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2021年からのアメリカはどう変わる?バイデン氏が描くアメリカの未来図

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目次

はじめに - 2021年以降のアメリカはどこへ向かうのか

アメリカでは2020年11月に大統領選を控えています。

現職のトランプ大統領(共和党)と、民主党候補のジョー・バイデン氏による対決になることはほぼ確実で、すでに大統領選を見据えた攻防が始まっています。

新型コロナウイルスや人種差別、そして香港を巡る中国との対立など、難問に直面しているトランプ政権ですが、そんななか民主党のバイデン氏は、自身が大統領に選ばれた場合に着手する政策の方針を発表しました。

今回の発表は、アメリカ国民に向けた実質的な選挙公約に該当し、その内容は「2021年以降のアメリカの姿」を表していると言えます。

そこで今回は、発表された政策を基に、11月の大統領選で民主党のバイデン氏が当選した場合、アメリカはどのような姿になるのか、どんな政策路線になるのかなどを解説します。

日本とも関係が密接なアメリカの将来像ですので、公務員や公務員志望の方はぜひ社会情勢のひとつとして参考にして下さい。

バイデン氏が語った政策方針の概要

はじめに、バイデン氏が発表した政策の概要を見てみましょう。

バイデン氏の政策は、トランプ大統領が実施してきた政策とは対照的な印象です。一方で、製造業を重視し、中国を意識した政策は共通していることから、共和党支持者のことも配慮した内容になっています。

2035年に排ガスゼロを目指す環境政策

バイデン氏が最も注力していると見られるのが気候変動問題に対する環境政策です。

クリーンエネルギーと呼ばれる太陽光発電や風力発電などのインフラ整備に4年間で2兆ドル(約220兆円)を投資するとしました。また、2035年までに発電の際に生じる排ガスをゼロにする目標も掲げています。

他にも、電気自動車の普及推進のために自動車産業へ積極的な投資をし、都市部ではエネルギー効率が高いビルの建設や、環境を考慮した都市交通システムの刷新を図るとしています。


環境政策の一環として、蓄電技術や水素燃料、バイオ燃料、原子力発電などの最新技術開発にも注力します。これらの環境政策によって数百万人規模の雇用を生み出せるとしており、トランプ大統領を支持している労働者層を意識しています。

バイデン氏が環境政策を全面的に打ち出した背景には、トランプ政権が地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」から離脱したことや、環境保護に背いた経済優先主義を嫌う人たちからの支持を確実にしたい狙いがあると見られます。

また、地球環境問題を巡る国際社会から孤立する一方のアメリカを、再び協調性がある国に戻すことも視野にあるとされています。

最先端技術開発へ7,000億ドル投資

バイデン氏は、製造業の強化を目的とした最新技術開発に4年間で7,000億ドル(約75兆円)投資するとしています。

バイデン氏は「中間層の雇用を長期的に確保する必要がある」としたうえで、7,000億ドルの公的資金によって、最新技術の研究や開発など、製造業の基礎強化を図るとしました。

この政策では、製薬、自動車、宇宙、情報通信、クリーンエネルギーなどの分野において、最新技術開発へ3,000億ドル(約32兆円)を重点投資すると見られます。

バイデン氏が最新技術開発に固執する背景には、中国政府が2015年から取り組んでいる次世代情報技術や新エネルギー車開発など、製造業の高度化を目指す「中国製造2025(Made in China 2025)」があります。

バイデン氏は中国政府によるこの国家プロジェクトが、アメリカの技術力の優位性を妨げ、将来の産業を支配してしまうことを懸念しているのです。

アメリカ国内で500万人の雇用促進

バイデン氏は、環境政策や最先端技術開発などの政府主体の経済政策によって、500万人の雇用を創出するとしています。

なかでも、5GやAIなどの最先端技術に関連する「高品質な雇用」を大量に作り出したい構えです。また、製造業を巡っては、中国をはじめとする海外サプライチェーンをアメリカ国内に戻すことで、さらなる雇用を確保する狙いです。

一方で、政府主体による職業訓練や人材育成にも注力し、黒人やヒスパニックを含むアメリカ国民全てに恩恵が行き渡るようにします。とくに、地方都市の小規模事業者へ投資するとしています。

アメリカ国内で法人税7%引き上げ

バイデン氏は連邦法人税を現行の21%から28%へ引き上げるとしています。

トランプ大統領は2017年末、それまで35%だった連邦法人税を21%に引き下げました。これにより連邦政府は10年で1兆5,000億ドル(約162兆円)の減収になることから、公共投資に使える予算がなくなる問題が生じました。

バイデン氏はこの状態を是正するために法人税を7%引き上げることで、公共投資のための資金を確保する狙いです。

もともとバイデン氏は、法人税の減税によって喜んだのは「一部の富裕層のみ」と主張しており、トランプ政権で続いていた富裕層の優遇に歯止めをかけるものと見られます。


当然、この政策はトランプ陣営から攻撃の的にされるでしょう。企業や富裕層の落胆を招き、バイデン氏の支持率低下に繋がる可能性があります。

「Buy American」を実施

今回の発表で注目を浴びた単語が「Buy American」です。

これは、政府が積極的にアメリカ製の物品を購入するルールのことです。

例えば、新型コロナウイルスの感染が広まった際に、アメリカ人の大半は中国製のマスクを使用していました。本来であればアメリカ製のマスクを着用して、少しでも国内企業に利益を還元したいところです。バイデン氏はこういう事態をあらゆる場面で避けようとしているのです。

言い換えれば「政府の公的資金はアメリカの企業や個人に還元されるべき」という方針に基づいたルールと言えるでしょう。

バイデン氏は、アメリカの製造業が中国をはじめとする海外諸国から国内に回帰することを望んでおり、この点はトランプ大統領と同じ路線です。事実、トランプ大統領は生産拠点が海外の企業に対して新たな課税制度を設けようとしています。

バイデン氏の唱える、対中国政策

バイデン氏は中国政府に対する強硬姿勢も明白にしました。

なかでも重視しているのが「中国の技術力」で、先述したようにアメリカも最先端技術開発に7,000億ドルを投資して対抗する構えです。

一方で、中国からのサイバー攻撃によってアメリカの機密情報が盗まれているとしたうえで、機密漏えいに関与した中国企業はアメリカ市場から追い出すとしました。

また、中国政府による不公平な貿易も問題視しています。例えば、不当に価格を安くするアンチ・ダンピング、為替操作、鉄鋼や造船などの過剰生産などがあります。アメリカの製造業が衰退している原因は、中国によるこれらの悪しき商慣行であるという考えはトランプ大統領と同じです。

新型コロナウイルス感染拡大によって露呈した医療物資の調達にも切り込んでいます。トランプ政権は、マスクや防護服などをはじめとする緊急物資の調達を中国に頼ったことから、これを機会に国内回帰の流れを強める構えです。

中国を巡る姿勢については、トランプ大統領は関税措置や輸入停止措置などの「強硬路線」ですが、バイデン氏は同盟国と協力して是正を促す「協調路線」であることは大きな違いでしょう。

バイデン氏としては、トランプ政権が継続してきた中国に対する毅然とした態度を引き継ぎつつ、出来るだけ温和な外交で解決したい思惑があるようです。

その他の政策

バイデン氏はこの他にも具体的な内容には言及しなかったものの、働く親への支援強化策や労働者層と中小企業支援にも力を入れるとしています。

また、人種差別問題については、黒人やヒスパニックと白人の所得格差是正、住居選定の選択肢拡大、起業家支援、教育支援など、マイノリティ寄りの政策をとる考えを示しています。

トランプ陣営の反応

バイデン氏の政策方針発表を受けてトランプ大統領はさっそく反応を見せています。

バイデン氏が掲げる「製造業強化」政策は、盗用?

トランプ大統領は、バイデン氏が掲げる「製造業強化」の政策に対して「私の政策を盗用した」と述べています。トランプ大統領自身もアメリカの製造業を重視してきたことから、バイデン氏が自身の政策を真似たと捉えたようです。

ただし、製造業強化のアプローチ法は異なります。トランプ政権は「減税や規制緩和」によって企業に柔軟性を持たせる方法です。一方で、バイデン氏は「公的資金の投入」による方法のため、両者は対照的と言えます。

トランプ大統領は「私の政策(製造業強化)を真似したのだから間違っていない」と皮肉を述べたうえで、バイデン氏の主張は実現できないと切り捨てました。その理由には、バイデン氏が法人税アップや環境政策を巡る規制強化を計画していることを挙げています。


アメリカ国民の安全が脅かされる

トランプ大統領は自身のTwitter上で、バイデン氏をはじめとする過激な民主党が人種差別問題解消のために警察組織や移民局などを解体しようとしているとしたうえで「バイデンによるアメリカでは誰も安全じゃなくなる」と繰り返し批判しています。

トランプ大統領は、人種差別是正に積極的でなおかつ黒人からも支持が厚いバイデン氏に対して厳しい批判を繰り返すことで、保守派の白人主義者を囲い込みたい狙いです。

バイデン氏の副大統領時代の失策を指摘

トランプ大統領の片腕であるペンス副大統領は、選挙対策会議においてバイデン氏が副大統領時代(2009年-2017年)に、中国政府に弱腰だったことがすべての元凶だと述べています。

また、バイデン氏が副大統領時代に起きたリーマンショックへの対応も怠慢だったと指摘したうえで、バイデン陣営が再び失態を繰り返す可能性があることを強調しています。

バイデン氏の政策による、日本への影響

今回バイデン氏が発表した政策は、そのほとんどが「国内向け」の内容であることから、日本への具体的な影響は明確ではありません。

しかし、対中国政策において「同盟国との連携」を図るとしていることから、日本はアメリカと中国の板挟みになる可能性があります。また、孤立状態にあるアメリカを国際協調の和に戻すために日本をはじめとする同盟国に負担を求めるかもしれません。

具体的には、バイデン政権が内向き政策をとった場合、国防予算を削減する可能性があります。その結果、日本政府が負担する在日米軍駐留経費(思いやり予算)が増えることが考えられます。2019年度の予算案では1,974億円に上る経費がさらに増えるかもしれません。

一部報道によると、トランプ政権は在日米軍駐留経費を約4倍にあたる8,700億円規模にまで増やすよう既に要求していることから、バイデン政権がこの流れを汲む可能性は否定できません。

まとめ

以上、「2021年からのアメリカはどう変わる?バイデン氏が描くアメリカの未来図」でした。

11月の大統領選でトランプ大統領と戦うことになるバイデン氏は、トランプ大統領と似通った「国内志向(内向き)」な政策を打ち出しました。政治理念についてはトランプ大統領と共通する点もありますが、やはり民主党らしく協調路線であることに違いありません。

仮に、バイデン氏が当選した場合、トランプ政権によって極端な内向き国家になってしまったアメリカが、再び国際的な立場を取り戻せるかは見物でしょう。

アメリカにとって2021年からの4年間は「対中政策」「国内回帰」「格差是正」などが重要なポイントになると見られます。大統領選挙、そしてその先のアメリカに、今後もぜひ注視してください。

本記事は、2020年7月28日時点調査または公開された情報です。
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公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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