警察官による黒人銃撃事件、大規模デモ、衝突までの騒動まとめ(2020年8月29日)

2020年8月末、アメリカで再びトランプ支持者と人種差別に抗議する人たちが衝突しています。

今回は、警察官による黒人銃撃事件、大規模デモ、衝突までの騒動について、アメリカ在住の日本人にレポートいただきました。

はじめに - 繰り返される抗議デモと衝突

8月29日、オレゴン州ポートランドでは衝突によって男性が銃撃されて死亡する事件が起き、トランプ大統領が治安維持部隊を導入してデモ隊を制圧するよう地元政府に圧力をかけています。

このような事態は2020年5月から6月にかけて起きた「ジョージ・フロイド殺害事件」と「BLM運動(Black Lives Matter)」の時とまったく同じです。

11月に大統領選を控えているいま、トランプ大統領や民主党の大統領候補であるバイデン氏は、この問題への対応の仕方によっては選挙結果に影響を与えることから、それぞれの言動に注目が集まっています。

そこで今回は、アメリカで繰り返されている抗議デモや衝突の状況、問題点、今後の展開などについてご紹介します。

いま、アメリカでどのようなことが起きているのか

はじめに、いまアメリカで起きている一連の出来事をご紹介します。

警察官による黒人男性銃撃事件

今回の騒動の発端は、2020年8月23日にウィスコンシン州ケノーシャで起きた事件です。
制止を無視して車に乗り込もうとした黒人男性を取り押さえようとした警察官(Rusten Sheskey)が背後から7回にわたって男性に発砲しました。男性の車には3人の幼い子どもが乗車していたことから、子どもたちに危害が加わる可能性もあった危険な行動と指摘されています。

重傷を負った男性は手術の結果、下半身に麻痺が生じた状態で寝たきりになっています。また、手術後は警察によって手錠がかけられ、ベッドから動けないような状態にされていたことが判明しています。(弁護士の抗議や批判を受けて手錠は外された)

白人警察官が黒人男性に対して7発も発砲したことや、無抵抗だった男性を背後から銃撃したこと、そして事件に関与した警察官を休職扱いにしかしなかった警察の甘い対応が世間の怒りを買い、全米での抗議デモを誘発しました。

ワシントン行進(2020 March on Washington)について

最も大きな抗議デモはワシントンD.C.で開催されました。

8月28日、1960年代に公民権運動で活躍したキング牧師による「I have a dream」から始まる歴史的な演説から57年を迎えました。

これに合わせて大規模な集会が呼びかけられ、ウィスコンシン州ケノーシャで起きた銃撃事件や人種差別問題に抗議する人たちおおよそ10,000人が、ワシントンD.C.にあるリンカーン記念堂前に集まったのです。

抗議デモでは、バイデン氏に投票を呼びかける声や、警察予算の削減、警察組織の解体などが訴えられました。

これに先立ち、27日にはワシントンD.C.にあるホワイトハウスで開催されていた共和党大会最終日にも抗議デモが起きています。トランプ大統領による指名受託演説の最中に、ホワイトハウス周辺でも抗議デモが起き、トランプ大統領は人種差別を助長し、アメリカを分断していると抗議しました。(党大会への影響はなかった)

アメリカ人同士の衝突

全米でアメリカ人同士の衝突も頻発しています。

衝突しているのは「トランプ支持者」と「BLM運動参加者」です。別の表現では「白人至上主義者」対「人種差別反対派」や、「保守派」対「リベラル派」といった構図です。(白人対黒人ではない)

8月29日、オレゴン州ポートランドで起きた衝突では、トランプ支持者と見られる男性が銃撃されて死亡しました。死亡した男性が被っていた帽子には極右団体「パトリオット・プレーヤー」のバッジが付けられていたことから、反対派とトラブルになった際に撃たれたと見られます。

これを受けてオレゴン州のブラウン州知事は治安強化策を発表し、州警察の導入、FBIによる捜査などの対応を決定しました。また、州知事は同団体に対する声明のなかで「武装して戦いを求めてポートランドにやってきた」と批判しています。

ポートランドのテッド・ウィーラー市長は記者会見で「トランプ大統領が憎悪と分断を作っている」と批判したうえで「(大統領は分断について)真剣に考えておらず、ここまで暴力的な衝突は過去数十年で初めてだ」と述べました。

一方で、トランプ大統領は市長のことを「バカ」と呼び「バカな市長の下ではポートランドは回復しない」と述べています。また、対応に慎重な州知事や市長らのせいでこんなことになったと批判したうえで、連邦政府による治安維持部隊の導入を呼びかけているものの、知事や市長が政府の援助を拒否するから事態が悪化しているとしました。

バイデン氏は自身のTwitter上で「ポートランドでの暴力は受け入れられない」としたうえで「トランプ大統領のせいで国に緊張が走り、分断が深まっている」と非難しています。しかし、トランプ大統領は「バイデンは何もせずに逃げている」とやり返しています。

このように、一般市民による衝突や対立だけでなく、連邦政府と州政府などと対立が起きていることから、事態の収拾がうまくいっていないことがよく分かります。

何が問題なのか?

次に、今回の騒動ではいったい何が問題なのか見てみましょう。

対処法の違い

いまアメリカで起きている問題は対処法の違いや考え方の違いによって生じています。

例えば、トランプ大統領をはじめとする共和党や支持者らは「結果に対して行動」しています。対照的に、バイデン氏や民主党は「原因に対して行動」していると言えます。

トランプ大統領は違法な衝突が起きていることに対して、無法者を制圧して解決しようと行動していますが、バイデン氏は警察による過剰な制圧行為や人種差別を追及して解決しようとしています。

言い換えれば、トランプ大統領は事件が起きた原因よりも現在起きている問題を解決することを優先しており、民主党は事件が起きた根本的な原因を解決しようとしているのです。

このような考え方の違いは、トランプ大統領や共和党からすれば、民主党は目の前で起きている問題を解決しようとしていないと見えます。一方で、民主党からすれば共和党は目先の問題解決だけで、根本を正そうとしていないと見えるでしょう。

共和党と民主党の方向性の違い

共和党と民主党が国民に対して発表した政策綱領案にも違いがあります。

トランプ大統領は共和党大会の演説で、デモや衝突などの問題に対しては今後も「法と秩序(Law&Order)」に基づいて対応すると述べており、問題が起こる原因(警察の対応)については触れていません。あくまでも、問題が起きた時点で法と秩序を持ってして対応する姿勢です。

対照的に、民主党のバイデン氏は「全国的な基準を有する警察の実力行使規制の導入」を政策綱領案に盛り込んでおり、デモや衝突が起きる原因について触れています。つまり、問題が起きること自体を防ごうという姿勢です。

どちらが正しいという問題ではありませんが、共和党と民主党、そしてそれぞれの支持者によって考え方が正反対になっていることが、いつまでも衝突が繰り返される原因と言えます。同時に、国の分断を深めている原因でもあるのです。

実際の対応

9月1日、トランプ大統領は銃撃事件が起きたウィスコンシン州ケノーシャを訪れました。

事件以降、現地では抗議デモや暴動が起きていましたが、トランプ大統領が直接訪れて安全を強調することで、警察や治安部隊の立場を擁護する狙いがあるとされています。

記者会見では「(デモに対して)断固とした姿勢で対応すべき」と述べたうえで、「警察がいるから安全でいられる」と、警察を擁護する姿勢を見せました。

一方で、背後から7発も発砲した警察官の対応に対しては「ひとつのことばかり報じられており、(他の)警察官による人命救助といったことは報じられていない」と明確な回答をかわしました。

トランプ大統領の訪問から遅れること2日、民主党の大統領候補バイデン氏も現地を訪れました。バイデン氏は負傷した黒人男性の家族や弁護士らと面会しており、トランプ大統領とは対照的な行動と言えます。

バイデン氏はコメントで「トランプ大統領は警察を擁護する一方で暴力を扇動している」としたうえで「有毒な存在」と批判しました。

両者とも現地を訪れたことは大統領選を考慮した対応と言えますが、現地での言動は非常に対照的です。

今後の影響

今回の騒動は大統領選の結果にも影響を与えそうです。

トランプ大統領は不法行為に走るデモ隊を制圧することを「国や街を守った」として実績に挙げるでしょう。一方で、バイデン氏や民主党の取り組みは一朝一夕で出来るようなことではないため、多くのアメリカ人は「何もしていない」と判断する可能性があります。

つまり、バイデン氏や民主党は国の非常時に弱いという印象を与えてしまいます。事実、トランプ大統領は自身のTwitter上で「バイデンはいつになったら不法なデモ隊を批判するのか?」や「バイデンは犯罪に弱い」などと指摘しています。

人種差別が生じる社会的な構造を正そうとするバイデン氏や民主党に対して、強引ながら目先の問題を解決できるトランプ大統領を、アメリカ人がどのように比較して評価するかが問われています。

まとめ

以上、「警察官による黒人銃撃事件、大規模デモ、衝突までの騒動まとめ」でした。

アメリカではどの時代でも保守派とリベラル派による対立がありました。また、近年では支持政党による対立も深刻化しており、アメリカの分断が進んでいます。

なかでも、人種差別問題はアメリカ建国からずっと続いている繊細な問題です。大統領選が近づいているだけに、共和党も民主党も人種差別問題を軽視する訳にはいかず、慎重さが求められています。

トランプ大統領とバイデン氏の考え方の違いをアメリカ人がどのように判断するかによっては、人種差別問題の解消や警察改革は進まず、今回と同じことが繰り返されるでしょう。

本記事は、2020年9月25日時点調査または公開された情報です。
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