新型コロナウイルス感染症対策専門家会議での「ロックダウン」の定義
「ロックダウン」とは「都市封鎖」のことを意味します。
具体的には、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、2020年3月19日に行われた専門家会議の中で、「数週間の間、都市を封鎖したり、強制的な外出禁止の措置や生活必需品以外の店舗閉鎖などを行う、強硬な措置」と定義されています。
また、専門家会議では、「オーバーシュート(感染爆発)」と呼ばれる状態まで感染者が爆発的に増加した場合、政策として取り得る選択肢は「ロックダウン」以外にはほぼ無いとされています。
実は明確な法的根拠が無い「ロックダウン」
「ロックダウン」は都市の封鎖を意味しますが、都市の封鎖とは一体どのような状態なのか、具体的に明記してある法律はありません。「新型コロナ」についての対応を暫定的に定めた「改正新型インフルエンザ感染症等特別措置法(以下、改正特措法)」においても、「ロックダウン」について定めた項目が無いというのが現状です。
「ロックダウン」は、都市に人が入ってきたり出て行ったりするのを禁止するのか、物流も止めるのか、ロックダウンされた都市の中で店は営業を続けることができるのかなどといった、細かい基準が日本にはありません。
基本的には「ロックダウン」したとしても、それに従わず移動した人に対する罰則は無く、外出自粛や往来自粛を「要請」している現在の状況と、法的拘束力は変わらないと見られています。
以下の記事もご参考下さい。
【新型コロナウイルス】2020年3月13日 特措法成立、対策本部設置で「緊急事態宣言」も可能に
新型コロナウイルスの日本国内の感染拡大への懸念から、「改正新型インフルエンザ等対策特別措置法」が国会で可決、成立しました。この特措法により可能になった「緊急事態宣言」によって、私たちの生活がどのように変わるのか解説します。
日本の首都・東京都が想定している「ロックダウン」について
法的根拠や定義が曖昧な「ロックダウン」という言葉は、日本国内でもすでに使用されています。どのような意味で使われているのか、東京の例をご紹介します。
日本最大の都市である東京都では、感染者の増加を受け、小池都知事が3月23日に「ロックダウン」の可能性について言及しました。
東京都が想定している「ロックダウン」は、諸外国で既に採用されている「外出禁止」などを想定して使用しているようです。
世界の都市で行われた「ロックダウン」の例
東京都が参考にしているように、世界の都市ではすでに「ロックダウン」が行われた、または今も行われているところもあります。
新型コロナウイルスの最初の流行地域である中国・湖北省の武漢では、2020年1月下旬から、ウイルスの感染拡大を食い止めるために、空港や鉄道の駅、高速道路などを閉鎖して、武漢市を事実上封鎖、つまりロックダウンする措置を取りました。
また、3月中旬からはフランスやイタリア、イギリスなどで相次いで「ロックダウン」が実行されています。これらの国々では、感染の拡大が懸念される地域を中心に法律で厳しい外出禁止の措置をとり、違反者には罰金が科されています。
アメリカでは3月下旬から、20以上の州が外出制限を実施しており、中には事業者の全従業員に対して出社を禁止し、完全在宅勤務を義務付けた州もあります。
以上のように世界でも「ロックダウン」の定義は曖昧であり、罰則の規定も各国で緊急に決めている状態なので、国によって違いがあります。
ただし、日本では「ロックダウン」によって国民の行動を取り締まり、罰則を規定しているような法律は今のところ成立しておらず、「改正特措法」でも定義が無いため、諸外国で行われているような「ロックダウン」を行うことは不可能だと言われています。
日本で「ロックダウン」的な措置を取るには、まず「緊急事態宣言」が必要か
日本では「ロックダウン」は事実上不可能ですが、「ロックダウンのような措置」を取ることは可能とも言われています。
「ロックダウン」のような状態を可能にするためには、まず「改正特措法」に基づく「緊急事態宣言」の発令が必要です。
「緊急事態宣言」を発令することで可能になる措置はいくつかありますが、一例としては「多数の者が利用できる施設」の使用制限や停止を要請することができます。
多数の者が利用できる施設は、具体的にはスーパー(一部例外あり)や映画館や、図書館などとされています。
劇場
映画館
演芸場
展示場
百貨店・デパート
スーパーマーケット
ホテル・旅館
体育館
ボーリング場
博物館・美術館
図書館
キャバレー・ナイトクラブ・ダンスホール
理髪店
質屋
自動車教習所
学習塾など
ただし、スーパーマーケットの中でも、食品、医薬品、衛生用品、燃料など生活必需品の売り場だけは、営業を続けることができるとも規定されているようです。
つまり、政府が「緊急事態宣言」を出して、各施設が閉館するなど、政府の「要請(お願い)」に従い、国民もそれに伴って施設などに出かけずに自宅待機をすれば、「ロックダウン」のような状態をつくることは可能だと言えます。
ただし、「緊急事態宣言」が出された後も罰則などがあるわけではなく、法的拘束力は他国に比べて弱いと言えます。
それでも日本人は政府の「要請(お願い)」に皆で従うのか、「ロックダウン」の状態をつくるのかはその国民性に委ねられているとも考えられるでしょう。
まとめ
このページでは「ロックダウン(都市封鎖)」とは具体的にどのような意味かを解説しました。
「ロックダウン」は、海外では外出自粛や在宅勤務を法律で義務化したり、罰則を規定したりするなど、法的根拠のもと進められてきました。
しかし、日本では「ロックダウン」を定める法律がなく、「ロックダウン」のような状態に近づけるためには「緊急事態宣言」の発令がまず必要だということはご紹介した通りです。
しかし「緊急事態宣言」が発令されたとしても、政府の要請を無視した場合などの罰則規定はなく、どこまで人々の活動を制限できるかは未知数です。
専門家会議で、新型コロナウイルスの感染拡大を食い止める唯一の政策だと議論されている「ロックダウン」ですが、その実現は、政府による法的な拘束力ではなく、国民ひとりひとりの意識に委ねられています。
これから公務員を目指すという方は、日本では国民の自由な行動が保証されている一方で、「ロックダウン」といった政府が強力な権限を持つ大胆な政策の実行は難しいといった特徴があることをどのように考えるでしょうか。
「新型コロナウイルス感染症」の世界的な流行は、このようなそれぞれの国の仕組みについて改めて考えさせる機会でもあると言えそうです。
コメント
コメント一覧 (1件)
この時勢、ロックダウンとは具体的にどういったものか知ることができ良かったです。結局日本はロックダウンをした場合でも強制ではなく要請で今の緊急事態宣言と変わりがないのではないかと思いました。