地上から日本を守る!国家公務員「陸上自衛隊」を構成する16の職種とは?

自衛隊の中でも隊員数が最も多いと言われる「陸上自衛隊」は、その中でもいくつかの職種に分かれています。

本記事では、「陸上自衛隊」の16の職種を、職種ごとに詳しく解説します。


目次

はじめに-陸上自衛隊を表す四字熟語は、「用意周到」

陸上自衛隊は、地上から日本を防衛する組織です。近接戦闘に秀でており、有事の際には地上から脅威を攻撃します。

そんな陸上自衛隊は、「用意周到」だと表現されることがあります。用意周到とは、物事が起きる前にすでに準備が済んでいる状態を表します。陸上自衛隊は、常に脅威が侵入してくることを想定して、日々訓練に取り組んでいます。

また、外敵からの攻撃に備えるだけでなく、災害時には災害発生地に向い、被災者の救助や道路の交通整備、物資の援助などを行うこともあります。

陸上自衛隊にはいくつ職種があるの?

陸上防衛力を持って、日本の平和と国民の安全を守る陸上自衛隊ですが、陸上自衛隊にはいくつの職種があるのでしょうか。

陸上自衛隊は16の職種から構成されている

陸上自衛隊は、普通科をはじめ、16もの職種で構成されています。そして、この16職種が互いに連携し合い、陸上自衛隊の任務遂行に寄与しています。

一方で、16職種のどれか一つでも欠けてしまえば、陸上自衛隊という組織が正常に機能することはできません。

陸上自衛隊内の指揮系統確立や組織の秩序維持は、16職種それぞれの任務遂行があってこそのものなのです。

職種は入隊後、適正検査の結果と隊員の希望によって決定する

陸上自衛隊における隊員それぞれの職種は、ほとんどの場合、入隊後の新隊員教育課程で決定します。

教育課程期間中には、新隊員に対し職種説明会や適性検査が実施されますが、職種決定時は、隊員の希望も参考にしながら個々に職種が付与されています。

もちろん、なりたい職種に必ずしもなれる訳ではなく、希望としていなかった職種に決定する可能性も。しかし、希望職種でなかったにも関わらず、配属されてから自身の才能を発揮する隊員もたくさんいます。

実際、自衛隊には「職種変換」という制度はあるものの、違う職種に変える隊員の割合は、非常に低いのが現状です。


前期教育課程終了後は各職種ごとに分かれ、より専門的知識を学ぶ

前期教育課程では、陸上自衛官としての教養や規則習得をメインに学びます。

一方の後期教育課程では、各職種に分かれ、それぞれの職種で必要となる専門的知識を習得します。この後期教育課程は、実際に部隊での実業務がスタートした際、「右も左も分からない」という状況を少しでも軽減し、部隊の即戦力として貢献するためにも、非常に重要な位置付けとなっています。

陸上自衛隊における職種の概要についてご紹介しましたが、ここからは実際に、16職種それぞれの任務や業務内容について解説していきたいと思います。

「陸上自衛隊ってどんなことをしているの?」「陸上自衛官になりたいけど、どんな職種が自分に合っているか分からない」などと感じている人は、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。

陸上自衛隊の16の職種紹介

陸上自衛隊には、16種類の職種があり、自衛官がどの職種を担当しているかは、制服の襟のバッジで判断することができます。

陸上自衛隊を始め、海上自衛隊、航空自衛隊は、普通科や整備科などいくつかの職種や職域に分かれて日本の防衛を行っています。職域とは、職業についている場所や受け持つ仕事の領域を意味します。

自衛隊を目指す際には、どの職種を目指したいかも漠然と考えておくとよいかもしれません。

それでは、陸上自衛隊の職種をご紹介します。

1.各職種の中で一番の隊員数を誇る「普通科」

普通科は地上戦闘の骨幹を担う職種で、陸上自衛隊の第一線で活躍する職種。陸上自衛隊の中で最大の隊員数を誇り、活気ある雰囲気が印象的です。

そして普通科は、全国各地に所在する駐屯地のほとんどに配備されているのが特徴的。また優れた機動力や近接戦闘能力を持って、その地域の防衛や災害時にいち早く駆けつけます。

そんな迅速な対応が求められる普通科では、射撃・戦闘訓練、野営訓練、市街地戦闘訓練など、有事や災害時を想定した訓練を日頃から数多くこなしています。

2.陸上自衛隊の花形車両・戦車を乗りこなす「機甲科」

現在、600両以上の戦車を保有する陸上自衛隊。そんな高い戦闘力・防護力を持つ戦車の、操縦及び戦車からの砲撃等を行うのが機甲科です。

機甲科では有事の際、戦車の火力や機動力が最大限に発揮されるよう、常日頃から戦車の整備や操縦訓練を行ってます。また普通科、施設科、特科との大規模な共同訓練も開催される機甲科では、各職種と連携しながら、有事に対する体制を整えています。

3.大量の火力で敵を圧倒!「野戦特科」

地上戦となった際、敵への間接射撃によって前線部隊を支援するのが、野戦特科。遠方射撃を持って、敵に所在を知らせることなく攻撃を行います。

そんな野戦特科では攻撃に際し、敵の位置情報の収集、測量、そして弾の発射と、隊員一人ひとりに役割が与えられています。日頃から意思疎通を図り、チームワーク力を高めています。


4.侵攻する航空機を地上から要撃する「高射特科」

近年戦闘のメインとなっているのが、航空機からの攻撃。その航空機が国土に侵入してきた際、要撃を行い地上の重要を拠点を守るのが、高射特科の任務です。また地上からの要撃のほか、空からの攻撃情報を事前に収集する「対空情報活動」も行います。

そんな高射特科は、海外での訓練が頻繁にあるのが特徴。アメリカ軍との共同訓練に参加し、対空戦闘部隊としてのスキル向上・維持を行なっています。

5.情報収集・保全のスペシャリスト「情報科」

2010年3月に新しく職種化されたのが、情報科です。海外や国内における情報の収集や処理を主たる任務とする情報科には、「情報を集めて使う」「情報を保全する」ことに関してのスペシャリストが揃っています。

また国賓に対する通訳支援、指揮官・各部隊長ミーティングの資料作成、測量・地図作成など、業務の幅は多岐に渡るのが情報科の特徴。自衛隊内はもちろん、各省庁と相互に連携を取りながら任務を遂行しています。

6.各種ヘリを使って有事や災害に対応する「航空科」

陸上自衛隊では、対戦車ヘリ、輸送ヘリ、観測ヘリ、多用途ヘリなど、用途に合わせた航空機を数多く所有しています。これらの航空機の操縦、整備、運営などを行うのが航空科です。

有事の際は、空から地上部隊を支援する航空科ですが、災害発生直後には、上空からの被害状況を確認・撮影し、迅速な災害派遣の編成に貢献しています。また被災者の救出や支援物資の輸送などの任務においても、非常に重要な役割を担う職種です。

7.国内はもちろん海外にも活躍の場がある「施設科」

施設科は施設技術能力を持って、戦闘支援や兵站支援を行う職種。敵が簡単に陣地に侵入するのを防ぐため、障害を構築したり、地雷を埋設したりする任務を担っています。また災害が発生した際は、道路や橋梁の補修・構築も行います。

多くの施設機材を所有する施設科は、災害派遣はもちろん、国際連合平和維持活動に派遣されることが多い職種。過去には、東ティモールや南スーダンにおいて、施設大隊が道路整備及び施設基盤整備をはじめとしたインフラ整備を行い、生活基盤の安定に大きく貢献しました。

8.通信手段の構築や整備のエキスパート「通信科」

有事や災害が起きたとき、各部隊間の迅速な意志疎通が重要となります。この意思疎通における構築を行うのが、通信科の任務です。

通信科では、各種通信電子機材を用いて、電話回線、ファックス通信などの提供を行います。あらゆる専門技術を駆使して通信手段を構築するため、各職種を影から支える黒子のような存在である職種と言えます。

9.陸上自衛隊が保有する火器や車両の整備を行う「武器科」

武器科では、各部隊が保有する車両・火器・弾薬などの整備や修理、補給を担う職種です。

武器科では、陸上自衛隊はもとより、各部隊にとってなくてはならない車両や火器に関する知識を幅広く学べるのが最大の魅力。また、武器科は各地域で発見された不発弾の処理も担う職種。不発弾処理に関しては特別な知識・技術習得が必須で、試験に合格すれば証明する特別なき章が付与されます。

10.隊員の衣食住を支える「需品科」

自衛隊員の衣食住を支え、生活環境を保全する任務を担う需品科。その業務は、自衛隊員の衣服や住居の整備、糧食の管理、燃料・需品の補給など多岐に渡り、「縁の下の力持ち」として各部隊を影から支えています。

また需品科では、災害発生時に被災者に対し、食事の配給や入浴サービスを行なっています。

11.部隊、戦車、補給品などを目的地へ送り届ける「輸送科」

輸送科は、その名の通り、車両で部隊・戦車・重火器・補給品などを輸送する職種です。加えて、車両の整備、輸送計画の立案、道路交通規制や民間輸送なども行なっています。
輸送科は、有事や災害派遣の際、非常に重宝される職種。隊員の輸送や支援品輸送において、各部隊へ貢献することはもちろん、被災者の方々への支援にも携わることができます。

12.化学兵器や生物兵器から国民を守る「化学科」

化学科は、化学兵器や生物兵器などの特殊武器攻撃に対する被害の拡大防止、放射線物質に汚染された人員や施設等の除染などを行う職種です。

そんな化学科は、1995年に発生した地下鉄サリン事件、そして2011年に発生した東日本大震災では、除染活動の支援を行なった部隊としても知られています。

化学兵器や生物兵器における知識習得はもちろん、緊急事態への即時対応のために日々訓練を重ねています。

13.自衛隊内における“警察組織”「警務科」

警務科は、言わば自衛隊内における警察組織。警務科に所属する隊員には、特別司法警察職務が与えられ、自衛隊内や公務中に起きた犯罪に対する被疑者取調べや鑑識活動、駐屯地や隊員の警護、道路の交通規制、犯罪予防などの業務を行なっています。


あってはいけないことを未然に防ぐ、そんな重要な任務を担う警務科では、物事を様々な視点から捉える観察力が求められます。

14.隊員の給与をはじめとした金銭管理を行う「会計科」

会計科は、隊員の給与支払、物品契約、物資の調達、旅費計算など、各駐屯地及び各部隊の金銭管理を行う職種です。また税務署への税金納付や債権回収などの業務も行っています。

1円も無駄にすることができない国費を扱う会計隊では、一番に正確性が求められます。責任を感じる職種ではありますが、それ以上にやりがいも大きいのが会計科の特徴です。

15.隊員を健康面で支える「衛生科」

有事における隊員の救護支援、災害時の被災者救護支援など、医療全般の業務を行うのが衛生科です。

そんな衛生科では、医官、歯科医官、看護官、薬剤官、救急救命士、臨床検査技師、放射線技師など、医療関連の資格を持った隊員が多く在籍しているのが特徴。隊員の健康面でのサポートや災害派遣時の衛生活動など、様々な場面において支援を行っています。

加えて、衛生科隊員は国際緊急援助隊として派遣されることも多く、グローバルに活動できる職種です。

16.音楽の力で陸上自衛隊をサポート「音楽科」

音楽科は、隊員の士気を高めるための演奏、広報活動のための演奏などを行う職種です。また国賓の歓迎行事での演奏や、外部から要請があればコンサートも開催しています。

自衛隊最大の音楽イベント「自衛隊音楽まつり」では、音楽科の演奏技術やパフォーマンス力の高さを間近で感じることができ、隊員はもちろん、国民にも感動をもたらしてくれます。

そんな音楽科へは、選考試験の受験が必須。この試験に合格することで、晴れて音楽科隊員になることができます。

まとめ

今回は自衛隊の中でも、「陸上自衛隊」について職種をご紹介しました。

約15万人が所属する陸上自衛隊は、16の職種で構成され、それぞれの職種が活動することで日本の防衛を担っています。

陸上自衛隊を目指すのであれば、おおよそどの職種を目指しているのかが決まっていると、そこに向けた目標設定を行うことができ、より陸上自衛隊に所属するための気持ちが強まるかもしれません。

本記事は、2018年3月10日時点調査または公開された情報です。
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