トライアスロンやマラソンスイミングの会場の水が汚い、異臭がするとの指摘
2021年7月から8月に東京で開催されるスポーツの世界大会では、東京湾に面したお台場海浜公園も会場の一つになっています。
ブルームバーグが東京湾の水質について懸念を報じている😢
『東京五輪でトライアスロンの選手は、まもなく東京湾に飛び込みます。何ヶ月にもわたって浄化しようと努力したにもかかわらず、この湾はまだ悪臭を放っている。バクテリアのレベルは依然として、大きな懸念です』 https://t.co/FNXexgk2CA pic.twitter.com/VyBo97aEWp
— Masa🌗映像ディレクター (@masa_rhythm) July 19, 2021
【え?】「顔をつけて泳ぐな」お台場の海の遊泳条件にビックリhttp://t.co/XGTlM1XLbq
東京五輪のトライアスロン会場となる「お台場海浜公園」で26、27日に海水浴場が特別開設。お台場の海の汚染度は極めて高いという。http://t.co/4qb28ikUAG
— ライブドアニュース (@livedoornews) July 29, 2014
お台場海浜公園で行われるのは「トライアスロン」や「マラソンスイミング」といった海中でのスポーツ競技なのですが、参加予定の選手などから「トイレ臭い」など悪臭についてと、「大腸菌濃度上昇」など、水質汚染について兼ねてから問題視されていて、いよいよ開催となった直前の現在も、指摘が相次いでいます。
楽天ブログの「オリンピック会場は汚物まみれ」という記事に、実際のお台場の海の写真を見ることができます。
▼参考URL:楽天ブログ|オリンピック会場は汚物まみれ(外部サイト)
そもそもの問題、「お台場海浜公園」は、大雨の後は下水が流れ込んでしまう。
東京都のお台場海浜公園は、綺麗な砂浜の人工ビーチがある公園です。
お台場海浜公園は、観光名所にもなっているお台場の「レインボーブリッジ」を眺めることができるなど、景観はとてもいいのですが、ひとたび大雨が降ると、大量の未処理の下水道排水が流れこみ、強烈なトイレ臭を放つことを避けられない、「合流式下水道」という仕組みになっています。
トライアスロンやマラソンスイミングの会場となる東京湾の水質問題の元凶「合流式下水道」とは?
東京湾の水が汚いという水質問題の大きな原因の一つは、汚水と雨水を一つの下水道管に流す「合流式下水道」というシステムにあります。
東京都23区の約8割ではこの「合流式下水道」を整備していて、通常だと全ての下水を水再生センターに集め、処理した上で、河川や海に流す仕組みになっています。
ただ、ゲリラ豪雨など強い雨が降った日、台風の後などには、市街地を浸水から守るために、やむを得ず水再生センターでの下水処理を行わないまま、汚水混じりの雨水を河川や海などに直接放流している状況なのです。
この「合流式下水道」は、100年以上前に整備された古いインフラですが、東京の人口急増により処理容量をオーバーしているようです。
ちなみに、「合流式下水道」に対して、汚水と雨水を分けて処理するのが「分流式下水道」都呼ばれるシステムですが、東京都がこの新たな下水道を整備するには、東京都下水道局の試算だと、少なくとも10兆円以上の財源と、100年以上の工期が必要だということで、非現実だという結論に至っているようです。
▼参考URL:Bloomberg|五輪会場となる東京湾の水質問題、悪臭への不安残るまま本番入りか(外部サイト)
東京湾の「水質汚染問題」は2019年頃から本格的に指摘されてきた
東京湾のトライアスロン会場の水質汚染については、2019年頃から本格的に指摘されてきました。
2019年に、プレ大会としてトライアスロンと、パラトライアスロン、オープンウオータースイミングの競技が行われた際に、選手から「水が臭い」とのクレームが続出したことが報道され、水質問題が知れ渡るようになりました。
この時、パラトライアスロンの水泳パートについては、基準以上の大腸菌が検出され、中止になったことも大きく取り上げられ、東京とは対策を急ぎました。
お台場の水質汚染問題。運営の東京都の対応は「スクリーン設置」などで実施
東京都は上記の競技中止という結果を受けて、2019年9月から本格的に水質改善に取り組んできました。
東京都は、臭いの原因分析から水質等改善の対策の検討しました。そして水質を改善するために伊豆諸島の神津島の大量の砂を東京湾の海中に投入したり、大腸菌を防ぐためにポリエステル製の三重のスクリーンを設置するなどの対策をとってきました。
大量の砂を東京湾の海中に投入し、東京湾の底に溜まっているヘドロを覆うことで、底質の改善を図るとともに、そこにアサリなど二枚貝がすみつくことによる水質改善も期待できるそうです。
また、雨が降った際の流出水を貯めるための新しい貯水タンクを設置して、雨水と一緒に汚水が湾内に放出されてしまう前に、処理できるようにしました。
▼参考URL:東京都|お台場海浜公園における水質等改善の対策について(外部サイト)
いよいよ世界大会。悪臭問題は解決できたのか?
トライアスロン競技は2021年7月26日にスタートします。砂にアサリにスクリーンにと対応してきた東京都ですが、悪臭問題や水質は改善できたのでしょうか。
東京都港湾局港湾整備部環境対策担当課長である樋口友行氏は、笹川平和財団「海洋政策研究所」のホームページで以下のように述べています。
覆砂後に生息が確認されたスピオ類は、環境の変化によって速やかに加入・増殖する日和見種であり、生態系の変化を先導する種とされています。今回覆砂により水底の環境が変化した直後からスピオ類が生息していたことは、覆砂によって水生生物の棲みかが創出され始めているのではないか、と考えています。生物相の回復や安定化には長い時間が必要です。生態系創出の効果がたとえ軽微であっても継続的によい状態が続くことにより、広域的な水質に影響を与えることも考えられます。このため、今後も長期にわたってデータの変化を注視していく予定としています。
生態系は徐々に変化してきているようですが、1~2年で東京湾の悪臭や水質汚染が劇的に変化するものではないことも事実です。
また、お台場の水質について問題提起した港区議会議員の榎本茂氏によれば、「アサリ作戦は水の透明度を上げるためには多少有効かもしれないが、臭いの改善にはつながらない」としています。
夏は気温・水温も上昇し、選手陣はより臭いが気になるかもしれません。
2021年の大会コース
トライアスロンのコース・個人(男子/女子)
世界大会におけるトライアスロンは、東京・お台場が舞台であり、ベイエリアの名所であるレインボーブリッジや観覧車、商業施設群などを望みながらのレースとなります。スタートとゴール、次の種目に移行する「トランジション」はお台場海浜公園です。
最初はスイムから始まり、お台場海浜公園の海1.5kmを約20分で泳ぎ切ります。
スイムの次はバイクで、40km(5km×8周)、約60分間走ります。
最後は、ランです。お台場海浜公園駅の周辺を10km(2.5km×4周)、約30分間走ります。
マラソンスイミングのコース
マラソンスイミングの会場も、トライアスロンのスイムと同じ、お台場海浜公園、台場公園と旧防波堤に囲まれたエリアです。四隅をブイで囲った四角形のコースを25人の選手がおよそ2時間近くかけて泳ぎ切ります。
まとめ - 完全には改善されなかった水質
以上のように、スポーツ大会開催に向けて東京都は行政として環境整備に取り組んできました。
しかし、開幕直前の2021年7月現在でも、選手からは水質を懸念する声が上がっているようです。
一部の海外メディアでも水質汚染と悪臭問題については報じられており、今回の大会では東京湾の水の汚さも世界に発信されてしまっているようです。
2019年の大腸菌検出による競技中止の事例から会場の変更の可能性についても度々話題になってきましたが、結局会場は変更されないまま本番を迎えることとなりそうです。
選手たちが無事に競技を終えることを願うばかりですが、行政として東京都が行った対策は効果があったのかは大会後にも検証される必要がありそうです。
▼参考URL:Yahoo!ニュースオリジナルThe PAGE「東京五輪のお台場会場の水質汚染と“トイレ臭”問題も海外に波紋…「排泄物の中を泳ぐ」「大腸菌濃度レベルが上昇」」(外部サイト)
キーワード:トライアスロンとは?
トライアスロンとは、水泳(スイム)、自転車ロードレース(バイク)、長距離走(ラン)の3種目を、この順番で、一人の選手が一度に続けて行う耐久競技です。
競技解説動画 トライアスロン編
▼出典:https://www.youtube.com/watch?v=BN8XmZ1S8Js&t=3s
キーワード:マラソンスイミングとは?
マラソンスイミングとは、陸上で行われるマラソンの水泳版のような競技です。マラソンスイミングで泳ぐ距離は10キロ、人工のプールではなく、海や湖、池、河川といった自然の中で競われます。
コメント
コメント一覧 (2件)
東京湾の水質が悪いという記事でした。今も使われている合流式下水道というシステムが問題視されていますが、汚水と雨水を分けて処理する分流式下水道を東京都が整備するには10兆円以上のお金と100年以上の工期が必要だということでとても現実的とは言えません。今の時代、不衛生は天敵なのでどうにか解決策を見出だせないかと強く感じました。
マラソンだって札幌で行ったわけだし、別に東京じゃなくても他の海のきれいな日本の地域でやればよかったのではないかとも思う。観光地の宣伝にもなりますよね。