【市役所】小田原ジャンパー事件から見る、生活保護の穴と職員の苦悩

【公務員の仕事に関する出来事】小田原市の職員たちが起こした不祥事である、小田原ジャンパー事件についてです。表面上では、公務員の不祥事として片づけられがちなこの事件、その事件の本質、生活保護の持つ問題点について考察します。

小田原ジャンパー事件とは

生活保護業務に関する職員の不祥事

小田原ジャンパー事件とは、小田原市の生活保護業務に関する職員たちが起こした不祥事です。2007年から2010年まで、不適切な文言の書かれた自費のジャンパーを着用し、業務にあたっていた事が発覚した不祥事です。

不適切な文言とは、不正受給者も含めた生活保護受給者に対して、侮蔑するような内容となっています。

小田原ジャンパーとは

市の職員が着用していたジャンパーは、「小田原ジャンパー」と呼ばれ、各メディアで報道されました。

ジャンパーの左胸には、「HOGO NAMENNA」(保護なめんな)と共に悪に×印のつけられたエンブレムがあります。また、このエンブレムデザインは、海外サッカーチームのリバプールのチームロゴに酷似しているので、ここから取ったのではないかと言われています。

ジャンパーの背中部分には、「SHAT TEAM HOGO」の文字があります。また、SHATとは、S(生活)H(保護)A(悪撲滅)T(チーム)の略であるとされています。文字の下には、「自分たちは正義であること、小田原(市民)の為に働かなければいけないこと、生活保護の適切な給付の為に、不正受給を追いかけて罰すこと。もしも自分たちをだまして、不正受給をするものがいるのなら、「あえて言おう、カスであると!」という意味の英文が書かれています。また、「あえて言おう、カスであると!」は、機動戦士ガンダム内のセリフから取られたのではないかと言われています。

小田原ジャンパーは自費制作

小田原ジャンパーは、生活保護業務を行う市の職員たちで募集を募り、自費制作されたものです。1着4400円で、業者に作成を依頼したとされています。これまでに64人がこの小田原ジャンパーを購入し、事件発覚時には在籍する25人の大半が持っていました。また、冬場に、実際に小田原ジャンパーを着用して生活保護受給者の家に訪問するなどして使われていた事が分かっています。

小田原ジャンパー事件の反響を見てみよう

苦情が殺到

不正受給だけでなく、不正受給を行っていない正規の生活保護受給者も威圧する物として、小田原市役所には900件以上の苦情が殺到したと言われています。

一方で、職員を擁護する発言も

そもそも、生活保護を不正受給する人がいるからこそ、この小田原ジャンパーは作られたのではないか?といった意見も多く、職員を擁護する意見もインターネットなどでは見られました。

具体的に上げると…
「生活保護受給を否定しているのではなく、不正受給を否定している」
「不正受給者のために、自分が納めている税金は使われたくないので、小田原ジャンパーのいう事も分かる」
「不正受給を許さない気持ちは理解できる。けれども、表現方法が間違いだった」
などです。

生活保護業務への同情の声も

また、小田原ジャンパーが作られたきっかけとは、2007年に生活保護受給を打ち切られた男性から、市役所内で市の職員2人がカッターナイフで切り付けられた事件です。事件をきっかけに、その当時の係長の発案で、小田原ジャンパーが作成されたと言われています。

生活保護に携わる業務を行っている職員は、色々過酷な目に合う事もしばしばあります。その為、小田原ジャンパーを作成し、威圧的な雰囲気にしなければ業務が進められなかったのでは?といった声もあります。

小田原市の職員がやったことは確かに不適切です。けれども、こうならざるを得ない業務内容にも問題はあるのではないかとの声もあります。

実際に、小田原ジャンパーの製作に関わった職員の一人は、小田原市の調査に対して「自尊心を高揚し、疲労感や閉塞感を打破するための表現だった」と説明しています。不正受給を許さないと言うメッセージと共に、時には嫌な思いをする事もある、過酷な状況にある生活保護関連の業務を行うにあたって、職員の連帯感を高める為に制作したのです。

生活保護について知ろう

不正受給は犯罪です

公務員の不祥事として発生した小田原ジャンパー事件の裏側には、生活保護の不正受給や生活保護関連業務の過酷さがあることが分かりました。

不正受給、と言葉は聞きますが、実際にはどのようなパターンが不正受給になるのでしょうか。まずは、生活保護の内容について見てみましょう。

生活保護を受けるには条件がある

まず、生活保護のシステムについて理解しておきましょう。生活保護とは、「資産や能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する方に対し、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長する制度」となっています。

つまり、病気などで仕事がなくなり、収入がなくなった時。かつ、貯金や資産の元になる不動産なども手元にない時。頼れる身内などもいない時に、生活に困っている時に、日本国民として最低限の生活を送れるようにお金を給付する、そして自立の手助けとする制度の事です。

生活保護を受けるのには、色々な条件があります。
・資産の活用…貯金がある時や、売却できる不動産などは活用して生活費にする
・能力の活用…体が健康で働けるなら働く
・あらゆるものの活用…頼れる身内がいる、他の年金制度や加入していた保険など他に活用できるものがあれば活用する

これら全てが不可能であるときに、初めて生活保護を受ける事ができます。

生活保護の金額はどのように決まる?

生活保護は、自分自身が持つあらゆるものを活用しても、生活が困窮する時に初めて受ける事ができる制度という事が分かりました。

次に、生活保護で実際に給付される金額はどのように決まるのかについて見てみましょう。
以下のように、生活を営む上で必要な各種費用に対応して扶助が支給されます。

厚生労働省生活保護の制度についてのページより 生活保護費の決定の図

出典
厚生労働省生活保護の制度
厚生労働省生活保護

生活保護の申請方法とは

生活保護を受ける前に、住んでいる所の福祉事務所に生活についての相談を受けます。その時に生活保護を含めて、生活福祉資金、各種社会保障施策等の説明や、困窮する生活を救うために活用できるかも一緒に検討します。

生活保護の受給申請を行った後は、生活状況等を把握するために職員が家庭訪問などを行います。また、預貯金、保険、不動産等の資産の状況を見たり、仕送りなど扶養義務者による扶養があったりしないかを調査します。他にも、年金等の社会保障給付、就労収入等の調査や、本人の就労の可能性の調査の流れで調査が行われます。

調査の結果、生活保護の受給が決定した場合、厚生労働大臣が定める基準に基づく最低生活費―収入=保護費として毎月支給されます。つまり、アルバイトなどで収入があった時には、申告しなければいけません。

また、生活保護の受給期間中は毎月ケースワーカーか訪問して現状を調査します。それに加えて、毎日の状況の報告や、就労や自立へ向けての助言や指導も行います。

あくまで、生活保護は今生活に困窮している人が、いずれは自立して生活が送れるように補助をする制度という事を覚えておきましょう。

不正受給とは?具体的なケースを見てみよう

さまざまな手法が編み出され、不正受給がされている

生活保護は、その人の最低限の生活を保障する為、そして自立を支援する制度である事が分かりました。もちろん、生活保護で給付されるお金は日本国民が納めた税金から賄われています。

中には、生活保護を不正受給する悪質なケースもあります。小田原ジャンパーが作られるきっかけになった原因のひとつである、生活保護の不正受給について、ケース別に見てみましょう。

タンス貯金など、資産を隠しておく

生活保護は、持っている資産を活用しても生活が困窮している場合に受けられます。タンス貯金や不動産の所有、貯蓄性の高い生命保険の加入などが発覚した時には、受給を打ち切られるだけでなく、今までの生活保護費を返却しなければいけません。

また、生活保護費を貯金する事は禁止されていません。就職のため、老後の費用のためなど、ケースワーカーにきちんと用途を説明でき承諾される事、月々の生活保護費の用途も一緒に開示する事が条件です。ちなみに、子供の塾の費用や大学進学のための費用など、学費の為の貯金は認められています。

偽装離婚など、扶養家族を偽る

夫婦が書類上は離婚をして、生活保護費を受け取る悪質なケースがあります。また、シングルマザーが内縁の夫と籍を入れずに、生活保護費だけでなく母子手当なども受給し続けるなどのケースもあります。

内縁の夫との子供ができるケースもあり、困窮世帯の悪循環にもなっています。

収入があるのに申告をしない

キャバクラなどの水商売、風俗の仕事をしているのに申請をしないケースです。これらのお仕事は給料が手渡しの所も多く、通帳振り込みなどで収入の証拠がつかめなくなっています。また、近年ではブログアフィリエイトや動画投稿サイトの利用などのネットワークビジネスも発展した事により、不労収入も多くなりました。古くからのケースでは、ドヤと呼ばれる日雇い派遣労働を利用して働く人もいます。

生活するだけの収入がある時には、もちろん生活保護の受給はできません。それでも、収入を隠し続けて、不正受給をしている場合も多いです。

生活保護の二重給付を受ける

生活保護は、ホームレスなどで住所不定の場合でも受給を受ける事ができます。それを利用して、複数の自治体の生活保護を二重・三重に受けていたケースもあります。

生活保護関連業務の過酷さを見てみよう

職員やケースワーカーが暴行を受けることも

小田原ジャンパーが作られたきっかけも、生活保護受給の打ち切りとなった男性から、市の職員二人がカッターナイフで切り付けられた事件からでした。

生活保護は、受給者や申請者、そしてかつて受給をしている人から職員や訪問したケースワーカーが暴行を受ける事も多いです。申請が通らなかった為に、職員や訪問したケースワーカーに殴り掛かる、暴言を吐かれるなどのいわゆる逆切れをされる事も多いです。

また、生活保護の受給費用が自分の想像よりも低かった、などの理由で職員やケースワーカーの対応が悪い、と自治体にクレームを入れる事もあります。職員やケースワーカーが丁寧に、親切に対応してもいわゆる「八つ当たり」でのクレームも多くなっています。

職員が精神的に参ってしまう事も

通常の業務をしているだけでも、暴言を吐かれる、時には暴力を受ける、いわれのないクレームを付けられるなど、職員やケースワーカーが生活保護に関わる人たちから不当な扱いを受けることも多いです。

また、生活保護の不正受給が発覚した時や、クレームを付けられた時には、上から叱責を受けることもあり、まさに間に挟まれる事も多い職員やケースワーカーは、精神的にも辛い仕事です。

不正受給をなくす、そして職員の負担を軽減する為には?

通報が効果的

生活保護の不正受給を失くすこと、そして生活保護の業務に関わる職員やケースワーカーの負担を減らす第一歩としては、一般人からの通報が効果的です。

近隣に住んでいる生活保護を受けている人で、身の回りが派手になっている、どうやら男性と同居しているみたい、夜の仕事をしているそぶりがある、などの不正受給の兆候がある時には、通報をしましょう。

自分が通報した事がばれるのが怖い、という方でも安心して下さい。公務員には守秘義務がありますので、通報した先がばれる事はありません。匿名での通報も大丈夫です。通報先は所轄の警察署でも、市役所でも、民生委員でも大丈夫です。電話の通報でも受けてくれます。勇気をもって通報してみましょう。

不正受給は日本全体で見れば氷山の一角とも言えます。けれども、少しでも不正受給が減れば、税金が有効に使用されることだけでなく、本来生活保護を受けるべき人に、保護費をまわす事もできます。

そして、生活保護が正当に受給できる世の中になれば、職員は二度と小田原ジャンパーを作る事はなくなるのではないでしょうか。

本記事は、2017年8月19日時点調査または公開された情報です。
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