイデン氏の失言機会を減らすことなどの政治的な戦略があります。言い換えれば、バイデン陣営はトランプ陣営が自滅していくのを黙って見ているという状態です。

皮肉にも、トランプ大統領は新型コロナウイルスの初動対応ミス、人種差別問題に対する軽視、国民の分断をあおるような言動を続けており、バイデン陣営としては作戦通りと言ったところでしょう。

一方で、アメリカ経済は困難下にありながら好調を維持しているため、アメリカ国民の感情としては「あながち悪くない」という空気に包まれているのも確かです。

今後、経済政策においてどのような失点を誘うかが焦点のひとつになりそうです。

表舞台でのバイデン氏

8月に両党大会を終えると、いよいよ大統領選は「一騎打ち状態」に突入します。

そのなかでも注目されているのが、9月(1回)と10月(2回)に予定されている「党首討論会」です。全米に生中継されるこの討論会では、大統領候補者が司会進行役を挟んで1対1で議論をし、自らの考えを支持者に向けてアピールします。

この場では、トランプ大統領はバイデン氏の失言を引き出そうとすることは明白で、バイデン氏がどこまで冷静さを保ったまま振る舞えるかが焦点です。(昨年12月には一般人に激高する事件を起こしている)とくに、副大統領選出の背景を問われた際に、人種問題に関する失言をしてしまう可能性は高そうです。

「本番に弱い」バイデン氏が、大統領にふさわしいかどうかの印象が決定付けられるため、要注目です。

アメリカ副大統領との足並み

RealClearPoliticsの発表によると、2020年7月時点の支持率は、トランプ大統領40.9%に対してバイデン氏は49.6%です。

これまでバイデン氏優勢の流れが続いていますが、新型コロナウイルスや人種差別問題、警察制度改革など、トランプ政権にとってのマイナス要因が11月まで続くかは不透明です。

逆を言えば、バイデン陣営としてはこれらのマイナス要因がなければ劣勢に陥っている可能性もあるのです。

だからこそ、民主党としてはバイデン氏と足並みが揃った副大統領候補を選出し、4年後にも希望を持たせる組織作りが不可欠なのです。

▼参考URL:https://www.realclearpolitics.com/epolls/2020/president/us/general_election_trump_vs_biden-6247.html

まとめ

以上、「アメリカ大統領選、民主党副大統領候補に名を連ねる女性たち」でした。

2020年の大統領では、民主党は史上初となる女性副大統領候補を選出するため注目が集まります。ただし、あくまでも候補であって、現職のトランプ大統領に勝利することが不可欠です。

バイデン氏は8月1日までには副大統領候補を選出したいと公表しているため、どのような人材を選ぶかによって「世論への配慮」も浮き彫りになるでしょう。アメリカの政治が一歩前進するのか、しばらくは目が離せません。2020年11月のアメリカ大統領選の動向に、今後も注目してください。

本記事は、2020年7月19日時点調査または公開された情報です。
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