【韓国レポート】韓国での生活 「道路交通」について

私が韓国で暮らし始めて、はや15年が過ぎました。何度も旅行で来ていたこの国。韓国の交通事情はある程度知っているはずだったのですが、実際に深く根を下ろしてみると、旅行者の時には見えていなかった様々なことが目に付くようになりました。

日本と異なる韓国の道路交通事情についてまとめました。


そこのけそこのけ車が通る

この記事を書くにあたってネットで少し調べてみたところ、驚くべき事実を知りました。

日本は車優先社会なので歩行者保護などという意識はないという意見がかなり多いのです。日本に帰省するたびに日本社会の交通マナーの良さに安心する私には、極めて衝撃的な事実でした。私にとって日本という国は、これまでずっと、そして今でも、車が歩行者を優先してくれる社会だからです。

日本が車優先社会と言うのなら、韓国は日本の比ではありません。単に運転者のマナーが無いと言えばそれまでかもしれませんが、路地裏の小さな交差点、もちろん横断歩道なんて無いところで、まだ車が遠くにいるから大丈夫と思って渡っていると、なんとその車は横断する歩行者がいようがお構いなしに交差点に突っ込んで来て、歩行者の直前で速度を緩めるのです。止まる車もあり、じりじりと寄って来る車もありますが、「あなた今、私のこと轢こうとしました?」と言いたくなるような状況になります。

右折、左折の際にもウィンカーなんて出しません。私の経験上、ウィンカーを出す車は10台に1台の割合でいるかいないかといった感じです。ウィンカーは歩行者や後続車のことを考えて出す信号ですから、運転者が他人のことを考えていないことが良く分かりますよね。

また、自分の行く方向を見ないでハンドルを切って(つまり、右に曲がるのに左から来る車ばかりを注意して)道を曲がる人が日本よりも多いように思われます。とにかく、車を運転している自分が走りたいように走り、行きたい道を行く、というのが韓国のドライバーの一般的な考えのようです。

こういったマナーの無さは、自家用車を運転している人だけではなく、運送会社のトラック、タクシー、バスといった商業車の場合も同じなので驚きを隠せません。何のために車にウィンカーが付いているのだろうと心の底から疑問に思います。商業車になると少しはウィンカー稼働率が上がるものの、プロのドライバーとしてこれでいいのだろうか?と感じることが多々あります。

ただでさえマイカー通勤の多い韓国。ウィンカーを出さず、譲り合いもしないため、車同士の小さな衝突事故はたびたび目にします。歩行者保護をしないだけでなく、ドライバーの間においてもマナーが無いので、私はとてもこの国では車を運転できそうにありません。

韓国の市バスは道路を走るジェットコースター

韓国のことを少し知っている人であれば、この国の市バスに関する話が色々出てくると思います。数年前まで、韓国では遊園地に行かずともジェットコースターのスリルを楽しめるなどと言われるほどに市バスの運転の荒さは有名でした。

今でもバス運転士の運転が穏やかになったとは言い難いですが、ジェットコースターと異名を取るほどのスピードとスリル感はなくなったようです。いいえ、単に私の感覚が“ジェットコースターバス”に慣れてしまったのかもしれませんが…。それでも、まだまだ日本のバスよりもかなりスピードがあるのが韓国の市バスなのです。

 

韓国市バス

運転の荒さというと聞こえが悪いので、運転技術が高いと言い換えましょうか。バス運転士は皆、自分の運転技術に自信があるので短い距離であってもスピードを出し、急ブレーキ、急カーブといった荒いと思われるような運転をするのでしょう。


また、バス運転士のプライドの高さ(?)もかなりのもので、他の車、特にタクシーとの奇妙な張り合いを目にすることがあります。そもそもバスとタクシーは車両の大きさも運行方法も異なるので張り合いようがないはずなのですが、同じ道路を走る車ということで両者の小競り合いが時々展開されます。

タクシーも、バスに負けないくらいにビュンビュン飛ばします。そしてお互いに譲らないため、道路の真ん中で窓を開けてケンカをしたり…ケンカにまではならなくても、横を走るタクシーに向かってバス運転士がひとりごとで悪態をつくこともあります。自分が乗ったバスの運転士が悪態をついているのが聞こえるとジェットコースターとはまた別のスリルを味わえるという、前向きに考えると非常にエキサイティングな乗り物が韓国の市バスと言えるでしょう。

私はこれまで2回、自分が乗っていた市バスの運転士が道の真ん中でバスを降りてしまったことがありました。2回ともタクシー運転士とのケンカが原因です。1回は、先にタクシー運転士がバスに乗り込んできて、そのまま近くの警察署に向かい(バスの路線上に警察署があった)、そこでバス運転士も一緒に警察署に行ってしまったという、なんとも信じがたい出来事でした。しかし、バス運転士もさすがに仕事中だったからか、警察署の建物の前まで行って引き戻して来たのでそこで解決。何事も無かったかのようにバスはまた走り始めました。

韓国では一般交通手段として地下鉄よりもバスのほうが発達しているので、道路を走るバスの台数が圧倒的に多いです。よって、一つのバス停に一度に停車するバスの数も多く、自分が乗るバスがバス停に止まったら、乗り遅れないようにバスに走り寄る必要があります。日本のように、バス停の一番前に来たらゆっくり乗車ドアを開けてくれるような余裕は韓国の市バスにはありません。バス停に止まり、ドアを開け、乗客が乗り降りしたらすぐさま発車するのが大前提とされています。

韓国の市バス

私が韓国生活を始めて2年ほど経った頃、日本に帰省した際に市バスに乗る機会がありました。その時、行き先の違うバスが2台一度に停留所に止まったため、私は韓国式に後ろに停車したバスに乗ろうと走り寄ったところ、運転士さんに「前に行ってドアを開けるので前で待っててください」と前方を指差すジェスチャーをされてしまいました。

自分では、韓国生活にそれほど染まっているとは思わなかったのですが、停車したバスに走り寄ることが見事に身に付いてしまった自分が可笑しくもあり恥ずかしくもあり…照れ笑いをしながら乗車したことを憶えています。

オートバイが歩道を行く

韓国では、バイク便やピザなどのデリバリーのオートバイが歩道を走ることがあります。もちろん、これは違反行為にあたるので取り締まりを受けるべきなのですが、歩道を走ったために警察に捕まったオートバイを、私は未だかつて見たことはありません。

私は、歩道を我が物顔で走るオートバイが大嫌いなので出来るだけ道を譲りたくはないのですが、よけずにのろのろ歩いていると轢かれかねないため、しぶしぶ横にそれて道を空けてやります。外国人の私と違い、韓国の人たちは皆「意地を張らずに、危ないから早めによけたほうがいい」と殊勝なことを言うのです。

交通ルールも守れないオートバイに対するこの気持ち、素晴らしいと思いませんか?彼らはそれがもう当たり前と思っていて、オートバイに文句を言ったところで何も良いことは無いと分かっているのです。あとは、自分自身がケガをしないように身を守るのみ…。“郷に入れば郷に従え”の真髄を見た気がしました。

歩道を走るオートバイは、商業目的で時間に余裕のない一部のものに限られています。そうは言っても、自転車ですら歩道を走るのは危ないとされているのに、オートバイが歩行者を押しのけて走って行くのは見ていてハラハラ、ドキドキです。こういったことはスクールゾーンだろうが病院の近くだろうがお構いなしなので、取り締まりや罰則を強化する必要があると思いながら毎日暮らしています。

まとめ

東南アジアの国では、日本とは異なる道路交通事情が話題になることが多いようですが、実はすぐ隣の韓国においても日本とは異なる点がたくさんあります。

日本は運転者のマナーがなっていない!とお怒りの方もいらっしゃるようですが、他の国に比べてみると、とても歩行者に優しい国ということが改めて分かるのではないでしょうか。

本記事は、2018年2月9日時点調査または公開された情報です。
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