【地方自治体の未来】今後、地方創生できない「地方自治体」はどうなる?

今後、地方では、少子高齢化と生産年齢人口の都市部への流出によって地方自治の財政が厳しくなることが予想され、公務員の雇用環境も悪化するのではないかとも考えられます。 今回は、地方自治体の未来について、地方創生できない「地方自治体」とそこで働く「公務員」ついて考察します。

はじめに

これから地方公務員を目指す人にとって不安になりやすいのが公務員として就職した後のキャリアパスです。

一般的に公務員という仕事は、就職するのは大変だけれども、一度公務員になると身分は保障されていて、その地方でも上位の年収を稼ぐことができるというイメージがあります。さらに、身分保障されている反面、潰しが効きにくくて民間のように簡単に転職できないというイメージもあります。また、地方は少子高齢化と生産年齢人口の都市部への流出によって財政が厳しくなることが予想され、公務員の雇用環境も悪化するのではないかとも考えられます。

本記事ではこれから公務員になる方に向けて今後地方公務員の待遇はどうなるのか考察します。

夕張町は現在どうなっているのか?

おそらく地方公務員によって最悪のケースとは、自分が勤めている地方自治体が破綻してしまうことです。平成になってから地方自治体が財政破たんしたケースは福岡県赤池町と北海道夕張市の2例しかありません。もちろん、多くの自治体は財政破たんする前に合併などを使って破綻を回避すると考えますが、仮に自治体の財政が破たんした場合、公務員の待遇はどうなるのかということを夕張市の事例から考察します。

2007年夕張市破綻

夕張市はもともと炭鉱の町として栄えましたが、昭和の時代に石炭から石油にエネルギー革命が起こり、1990年には最後の炭鉱業者が撤退して、炭鉱が閉山となり税収が減少し自治体の立て直しを行っていました。

あの手この手を使って自治体の立て直しをおこなっていましたが、2007年に財政破たんし、財政再建団体に指定されて、事実上国の管理下になりました。

自治体が破綻すると行政コストが高くなる

財政再建団体に指定されると、市町村の予算に関して国の同意を得る必要があります。もちろん、財政破たんする団体は、歳入より歳出の方が大幅に上回っているので、財政を再建するためには、まず歳出のカットが行われます。

計画にない予算は国にほとんど認められませんし、学校が統廃合され、図書館のような公共施設は廃止されます。またそれだけではなく、住民税や水道料金など市町村が運営しているサービスや税金の価格は財政を均衡させるために高くなります。

公務員の待遇が悪くなる

もちろん、公務員なので簡単にはクビになりませんが、コストカットのために職員の待遇が悪くなります。NHKスペシャルの取材によれば、財政破たん後55人いた管理職は3人を残していっせい退職、年収は平均4割カットによって、260人いた職員は一瞬で減少したと言います。

その結果、残された職員は一人当たりの仕事の量も増えますし、年収も下がることになります。さらにその裏側では財政破たんによって、学校や水道のような生活に必要なサービスが不便になることから、生産年齢人口が流出して、ますます町の活気と税収が減り、公務員の仕事が大変になるという負のスパイラルが発生します。

> 参考情報:夕張市破綻から10年「衝撃のその後」若者は去り、税金は上がり…:
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/52287

地方自治体の今後

夕張市の事例は極端です。多くの自治体は財政が破たんする前に対策を行うはずなので、このようなケースは稀だと考えられますが、それでも自治体で働く地方公務員はこのような事態に陥らないように先回りして対策を行う必要があります。地方自治体にはこのようにならないために今後何が求められるのかについて考察します。

横並びから競争へ

一昔前は国からの地方自治体の待遇は一律でした。一般的に税収の多い自治体の方が、使える予算が大きいので行政サービスが良くなる傾向があります。よって地方と都心で生活インフラに格差ができるのは当然のことです。

しかし、今まではこの格差の大部分を政府が吸収していました。すなわち、税収が少ない地域には地方交付税交付金や国庫支出金などを交付して、地方と都市の間でインフラや生活の格差が出ないように配慮され続けてきたのです。

しかし、近年このスタンスは変わり、地方自治体にも自助努力を求めるようになりました。すなわち、地方の生活やインフラを守ることはその自治体の責任で、地方創生に意欲的な自治体は補助金などでサポートするけれども、創生できない自治体は自己責任であるというスタンスに変化したのです。

自治体の競争を煽る政策は随所で見ることができます。典型的な例はふるさと納税です。ふるさと納税は過当競争が発生していることから、政府が競争の抑制を行いつつありますが、もともとの目標の1つは自治体間競争を進めることにありました。

地方は創生できるのか?

地方創生が国策として重要なテーマになっており、先ほどの横並びから競争を促進している背景にも地方を創生して財政的に自主独立して欲しいという政府の思惑があります。そして、今後社会保障費などによって国の財政が圧迫されると、地方自治体への財政補助も少なる可能性も十分考えられます。

よって、地方自治体にとっても地方創生は重要なテーマですが、地方創生の際に求められる能力は従来の地方自治体の業務とは大きく異なります。地方自治体の業務の中心はこれまで富の再分配にありました。すなわち、決められた財源の中からどのように住民満足度の高い行政サービスを実現するのかという社会福祉について最適化することが仕事の中心でした。

しかし、地方創生をするのならば地方への移住の促進、企業の誘致、産業を活性化させる仕組み作りなどの仕事が重要になります。もちろん、これまでの行政でも両方を行ってきましたが、どちらのウェイトが高いかによって行政マンとして求められる能力が変わります。

端的に言えば、前者が総務や経理などのバックオフィス的な業務なのに対して、後者は営業やマーケティングなどのフロントオフィス的な業務で多少の商売っ気が求められます。

このような環境の変化に対応できる自治体と対応できない自治体によって、財政は二極化すると考えられます。

地方公務員の待遇について

以上のような、今後地方自治体に発生するだろう論点を踏まえて、地方公務員の待遇について考察します。

待遇は一律ではない

まず、公務員だからと言って雇用が保証されていて、年功序列で給料が上がり、職場の福利厚生が充実しているとは限らないように今後はなると考えられます。

公務員の給料は地方の仕事の給料の中でも比較的高く設定されていますが、それも財源あってのことです。つまり、自治体の財政が悪化すると、残業代の支給要件が厳しくなり、役職給削減のために昇進要件が厳しくなるなどのことが考えられます。

よって、待遇については一様ではなく、待遇が良い自治体と悪い自治体で更に差が広がり、二極化していくと考えられます。

「公務」の価値

公務員に求められる役割も変わります。一昔前は公務員の仕事は富の再分配が中心でしたが、今後はこれまで中央集権的に行ってきた地方の経済発展なども地方自治体の権限が大きくなると考えられます。

よって、「公務」に求められる価値も変容していくと考えられます。観光振興や企業誘致、産業の活性化のように自治体の経済の発展につながるような仕事がより重要になっていきます。

「プロフェッショナル」になる

一部の専門職を除けば、地方公務員は複数の部署をローテーションしていって、自治体内でのキャリアを積むというキャリアパスが一般的です。民間企業でも大企業の社員はキャリアパスになりますが、このように組織に対して最適化した人間は一定の年齢を超えると転職市場では急激に価値が無くなる傾向があります。

もちろん、部署の異動は自分では決められませんが、何かのプロフェッショナルになることを意識する必要はあります。例えば、観光なら観光、産業振興なら産業振興というように特定のジャンルに関して深い造詣があり、結果を残せた人材の方が転職市場で価値が高まる傾向にあります。

地方における複業化

地方においては今後人口が減少していくことが考えられます。そして、一般的に人口の少ない地方自治体ほど複業化が進みます。複業化とは1人の人が複数の仕事を掛け持ちするということです。

平日は建設業として働いているけれども土日は実家の農作業を手伝ったり、会社を経営しながら観光協会の理事の仕事も掛け持ちしていたりと、人手が足りず、専業の人を雇うほどの仕事量もないために、1人の人が複数の仕事を兼務していることがよくあります。

公務員は副業禁止規定によって、副業に一定の制限が掛けられていますが、一部の自治体では解禁する動きもありますし、市町村議会の議員には兼業で政治活動をしている人がたくさんいます。

人口減少と人材不足によって、特に地方では公務員も複数の役割を地方で果たさなければならないと考えられます。

まとめ

地方公務員の仕事の今後について予想、考察を行いました。よく、地方公務員の仕事は今後危ないと言われることがありますが、公務員という役割は自治体にとって不可欠です。よって、新規採用が絞られたり、財政が厳しい自治体は待遇が悪くなったりすることはあっても公務員という仕事は残り続けます。

ただし、一般的にイメージされるような地方公務員の働き方は今後できなくなるかもしれません。産業や観光の振興には前例を踏襲するだけではなく、新しい事例を自ら創出するクリエイティブさがより求められますし、公務員をしながら地元のためにNPO法人などの仕事も掛け持ちするというように忙しく働かなければならないとも考えられます。

また、基本的に雇用は流動化する傾向がありますし、景気が良いときは民間企業の方が、待遇が良くなるので、一度公務員として働いたものの民間企業で働いてみたいと転職する公務員も増加するはずです。

以上のように地方公務員に求められる役割も働き方も変化していくと考えられますが、より小さい自治体にとっては公務員の仕事は重要になってきます。地方を活性化させるにあたって公務員は重要なポジションで、小さな自治体になればなるほど公務員一人一人の仕事が町に与える影響が大きくなります。

地方公務員という仕事のやりがいは高まっていくと考えられます。

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