【自衛隊の階級は何種類?】自衛隊における階級制度を解説

特別職の国家公務員「自衛隊員」の階級についての解説ページです。階級制度は、自衛隊における自身の位置づけのためだけでなく、個々の任務や俸給などにも大きく影響しています。

「階級第一」である自衛隊は、どんな階級で構成されているのか?階級それぞれには、どんな任務が与えられているのか?を解説します。


自衛隊における階級構成とは?

約23万人いる自衛隊員で、階級を持たない者はいません。そして国防を担う大組織であるがゆえ、階級は重要な役割を担っています。

ここでは、自衛隊の階級構成や仕組みなど、自衛隊における階級の概要についてご紹介します。

非常にシンプルな階級構成

自衛隊は大きく分けて「曹士」と「幹部」の2つの区分に構成され、士・曹・准尉・尉官・佐官・将官の6つに分類されています。そして、更にそこから16種類に細分化、これが隊員一人一人に付与される階級となります。

この自衛隊の階級は、各国の軍隊と比較しても、非常にシンプルです。

26の階級で構成されているアメリカ陸軍、21種類の階級で構成されているイギリス陸軍と比べても、自衛隊の階級の種類が絞られていることがお分り頂けるはず。

また海外では陸海空それぞれで独立した階級が設けていたり、同じ階級であっても呼び名が異なる場合がありますが、自衛隊の階級は陸海空共通、階級の呼び名も統一されています。

階級は、俸給及び賞与の算出基礎となる

一般企業では、個々の役職が給与の算出基礎となりますよね。
同様に自衛隊でも、隊員に支払われる俸給や賞与は、隊員それぞれが持つ階級をベースに算出されています。

ちなみに隊員に支払われる俸給は、階級と等級によって基本給が決まります。そしてこれに各種手当をプラスしたものが、隊員一人ひとりに支払われる俸給となっています。

俸給や賞与は、自衛隊員の安定した生活の基礎となるもの。そういった意味でも、隊員の階級が及ぼす影響力というのは、非常に大きいと言えます。

昇任試験や選抜によって階級が上がる

入隊してすぐに与えられる階級は、退職までずっと同じというわけではなく、昇任試験や部内選考によって昇格していきます。

昇任試験は、士から曹、曹から幹部を目指す際に受けるものです。数種類の試験項目をクリアし、合格することで昇任することができます。そしてそれ以外、例えば2士から1士、3尉から2尉といった昇任は、成績や功績を考慮して部内で選考されます。


階級が上がる一方、階級が下がる場合も全くないわけではありません。上官によって、勤務実績や勤務態度が自衛隊員としてふさわしくないと判断された場合、降任される場合があるのです。

入隊から退職に至るまでの隊員の階級は、自身の日頃の行いや努力によって左右されます。そういった意味で、階級は自衛隊員として任務を遂行するための、モチベーションとなっているのではないかと筆者は感じています。

ここまで自衛隊における階級の概要についてご紹介してきました。次からは、曹士と幹部、さらには士・曹・准尉・尉官・佐官・将官の6つに分けて、それぞれの任務や位置付けについて詳しく解説していきたいと思います。

自衛隊員の約8割を占める「曹士」

自衛隊員の大半を占める曹士は、指揮系統では下の部分には位置するものの、部隊の戦力として大変重要な存在です。

自衛官としての基礎を確立する「士」

2士、1士、士長の3つから成る「士」は、自衛隊の中でも一番下に分類され、自衛隊員に必要な気力・体力を確立する基礎期として位置付けられています。また現在およそ42,000人いる士は任期制隊員と非任期制隊員で構成されており、階級の中で唯一、定年が設けられていません。

そのため、士では「任期満了に伴い自衛隊を退職する」または「昇任試験を受けて自衛官としてのキャリアを積む」のいずれかの道を選ぶこととなります。

なお、2士から士長への昇任例には以下が挙げられます。

一般曹候補生2士採用により入隊。

教育課程や部隊勤務を経て、6ヶ月後に1士へ昇任。

1年後に士長へ昇任。

士長になると曹への昇任試験への受験が可能となり、筆記試験や体力検定を経て選考されます。2士から3曹へは、早くて3年で昇任することができますが、昇任試験は競争率が高く非常にシビア。多くの隊員が、日頃から試験勉強や体力錬成を重ね、昇任試験に臨んでいます。

全自衛官の中で6割を占める「曹」

3曹、2曹、1曹、曹長の階級から成る「曹」は、全自衛官の約6割を占め、部隊の主力として任務を遂行する重要な存在です。一般企業に例えると、中堅~主任、係長などに相当するかと思います。また曹は士の直属の上司として、日頃の業務や服務の指導にも当たっています。

曹と士の大きな違いは「定年が設けられている」ということ。3~2曹は53歳、1曹~曹長は54歳が定年となっています。そのため士から曹になってしまえば、自衛官として退職まで長期に渡って勤務できます。実際、曹の階級は20代から50代までの幅広い世代で構成されています。

4つの階級から成る曹は、それぞれで立場や職務が大きく異なるのが特徴的。体力・気力ともに充実している3曹は動ける存在として様々な業務をこなしますし、1曹や曹長になるとベテランとして指導する機会が増えます。これにより、曹は業務や訓練の中で、インプットとアウトプットを数多く経験する階級であると筆者は感じています。

陸上自衛隊では近年「先任上級曹長」への関心が高まっている

近年、陸上自衛隊内では「先任上級曹長」への関心が高まってきています。

先任上級曹長とは、部隊内の陸曹長や准陸尉の階級を持つ隊員に与えられるポストで、陸士・陸曹の最上位者として指導育成を行ったり、指揮官を直接補佐する任務があります。そして陸上自衛隊の各司令部や司令本部には、さらに全体の准曹を最上位者である「最先任上級曹長」が配置され、指揮官への助言等を行なっています。

先任上級曹長及び最先任上級曹長の配置が行われるようになった背景には、小部隊の中心的存在である陸曹に与えられる任務の重要性が高まっていることから。曹士の近い存在として部隊をまとめる先任上級曹長は、今後さらに重要な任務が与えられ、部隊ならびに陸上自衛隊を牽引する存在になると言われています。


部隊を統率する「幹部」

自衛隊の中で割合は少ないものの、部隊の指揮統率を行うのに必要不可欠な存在である幹部。そんな幹部は、「准尉」「尉官」「佐官」「将官」の4つに分類されます。

そして曹士とは異なり、同じ階級に若手とベテランが混在しているのが幹部の特徴となっています。

曹士と尉・佐官の橋渡しをする「准尉」

自衛隊においては1970年に設置された「准尉」は、業務・訓練の教育や服務指導に当たったり、尉・佐官の意向を曹士に伝達したりと、言わば“曹士と幹部の橋渡し”を担う存在。また近年における幹部減少に伴い、本来幹部が配置される小隊長・班長等に准尉を補職する傾向にあるそうです。

そんな准尉は、ベテラン自衛官として長年培った経験や知識が求められるポストとなっています。

若手とキャリアが混在する「尉官」

3尉、2尉、1尉で構成される「尉官」は、リーダーシップを持って部隊を牽引する存在です。また部隊における尉官の位置付けは、佐官に続き2番目となります。

そんな尉官は、同じ階級に防大出身の若手と、自衛官として長年勤務してきたベテランが混在しているのが特徴的。そして部隊の雰囲気は在籍する尉官によって大きく変わると言われており、尉官が持つ影響力の高さが伺えます。

部隊での圧倒的な存在感を持つ「佐官」

3佐、2佐、1佐からなる佐官は、中隊長や隊長職に付くのが一般的で、統率力を持って部隊を指揮する任務を担っています。

圧倒的な存在感を持つ佐官であるがゆえ、曹士は普段あまり接する機会はありません。しかし准尉や曹長などと密接に連携して、部隊に在籍する隊員一人ひとりの身上を把握することも佐官の重要な役割となっています。

“雲の上の存在”とも言っても過言ではない「将官」

将補、将から成る将官は、駐屯地司令、師団長、陸海空それぞれの幕僚長などの自衛隊トップが持つ階級です。

現在、軍事評論家として活動している田母神俊雄さんは、空将として第29代航空幕僚長を務めたことでも知られています。

将官は、若いうちから幹部としてのキャリアを歩む防大出身の自衛官でさえ、目指すのが難しい階級。将官になるということは、それだけ相当なキャリアと並ならぬ努力を積んだという証拠であると言えます。

もちろん将官は、普段絶対お会いすることはない、そんな雲の上の存在です。

自衛隊の階級でトップの役職は?その仕事内容とは?

自衛隊における階級のトップは陸将・海将・空将ですが、将官が就く役職にはどんなものがあるのでしょうか。

防衛省のトップが防衛大臣であることは、皆さんご承知の通りだと思います。
この防衛大臣の指示や意向をダイレクトに受け取り、各方面に伝達する役割を担っているのが統合幕僚長、すなわち自衛隊のトップです。

そんな統合幕僚長の職務には、陸海空各自衛隊の隊務や隊員の服務の監督、部隊等に対する防衛大臣の命令執行などが挙げられます。

そして統合幕僚長を長として編成される統合幕僚監部では、防衛及び警備に関する計画立案、これに際する教育訓練・編成・装備・配置等の計画作成などを多岐に渡る業務を行っています。この統合幕僚監部が行う事務の指導管理に当たっているのも、統合幕僚長。自衛隊という船の舵取りを担っているのです。

ちなみに統合幕僚長の下には、陸上幕僚長・海上幕僚長・航空幕僚長が配置されており、統合幕僚長からの指示を陸海空の各自衛隊から各方面総監、さらには各部隊への伝達や調整を行なっています。

階級章で判断する、それぞれの階級の見分け方とは?

自衛隊員の階級を見分ける上で一番重要なのが、階級章です。厳密には陸海空それぞれで仕様が違うものの、階級章は線や星を組み合わせて出来ているのが特徴的。現役自衛官は、この階級章から士長、1曹、3佐などの階級を瞬時に判断し、隊員同士コミュニケーションを取っています。

階級を見分けるポイントは、階級章にある星・線の数・位置

階級章は基本的に、線や星の数が多いほど階級が上となります。そして曹士は線、幹部は線と星で階級章が構成されています。


また階級章が付いている位置もポイント。士は上腕部分に、曹は襟元部分に、幹部は肩部分に階級章があり、上の階級ほど体の高い部分に階級章が付いています。

制服での階級章を例に挙げるとすると、士長は上腕部分に3本線の階級章が付いており、1佐は肩部分に星3つと2本の線から成る階級章を付けています。

細かく覚える必要は全くありませんが、自衛官を見かけた際は、階級章の線や星の数に注目してみてはいかがでしょうか。

まとめ

いかがでしたか?自衛隊における階級は、指揮系統の確立だけでなく、個々の隊員のモチベーション維持にも重要な役割を果たしていることがお分り頂けたのではないでしょうか。今回の記事を通して、自衛隊の階級制度について少しでも知っていただければ幸いです。

本記事は、2017年7月23日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

気に入ったら是非フォローお願いします!
NO IMAGE

第一回 公務員川柳 2019

公務員総研が主催の、日本で働く「公務員」をテーマにした「川柳」を募集し、世に発信する企画です。

CTR IMG