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アメリカと中国の対立が激化!中国製品を使う企業との取引中止を決定

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目次

はじめに

2020年7月14日、アメリカ政府は中国のハイテク企業5社の製品を使用する企業との取引を同年8月から禁止することを発表しました。

この法律は2019年7月時点で既に決められていたのものですが、有効性や施行のタイミングが注目されていました。

対象となる中国企業は、ハイテク分野で成長を続けている華為技術(ファーウェイ)などの5社で、間接的に日本の企業も影響を受けるため大きな問題とされています。

そこで今回は、この問題についての詳細や日系企業への影響、背景などを解説します。悪化する一方のアメリカと中国の対立を知る上でも重要なポイントになりそうです。

公務員や公務員志望の方は、日本とも関係が深い両国の様子を理解するためにもぜひ参考にして下さい。

アメリカの国防権限法の概要

はじめに、今回の発表の詳細について見てみましょう。

アメリカの国防権限法の内容

今回、新たに発表された内容は「中国のハイテク5社に関連する製品やサービスを使用している企業とアメリカ政府機関は契約を結ばない」というものです。

今回の決定の基になっている法律が、NDAA(National Defense Authorization Act/国防権限法)889条です。この条項では、アメリカ政府機関が使用する備品やサービスなどの調達「政府調達」の制限を定めています。

2019年7月、アメリカ政府は中国ハイテク5社との直接取引を禁止する決定をしていましたが、今回この条項に新たに付け加わえるかたちで「中国ハイテク5社の製品やサービスを使用する関連企業」とも取引を禁止することになりました。

つまり、アメリカ政府は中国に対して「一歩踏み込んだ」措置を取ったことになります。制限の対象になっている5社だけでなく、関連する企業となると数千社を超える可能性もあり、なおかつその中には日系企業も含まれていることから混乱が生じると見られます。

アメリカ政府は、対象となる5社の製品やサービスをすぐに排除できない企業に対して、2022年8月を期限とする「適用除外制度」を設けていますが、申請にあたっては使用実態や排除計画などを報告する必要があります。


このことは政府調達の契約を巡る競争の中で、競合相手よりも不利になると見られていることから、すぐに排除できない場合は事実上の締め出しを受けることになります。

アメリカ政府の定めた制限対象5社

アメリカ政府によって制限対象に定められているのは以下の5社です。

・華為技術(ファーウェイ):通信基地局世界首位、スマートフォン市場世界2位
・中興通訊(ZTE):通信基地局世界4位
・杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン):監視カメラ世界首位
・浙江大華技術(ダーファ・テクノロジー):監視カメラ世界2位
・海能達通信(ハイテラ):特定用途無線大手

これらの企業に共通するのは、ハイテク企業、世界シェア、そして情報通信に関連するという点です。いずれの企業も急激に世界シェアを伸ばしており、日系企業の関連が深いことも特徴です。

例えば、ソフトバンクは4G通信ネットワークにおいて、ファーウェイやZTEの機器を使用しています。また、NTTもアメリカ国内で対象企業の製品を使用しているため、他社製に切り替える必要があります。

今回の決定によって、5社だけだった制限対象が、数百から数千社に拡大すると見られます。

アメリカの国防権限法が施行される背景

そもそも、なぜアメリカ政府は今回のような決断を下したのでしょうか?

機密情報の保護

アメリカ政府が最も懸念しているのが「機密情報の漏えい」です。

これまでアメリカは10年以上にわたって中国からのサイバー攻撃を警戒してきました。なかでも決定的とされているのが、2012年の下院特別委員会で公表された調査報告書で「ファーウェイとZTEの製品は強力なスパイ活動の道具」そして「安全保障上の脅威になりかねない」と名指しで批判することがありました。

この調査報告書で取り沙汰されているのが、両社が提供しているルーターや基地局です。サイバー空間では、あらゆるデータはルーターや基地局を経由するため、これらの経由路に不正なチップやプログラムを組み込むことで、中国政府は容易に機密情報を入手できるようになると疑われています。

また、両社は世界シェアでトップであることから、世界中にこれらの不正な基地局を構築することで、世界中のあらゆる機密情報を手に入れられるようになるのです。

アメリカ政府はこのような「スパイ行為が可能な環境構築」を阻止するために、これらの企業を締め出そうとしている訳です。

アメリカの国防権限法施行の影響と問題点

次にこの法律が施行されることによる影響と問題点を見てみましょう。

影響その1「企業側の調整」

今回の決定で最も大きな影響があるのは「企業側の調整」でしょう。

アメリカ政府は今回の法律が施行されることで、政府と取引がある企業は合計で800億ドル(約8兆6,000億円)ほどの「対応コスト」がかかると試算しています。


これまでアメリカの政府機関と契約をしてきた企業、あるいはこれから契約しようとするすべての企業は、2020年8月13日以降は自社が使用する製品やサービスのすべてにおいて、中国ハイテク5社と関係がないことを証明書で明示する必要があります。

仮に、虚偽の報告や報告漏れなどが発覚した場合、民事や刑事罰などがあることから、企業としては非常に慎重な対応が求められます。

2019会計年度では、アメリカ政府や米軍と取引がある日系企業は800社、案件数は約11,000件とされています。これらに該当する企業のすべては、中国ハイテク5社製のものを排除したうえで、新たに製品やサービス、システムなどを再編しなければいけません。

安価なことから、中国企業への依存を強めていた日系企業にとっては思わぬ仕打ちを受けることになります。また、再編にあたり企業側に余計なコストや労力が重くのしかかることは明白でしょう。

影響その2「民間企業に対する政治圧力」

今回の一件は、多くの日系企業にとって「アメリカか中国のどちらかを選べ」という実質的な選択問題です。つまり、民間企業に対する政治圧力という影響が生じます。

とくに日系の通信企業にとっては大きな分岐点になりそうです。アメリカ政府とビジネス取引をしたい場合は、対象5社の製品やサービスを排除せねばならず、5G技術などを活用したビジネスを展開するためには、アメリカ政府との取引を諦めて、中国企業と手を組む必要が生じます。

日系の通信企業は中国製品への依存度が高く、なおかつ日米の政治関係にも配慮せねばならず、本来あるべきはずの民間企業の柔軟性や自由度を阻害されかねません。

問題点その1

今回の法律が施行されるにあたり問題点とされているのが「中国5社の製品やサービスの使用基準」です。

例えば、ファーウェイが提供するルーターやスマートフォンなどの現物であれば、他社製に切り替えることで対応可能ですが、ファーウェイの子会社や関連会社の製品やサービスなどは「間接使用」となるため、規制の対象になるのか不透明です。

また、将来的に対象5社が競合企業を買収した場合、現時点では合法とされる製品やサービスが違法の対象になる可能性もあります。

つまり、規制の基準が曖昧なため確実な対応が取れないという問題が起きてしまうのです。これにより、多くの企業はさらに慎重な準備が求められ、法令遵守のためのコストがかさんでしまいます。

とくに懸念されているのが中小企業で、法令に合わせた再編コストの捻出や人員確保が出来ない場合は、政府との契約が打ち切りになってしまいます。

使用基準を巡っては、アメリカ政府があえて明確に示さないことで、対象5社の徹底排除を促しているとする声もあります。

問題点その2

別の問題点として指摘されているのが「この法律の有効性」です。

アメリカ政府はこの法律を施行することで、中国の主要企業を締め出せるとしていますが、肝心のサイバー攻撃阻止や機密情報の保護が実現するかどうかは不透明です。

対象とされている5社は世界市場をすでに席巻しており、アメリカ国内でも民間企業や一般家庭に浸透しています。仮に、政府機関がこれらの企業と接点を断ち切ったとしても、企業や個人を通じて攻撃されることは否定できません。

また、テレワークによってセキュリティが脆弱な通信環境で仕事をする政府関係者も増えていることから、この法律によって問題や懸念が解消されるとは言えないのが実情です。

日本政府の反応

今回の一連の騒動に対する日本政府の反応を見てみましょう。

2018年12月、日本政府はアメリカ政府に同調するように、政府調達の際は価格以外にも「安全保障上のリスクにも配慮すること」で、各省庁間の申し合わせをしています。また、5Gの普及を進める通信事業者に対して、国の申し合わせに「留意」するよう求めました。


中国政府との衝突を避けたい日本政府は、アメリカのような名指しを避けていることから、出来るだけ波風を立てたくない姿勢が見てとれます。

いずれの反応も罰則を伴うものではありませんが、すでにNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクなどの企業は、5Gの基地局においてはファーウェイ社製を採用しないことを決めています。

まとめ

以上、「アメリカと中国の対立が激化!中国製品を使う企業との取引中止を決定」でした。

今回の決定は1年以上前から計画されていたものの、基準が曖昧であることや、対象企業からの見直し要求などもあったことから、実際に施行されるかどうかは不透明な状態でした。

しかし、このところの強硬な対中政策の流れに乗るようにして施行が決定したことから、アメリカ政府の反中国路線は一層と厳しいものになったと言えます。

今後、米中問題に日本も巻き込まれるようになることから、日本政府としては苦しい立場になることは確実です。日本にしても無縁とは言えない問題ですので、今後も注視が必要になるでしょう。

本記事は、2020年7月28日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

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この記事を書いた人

公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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