アメリカの公務員事情を徹底調査

日本に住んでいれば、日本の公務員については多少なりともイメージできると思いますが、アメリカの公務員については、詳しく知らない人が多いと思います。

今回は、アメリカの公務員事情について、アメリカ在住の日本人にレポートいただきました。公務員の方も、公務員志望の方も、是非ご参考ください。

はじめに

みなさんはアメリカの公務員にはどのような種類があって、どれくらいの給与を受け取っているのかなど、アメリカの公務員事情が気になりませんか?

アメリカも日本と同じように「公務員=安定」というイメージがあるのかや、一般的なアメリカ人は公務員のことをどう思っているのか、公務員の中でもどの職種が人気なのかなども気になりますよね。

今回はあまり知る機会がないアメリカの公務員事情について、アメリカで生活している筆者目線で詳しく解説したいと思います。

公務員や公務員志望の方は、アメリカの公務員事情を知るための参考にして頂ければ幸いです。

アメリカの公務員の種類

はじめに、アメリカの公務員の種類や制度について概要を理解しましょう。

アメリカの公務員は大きく分けて「国家公務員」と「地方公務員」のふたつに分類されます。さらに「軍人」という大きな枠もありますが、一般的な公務員とは別扱いにされることが通例です。アメリカの軍人は厳密には国家公務員に分類されます。

日本の自衛隊は「特別職の国家公務員」という位置づけで、一般人からも公務員として認識されていますが、アメリカでは公務員というよりも「軍人」という独立した存在として見られています。

アメリカの国家公務員

アメリカの国家公務員(Federal Jobs)は約275万人います。

国務省、財務省、国防総省などの政府中枢機関で働いている人たちがこれに該当します。

最も人数が多い省庁は退役軍人省で368,726人、次いで国土安全保障省190,931人、そして司法省116,739人です。対照的に、最も人数が少ない省庁は「教育省」で4,375人となっています。

国家公務員275万人のうち、競争試験によって任用される競争職の枠は約146万人です。また、1万人程度が公選によって選出された公選職員から直接指名される「政治任用」で採用されます。

ちなみに、アメリカの軍人はおよそ150万人とされており、中国(約300万人)、インド(270万人)に次いで、世界第3位の規模になっています。

軍事大国アメリカだけあって、軍人の数だけでなく、退役軍人省で働く人の数が飛び抜けて多いことが特徴的と言えます。

アメリカの地方公務員

アメリカの地方公務員は約1,614万人います。

地方公務員は「州政府(State Jobs)」「郡政府(County Jobs)」「市政府(City Jobs)」などの行政区画で区分されており、州政府はおおよそ434万人、郡や市政府の合計はおよそ1,185万人にのぼります。

地方公務員には各政府機関の職員をはじめ、警察、保安官、消防、教員、看護師、バスの運転手、公園管理など幅広い職種がありますが、概ね日本と同じ職種と考えて良いでしょう。

アメリカで地方公務員になる場合、日本のような新卒一斉採用などはなく、あくまでも空きポストが生じた、あるいは新規ポストが出来た際に募集がかけられる仕組みです。

近年では、それぞれの組織の公式サイトに掲載される募集要項を確認し、要件に見合っていれば試験を受けて、面接へ進む手順を踏みます。

アメリカの地方公務員採用においては、空きポストをすぐに埋め合わせ出来る即戦力が求められるため、試験の点数よりも経歴や実績が重視されて合理的な判断を下される場合もあります。このような合理的な判断に基づく採用基準は日本とは異なると言えるでしょう。(不正を生む原因でもある)

アメリカの公務員の雇用制度

アメリカでも「公務員=安定」というイメージなのでしょうか?

いいえ、答えはNoです。

雇用制度:Open Career System

アメリカの公務員は「Open Career System(開放型任用制)」と呼ばれる任用および昇進制度が一般的です。

この制度はごく簡単に言うと「継続的な就労や昇進を前提にしない制度」です。つまり、アメリカの公務員は年功序列や終身雇用という概念がなく、公務員ですら次々に転職をしていくことが慣例なのです。

例えば、大学を卒業してA町の消防士として就職した人が、転職してB市の警察官、さらに転職してC市の保安官、最終的には好きなことで起業するなんてことはよくあることです。

多くのアメリカ人は、転職の度に報酬がアップしていけば良いという発想なので、日本のように同じ組織で「勤め上げる」ことは稀と言えるでしょう。このことは公務員も例外ではありません。

このような雇用制度文化の違いは、日本とアメリカでは社会保障の仕組みが異なることや、生活環境を変えることに抵抗が少ない国民性などが影響しています。

また、アメリカでは州によって公務員の待遇も異なるため、より高待遇の場所を探して移動することはごく一般的な風潮なのです。

もちろん、個人の事情もあるため、全員が転職を繰り返す訳ではありませんが、一般的には日本の公務員のような年功序列や終身雇用という制度はなく、Open Career Systemが広く浸透しています。

ちなみに、日本の公務員によく見られる年功序列や終身雇用の制度は「Closed Career System(閉鎖型任用制)」と呼ばれます。年功序列と終身雇用を前提としている雇用制度で、日本以外ではフランスで定着しています。

アメリカの公務員で人気の職種は?

次に、アメリカではどのような公務員職が人気なのか、それぞれの平均年収も含めて見てみましょう。

軍人

アメリカで人気がある公務員職と言えば軍人です。

アメリカの軍隊には陸軍、海軍、空軍、海兵隊、沿岸警備隊、宇宙軍などがあり、戦地に赴く兵士もいれば、室内勤務で兵器や戦略を研究開発する部もあるため、多様な才能を持った人が集まります。

必ずしも高学歴でなくても入隊できることや、アメリカ国内では軍人というだけで尊敬の目で見てもらえることから不動の人気振りです。このような事情もあり、ネイティブアメリカンの人たちからも人気があります。

軍人の最大の魅力は恩給制度です。所属部署や階級によって異なるため一概には言えないものの、20年間勤務すれば民間ではあり得ないほどの恩給受給の資格が得られます。これにより、最終階級に応じた年金、無料の医療や歯科治療、ローンや税金の優遇などが受けられます。

例えば、大学を卒業して21歳で入隊し、20年間勤め上げれば41歳でリタイア可能ということです。遊んで暮らすもよし、再就職してダブルインカムを得るのもよし、残りの人生に困ることはありません。アメリカの公務員で超高待遇の代表格が軍人でしょう。

軍人の報酬は、最も階級が低い人で毎月1,602ドル(約17万3千円)、最高位で16,441ドル(約177万円)で、これに加えて住宅手当として毎月1,000ドル程度、Tricare(トライケア)と呼ばれる医療費や歯科治療などが免除される保険料無料の健康保険があります。

警察官

軍人に次いで人気の公務員と言えば警察官でしょう。

昨今、白人警察官による黒人男性殺害事件などが相次いだため、冷ややか目を向けられがちですが、軍人同様に英雄視されやすいことから人気があります。また、女性からも人気があることはアメリカらしいと言えるかもしれません。

なかでも、正義感が強い人や体力に自信を持つ人から人気があり、軍人を数年間経験した後に、警察官になるパターンもよくあります。

アメリカでは、規律に厳しい軍人を経験していることは再就職に有利とされており、軍人から警察官に転職することは王道コースと言えるでしょう。

警察官の年収は、州や階級によって大幅な開きがあるものの、全米の平均が54,004ドル(約578万円)とされています。

アメリカの警察官の平均年収は、黒人が多く暮らす南部州では低く、大都市圏ほど高い傾向があります。事実、南部にあるミシシッピ州の警察官の平均年収は33,350ドル(約356万円)、アーカンソー州は37,330ドル(約403万円)、ルイジアナ州は38,100ドル(約411万円)と平均を大幅に下回っています。

教師

アメリカで男女問わず人気の公務員は教師です。

プリスクール教師(小学校前)、小学校教師、中学校教師、高校教師など様々ですが、空きポストが見つかりやすいため、比較的転職が容易な点も魅力です。

一方で、公立学校の教師は非常にストレスがかかる仕事としても知られており、Home Health Aide(在宅医療従事者)や、Medical Assistant(医療助手)と並んで離職率が高いことが特徴です。

また、州や市によっては予算が採れないことを理由に、教師が自腹で教材を買い与えることもあるとされており、待遇の善し悪しは学校によって大きく変わります。

アメリカの教師の平均年収は、小学校教師で58,230ドル(約628万円)、中学校教師で58,600ドル(約632万円)、高校教師で60,320ドル(約651万円)です。

アメリカの公務員に対するイメージ

ここでは、アメリカでは公務員がどのように見られているのかなど、気になる点をご紹介します。

余程のことがない限り解雇されない

アメリカの公務員は民間企業のような解雇はありません。

人事評価において、実力主義や成果主義が原則のアメリカの民間企業では、ある日突然解雇を言い渡されることは珍しくありません。しかし、公務員の場合、担当の仕事をこなしていれば解雇されることは滅多にありません。

仮に、解雇されるような場合、雇用側は法律に基づいて「能力・経験・勤務態度・勤務成績」といった明確な解雇基準を示す必要があります。

また、解雇にあたり性別や国籍、人種などに関連することが考慮されていると判明した場合、訴訟問題になり、雇用側は圧倒的に不利な状況に置かれます。

日本の制度と比較すると過度な印象を受けますが、このような背景にはアメリカでは歴史的に人種差別や性差別が存在していたことがあります。これらの問題を法律で是正してきた結果、現在のような状況になっているのです。

主な法律として「EEO(Equal Employment Opportunities/雇用機会均等法)」や「FLSA(The Fair Labor Standards Act/公正労働基準法)」「Affirmative Action/積極的是正措置」などがあります。

公務員のイメージ

アメリカの公務員は「いい加減で適当」というイメージを持つ人が多いようですが、実は民間企業から転職してやってくるキレ者がいるのも事実です。

アメリカの公務員は日本とは異なり、民間企業からの転職組や、担当部門のエキスパートなどが働いていることから、民間企業に近い感覚です。したがって、一概に「公務員だから」というイメージはありません。

アメリカでは民間企業の方が報酬や待遇が良いため、必ずしも「公務員=安定」とはなりません。日本ほど公務員に対する羨望の眼差しはないと言えるでしょう。

アメリカの公務員は副業可能

アメリカの公務員は勤務時間外で、なおかつ本業に支障がなければ副業が許されています。国家公務員も同様で、休みの日に副業をしてサイドインカムを得ることは合法です。

筆者の個人的な体験談ですが、アメリカで警察官をしている友人に、日本では公務員による副業は禁止されていると伝えたところ「信じられない」とのことでした。

友人の同僚全員が何かしらの副業をしており、お小遣い程度の収入を得ているそうです。本業が公務員だと社会的な信頼度が高いため、むしろ副業がしやすいとのことでした。合理的なアメリカらしい発想と言えます。

日本人はアメリカの公務員になれるのか

日本人がアメリカで公務員になるためには「永住権」と「市民権」を取得しなければいけません。逆を言えば、このふたつを保有していれば公務員になれます。

州や職種によっては「永住権」だけでも良い場合もありますが、国家公務員になるためには
「市民権」も保有している必要があります。

日本人がアメリカの永住権と市民権を取得することは、公務員試験とは比較にならないほど難しく、長い道のりです。

最も現実的なのはアメリカ国籍の人と結婚することですが、結婚してもすぐに永住権が手に入る訳ではありません。市民権については永住権を取得後さらに5年必要です。

したがって、日本人がひとつの就職先としてアメリカの公務員を目指すことは「現実的ではない」と言えます。

まとめ

以上、「アメリカの公務員事情を徹底調査」でした。

アメリカの公務員には国家公務員と地方公務員があり、日本の公務員制度とは様々な違いがあります。公務員の種類や人気の職種は概ね日本と同じ傾向ですが、採用制度や公務員に対するイメージはかなり違うようです。

ご紹介した内容の一部は州や町によって異なる場合もあるため、あくまでも参考程度に捉えるようにして下さい。

参考資料サイト

Military Compensation(軍人の報酬)
https://militarypay.defense.gov/Portals/3/Documents/ActiveDutyTables/2020%20Military%20Basic%20Pay%20Table.pdf

Indeed(警察官の年収)
https://www.indeed.com/career/police-officer/salaries

U.S. News(アメリカの教師の平均年収)
https://money.usnews.com/search?q=teacher#gsc.tab=0&gsc.q=teacher&gsc.page=1

本記事は、2020年7月29日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

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