公務員のスキルアップのための地方自治法(8)【議会 その2】

地方自治法について解説するシリーズ8回目となる今回は、地方自治法の【普通地方公共団体】の範囲から、前回に引き続き「議会」について解説します。

この項目では、昇任試験にもよく出題される、議会の種類やその特徴、ルールについて解説していきます。


議会のしくみを知ろう

この項目で解説する「議会」とは、都道府県や市町村など自治体の議会になります。

地方自治法の索引でいうと、【普通地方公共団体】の第6章「議会」の項目です。

それではまず、議会はどのように開催されるのかを見ていきましょう。

議会の開催には、何か決まりごとがあるのでしょうか?

基本パターンと新パターンがある

まず、以前からある基本のパターンを解説します。

自治体の議会は、基本的に年4回ほどの「定例会」(例:2月、6月、9月、12月)と、特定の案件に対して開催する「臨時会」で成り立っています。

年4回ほど、というのは、以前の地方自治法では、「定例会は年4回までとし、その範囲で条例で定める」と規定されており、それにもとづいて定例会を年4回とする自治体が多かったのですが、2004年に地方自治法が改正され、回数のルールは撤廃されました。

各自治体とも自由に定例会の回数を決めてよいことになったのですが、実際には多くの自治体が条例で従来どおりの年4回と設定しています。

この定例会と臨時会のセットが基本パターンになります。

もうひとつの開催方式は、「通年会期」といい、2012年の地方自治法改正で新たに認められるようになったもので、定例会・臨時会の区分を設けずに、1年まるごとを会期(4月1日~翌年3月31日など)とすることができるようになりました。

その新方式を採用する場合は自治体の条例でそのように定め、定期的に会議を開く日「定例日」も条例で定めることとなっています。


ここから少し「会期」について説明します。

議会の「会期」って何?

議会は、単一日に1度だけ開催するのではありません。「会期」という期間を設け、その期間中に集中して何度も議会を開催します。

会期とは、「議会が活動できる期間」のことです。先ほど年4回の定例会の例として、2月、6月などと挙げましたが、これは2月に1回、6月に1回だけ議会を開くのではなく、例えば2月定例会の「会期」は2月5日~3月31日などと設定して、その期間中、何度も議会を開いて審議するものです。

年4回の会期の中でもとくに2月の定例会は、次年度(4月~3月末までの1年間)の予算を決める最も重要な会期で、日数も1番長くなっています。

定例会の会期はどうやって決めるの?

ではその会期は毎回どのように決めているのでしょうか?

会期は毎回、定例会の初めに議会で決めることとされています。(地方自治法102条7項)これは試験でも出題されるので覚えておいて下さいね。

次にその会期が「1年中」という、新方式である通年会期について見ていきましょう。

新しくできた通年会期、そのメリットは?

会期が1年中と言われても、その1年間の中で議会を開く日(定例日)を条例で決めておくのであれば、好きな時に議会を開けないし普通の定例会と何が違うのか、どこにメリットがあるのかイメージしにくいと思います。

しかしこの通年会期は、基本的に毎月最低1回は議会を開く定例日とする、つまり議会の回数が格段に多くなることをイメージして作られているのです。例として、毎月第2・4金曜日を定例日にする、毎月10日を定例日にする、などです。

当初、地方自治法の改正案では、「必ず月1回以上」と定めるつもりでしたが、さすがにそこは各自治体の自主性に任せることとしました。しかしイメージとしては月1回レベルの回数で、というものになっています。

さらに、従来の定例会だと、たとえば6月の定例会の議案なら6月の会期中に決定し終えなければならない、というルールがあります。

これを「会期不継続の原則」といい、もしも1つの会期中に決定できなかった案件は、次の会期に継続できないという原則になっています。(地方自治法119条)

それでもどうしてもその案件を決定したければ、次の会期にまたゼロから提案しなおさなければならないのです。(特別な例外はあります)

しかし通年会期では、1年間がまるまる1つの会期なので、その間にひとつの議案をじっくり議論し、決まらなければ来月、来々月の議会で引き続き議論しよう、と決定までに時間をかけることができます。

また1年を通して毎月まんべんなく議会を開く日がありますから、災害などで急に何かの事案が発生しても、直近の議会ですぐに話し合うことができますし、会期中は議会が調査を行ったりいろいろな活動ができるため、臨機応変に対応できます。


定例会と通年会期の違い

ここまで、新しく認められた通年会期方式と従来からある定例会・臨時会について簡単に解説しましたが、この2つの方式には他にも違いがあるので、それぞれの特徴を見てみましょう。

議会の招集をかけるのは誰?

定例会・臨時会を開催する時には、市長(知事)が「招集」をかけることになっています。

ここでの招集とは簡単に言うと、「これから会議を開催します!集まって下さい」と号令をかけることです。

それでは、試験にも出題される議会の招集に関する条文を見てみましょう。

地方自治法101条

1項 普通地方公共団体の議会は、普通地方公共団体の長がこれを招集する。

2項 議長は、議会運営委員会の議決を経て、当該普通地方公共団体の長に対し、会議に付議すべき事件を示して臨時会の招集を請求することができる。

3項 議員の定数の4分の1以上の者は、当該普通地方公共団体の長に対し、会議に付議すべき事件を示して臨時会の招集を請求することができる。

4項 前2項の規定による請求があったときは、普通地方公共団体の長は、請求のあった日から20日以内に臨時会を招集しなければならない。

出典
地方自治法

要約すると、定例会・臨時会は市長(知事)が招集しないと開催できず、そのうち臨時会は、市長みずからの意思で招集する以外にも、議員たちが市長に「この案件で臨時会を開きたいんです」と請求すること、また議長が議会運営委員会(次回解説します)の議決を経て市長に請求することもできるということです。

阿久根市のもめごとがきっかけで地方自治法が改正された?

先ほど、議会は市長が招集しないと開催できないと解説しましたが、そのことで過去にトラブルになった事例があります。

数年前、鹿児島県阿久根市で、当時「ブログ市長」と呼ばれた竹原市長と議会がどうしようもなくもめてしまい、そのことが日々メディアを賑わしていましたが、市長vs議会のバトルはどんどんエスカレートし、議会側が101条にのっとって臨時会を招集するよう市長に請求しましたが、市長がこれを拒み続けました。

これがきっかけで、臨時会の招集について地方自治法が次のように改正されました。

地方自治法101条

5項 第2項の規定による請求のあった日から20日以内に当該普通地方公共団体の長が臨時会を招集しないときは、第1項の規定にかかわらず、議長は臨時会を招集することができる。

6項 第3項の規定による請求のあった日から20日以内に当該普通地方公共団体の長が臨時会を招集しないときは、第1項の規定にかかわらず、議長は第3項の規定による請求をした者の申し出に基づき、当該申し出のあった日から都道府県および市にあっては10日以内、町村にあっては6日以内に臨時会を招集しなければならない。

出典
地方自治法

これは、臨時会招集の請求を市長が拒んだ時には、議長がみずから臨時会を招集でき、また議員たちからの請求でも議長が臨時会を招集できるというもので、竹原市長と議会の対立の一件から、新たに条文が追加されました。

議会を招集することは必ず市民に知らせる?

定例会・臨時会では議会を招集すればそのことを告示しなければいけません。告示とは、簡単に言えば広く市民にお知らせすることです。

それでは、緊急の場合でも必ず議会前に告示をしなければならないのでしょうか?議会が終わってからの報告ではだめなのでしょうか。告示のルールを見てみましょう。

地方自治法101条

7項 招集は、開会の日前、都道府県および市にあっては7日、町村にあっては3日までにこれを告示しなければならない。ただし、緊急を要する場合は、この限りでない。

出典
地方自治法

この条文を見ると、やはり議会を招集する時には事前に告示しなければならないことがわかります。またこの文面では、「緊急の場合は告示をしなくていい」と勘違いしてしまいそうですが、違います。

この条文は、告示は決められた日までにしなければならないが、緊急の場合は告示の日付がずれてもいい、つまり告示自体は必ずしましょうね、という意味です。

この条文だけ見てもどう解釈していいかわからないかもしれません。こういうところが試験で狙われたりするので、覚えておいて下さい。

そしてさらにややこしいのが次の条文です。

地方自治法102条

3項 臨時会は、必要がある場合において、その事件に限りこれを招集する。

4項 臨時会に付議すべき事件は、普通地方公共団体の長があらかじめこれを告示しなければならない。

5項 前条第5項または第6項の場合においては、前項の規定にかかわらず、議長が、同条第2項または第3項の規定による請求において示された会議に付議すべき事件を臨時会に付議すべき事件として、あらかじめ告示しなければならない。

6項 臨時会の開会中に緊急を要する事件があるときは、前3項の規定にかかわらず、ただちにこれを会議に付すことができる。

出典
地方自治法

内容を要約すると、臨時会は、必要とされる特定の案件のためだけに開くものであり、どんな案件のために臨時会を開くのか、その内容を市長(市長が臨時会を拒んだ時は議長)はあらかじめ告示しなければならない。しかし臨時会の最中に別の案件が緊急で入った時には、その案件は告示も省略し、追加で会議にかけていいですよ、ということです。

条文が長くてわかりづらいのですが、内容は覚えておいて下さいね。

ここまで、定例会・臨時会について見てきましたが、それでは通年会期方式ではどのようになっているのでしょうか?

市長の招集なしで開催される通年会期方式

定例会・臨時会は基本的に市長が招集しなければ開催できないことになっていますが、新しくできた通年会期の方式では、条例で定めた日が来れば市長が議会を招集したとみなし、自動的に議会が開催されます。


市長の独断を阻止できる通年会期

また、定例会・臨時会の方式では、会期中でない時期や、臨時会を招集する時間もないほど緊急で決断すべき案件が発生した場合には、市長が独断でその案件を決定できると規定されています。

これを市長の「専決処分」といいます。議会を通さず、「〇〇については××にします!」と市長ひとりで決定するので、できるだけ避けたい状況なのですが、通年会期の方式であればどの月にもほぼ議会があり、急ぎの事案でも直近の議会にかければよいので、市長の専決処分を阻止することができます。

通年会期方式は、いいことばかりなの?

ここまで見ると、定例会・臨時会の方式よりも通年会期の方がメリットが多いように思えますが、実際はどうなのでしょう?

メリットとしては、会期が長いのでじっくり議論できることや、市長が緊急の案件に対し専決処分することを防げるなどですが、さらに当初言われていたのは、通年会期を導入すると議会が1年中活動できるので、議会の活発な活動を住民にアピールできるというものでした。

逆に住民からの評価が下がった?

ところが、とくに田舎などに多い、議員が普段から地域活動として町のあちこちの団体に顔を出したり、酒の席に参加したり、また町民側も特定の議員とのつながりを誇りとするような地域では、議会活動が忙しくなることで議員が地域に顔を出す回数が減り、「あの議員は最近全然来ないね!」と住民からの評価が下がるという皮肉な結果になっています。

職員も大変?

また、議会で議員からの質問に答えるためには、当然大量のデータなどを用意しますが、議会が頻繁に開かれていると職員はそれにかかりきりになり、住民への対応業務がおろそかになるという本末転倒な結果になってしまいます。

専決処分も時には必要?

また、先ほど災害時などの緊急案件にも直近の議会で迅速に処理できると解説しましたが、災害時には議会などしている場合ではなく、こういう時こそ市長の独断(専決処分)で即座に現場対応するべきではないかという意見もあります。

実際、この通年会期方式を導入する大都市はあまりなく、それよりは年4回の定例会を年3回や2回などに減らして、そのかわり1つの会期を数ヵ月間と長く設定することで、時間をかけて議論できる方法を選んだ都市もあります。

大阪市は現在3会期制で、神戸市は2会期制になりました。

議会に市長はすべて出席?

定例会・臨時会、通年会期の議会では、議会に市長は必ず出席しなければならないのでしょうか。

2012年の地方自治法改正で、市長が議会に出席できない正当な理由があれば、定例会、臨時会、通年会期のいずれでも出席の義務は解除されることとなりました。(地方自治法121条1項)

これは、市長だけでなく教育委員会の長や農業委員会の長など各委員会の長などでも同じ扱いになります。

昇任試験の過去問を解いてみよう

それでは、今回解説した項目の範囲で、実際に出題された問題を見てみましょう。

昇任試験では、〇×方式のものが多く出題されます。皆さんも次の問題文が〇か×か考えてみてください。

昇任試験過去問題

【問1】議会には、条例で定める通年会期方式の他に、定例会と臨時会があり、定例会は毎年4回以内で条例で定める回数招集され、臨時会は必要な場合にその事件に限って招集される。

正解→×

これは、定例会の回数についての部分が誤りです。

以前は確かに地方自治法で、年4回までの回数を条例で定めるよう規定がありました。ですが地方自治法が改正されて、現在では回数についての規定はなく、条例で自由に決めることができます。

【問2】議長による臨時会の招集請求のあった日から20日以内に普通地方公共団体の長が臨時会を招集しないときは、議長は臨時会を招集することができる。

正解→〇


これは正しいです。鹿児島県阿久根市長が、議会と対立し、議長から請求のあった臨時会を招集しなかったことがきっかけで、2012年の地方自治法改正でこの項目が追加されました。

【問3】通年会期の方式では、長は、条例で定める日に議会を招集する。

正解→×

通年会期の方式では、条例で定める日が来ると自動的に市長(知事)が招集したものとみなします。(地方自治法102条の2-2項)

【問4】長が議場に出席できない正当な理由を議長に届ければ、出席の義務は通年会期の場合には解除されるが、定例会および臨時会では解除されない。

正解→×

これは誤りです。2012年の地方自治法改正で、通年会期、定例会・臨時会を問わず、正当な理由がある場合には、市長その他の委員長の出席義務は解除されることになりました。

このように、地方自治法で最近改正されたようなところは、やはりよく出題されています。

【問5】議会の招集は、開会の日前の法定の日までに告示しなければならないが、緊急の場合には告示を省略できるとされている。

正解→×

これも誤りです。法定の日までに告示しなければならないところは合っていますが、緊急の場合に許されているのは告示の日をずらすことで、告示そのものは必ずしなければなりません。

【問6】定例会の会期は、条例で定めておくものとされ、臨時会の会期は普通地方公共団体の長が定めるものとされている。

正解→×

これは、すべてが誤りです。定例会・臨時会どちらも、議会の会期や延長などに関することは、すべて議会が決めることとされています。

【問7】通年会期方式の議会は、議会規則により、定期的に会議を開く日を定めなければならない。


正解→×

これは「議会規則」の部分が誤りです。会議を開く定例日は、「条例」で定めなければなりません。

【問8】臨時会の開会中に緊急を要する事件があるときであっても、会議に付すべき事件の告示は必要であり、ただちにこれを付議することができない。

正解→×

これも誤りです。基本的に臨時会は、その時必要と判断された特定の案件のためだけに招集します。そして招集しますという事実やその内容も先に告示しなければなりません。

ですが、その臨時会の最中に、急きょ別の案件が入った場合には、追加で会議にかけることが可能です。そしてその場合は告示をしなくてもよく、ただちに会議にかけることができるとされています。

まとめ

今回も議会について解説しましたが、この項目は議会の細かいルールを覚えなければならないので面倒くさく、敬遠しがちになります。

ですが公務員になれば、勤務先の自治体の議会については精通していなければならないので、昇任試験にもよく出題されます。通勤中などに少しずつ覚えるのがコツかもしれませんね。

次回は議会の「委員会」について解説します。

本記事は、2018年3月24日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

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