【自衛隊の給料】自衛官の階級ごとの給料はどれくらい?

自衛隊(自衛官)の「給料」について解説します。

日夜、日本を守る自衛官は、国家公務員であり、他の国家公務員同様、「俸給」と「諸手当」によって給料の額が決まる制度になっています。

本ページでは自衛官の給料について階級ごとの情報と「俸給表」について解説します。


はじめに

自衛官の給料についてどんなイメージを持っているでしょうか。

「公務員だから民間企業よりももらっている」「役職・階級によって給料が違う」「危険な仕事だから給料が高い」など、なんとなくイメージはあるものの、実際の制度を知らない方は多いと思います。

本記事では自衛隊(自衛官)の「給料」について、基本的な計算方法や特殊手当などに関しく詳しく解説します。

*自衛官の給料は、正しくは「俸給」ですが、この記事では便宜上「給料」として解説します。

自衛官の平均年収

まずは、自衛官の平均年収を年代別にまとめました。全国平均と比較すると、自衛官の方が平均よりも高い傾向にあります。

年代 全国平均年収 自衛官平均年収
20~24歳 250万円 310万円
25~29歳 351万円 469万円
30~34歳 403万円 516万円
35~39歳 433万円 534万円
40~44歳 460万円 598万円
45~49歳 493万円 677万円
50歳~ 504万円 736万円

▼参考URL:https://www.mod.go.jp/pco/obihiro/recruit_works_pay.html

自衛官の基本的な給料は「俸給表」で計算されます

自衛隊の隊員である「自衛官」の給料は、「俸給(ほうきゅう)」と「諸手当」によって金額が決まります。

俸給は、法的に定められた国家公務員の基本給のことで、自衛官の場合は「防衛省の職員の給与等に関する法律」という法律に定められており、自衛官の俸給は、「俸給表(ほうきゅうひょう)」というものに明確に定められています。この俸給表は、横軸の「階級」と縦軸の「号俸」で構成されているものです。ちなみに、俸給表は、人事院が作成しているもので、毎年、民間企業の給料水準と比較しながら給与額の見直しが行われています。

自衛官の給料の基本給の計算シートである俸給表の横軸の「階級」には、「士」、「曹」、「尉」、「佐官」、「将官」という5つの自衛隊における階級が記載され、縦軸の「号俸」は、勤続年数や功績などにおける評価を示すもので、1号、2号、3号……と記載されています。要するに、この俸給表の「階級」と「号俸」を照らし合わせることで基本給となる「俸給」を求めることができます。

例えば、高卒で自衛隊に「一般曹候補生」として入隊したばかりの自衛官は、「2士」と呼ばれる「士」階級に該当します。また、入隊したばかりですので、「号俸」は「1号」とします。この場合、俸給表にて縦軸の「2士」、横軸の「1号」を照らし合わせると、俸給は167,700円であると求めることができます。

このように、自衛官の俸給は、「階級」と「号俸」で決まり、ここに各諸手当が加わったものが最終的な給料額となります。


自衛官の「階級」はどのようにして上がるの?

自衛隊では、「階級」というものがあり、この階級が上がることを「昇任」といいます。

昇任の仕方は階級により異なります。「一般曹候補生」の場合「2士」という階級から始まりますが、その上の「1士」、「士長」までは自動的に昇任します。しかし、その上の階級である「3曹」という「曹」階級に上がるためには昇任試験に合格する必要があります。

このように、階級によっては昇任するために試験に合格しなければならない場合があります。このほか、勤続年数や能力・成績によって昇任する場合があります。

階級が1つ昇任するごとの給料額は、同じ1号でも「2士」が167,700円であるのに対し、「1士」はおよそ182,500円と14,800円上がります。

昇任によって、全ての階級に大きな給料差が産まれるわけではありませんが、昇任することによっておおよそ10,000円程は給料が上がります。

そして、昇任した場合、「昇任前の俸給月額に比べて直近上位の俸給月額に該当する号俸」が適用されます。そのため、前の階級よりも俸給の額が下がることはありません。

自衛官の給料に関係する「号俸」はどのようにして上がるの?

高卒で自衛隊に入ったばかりの「一般曹候補生」の場合、「号俸」は「1号」であると定めましたが、この「号俸」は、どのように上がるのでしょうか?

号俸は、「勤続年数」や「功績」に応じて上がり、このことを「昇給」といいます。

自衛隊では、1年に1回、1月1日に昇給が行われます。基本的には、勤続年数に応じて通常4号ずつ上がりますが、優秀だと6号、さらに優秀だと8号ずつ上がることがあります。ただし、評定が悪い場合は2号、懲戒等対象の場合は1号も上がらないこともあります。

ちなみに、1号上がるごとの昇給額はおよそ1000~2000円ほどです。そのため、号俸が上がるよりも、階級が上がることのほうが給料の額は上がりやすいです。

なお、号俸が下がることは原則的にはありません。

自衛隊(自衛官)の階級ごとの基本的な給料について

自衛官の各階級ごとの基本的な俸給をご紹介します。

上の【自衛官の基本的な給料は「俸給表」にて定められている】でご紹介したように、自衛官の俸給は、「号俸」により違いが生まれます。そのため、ここでは階級ごとのおおよその俸給(月)の目安をご紹介します。

自衛官の士階級の俸給(基本給)

自衛官には、「士」という階級がありあります。

士階級は、自衛官候補生のような任期制の自衛官が採用される階級で、一般企業でいう「契約社員」のポジションに値します。士階級には、2士、1士、士長の3つの階級があります。


士階級の俸給(月)は、2士がおよそ167,700~178,900円、1士がおよそ182,500円~198,200円、士長がおよそ182,500円~242,800円です。士階級は、2士から士長まで昇任がとんとん拍子に進むため、2士と士長の給料にはあまり差がありません。

自衛官の曹階級の俸給(基本給)

自衛官には、「曹」という階級があります。

曹階級は、一般企業でいう「一般社員」のポジションに値します。曹階級には、3曹、2曹、1曹、曹長の4つの階級があります。3曹は、「一般曹候補生」で採用された者が配属されるため、自衛隊のなかでも1番数が多い階級です。2曹、3曹にもなると幹部を補佐するポジションになり、曹長ともなると40代以上のベテランのポジションになります。

曹階級の俸給(月)は、3曹がおよそ197,800円~311,100 円、2曹がおよそ220,900円~380,500円、1曹がおよそ229,500~410,100円、曹長がおよそ229,700円~424,900円です。曹階級ともなると、昇任のスピードに差が生まれるため、士階級よりも俸給に差が出始めます。

自衛官の尉階級の俸給(基本給)

自衛官には、「尉」という階級があります。

尉階級は、自衛隊における「幹部」ポジションの始まりであり、部隊の指揮を任され始めます。尉階級には、准尉、3尉、2尉、1尉の4つの階級があり、3尉からは「尉官」と呼ばれる幹部ポジションです。「幹部候補生」で採用されると、まずは3尉に任官されます。幹部候補生は、大学・大学院卒が採用対象のため、若い人では22歳程で1部隊の指揮を任されます。

尉階級の俸給(月)は、准尉がおよそ236,200円~436,700円、3尉がおよそ244,800円~439,200円、2尉がおよそ252,800円~440,900円、1尉がおよそ278,500円~445,700円です。尉階級は、部隊の指揮を任されるようになるため、士や曹階級よりもより責任が伴います。そのため、俸給も高めに設定されています。

自衛官の佐官階級の俸給(基本給)

自衛官には、「佐官」という階級があります。

佐官ともなると、自衛隊幹部のなかでも名の知れた存在となります。佐官には、3佐、2佐、1佐の3つの階級があり、佐官のなかでもトップである1佐にもなると、1000人以上の隊員のトップに立つ隊員になります。

佐官の俸給(月)は、3佐がおよそ318,600円~468,800円、2佐がおよそ344,600円~488,500円、1佐はおよそ395,600円~496,200円です。1佐と自衛隊の末端にあたる2士の1号の場合の俸給を比べると、およそ227,900円の差があります。佐官になるには、自衛官としての能力の高さはもちろん、経験年数も必須です。

自衛官の将官階級の俸給(基本給)

自衛官には、「将官」という階級があります。

将官は、陸上・海上・航空のトップとなる存在であり、自衛官のなかでもエリートが選ばれるポジションで、どんなに早くとも40代以降でなければ任命されません。将官には、将官と将補の2つのポジションがあります。

将官の俸給(月)は、将補はおよそ513,100円~592,500円、将官はおよそ706,000円~1,175,000円です。将官は、全ての自衛官のトップとも言えるポジションのため、背負う責任もより重いものとなります。そのため、俸給も自衛官のなかでもトップクラスの金額が支払われます。

自衛隊では「俸給」以外にも「各種手当」が支給されます

自衛隊の隊員である「自衛官」では、上記の俸給に加えて、各種手当が支給されます。自衛隊には、各部隊により様々な手当がありますが、ここでは基本的な手当をご紹介します。

各種手当1:通勤手当

自衛隊では、通勤距離が片道2km以上の場合「通勤手当」が支給されます。交通機関を利用する場合は、1ヶ月あたり55,000円を限度に支給され、自動車を利用する場合は、最低片道5km未満2,000円~片道60km以上31,600円を限度に支給されます。

各種手当2:扶養手当

自衛隊では、妻や子供を扶養すると「扶養手当」が支給されます。結婚し妻を扶養するとおよそ6,500円、子供を扶養すると15歳までの子供1人あたり10000円、16~22歳までの子供1人あたり15000円が支給されます。

各種手当3:単身赴任手当(たんしんふにん)

自衛隊では、家族の住む家から新たに配属された単身赴任先までの距離に応じて「単身赴任手当」が支給されます。単身赴任手当は、基礎額である30,000円から、距離が増えるにつれて支給額が増額されます。ただし、異動等に伴う転居、通勤困難、 常に単身状態である、やむを得ない事情による別居の4つの条件を満たさなければ支給されません。

各種手当4:地域手当

自衛隊では、東京都や大阪市などの物価の高い都市部に配属された場合、物価の高さを補てんするために「地域手当」が支給されます。

例えば同じ「曹」階級の自衛官でも、物価の高い都市部に配属された場合と物価の安い地方に配属された場合では、家賃や物の高さで給料の額に差が生まれてしまいます。その差を埋めるために地域手当は支給され、支給額は(俸給+俸給の特別調整額+専門スタッフ職調整手当+扶養手当)の月額に支給割合をかけて求めます。


各種手当5:災害派遣手当

自衛隊では、土砂崩れや除雪作業などの災害派遣で出動すると、「災害派遣手当」が支給されます。災害派遣手当は、1日あたり1,620円が支給されますが、連続2日以上作業に従事しなければ災害派遣手当は支給されないという条件があります。

ただし、「人命に著しい危険が伴う人命救助」の場合は、1日でも災害派遣手当が支給され、増額が認められる場合もあります。

各種手当6:航空作業手当

自衛隊では、航空機に搭乗して作業すると、「航空作業手当」が支給されます。主に航空自衛官や陸上自衛官のパイロットに支給されます。

各種手当7:乗組員手当・航海手当

自衛隊は、潜水艦や護衛艦など、艦艇勤務をすると「乗組員手当・航海手当」が支給されます。主に海上自衛隊に所属する自衛官に支給されます。

自衛官の「年収」「手取り」はそれぞれいくらなのか

自衛官も当然、給料から所得税や住民税等の各種税金が引かれます。実際の生活水準をイメージするために、自衛官の「手取り額」について説明します。

20~24歳頃の自衛官の手取り

あくまでも参考例ですが、20~24歳の自衛官の年収は320万円前後が多いそうです。

年収320万円から、各種税金が引かれると、手取りは約250~260万円程で、月収に換算すると、月の手取りは約20~22万円です。

自衛官の場合、駐屯地に宿舎があり、食事の提供があるところも多いです。なので家賃や光熱費、食費の負担が軽くなることもあります。

30歳頃の自衛官の手取り

30歳すぎると、年収は550~580万円程度にまであがる自衛官が多いです。ここから所得税や住民税等が引かれ、手取りは約450~460万円になります。これを月収に換算すると、月の手取りは約40万円です。

30歳ごろになると、結婚を機に駐屯地の宿舎を出て、自宅を持つ自衛官もいますが、手取りで40万あれば、住宅ローンなどにも対応できる額です。

まとめ – 自衛隊の隊員「自衛官」の給料

今回は、自衛官の基本的な給料の内訳・考え方についてご紹介しました。

民間企業の給料計算とは異なるため、最初は理解しにくいかもしれません。基本的には「俸給表」にあるように、「階級」と「号俸」が上がるのに伴い、俸給の額が上がります。そして、この俸給額に各諸手当を加えたものが基本的な給料額です。

自衛隊に配属されたばかりの自衛官は、給料が20万円以下と薄給のことも多いですが、勤続年数や功績に応じて給料額はきちんと上がっていくのが、自衛官そして国家公務員の給料における魅力かもしれません。

本記事は、2018年4月27日時点調査または公開された情報です。
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