2021年10月21日 日米を含めた欧米各国43か国による共同声明発表
中国の新疆ウイグル自治区においてウイグル民族に対して中国政府が甚大な人権侵害を行っていると、アメリカ、日本を含め欧米各国43か国がそろって抗議をする共同声明を国連委員会で発表しました。しかし、これに対して事実ではないと中国は反論し、キューバなどの途上国62か国が中国を擁護する共同声明を出すという非難の応酬が始まりました。
中国がウイグル民族に行っている人権侵害とは何か。どうしてそのようなことをするのかを調べてみました。
声明の内容
新疆ウイグル自治区に居住するウイグル民族に対して、「中国政府による拷問、暴力などの人権侵害が広範囲かつ組織的に行われており、宗教および表現の自由が厳しく制限されている。」とするもので、中国政府に対して「人権保護の国際法を守ることを強く求める。」というものでした。
先進国各国は2020年10月6日にも香港およびウイグル民族に対する人権侵害をやめるよう共同声明を出したのに続き、2度目の共同声明の発表となりました。
新疆ウイグル自治区とは
新疆ウイグル自治区は中国最西部に位置し、中国の省を含めても中国最大の広さを誇る中国最大の自治区(首都ウルムチ)です。その広さは165万平方㎞で日本の4倍以上もあります。
ウイグル民族とはもとはテュルク系の遊牧民族で、中央アジアからモンゴル高原までのかなりの広い範囲を移動しながら遊牧生活を送っていました。一部はトルコまで流れトルコ共和国を建国しました。現在の中央アジア地域と新疆ウイグル自治区一体を『テュルク系の民族が住む土地』という意味の『トルキスタン』と呼ばれています。中央アジアが位置する東側を東トルキスタンと呼び、新疆ウイグル自治区が位置する地域を西トルキスタンと呼びます。
新疆ウイグル自治区の歴史
2500年以上もあると言われる古い歴史の中で、ウイグル民族は清朝、モンゴル帝国、中華民国などの支配下となりました。
1933年、1944年
二度にわたり東トルキスタン共和国の設立を試みるが失敗
1955年
中国新疆ウイグル自治区となる
ウイグル民族はイスラム教を信仰し、独自の言語であるウイグル語を話し、中国主要民族である漢民族とは異なる文化や生活習慣をもっているため、漢民族と度重なる民族紛争をおこしていました。
1990年ソ連崩壊とウイグル民族の関係
東トルキスタン地域の中央アジアに住む同じトルキスタン民族は次々と独立していったことで、中国内で新疆ウイグル自治区の独立運動が激しくなりました。ウイグル民族による独立運動は中国に対するテロ行為だとして中国政府の弾圧が激しくなりました。
中央アジアから独立した国
カザフスタン
キルギス
ウズベキスタン
トルクメニスタン
タジキスタン
新疆ウイグル自治区が独立できない理由
新疆ウイグル自治区には石油、石炭、天然ガスなどの豊富な天然資源が埋蔵されています。中国全体の3~4割を占めるといわれているこの天然資源は、高度成長を急速に進めている中国にとって重要なのです。
ウイグル民族に対する弾圧
諸外国は中国政府が行っているウイグル民族に対する人権侵害をやめるように中国政府に圧力をかけていますが、その人権侵害とはどのようなものなのでしょうか。
1.ウイグル人を無料で教育、職業訓練を行うとして、『職業技術教育訓練センター』と呼ばれる収容所に送る。その収容所の中では、暴力、拷問、強制労働がされていると言われている。
2.ウイグル人に民族言語であるウイグル語を話すことを禁じる。
3.イスラム教徒が食べてはいけない豚肉を強制的に食べさせる。
4.イスラム教徒の特徴とされる髭や髪の毛を切るなどの侮辱行為。
先進国では、中国産の綿花の8割を生産する新疆ウイグル自治区でとれる綿花は強制労働者によってもたらされたものだとして、中国産綿製品の不買運動が起こりました。
まとめ
諸外国は中国に対して人権侵害をやめるように唱えていますが、中国は断固そのような人権侵害は行っていないという態度を示しており、両者の間にはまだまだ深い溝があり、話し合いは平行線のままです。
参考資料サイト
中国 新疆ウイグル自治区の人権状況めぐり国連で非難の応酬 | 中国 | NHKニュース
(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211022/k10013317421000.html)
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