【機動隊】大きな勢力の鎮圧も!! 体力勝負の「警察の機動隊」について

警察官の中でも色々な職種があり、多岐にわたります。普通の警察官では太刀打ちできない、大きな勢力や武力の鎮圧を行うのが「機動隊」です。主に若い隊員で構成され、体力や忍耐力も必要な「警察の機動隊」について解説します。


警察の機動隊とは

集団で行動を行う部隊

警察の機動部隊とは、警察の組織の中でも常に集団で行動をする部隊の事です。集団で行動する理由のひとつに、治安警備や災害警備を行う事があります。特に、国内外からの要人が出席する式典などは、テロや暴動などの危険性も高まります。その時に、機動部隊は周辺の警護を集団で行う事により、要人がその場にいる間の治安を維持する事ができます。

警察の機動隊は、集団で行動する事によって、集団的な機動力、そして警備力を持っている事が最大の特徴です。

現在の機動隊の隊員はおよそ8千人

現在、警察の機動隊の隊員数はおよそ8千人と言われています。これに、増援部隊の4千人を加えると、およそ1万2千人の隊員が所属しています。この集団人数を利用して、警察の警備における中核を担っています。

機動隊の組織について見てみよう

本機機動隊

本機機動隊とは、機動隊の運用についてまとめられた「機動隊設置運用基準用網」に基づき、常に配備される機動隊の事です。「第一機動隊」とも呼ばれています。全国の都道府県に所属しており、有事の時には迅速で確実な行動が求められる部隊でもあります。

特別機動隊

特別機動隊とは、常時配備されている本機機動隊とは異なり、臨時に設置される機動隊の事です。機動隊の中でも、各都道府県から指名された警察官で構成されていて、機動隊の治安維持行動そのものを行う訳ではなく、自分の所属している都道府県との連絡を行うなどの業務を行っています。その為、本機機動隊と区別するために「第二機動隊」とも呼ばれています。

管区機動隊

日本全国の、北海道と東京を除いた地域では「管区」と呼ばれる区分けがされています。もしも、都道府県内で起こった災害や大規模な犯罪に、都道府県内では対処できない時には、この管区に従って対応される、というシステムです。

各県警の警察官を警察庁の各管区警察局に派遣して編成される機動隊を、管区機動隊と呼んでいます。大規模な有事の時には、常時の本機機動隊に加えて、管区機動隊も出動して事態の鎮圧を行います。

ちなみに、管区が導入されていない北海道と東京では、北海道警察警備隊と警視庁の本機機動隊が、それぞれの管区機動隊の役割も担っています。

警察の機動隊の仕事内容を見てみよう

大きな職務は大きく分けて4つ

機動隊の職務は、大きく分けて治安警備・災害警備・雑踏警備・警護警備です。そして、これらに付随する一斉の取り締まりも行います。

治安警備とは

治安警備とは、「国の公安又は利益に係る犯罪及び政治運動に伴う犯罪が発生した場合において、部隊活動により犯罪を未然に防止し、又は犯罪が発生した場合の違法状態を収拾する警備実施活動」と定義されています。大きな暴動が起きそうな時、もしくは起きてしまった時に治安を維持するための職務です。

大規模なテロや暴動などの犯罪が起きてしまった時には、その犯罪の鎮圧のために機動隊が出動します。もしくは、あらかじめテロや暴動に発展しそうな可能性のある、デモ行進やイベントが開催される時には、機動隊が配備されて犯罪を未然に防ぎます。


災害警備とは

大きな災害が起きた後は、どうしても治安状態が悪くなります。被災した店舗からの窃盗や、災害による大きなストレスが人々にかかる事によって、暴動が起きてしまう事もあります。

東日本大震災時には、災害時にも冷静に対応できる、かつ治安も目に見えて悪化しなかった日本人の態勢が国外でも大きく評価されました。日本は治安の良い国として知られていますが、それでも不測の事態の時には治安が悪化する危険性もあります。

災害時に機動隊が被災地へ出動する事によって、暴動や窃盗など、治安の悪化となった原因を鎮圧するだけでなく、治安が悪くなるのを防ぐ抑止力にもなります。

雑踏警備とは

野球やサッカーなどの国際的な試合が行われる時や、地元でも有名な大規模なお祭りが開催される時など、特に大きなイベントの開催時には、普段大人しい人でも興奮する事が多いです。また、大勢人が集まるところでは、集団心理が働き、大勢の人が熱狂のあまり暴徒化してしまう事もあります。

大きなイベントなどで、多くの人が集まり暴動などに発展しそうな可能性がある時には、警察官が雑踏警備を行います。雑踏警備とは、その通り街角に警察官が配備され異常がないか常に警備することです。この雑踏警備に機動隊も配備されます。

近年の有名な雑踏警備では、サッカーワールドカップの行われた2013年6月に、渋谷のスクランブル交差点に配置されたDJポリスがいます。車両の上から拡声器で群衆に巧みな言葉で呼びかけることによって、犯罪や暴動の抑止に繋がりました。これも雑踏警備の一種です。

警護警備とは

警護警備とは、国内外の要人が参加するイベントや式典が行われる時や、その移動中にその要人の身の回りの警備を行い、暗殺や誘拐などの危険から身を守る事です。いわゆるボディガードと呼ばれる職務で、警護警備の対象となるのは、政府首脳・国賓・会社役員・著名人などです。

特に重要度の高い要人の警護警備にあたる時には、機動隊も出動します。ひとりだけでなく数十人の護衛をつけることになります。また、警護する要人を暗殺や誘拐などの外的要因から守るだけでなく、病気や怪我からも守るために、武術だけでなく応急処置などの知識も持っています。

警視庁警備部警護課のみに属する、政府要人を警護する警察官を「セキュリティポリス」(通称SP)と呼んでいて、内閣総理大臣や国賓の身辺警護を行っています。また、警視庁ではなく他の都道府県でSPと同様の任務を行う時には、警備課や機動隊員で構成された「警備隊員」と呼ばれる警察官が警護警備を行っています。

機動隊の仕事内容について見てみよう

勤務体系は警察官と同じ

機動隊の勤務体系も、基本的には警察官と同じく3交代制勤務となっています。3
交代制勤務とは、1日目が当番日(24時間体制で職務を行う)、2日目が非番日(24時間の当直からは外されるが、実質勤務は行っている)3日目が休日、というパターンとなっています。

警備の職務に当たる

前述の4つの警備の職務を行います。警備の際には職務の内容に応じて、スーツなどの軽装の場合もありますし、重い盾やヘルメットなどの重装備で任務にあたる事もあります。数時間から、一日がかりの職務となる事もあり、機動隊の仕事はとてもハードです。

訓練を行う

警察の職務の中でも、危険な現場にも身を置く事も多いのが機動隊です。実際の職務を行うにあたって、迅速に適確な行動ができるように、また自分自身の身も守れるように、厳しい訓練を行っています。

具体的には、重い機動隊のヘルメットや装備、盾を持ったままの数キロのランニングや、投石や鉄パイプで殴られた時の防御や対応の訓練などです。他にも、爆弾物の処理の訓練、武術の訓練や射撃、自衛隊のレンジャー部隊と合同で山岳救助や水難救助の訓練を行う事もあります。

また、国外の要人が日本に来た時にはその警護警備にあたることもあります。その時、要人と円滑なコミュニケーションが取れるように英語の勉強をする機動隊員もいます。英語が話せれば、要人との信頼関係も強くなるので、実際の警護警備もスムーズに行われる事に繋がります。

機動隊員になるためには?

まずは警察官を目指そう

機動隊員になるためには、警察官の警備課に所属にならなければいけませんので、まずは警察官になる必要があります。


警察官にも「警察庁」「皇宮警察本部」「都道府県警察」の3つに所属する警察官に分かれています。警察庁はキャリアと呼ばれており、日本の警察の幹部候補としてキャリアを積んでいきます。皇宮警察本部は、天皇皇后両陛下や皇族の護衛、皇居や御用邸などの警備を行う皇宮護衛官という特殊な警察官です。この2つは国家公務員の身分となりますので、それぞれの国家公務員試験に合格しなければいけません。

都道府県警察は、各自治体の警察本部の警察採用試験である、地方公務員試験に合格する必要があります。日本のほとんどの警察官は、この都道府県警察に所属している警察官で、機動隊員もこの所属である事がほとんどですので、本記事では機動隊員の一歩として、都道府県の警察官の試験について取り上げます。

地方公務員採用試験に合格する

都道府県の警察官になる為の地方公務員試験は、Ⅰ類(大学卒業程度)、Ⅱ類(短期大学卒業程度)、Ⅲ類(高校卒業程度)に分かれています。最短で高校卒業から受験ができますが、要項が異なりますので気を付けましょう。

また、試験以外にも警察官になるには警視庁の場合、男性160cm、48kg以上、女性154cm、45kg以上などの身体要件も決まっています。これは、各都道府県によって異なりますので、受験する前に確認しておきましょう。

合格後、警察学校へ行ってから配属先が決まる

地方公務員試験に合格すると、その後警察官として必要な知識や技術を身に着ける為に、およそ半年から10か月ほど全寮制の警察学校へ通います。学校という名前が付いていますが、地方公務員の職務となりますので、お給料も出ます。

警察学校での生活は全寮制で訓練や規律も厳しく、警察学校での生活が嫌になって逃げだしてしまう人も残念ながらいるそうです。けれども、警察学校での生活が厳しいのは警察官という職務がそれだけ厳しいということです。つまり、警察学校の生活が耐えられないと、実際の現場で警察官として働く適性がないとも言えます。

警察学校を無事に卒業すると配属先が決まります。一般的には、最初は交番勤務となります。

経験を積んでから志願すると、機動隊になることも

機動隊に配備されるには、警察官としての職務を行っている中で、人事異動の配属先として決まるパターンと、自分で志願するパターンがあります。志願する場合も、配属先として決まる場合も、本人の適性や熱意などを見られて、機動隊に相応しいと判断されると、警備部門へ配属となり、機動隊員となります。

機動隊になりたい人に、必要な事とは

体力と忍耐力

機動隊に一番大切なのが体力です。重い装備で職務に当たる事もありますし、武力衝突の時の鎮静の時には、自分自身もその中に突っ込んでいかなければいけません。その為には強靭な体力が必要になります。

有事の時に適切な行動ができるように、日々の訓練も大変厳しいのが機動隊の特徴です。訓練に耐えられるだけの体力や忍耐力、また病気をしない等の自己管理も必要になります。

適応能力

警察官を含めて、機動隊もいわゆる縦社会と言われています。体育会系の職場で、先輩や上司を敬い、命令は絶対、といった風潮もあります。これは、大きな警察という組織の規律を正すために必要なことであると言えます。

学生時代に運動系の部活を行っていた人などで、縦社会に理解のある人はまだしも、いきなり縦社会の中に入ると困惑する人もいます。機動隊の仕事は何よりもチームワークが大切ですので、縦社会の中でも適応できる能力が必要になります。

また、組織の中だけでなく機動隊の配備される現場は刻一刻と状況が変わっていきます。その時々で冷静に判断し、適切な処置を行う為にも適応能力が必要になります。

物事を吸収する力

機動隊は、色々な武術の訓練の他、英語の勉強や自衛隊との合同訓練など、学ぶべき技術や知識もたくさんあります。職務に必要な技術や知識を学ぶための、高い向上心や吸収力は機動隊には欠かせません。

常に上のレベルを目指して職務を全うしたいと思っている人には最適な現場です。

正義の心

警察官全体に言える事ですが、一番大切なのは常に正義の心を持つ事です。警察官として、いつでも市民のお手本となるような行動ができる人、また休日も警察官である事を忘れないように行動できる事が求められます。

(文:千谷 麻理子)

本記事は、2017年8月12日時点調査または公開された情報です。
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