東京都の2020年度(令和2年度)予算案が2020年1月に発表
2020年1月に東京都の2020年度の予算案が決定し、公表されました。
2020年は東京都にとっての一大イベントである2020東京オリンピック・パラリンピックが予定されているだけに、予算案は東京都の史上2番目の規模となりました。
新型コロナウイルスの世界的な流行により東京大会は延期されましたが、東京都がどのような予算編成を行なったのか、その概要を解説します。
▼参考URL:東京都「令和2年度(2020年度)東京都予算案の概要」
東京都の会計と予算の仕組み – 予算規模は約15兆円
東京都の会計には、一般会計と特別会計、公営企業会計という3つの会計が設置されています。
「会計」というのは、簡単に言えば都が必要とするお金を管理するお財布の家計簿のようなものであり、お財布の種類ごとに、「一般会計」「特別会計」などとして家計簿が公表されているようなイメージです。
「会計」には年度ごとに、「予算」が立てられ、年度が終わると「決算」があります。
東京都には、会計が3種類あり、大きくは3つのお財布によってお金が管理されていると考えることができます。
東京都の3つのお財布の種類を簡単に説明すると、まず一般的な行政サービスを実施するためのお金を管理する「一般会計」というお財布、それ以外の特定の事業や目的を実施するお金を管理するための「特別会計」というお財布、そして水道、電車、バスなど、都の一般的な行政サービスとは独立してお金の管理をする「公営企業会計」というお財布に分けられます。
特別会計と公営企業会計は、さらに事業ごとの細かい会計があります。
東京都の2020年度の予算は、3会計を合計すると15兆円
2020年度の東京都全体の財政規模、つまり上記の3つのお財布が管理する予定の金額の合計は、15兆円になる見通しです。
その内訳は、2020年1月に約7兆円の予算と発表された一般会計と、部局による予算要求で5兆円ほどが見込まれている特別会計、2兆円ほどが見込まれている公営企業会計となっています。
予算要求とは、東京都庁の各局が、担当する事業に必要な予算を振り分けてもらえるよう、都の財務局に報告・要望することです。
▼参考URL:東京都「令和2年度予算の要求について」
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2019/11/07/04.html
一般会計
教育・福祉や、道路・公園の整備など、主に都の基本的な行政サービスを行うためのお金を管理する、都の根幹となる会計
特別会計
特定の目的のための会計。一般会計から切り離して、その収入・支出を管理する会計。東京都には「小笠原諸島生活再建資金会計」や「多摩ニュータウン事業会計」など、全部で17種類の特別会計がある
公営企業会計
電車、バス、水道など、独立した都営事業のお金を管理する会計。東京都の公営企業会計には、東京都水道局の経理についての「水道事業会計」や、都営交通局の経理についての「交通事業会計」など、全部で11種類の公営企業会計がある。水道事業にかかる経費は、基本的に水道料金でまかなうなど、原則として都の財政とは独立して採算がとられている。
ノルウェーの財政規模に匹敵する東京都の予算規模
この15兆円という予算規模は、諸外国にも匹敵する巨額です。例えば、東京都の予算規模に近い国々には、為替の影響により、円での換算には変動がありますが、以下のような国があります。
・インドネシア:約18 兆円(2019年度)
・ノルウェー:約16兆円(2019年度)
・スウェーデン:約13兆円(2020年度予算案)
▼参考URL:東京都「東京都の財政」
https://www.zaimu.metro.tokyo.lg.jp/syukei1/zaisei/0204tozaisei.pdf
▼参考URL:JETRO 日本貿易振興機構
https://www.jetro.go.jp
東京都の「一般会計歳出総額」は史上2番目の7兆円規模
東京都の会計のうち、最も多額のお金の出入りがあるのが一般会計です。
一般会計とは、地方公共団体の基本的な活動に必要なあらゆる経費を計上しているので、東京都の根幹となる会計です。都民の生活の基盤を支えるための収入や支出が、一般会計の予算として計上されています。
そして一般会計の歳出総額とは、例えるなら一般会計用のお財布から支出が予想される総額のことです。
2020年度の東京都予算の一般会計歳出総額は7兆3540億円と発表されました。この金額は、過去最高の額となった2019年度よりは1070億円マイナスとはなったものの、史上2番目の予算規模です。
一般会計歳出総額と歳入の総額は、予算上では同額であるように調整されますが、最終的な決算時に歳出の方が大きければ「赤字」、歳入が大きければ「黒字」となるので、決算によってその自治体の経済状態を知ることができます。
また、予算の段階では、一般会計の歳出か歳入の予算総額を見ることで、その自治体の今年の経済活動の規模を示す「財政規模」を見ることができます。
東京都の一般会計歳出の内訳 ー「政策的経費(一般歳出)」が多くを占める
東京都では、一般会計歳出のうち、公債費や税連動経費などを除いた、「政策的経費」または「一般歳出」と呼んでいます。
東京都の「一般会計歳出」と「政策的経費(一般歳出)」は別の意味を持ちますのでご注意ください。
政策的経費は、政策的な判断のもとで、新たな行政サービスの開始による経費に加えて、現行の行政サービスや行政水準の向上を図る費用です。
公債費の予算は過去の借金によって、税連動経費は税制によってほぼ自動的に決まりますが、それ以外の行政サービスについての予算は、政策に応じて、その年ごとに決められています。
政策的経費のことを、一時的に投入する経費という理由から、臨時的経費、二次経費などと呼び、一般歳出と分ける自治体もありますが、東京都では政策的経費も一般歳出に含んでいます。
政策的経費の一般的な例としては、新しい施設の開設や、小・中学校大規模改修のための建設事業費などが挙げられます。
東京都の一般歳出は、5兆5332億円で、東京オリンピック用に体育施設の大規模改修が多かった前年度より647億円減となっています。
会計の内容や設置状況については自治体ごとに異なっています。東京都では一般歳出としている経費をさらに細分化して、経常的経費と政策的経費と分けている県や市もあります。
東京都では、都の公営企業会計に入っている予算が、ほかの県でも同じ会計に入っているとは限らないのでご注意ください。
東京都の支出を抑える工夫ポイント ー 財源確保のための「事業評価」について
東京都では7兆円もの歳出を予定した予算が発表されましたが、予算発表前には、支出を抑えるための工夫も行われています。
東京都では、予算編成の一環として、「事業評価」という事業にかかる予定の経費の見直しを行い、お金の無駄遣いが無いかチェックしています。
2020年度予算編成時については都の事業のうち、1266件の見直しを行い、無駄を省く、効率化を図るなどして、1030億円を浮かせ、財源として確保したと発表しています。
東京都の収入のポイントー2020年度「税収」は圧倒的に全国1位の5兆円超え
1位:東京都 5兆4446億円
2位:大阪府 1兆3413億円
3位:神奈川県 1兆2131億円
4位:愛知県 1兆1669億円
5位:横浜市 8461億円
東京都の一般会計歳入、つまり収入のうち、最も大きいのが「都税収入」です。
2020年度の東京都の税収は5兆4446億円が予定されています。前年度より600億円減少です。
東京都の5兆円超えの税収は、地方公共団体の税収としては、日本最大です。都道府県税収で全国2位の大阪府の2020年度予算案で示された税収は1兆3413億円であり、いかに東京都が突出しているかが分かります。
東京都の収入の予算として、税収の次に大きいのが「繰入金」で約7700億円です。繰入金は、都の貯金のようなものである「基金」を取り崩して2020年度予算に組み込まれたお金のことです。
東京都は、都の税収を全国に再配分する、国の「偏在是正措置」に協力しています
政府はこれまでに東京都の法人税などの一部を他県に再配分して格差を是正していくことを提案しており、過去10年ほど、東京都が受け入れてきたという経緯があるようです。これを「偏在是正措置」といいます。
ただし、東京都主税局は、東京都は人口も多いため、人口1人あたりの税収は全国平均程度だとして、偏在是正の必要性について疑問を呈する立場のようです。
▼参考URL:東京都主税局「いわゆる「偏在是正措置」に対する都税調の見解について」
https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/report/material/matome.html
東京都の借金「都債」のポイント ー「都債残高」は減少傾向で財政は健全化へ
「都債」は東京都が発行する債券のことで、簡単に言うと東京都の借金です。都債残高は、将来的に返済義務のある、借金全体の残高のことを意味します。
東京都の都債残高は8年連続で減少し、2020年度予算では4兆7875億円となっています。前年度より835億円減少しており、2012年度にはおよそ6.5兆円あった都債は毎年減少を続けているようです。
また、新規都債の発行額については前年度より12億円減少しており、2084億円です。過去には、1993年に年間で1兆円の都債を発行していたこともあり、当時に比べて都債に頼る財政状況からは健全化しつつあります。
どの程度、歳入を借金に依存しているかを計る、起債依存度という指標を見ても、東京都は2.8%であり、全国の地方公共団体の平均値10.2%よりも低い水準です。さらに、現在の国の起債依存度は31.7%ですので、国と比べても健全な財政を持っていることがわかります。
東京都の貯金「基金」のポイントー「基金残高」は積極的活用で減額へ
基金は、年度内で使用しないお金を、将来の目的のために積み立てる、または必要になる時のために準備しておく資金のことで、東京都にとっての貯金のようなものです。
東京都には多くの基金が設置されており、その基金残高の合計は2019年度時点で2兆5047億円でした。2020年度予算では、オリンピック・パラリンピックの東京2020大会を見据えて7601億円が取り崩され使用される予定であり、2020年度末には、1兆7744億円が「基金残高」として残る予定です。
大幅な基金の減額について、東京都は「積極的な活用」と表現しており、あくまでオリンピックを成功に導き、東京都の将来に向けた有効な活用であることを説明しています。
まとめ
このページでは、日本で最大規模の予算を持つ首都・東京都の2020年度の予算案のポイントについてご紹介しました。
東京都のお金は大きく分けると、一般会計と特別会計、公営企業会計という3種類のお財布ごとに管理されています。
2020年度の東京都の予算は、7兆円規模の一般会計に加え、5兆円規模の特別会計、2兆円規模の公営企業会計の合計で、15兆円規模になると見られています。
財政規模が15兆円というと、為替による変動や、それぞれの国の予算案の変化もあるので一概には言えませんが、おおよそノルウェー、スウェーデン、デンマーク、インドネシアなどの国々に匹敵するものです。
このような国家規模の予算を持つ東京都の財政ですが、近年は都債残高の減額や、基金の有効活用など、健全化しているようです。
東京都の多額の税収を、国によって他県に再配分する税制改正が行われており、東京都の税収は約9000億円、全体の税収の2割が減収している側面もあります。
このように、東京都の予算は、収入・支出の見込みや規模、借金、貯金のバランス調整して構成され、決定されています。
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