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信仰が自由な国「アメリカ」の宗教観について – アメリカ留学生レポート

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アメリカは移民の国とも言われていますが、アメリカ全土で様々な宗教が広まっており「信仰が自由な国」でもあります。多くの日本人にとって宗教はあまり身近なものではないかもしれませんが、アメリカでは宗教や信仰心は日々の生活の一部です。

今回はアメリカの宗教事情を紹介しつつ、アメリカの文化、さらにはアメリカを構成する「保守派とリベラル派(自由)」の成り立ちについても触れてみたいと思います。

目次

アメリカの宗教の歴史

現代のアメリカは、アメリカ建国から長い時をかけて、様々な国からやってきた移民の宗教が混在しており、それぞれが宗教コミュニティとして尊重され、その立場を確立しています。

そもそもアメリカには「国教」というものはありません。イギリスから迫害されるかたちでアメリカ大陸にやってきたイギリス人(プロテスタント)たちが、新しい国を作るにあたり、宗教や宗派も信仰も自由なものにしようと、宗教の自由を連邦制度に定めます。

1791年には憲法を改正し、政権分離条項を加え、いかなる宗教でも政治利用とは隔離されたものとして大切に扱ってきました。その精神は、いまもなお宗教や信仰の自由として定着し、他国の宗教であっても受け入れて、互いを尊重する文化として続いています。

宗教や信仰は特別なこととして扱い発展してきたアメリカですが、ほとんどの家庭で宗教に沿ったお祝い事や習慣が続いており、毎週末の礼拝を始めとし、サンクスギビング、クリスマスなどアメリカ全土で祝う風潮があります。このことからも、アメリカと宗教は強い結びつきがあると言えるでしょう。

ちなみに、現在のアメリカにおいて信徒数が多いのはユダヤ教とキリスト教です。細分化される宗派を詳しく解説することは割愛しますが、アメリカは建国から宗教観を大切にしてきていることと、様々な宗教や信仰が混在していることを把握したうえで、次では宗教に関連する諸問題について紹介します。

イスラム教を排除しようとするトランプ大統領

現在、アメリカが抱える宗教に関連する問題で最も大きなことが「イスラム教排除の姿勢をとるトランプ大統領」でしょう。2016年11月の当選前までは徹底してイスラム教を敵視する言動を繰り返していました。

トランプ大統領の言動は、すべてのイスラム教徒に向けたものではなく、一部の過激派に対してだけに向けられているとしていますが、イスラム教徒から反感を買ったことは確かで、自身も「イスラム教徒は我々を憎んでいるはずだ」と漏らしたほどです。

トランプ大統領のこの姿勢は、世界中でイスラム過激派が起こすテロや、アメリカ国内の治安を不安視する国民から支持を得たものの、建国から続く他宗教への尊重をないがしろにするとして批判を受けました。

それを決定的にしたのが、2017年6月にイスラム教徒の国民が多いイラン、リビア、ソマリア、スーダン、シリア、イエメンの6カ国からの入国を90日間禁止し、難民の受け入れを120日間禁止する大統領令を下したことです。このことを、アメリカでは「Muslim Ban(イスラム教徒追放令)」と呼んでいます。


このことは当然アメリカ内外で議論になり、連邦裁判所の判事たちは、トランプ大統領の判断は信教の自由などをうたったアメリカ合衆国憲法修正第1条に反していると指摘したり、ハワイ州の連邦裁判事は「国籍による差別」や「建国の原則原理を破る行為」と痛烈に批判しました。

しかし、アメリカ最高裁では判事の9人のうち7人がトランプ大統領の決断を支持するかたちとなり、入国禁止令は全面的に執行が認められました。トランプ大統領の勝利とも言えるこの結果は、アメリカが守り続けてきた宗教観や移民救済に反することとなったのです。

いまでは「テロからアメリカ国民を守る」という言葉になっていますが、大統領選のときには自身の政策を「ムスリム禁止令」と発言したり、「ムスリムがアメリカに入るのを全面的かつ完全に禁止する」と言っていたことはかき消されています。

トランプ大統領のイスラム教徒に対する排除の姿勢は、新たな憎しみを生むとして否定的な見方をする人がいる一方、アメリカ第一主義を支持する人からは歓迎されています。

この入国禁止の影響は大きく、一般のイスラム教徒もビザ取得が難しくなったり、長時間に渡りアメリカの入国管理局で足止めされたり、アメリカ留学を諦めてカナダへ行き先を変更したという声もあります。

トランプ大統領の決断は、少なからずイスラム教徒とアメリカとの間にわだかまりを生んだ結果になったのでした。

無宗教の流れ

建国から続いているアメリカの宗教観は、少しずつ形を変えつつあることも注目すべき事象です。推定ではアメリカ国民の半分はキリスト教とされていますが、着実に数を増やしているのが「無宗教」です。

ある調査機関によると、2007年の宗教の調査ではアメリカ国民の70%以上がキリスト教でしたが、無宗教と答えた人が15%ほどいました。10年後の2017年の調査では無宗教と答えた人は22%と増加傾向にあることが判明しました。1985年には8%だったことから30年ほどで、約3倍増加しています。

60歳以上で無宗教と答える人は少なく、無宗教と答える人の大半は1980年以降に生まれた中間世代や若者世代です。現在アメリカでは、30歳以下の男女の5人にひとりは宗教心こそあるものの、無宗教でいるとされています。

さらに、州によっても宗教観の差は明確で、アラバマ州やジョージア州などのアメリカ南部は何かしらの宗教を信仰している人の割合が多く、シアトルがあるワシントン州やオレゴン州などのアメリカ北西部は無宗教の人が多いという傾向があります。

毎週末のように教会へ礼拝に行く人の数にも現れており、アメリカ南部のミシシッピ州やアラバマ州では60%以上の人が教会へ出向いています。一方で、バーモント州やニューハンプシャー州などアメリカ北東部さらにはネバダ州やワシントン州など北西部は30%以下となっています。

ごく簡単にまとめると、南部の州は宗教を信仰している割合が高く、北西部や北東部は無宗教の人の割合が多い傾向があると言えます。

アメリカは建国以降、宗教に対する考えを大切にしてきているため、特に年配層からは無宗教であることはおかしいという目で見られがちでした。しかし、近年少しずつ変化してきており、無宗教であることを公言できるようになり、周囲もそれを認める風潮ができつつあります。

このことは、アメリカに根付いている文化が、形を変えようとしている兆候として考えられています。無宗教であることで、多様な文化や宗教を受け入れやすくなり、宗教差別や国の差別が次第に解消されるのではとも言われています。

この発想は、次で紹介するアメリカで議論を呼んでいるある話題にも繋がります。


同性結婚の議論

アメリカで度々話題にあがるのが「同性結婚」です。日本と比較した場合、法律的にも一般市民からも受け入れられる風潮がありますが、アメリカで長く続いてきた宗教観にそぐわない話題として取り上げられることが多いのも事実です。

具体的には、現在でもアメリカ国民の半分以上を占めているキリスト教の聖書では、明確に同性愛は不品行な性犯罪、さらには不自然と記されています。ただし、同性結婚そのものについては具体的には触れられていません。

このことは、昨今のLGBTの権利を守る運動と、聖書に書かれていることが相反していることを意味しています。同性愛や性同一性障害など現実的な問題と、アメリカ国民の半分以上が信仰している神の教えのどちらを尊重すべきかということでもあるのです。

LGBTの人たちは、自分たちの生きていく権利や自由が特定の宗教観によって制限がかかってしまうことは受け入れがたいとして、結果的にどこの宗教にも属さない無宗教を選ぶ傾向があります。特にLGBTに該当する若い世代はこの傾向が強いと言えるでしょう。

一方で、同性愛を禁じる宗教を信仰する人たちは、あくまでも聖書の教えを尊重すべきとして同性結婚に反対する傾向が強いと言えます。

2015年、アメリカ連邦最高裁は、同性婚はアメリカ国民の権利であるため、州は同性婚を認めなければならないとしました。つまりは、アメリカでは法的に同性結婚は合法であり、禁止し続ける州は違憲状態ということになります。

最高裁のこの判決を受けて、現在では50州のうち37州とワシントンD.C.では同性結婚は合法になっています。しかし、アメリカ南部のテキサス州、アラバマ州、ジョージア州などでは、依然と同性結婚は州法で認められていません。

先に紹介したように、アメリカ南部の州は宗教心が強く、60%以上の人が毎週礼拝に通うとされるほどです。宗教心を重んじる南部の人たちは、同性結婚を受け入れない傾向があることが浮き彫りになっていると言えます。

アメリカでは住むエリアと宗教観は一定の関係性があると考えられており、南部は宗教心を大切にすることから「保守派」と言われ、無宗教や同性結婚に理解がある北西部や北東部の州は「リベラル」と言われる傾向があるのです。

まとめ

アメリカの文化や歴史を知るうえで「保守派」と「リベラル」は知っておいて損はありません。今後の大統領選やアメリカ経済の動向などを知るうえで必ず用いられる表現です。

さらには、保守派とリベラルに別れる背景には、アメリカ建国から続いている、ご紹介したような「宗教観」というものも深く結びついていることを知るといいでしょう。

本記事は、2018年11月24日時点調査または公開された情報です。
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この記事を書いた人

公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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