そもそも「市議会議員」とは?
中央政府の権限をできるだけ地方政府に移すことで、中央と地方で権力の集中のバランスをとることを「地方分権」といいます。日本では、中央政府が方針を立てたものを地方自治体が実行に移すという行政システムをとっています。
市議会議員が働く「市議会」は、大きく分けると「地方議会」と呼ばれるもので、地方自治体の最高意思決定・議事機関として、市長に代表される執行機関と対等の立場に置かれています。
市議会などの「地方議会」って何?
地方議会は、市長と市議会とが別々の権力を持つ「二元代表制」を採用しています。二元代表制とは、市長と市議会議員を別々に選ぶ制度のことで、どちらもその市に住む住民が直接選挙で選抜します。
市長と市議会議員は別々の権力を持っており、市長は予算や条例などの議案の提出、人事を決める権限を持ち、市議会議員は議会にて市長の行政運営を監視する役割を持ちます。そのため、市長というと市議会議員のトップのように感じますが、実は市長と市議会議員は別組織であり、それぞれがお互いを尊重しながら別々の仕事を行っているのです。
『民衆の敵』では、余貴美子さんが演じる河原田 晶子市長と古田新太さん演じる市議会議員のドン犬崎 和久ら犬崎派が対立していますが、市民の生活をより良いものにするため、市長の仕事を市議会議員が監視し、時にその仕事内容を指摘しているのです。また、市議会議員が議決しなければ、市長は提案した仕事を失効することができません。
議会の機能の中心は「議決権」ですが、地方自治体の事務に関する超さの権限も重要な役割です。しかし、地方自治体の議会には予算を編成する権限がなく、編成の権限は自治体の長にあり、議会は質問ができるだけです。
市議会議員の仕事は「市民の声を市の政治に取り入れること」
市議会議員の主な仕事は、市民の声を市の政治に取り入れることです。議会が始まるまでに、市のミーティングを開いたり、商店街や町内会へ足を運んだりと市民の声を集め・調査します。最近では、市議会議員が個人的に運営しているTwitterやブログなどのSNSを通じて市民の声を集めるということもしています。こうしたSNSを利用することで、政治への関心が薄い、またはどのように参加してよいのか分からない若い世代の声を集めることができるため、より広い世代の声を集めることが可能になっています。
そして、年4回開催される議会にて、市民の声を参考に思案した議案を提出したり、市長や他の市議会議員が提案した議案の議決を行ったり、行政がきちんと行われているかを議論します。議会は年に87日ほどしか行われないため、市議会議員の主な活動は市民の声を集めること、そしてそれを叶えるために人脈づくりへ注力することといっても過言ではありません。
また、このほかにも地域活動への参加やスポーツ少年団が主催する大会へ来賓として参加するなど常に忙しい日々を送っています。
市議会について
市議会議員は、条例で定められている年4回開催される「定例会」と、必要がある場合、首長がその案件を告示し、市議会議員を招集して開く「臨時会」に主席する必要があります。定例会は、通常通常、3月、6月、9月、12月頃に開催されます。議会は、通常9時頃から始まりおおよそ17時には終了しますが、審議する議案によっては時間を延長することもあります。
また、議会で扱う議案の内容は様々なため、内容を専門的かつ効率的に調査するために「常任委員会」を設けています。市議会議員は、原則として1つの委員会へ所属することが定められています。また、必要に応じて設置される「臨時委員会」もあります。
市議会議員の任期は?退職金はない?
市議会議員の任期は4年と定められており、退職金はありません。市長も同じく任期が4年と定められておりますが、任期ごとに1000万円を超える退職金が支払われます。なぜ市議会議員には退職金が支払われないのかというと、任期満了後も選挙で当選し、長期的に勤務することを想定しているからだそう。しかし、選挙で当選しなければ次の選挙までの4年間は無職になることが懸念されるなど、市議会議員として生きていくには常に不安定という言葉が付きまといます。
市議会議員になるには?出馬の条件について
市議会議員になるには、市議会議員選挙へと出馬して当選することです。市議会議員に出馬するための条件は、満25歳以上の日本国民で、立候補する市内に3ヶ月以上住んでいることの2つをの条件を満たせば出馬が可能です。市議会議員は、学歴不問のため、学力に関係なく出馬することができます。『民衆の敵』の篠原涼子さん演じる佐藤 智子も高校中退という学歴で立候補し、見事当選していましたよね。市議会議員は、学歴よりも「市民の声を聞き、それを反映できるかどうか」という能力が必要とされています。もちろん、それを反映するためには政治に関する知識や行政への取り組む知識が必要となるため、必ずしも「知識がなくてもいい」という意味ではありません。
そして、市議会議員選挙に出馬するためには、供託金として30万円を選挙委員会に預ける必要があります。供託金は、無責任な出馬を避けるために預けるお金のことで、選挙で一定の得票数を獲得すれば選挙後に返金され、得票数が満たなければ没収されます。
市長の採用の仕方が大統領選挙に似ている
内閣の首長である内閣総理大臣は、憲法により国会議員が指名すると定められています。しかし、地方議会の首長である市長は、その市に住む住民による直接選挙の「公選制」で指名されます。これは、アメリカの大統領選挙と同じ方法で、大統領選挙も議員ではなく、住民による直接選挙にて大統領を決定します。
佐藤 智子のキャリアからみる「市議会議員」のキャリアとは
『民衆の敵』で篠原涼子さんが演じる佐藤 智子は、クレーム対応のオペレーターから市議会議員に当選し、遂には市長になりました。
それぞれの年収を見てみると、クレーム対応のオペレーターは平均280万円、市議会議員は平均10000万円、市長は平均12000万円程です。智子は高額収入で家族の幸せを築こうと市議会議員に立候補し当選し、見事に家計は潤ううことになりましたが、市民の声を叶えたいというプレッシャーや市議会議員同士の派閥争い、汚職事件など様々な困難と見舞われることになります。
その結果、育児の時間を作ることができない、休みがないというハードな日常を過ごしています。加えて本音で話すことで上げ足をとられ、好奇の目を向けられることも……。前述したように、4年が経てば選挙が行われ職を失うリスクもあります。
ちなみに千葉市の市議会議員の給料は?
『民衆の敵』では、千葉市がモデルになっており、千葉市議会がロケ地として使用されています。そのため、今回は千葉市の市議会議員を参考に市議会議員の実際の給料を見てみましょう。
市議会議員の給料は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第203条の規定に基づき定められており、市議会によって支払われる給料の額は異なります。千葉市の市議会議員の場合、給料は月額77万円です。議長になると月額93万円、副議長になると84万円の給料が支払われています。
また、市議会議員には毎月の給料にプラスして各種手当が支払われます。市議会議員は、公務のために遠方に旅行することもあるため、車賃1キロメートルにつき37円、日当1日につき1900円、宿泊料1泊16500円、食卓料1夜3800円が「旅費」として支払われます。
千葉市の市議会議員には、6月1日と12月1日の年2回期末手当が支払われます。期末手当は、6月分は100分の207.5、12月分は100分の222.5を月給に掛けた額を、在職期間に応じて支払われることになっています。このようにボーナスとなる期末手当は支払われますが、退職する際の退職金は支払われません。
※参考:http://www1.g-reiki.net/chiba/reiki_honbun/g002RG00000945.html
このように市議会議員の仕事は、様々なプレッシャーやハードワークをこなさなければいけないため、生半可な気持ちで挑める職務ではありません。選挙に出馬する際には様々なマニフェストを掲げますが、「市民の声や希望を絶対に叶える」「市民の生活をよりよいものにする」という揺るがない熱意が必要となる職種です。
まとめ
今回は、「市議会議員」の役割とその仕事、年収や退職金などの収入面についてもご紹介しました。
市民の生活に関わる市議会議員の仕事は、常に忙しなく、プレッシャーとの戦いがあります。『民衆の敵』佐藤智子のように「市民の生活をよりよいものにする」という熱意や、市民の生活への関心、政治への知識が必要です。
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