2020年度の東京都予算が決定(2019年1月都議会)
東京都の2020年度の予算は、2019年度の1月の都議会で可決されています。
その予算規模はノルウェーなどの国家にも匹敵するほど大きなものであり、2020年に開催予定だった東京オリンピック・パラリンピックの準備のために、昨年度は過去最大の歳出、2020年度も史上2番目となる規模で議決されていました。
新型コロナウイルス感染症の流行拡大により、2020東京大会は延期となりましたが、東京都がどれくらいの収入と支出が予定していたのかを、2020年度の東京都予算案に注目し、説明します。
東京都には3つの予算があります
東京都には「一般会計」と「特別会計」、「公営企業会計」という3つの会計があり、それぞれ別のお財布でお金を管理しているイメージです。
東京都の基本的な行政サービスについて予算を立て、お金を出しているのは「一般会計」であり、毎年この一般会計の予算を発表することで、その年1年間、東京都がどのような事業を進めていくのかがわかります。
》ノルウェーに匹敵!総額15兆円の「東京都の予算」の基礎知識と2020年度予算案
2020年1月、日本の地方自治体で最大の予算規模である「東京都」の2020年度予算案が公表されました。予算規模は合計で15兆円と大きくなる一方で、都債残高は減少するなど、財政は健全化しているようです。
本記事では、諸外国の国々にも匹敵する、東京都予算案の基礎知識を2020年度の予算案とあわせて、解説します。
2020年度東京都予算の一般会計・歳入の内訳
2020年度東京都予算の一般会計の歳入の内訳をご紹介します。
一般会計予算の歳入は、一般会計で行う基本的な行政サービスのための費用を、どのように調達していく予定か、ということを示しています。
一般会計予算の歳入 | |
---|---|
都税 | 5兆 4,446億円 |
地方譲与税 | 529億円 |
国庫支出金 | 3,780億円 |
繰入金 | 7,701億円 |
都債 | 2,084億円 |
その他の収入 | 5,000億円 |
合計 | 7兆 3,540億円 |
東京都予算歳入:「都税」とは
東京都税には、都道府県が徴収する地方税として、法人二税、繰入地方税、固定資産税・都市計画税、その他の税、という種類があります。
このうち最も割合が大きいのが法人二税です。法人二税とは「法人住民税」と「法人事業税」のことであり、企業の規模や所得をもとに課税されるものです。東京都以外にも事業所がある場合には、従業員の数などで他府県と税額の取り分も分割されます。
法人事業税は事業が赤字の場合は納税の義務がありませんが、法人住民税は赤字であっても支払い義務があるため、事業所が多い東京都ではそれだけ税収が大きくなります。
2020年度東京都予算での「都税」による収入は、5兆4446億円ですが、このうち法人二税が1兆7996億円、繰入地方消費税が6912億円、固定資産税・都市計画税が1兆5670億円、その他の税が1兆3868億円でした。
東京都の法人二税は全国の法人二税の4分の1が納められています
東京都には人口だけでなく多くの会社が集まっています。そのため、東京都の法人二税による収入は、全国の都道府県の法人二税収入の4分の1、約25%もの額を占めています。
これまで東京都の人口は全国の約10%に留まり、県内総生産も全国の18%程度なので、法人二税の収入は人口のバランスなどに見合っておらず、不公平だという問題が指摘されてきました。
例えば、東京都に事業所がある会社に、隣県から出勤している従業員がいる場合でも、法人二税は全額東京都に納められてしまいます。
こうして東京都などに法人二税の収入が偏っていることを問題視し、地方間格差を是正しようと2008年(平成20年)に始まったのが、国による「偏在是正措置」です。
法人二税の一部を、国税の「地方法人特別税」として国が徴収し、「地方法人特別譲与税」として全国の他道府県、そして東京都にも配分されています。
この措置は、法人二税から国税になる割合を調整するなどして、東京都の負担とならないように配慮されてきましたが、それでも東京都としては少しでも都民の税金が少しでも都のために有効活用されるよう、さらなる改善を求めているようです。
▼参考URL:東京都主税局「いわゆる「偏在是正措置」に対する都税調の見解について」
https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/report/material/matome.html
東京都予算歳入:「地方譲与税」とは
地方譲与税とは、国が国税として徴収した税金のうち、特定の税目の一部、または全額を、それぞれの基準をもとに地方公共団体に譲与するものです。
国税から地方譲与税として地方に配分される税金には6種類あり、地方揮発油譲与税(ガソリン税)、石油ガス譲与税、自動車重量譲与税、航空機燃料譲与税、特別とん譲与税、そして上記でも説明した地方法人特別譲与税です。
2020年度予算では、東京都にも国からの地方譲与税による譲与額が529億円見込まれています。
ただし、この金額は、前年度の2379億円に比べて81.8%の減となっています。
これは、2019年度(令和元年度)の税制改正での地方法人課税の見直しの影響などを受けたもので、法人二税による税収が大きい東京都には、国からの譲与額を大幅に下げる新たな措置が導入され、譲与制限が厳しくなり、ますます他の道府県とのバランスが取られるようになりました。
東京都予算歳入:「国庫支出金」とは
東京都などの地方団体が行わなければならない事務や事業のうち、国の事業と関係が深いものや、国から委託された事務、国と利害関係がある業務などについては、 その費用の一部、または全部を国が支出することが、地方財政法によって決められています。
この、国からの支出を国庫支出金といいます。国庫支出金は「国庫負担金」「国庫補助金」「国庫委託金」の3種類に分けることができ、それぞれ事業の内容や性格によって分けられています。
東京都の2020年度予算での国庫支出金は3780億円であり、前年度の予算での国庫支出金の3621億円と比較すると、159億円(4.4%)増額でした。
東京都予算歳入:「繰入金」とは
繰入金とは、簡単に言えば他のお財布から繰り入れられる資金のことで、会計間のお金のやり取りのことを指します。
東京都の一般会計予算での繰入金は、一般会計以外の会計での収入や、都の貯金にあたる基金から、臨時的に一般会計の予算に取り入れられるお金のことを意味します。
2020年度東京都予算の繰入金は、7701億円であり、前年度の5969億円に比べて1731億円(29%)もアップしました。
その要因としては、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催と、都が掲げる3つのシティ(セーフシティ・スマートシティ・ダイバーシティ)の実現のために貯めていた基金を取り崩し、一般会計の予算に入れたことが大きいようです。
東京都のすべての基金の2020年度末での残高は1兆7744億円であり、7千億円ほどを使用しても、まだこれだけの貯金があることがわかります。
東京都予算歳入:「都債」とは
「都債」とは東京都が発行する債券を売ることで得たお金のことです。2000年度(平成12年度)以前は、毎年1兆円規模の都債が発行されていましたが、2000年からは都の財政再建の取り組みにより、都債発行を抑制し、都債発行額が大幅に減少しました。
2020年度の東京都予算でも都債発行額の減額傾向は続いており、前年度に比べて12億円減の2084億円となりました。
歳入予算のうち、公債にどれだけ依存しているかを表す「起債依存度」については、東京都が約2.8%と全国の地方平均の10.2%(2020年度当初予算)と比べても圧倒的に低く、借金に依存しない健全な財政状況にあるようです。
ちなみに、国の起債依存度は約31.7%(2020年度当初予算)であり、国が借金に頼る一方で、東京都は借金を減らせている傾向にあることがわかります。
東京都は地方交付税交付金の「不交付団体」です
都道府県や市町村といった地方公共団体にとっての重要な収入の一つが、「地方交付税交付金」です。
地方交付税交付金制度は、地方公共団体の財源の偏在を調整することを目的とした地方財政を調整する制度です。
一般的な地方公共団体は、収入の多い団体に比べて足りない分を、「地方交付税交付金」として、国から交付を受けます。
地方交付税交付金は、自力での収入が少ない県や市により多く投入されます。そのため、日本一都税収入の多い東京都は交付金がゼロの「不交付団体」に含まれます。
47都道府県のうち不交付団体であるのは東京都のみです。東京都の他には、2019年度時点で、1724市町村のうち85市町村が不交付団体になっています。
不交付団体が圧倒的に少数なことからも、日本の地方自治体の税収が偏っていることがわかります。
まとめ
このページでは、東京都の2020年度予算の歳入の内訳について、解説しました。
2020年度は東京都にとっての一大イベント、東京オリンピック・パラリンピックが開催される予定であったため、前年度に引き続き過去2番目の規模になった2020年度の予算でしたが、特にその影響が大きく見られたのは「繰入金」の部分でした。
東京都はこれまでにも基金として財源を貯金してオリンピックイヤーに備えてきており、それを取り崩す形で、2020年度の歳入予算に組み込んでいます。
しかし、新型コロナウイルス感染症の流行拡大によってオリンピックは延期になったため、使うはずだったお金の一部は来年度に繰り越されるか、別の用途で使われるのかは、決算でわかるかと思います。
また、新型コロナウイルス対策による補正予算も組まれていることから、予算策定当初と比べると、東京都の財政事情も大きく変化していくことが予想されます。
2020年度の東京都予算がどの程度実行されていくのか、2020年度の決算についても注目が集まりそうです。
コメント