公正取引委員会事務総局の内部構成及び職員同士の関わり合いについて

今回は、公正取引委員会事務総局の内部構成及び職員同士の関わり合いについてのコラムです。

独占禁止法を運用するために設置された機関「公正取引委員会」、公正取引委員会は、委員長と四人の委員とそれを支える800人を超える事務総局があります。今回は、その事務総局の内部のお話です。


公正取引委員会は、独占禁止法を運用するために設置された機関です。独占禁止法は、要は市場の公正な競争を害する行為を防止・是正することが目的の法律です。

公正取引委員会は、委員長と四人の委員からなる、一般に「行政委員会」と呼ばれる合議制の組織です。委員長及び委員は、財務官僚、裁判官、検察官、学者、公正取引委員会事務総局の出身者で構成されます。

そうはいっても、たった五人で独占禁止法に関する全ての業務をこなすことはできませんので、公正取引委員会「事務総局」と呼ばれる組織が委員会の下に置かれており、実務面でのサポートをしています。職員数は、平成28年度末の時点で840名になっています。

以上の点について、詳しくはこちらをご覧ください。

公正取引委員会事務総局の仕事内容について

内閣府の外局として位置づけられている公正取引委員会。国家公務員の勤め先としては、法務省や財務省などと比べると、少しマイナーかもしれません。

今回は、そんな公正取引委員会事務総局の内部構成や、職員同士の関わり合いについて、実際に働いた経験のある者の視点でご紹介していきたいと思います。

公正取引委員会事務総局の組織概要

公正取引委員会の組織は、公正取引委員会事務総局組織令、公正取引委員会事務総局組織規則、公正取引委員会事務総局組織規程で規定されており、それに従って実際にも部署、ポストが設置されています。ウェブサイト上の「公正取引委員会の組織図」で分かりやすく図になっていますので、こちらをご覧ください。

まず、大きく縦割りになっているのが、官房、経済取引局、審査局の三つです。そして、組織図上はこれらと並んで地方事務所・支所が置かれていますが、地方事務所では、官房、経済取引局、審査局がそれぞれ担当する業務を、それぞれ内部の部署で分けて担当しています。

地方事務所の人事関係や取扱業務についての詳しい内容は、こちらの記事をご覧ください。

「公正取引委員会事務総局」の地方事務所についてと本局との関係


公正取引委員会は主に独占禁止法を運用する機関ですが、その本局とも言える場所は霞が関にあり、大半の職員はそこに勤務しています。

官房の取扱業務について

官房は、その下に総務課、人事課が置かれていることからも分かる通り、公正取引委員会という行政庁特有の業務というよりは、組織として必要な会計業務や人事関係を担当している部署になります。公正取引委員会事務総局の実務がうまく回っているのは、官房がうまく機能しているからに他なりません。

また、独占禁止法を巡る事件は、グローバル化が進んだ現代においては、日本国内で完結するものではありません。海外企業との取引や、日系企業の海外子会社など、国外との関わり合いも多くあります。

そのため、他国の競争法当局との関わり合いも重要で、そこを担っているのが国際課です。国際的な事件を処理するというよりは、他国の当局と連絡を取って交流を図ったり、競争法の整備が遅れている国にアドバイスをしたりして、世界的な競争環境の整備に当たっています。

ちなみに、総務課の中にある審決訟務室は、少し毛色が違い、公正取引委員会ならではの専門的な業務を行っています。どんな仕事か説明するには少し前提が入りますので、少しお付き合いください。

まず、この点は別の機会に詳しく述べたいと思いますが、公正取引委員会が行なった排除措置命令や課徴金納付命令に対して事業者側から異議が述べられた場合、審判手続という手続に進むこととなっていました(平成27年4月1日施行の新法により、審判手続は廃止されました。ただし、平成28年時点では、廃止以前に審判手続に入っていた事件がまだ引き続き行われています。

審判手続は、イメージ的には裁判手続とほとんど一緒です。裁判官にあたるのは、組織図上、公正取引委員会のすぐ下に位置する、審判官です。審判官は、裁判官から異動してきた人と公正取引委員会事務総局内の職員で構成されています。審判長と二人の審判官の三人で各事件を担当します。この審判手続は、公正取引委員会の組織内で行われますので、審判が開催される場所(審判廷)も公正取引委員会がある霞が関の建物内にあります。

前置きが長くなりましたが、審決訟務室の業務の一つは、この審判手続の運営です。イメージとしては、非常に裁判手続に近いと言いましたが、例えば当事者から提出された書面を受け付けたり、審判期日のために会場の準備や当日の進行をしたりします。審判官からの指示を当事者に伝えたりもします。この点では、裁判所書記官や裁判所事務官に近い仕事と言えるかもしれません。

それだけでなく、審判手続が終わり、審決(裁判手続でいう判決のようなもの)が出てもなお当事者が争った場合、裁判所で審決取消訴訟というものが提起されることになります。公正取引委員会側は訴えられる側ということになりますが、この訴訟手続を担当して弁護士のような役割を果たすのも、審決訟務室です。
公正取引委員会事務総局の中でも特殊な業務と言えるでしょう。

経済取引局の取扱業務について

経済取引局は、経済実態を把握するために各業種の市場シェア等を調査したり、中長期的な競争政策を企画したり、各省庁が立案した法律や各省庁が行う施策が、競争政策的に問題ないかどうかを検討して他省庁との調整を図ったりする業務を担当しています。実務上重要とされている、公正取引委員会が出している各種ガイドラインを作成しているのもこの局になります。

また、経済取引局の中には、企業結合課があります。独占禁止法上、一定規模の合併や株式取得が行われる場合、公正取引委員会に届出をしなければならないことになっています。なぜならば、例えば極端な話、市場シェア60%の企業と40%の企業が凌ぎを削って競争していたところ、両社が合併して一つの企業になってしまったら、どうなるでしょうか。せっかく値段を下げたり商品の質を高めるなどの競争してくれていたのに、もはや競争相手がいなくなったわけですから、値下げや質を高める必要はないね、と考えてしまうかもしれません。
そこで、届出がなされてから、その内容を確認し、独占禁止法上問題がないか確認する業務を行っているのが企業結合課です。もし競争法上の問題があれば、計画の変更を求めたりするなど、適切な市場の状態を保とうと努力しています。

審査局の取扱業務について

審査局は、談合やカルテルなど、独占禁止法上違反とされる行為が行われているとの情報を得た後、嫌疑のかかった企業に立入検査をし、集めた証拠を元に排除措置命令や課徴金納付命令を出すなどの仕事を行っています。

審査局の取扱業務については、公正取引委員会事務総局の仕事内容について、で詳しく述べましたので、そちらをご覧ください。

公正取引委員会事務総局の上下関係

これらの縦割りの部局に分かれている公正取引委員会事務総局ですが、次は各役職の上下関係について見ていきましょう。

公正取引委員会での人事異動は、いわゆる玉突き人事です。A B C Dというポストがあった場合、AがいなくなればBのポストの人がAに異動し、空いたBのポストにCの人がつき、空いたCのポストに・・・といった感じで、数珠つなぎに異動が行われていきます。実際には、AからZ以上の多くのポストが玉突きで異動していくので、パズルのようで見ていて面白くもあります。


公正取引委員会委員

まず、事務総局内ではないのですが、やはり委員長と委員がトップに来ます。通常の会社でいう(代表)取締役がこれに当たると思います。冒頭で、公正取引委員会事務総局の職員からも委員が選ばれていると述べました。これまでの歴代委員長を見る限り、公正取引委員会事務総局出身の委員長はいないようですので、実質的な公正取引委員会事務総局の職員の最終的な出世先は、公正取引委員会の「委員」といえます。

事務総局内での管理職ポスト

では、その委員になる職員の事務総局内での最終的なポストは何かというと、「事務総長」になります。このポストが事務総局内の最上位ということになります。

そして、官房、経済取引局、審査局という三つの部局それぞれのトップには、官房総括審議官、経済取引局長、審査局長、がいます。これらの間に序列は本来的にはないと思われますが、事務総長になる一つ前のポストは経済取引局長であることが多いようです。

公正取引委員会事務総局には、この他にもたくさんの管理職ポストが存在しています。具体的にはこちらのリンクに一覧表となってまとめられています。

https://www.jftc.go.jp/soshiki/profile/annai/meibo.html

なお、これらの管理職ポストに就くのは、国家総合(国家Ⅰ種)の人だけではなく、国家一般(国家Ⅱ種)の職員も就き得ます。もちろん、委員になるようないわゆる出世コースはキャリア組の国家総合の人しか就きませんが、管理職も上記リンクのとおりたくさんあるので、有能な人材は種類を問わず人の上に立ち、後進を指導・教育して組織を強化していくシステムとなっています。

ちなみに、これらのポストには、公正取引委員会事務総局組織令で定められたポストと、公正取引委員会事務総局組織規則で定められたポストの二つがあります。例えば、官房における人事課や国際課などは組織令で定められていますが、会計室は組織規則で設置されています。何か違いがあるか、ですが、組織令で設置された部署の方が本流で、組織規則で設置された部署は補助的なようにも見えます。ただ、下で働く職員からしてみれば、あまり差はありません。むしろ、その時々で重要な業務を担う部署のトップに配属されることが重要といえそうです。

たとえば、具体的な例を見てみましょう。審査局では、上席審査専門官を五人置くこととされていますが、その職務は、審査長のつかさどる職務のうち特定事項に関するものを助ける、という規定になっており(公正取引委員会事務総局組織規則8条2項)、上下関係がありそうに見えます。実際にも、審査長になる職員の方が上席審査専門官になる職員の方が年次は上のことが多いように見受けられます。しかし、職務上は事件の処理について他の審査長の意見を求めなければならないことはなく、上席と部下がチームとなって独立して事件の処理に当たっています。職員としても、上席の指示に従って業務を行い、指示を受けるとすれば、審査長よりも位の上な審査管理官や審査局長から、ということになります。

上司部下との交流関係

以上述べてきたとおり、公正取引委員会事務総局には多くの部署があります。そして、それぞれに長がおり、その下で職員複数名が業務に従事する、というのが基本的な形になります。

各部署の交流関係がどのようなものかは、当たり前ですが、正直個人個人の性格によるところが大きいと言わざるを得ません。筆者の経験上も、人が替われば飲み会の頻度も大きく変化しました。この点は前提としつつも、どんな形でどのような感じで上司との打ち解けて話をする機会があるのか、ご紹介していきたいと思います。

忘年会、新年会

もっとも典型的ではありますが、年末年始にはほとんどの部署が部署全体での飲み会を行っています。霞が関の付近は、ただでさえサラリーマンの多い有楽町、新橋エリアが近いので、11月初旬の時点で店を探し始め、全員が参加できる日程を調整しだします。

この場では、一年を振り返りねぎらい、あるいは新年の抱負を掲げ、一次会から二次会、三次会へとかなり盛り上がりを見せます。場合によってはお世話になった他の部署の幹部を呼んだりと規模を大きくして行うこともあります。

飲み会の場では、若い人が面白い話をして存在感を見せたり、上司の変な発言にみんなで突っ込んだりと、和気藹々とした雰囲気で、上下関係丸出しの体育会系飲み会のそれとは全く異なる雰囲気です。

案件ごとの打ち上げ

案件が終わった時や、大変な時期を乗り越えた時などの切りの良いタイミングで、案件担当者で集まって飲みに行くということは、比較的多くありました。部署のトップがいる場合もあれば、担当者だけの場合もあり、バリエーションはいろいろですが、概して言えることは、公式な飲み会と違って少人数なので、打ち解けて深い話がしやすいという特徴があります。

また、案件によっては他部署と一緒にやる案件もあります。その場合は違う部署の人と一緒に合同の飲み会をします。地方事務所の人と仕事している場合、東京に出張してきたタイミングなどに合わせて一緒に飲み会をしたりもします。普段仕事でしか関わっていなかった人とざっくばらんに話すことができ、その後の業務の円滑化にも繋がります。また、他の部署の業務の内容や、一緒に仕事したことのない上司・職員の話を聞けるので、自然と組織全体のことを知ることができる良い機会にもなります。

歓送迎会

公務員は異動の多い仕事です。早い人は一年、多くは二、三年で部署が替わります。そのため、異動のシーズンである七月には、ほとんどの部署で多かれ少なかれ人の異動が起きます。その際には、部のトップが歓迎のランチに連れて行ってくれたり、部署で歓送迎会を開いてくれたりします。ほぼ例外なく開催されますので、新しく配属された部署の人とすぐに打ち解けるチャンスがきます。

委員長・委員との会合

通常の企業にとってのいわゆる(代表)取締役である委員長・委員とも、意外と酒席を共にする機会が設けられたりします。委員長、委員は公正取引委員会以外の組織の出身者であることが多いです。そのため、外部から来た自分を温かく受け入れてくれている、と感じているのかもしれません。また、違う組織で働く職員の考え方や働き方にも興味があるのかもしれません。いずれにせよ、気さくな方ばかりで、私もそうですが、他に一緒に酒席を共にしたことがあるといっている職員はみんな楽しかったとの感想を述べています。

その他の個別の会合

そのほか、上司に個別に誘われて二人や少人数で飲みにいったり、知り合いの知り合いということで違う部署の人と飲みに行ったり、皇居ランをしている仲間と一緒に走ってその後飲みにいったりと、けっこういろんな機会で他の職員と遊ぶことがあります。

特に、同期間は仲がよく、ことあるごとに飲みに行ったり誰かの家に行ったり、結婚式に呼んだり呼ばれたりと、頻繁に交流しています。


お花見

お花見は典型的な日本の行事であり、公正取引委員会の目の前には、春には桜の咲き乱れる日比谷公園があります。

が、なぜかは分かりませんが、お花見にいく文化がありません。個々人で行くことはあっても、公式イベントとして部署全体で行くことはありませんでした。そのため、若手職員が寒い中何時間も場所取りをして…というような古臭い苦行はないので安心です。

総括

以上のように上司部下間が頻繁に交流をする機会があるためか、非常に人間関係は良好であるように思います。もちろん人間ですから個々人の性格の一致不一致はありますが、おおむね、業務中はまじめに、そしてオフの時間帯は仲良く楽しく過ごしているように思います。

仕事において、人間関係は非常に重要な点です。上記で書いたような内容で、少しは楽しそうな職場だなと思っていただけたでしょうか。ご自身の就職活動のご参考にしていただければと思います。

本記事は、2018年11月25日時点調査または公開された情報です。
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