「大学教授」の仕事内容や年間スケジュール・1日のスケジュール

「大学教授」の仕事について、年間の仕事内容や1日のスケジュールなどについて現役の教授に解説いただきました。大学の主流である1年を前期と後期の2学期に分ける「セメスター制」、夏休み・春休みに2ヶ月くらい休みあって、いいんじゃないの?と思われてる皆様、それは誤解です。


教授は、「社会的なステータスがある」であるとか、「仕事に自由度がある」などと言われているようです。確かに「教授権」を持って担当する科目の講義内容や研究内容については他人の束縛を受けることはあまりありません。また、他の大学で非常勤講師などを行なって収入を得ることなども自由です。実績や業績を上げなければ、研究費を確保できず、自らの研究が立ち行かなくなる可能性がある場合などを除けば、自由裁量で行える範囲は広く、個人主義を貫くことが可能になります。

私は教授として採用されましたが、不器用なのか、アンテナが小さいのか、能力に欠けるのか、その立場が特に社会的なステータスを持つと感じたこともありませんし、大きなメリットがあると感じたこともありません。

一般的に大学の教授は、見た目よりも地味で、日常のスケジュールの中において研究に費やす時間を確保するのもかなり大変なことであるといえましょう。

大学教授の年間スケジュールはどんなの?

大学も中学校や高校などと同様に日本では4月がスタートとなります。しかし、中学校や高校と異なるのは、大学の多くは1年を前期と後期の2学期に分ける「セメスター制」と呼ばれる方法がとられます。

つまり、4月の1日から8月の後半までを前期とし、夏休みを挟んで9月の最終週あたりから12月の後半までが後期となります。小学校から高校までは3学期制となっていますので、2学期制を説明すると、「1月からは何もないの」とよく聞かれます。本当にそれしかないのであれば楽な職業だと思われても仕方ありませんが、実は、大学にとって1月からは最も面倒な業務が待ち受けているのです。

実は1月が最も忙しいかも・・・ 理由は「入学試験」

その中で最も大きな手間を必要するものに「入学試験」があります。学校規模や国立・私立などの別によって割り当ては少なくなるかもしれませんが、教員は必ず何かしらの役割を持たされることになります。一般科目の先生などは問題を作成しなければならなくなることも多く、さほど大きくない学校であれば、試験官の回数も多くなります。

一般的にはあまり知られていませんが、試験は一度ではなく、推薦の種類、留学生など学校によっては30種類以上の試験を筆記、面接に分けて3期ぐらいに渡って行われます。つまりこれだけでも90回にも及ぶ試験をこなさなくてはなりません。これを在籍する専任教員に割り振って実施するのです。最後の試験日は3月後半になるというかなりのボリュームです。当然のことながら、試験の多くは土曜日や日曜日に行われますので、1月以降は土・日の出勤率が非常に高くなります。

大学教授の「夏休み」は休みじゃありません!

夏休みには学会やゼミ活動、論文作成などの研究に費やし、冬休みも1週間程度しか取れないというのが現実的です。そのほかには、前期後期のテストと成績の決定、レポートなどの評価と検証、学生評価表の提出、シラバスの作成と提出、学内行事への対応(学年によっては年間に5、6件)、授業の資料作成、スライドなどの作成、学内の各種委員会活動、オープンカレッジ、高大連携としての業務、自己申告書の作成と提出、卒論のサポート・評価、新任教員の採用審査、教員の資格審査、それに加えて研究活動などを加えると想像以上に授業以外の業務の多さに驚きます。

これらは通常「内規」「学則」のような形で製本され、1cmくらいの厚さものが2冊分ほどのボリュームになります。うっかりすると失念することも多く出てくるのですが、その際には教務課や総務課などから厳しい催促がくることになります。

また、該当する教員には、地元や地域の自治体より多くの役割が回ってきます。「地域活性化委員会」といったものや「教育委員」などの公的な立場が求められます。手間の割に収入は多くないですが、幾つもの委員を兼務するケースも少なくありません。そしてこれらの間隙を縫って他校の「非常勤講師」を請け負ったりするわけです。

さて、これらをご覧いただいて、大学教授の優雅な生活が想像できましたでしょうか。


大学教授も思っていたより大変だということがお分かりいただけたのではないでしょうか。教授のスケジュールを見ると、活躍する方ほど激しく忙殺されるのが分かります。

大学教授の1日のスケジュールは?

今回は、主だった2つのパターン「講義と教授会」の日と「通常講義と大学院講義」の日についてまとめてみました。

▼大学教授の1日その1:講義と教授会がある場合
07:00 起床~移動
08:00 出勤(研究室到着)
08:10 講義資料作成(レジュメ印刷/140名分)
08:45 1限目/講義教室にて講義準備(PC、配布資料セッティング)
09:00 1限目/講義開始
10:30 1限目/講義終了
10:40 オフィスアワー(研究室にて学生対応)
12:00 オフィスアワー終了
12:10 講義資料作成(レジュメ印刷/140名分)
12:25 昼食(パン等)
12:45 3限目/講義教室にて講義準備(PC、配布資料セッティング)
13:00 3限目/講義開始
14:30 3限目/講義終了
15:00 教授会開始
17:30 教授会終了
17:40 委員会会議開始
19:15 委員会終了
19:30 卒業論文作成相談
20:00 卒業論文作成相談終了後講義資料更新作業
21:30 作業終了後移動
21:45 帰宅
22:00 夕食
22:30 夕食後入浴
23:00 研究活動
26:00 就寝

▼大学教授の1日その2:通常講義と大学院講義がある場合
07:00 起床~移動
08:30 出勤(研究室到着)
08:40 講義資料作成(レジュメ印刷/130名分)
10:30 2限目/講義教室にて講義準備(PC、配布資料セッティング)
10:40 2限目/講義開始
12:10 2限目/講義終了~昼食及び休憩
12:40 昼食終了~講義資料作成(レジュメ印刷/40名分)
13:00 卒業論文作成相談及び研究活動
14:30 4限目/講義教室にて講義準備(PC、配布資料セッティング)
14:40 4限目/講義開始
16:10 4限目/講義終了
16:30 講義資料作成(レジュメ印刷2講義分)
17:50 6限目/講義教室にて大学院講義準備(PC、配布資料セッティング)
18:00 6限目/大学院講義開始
19:30 6限目/大学院講義終了
19:40 7限目/大学院講義開始(教室移動がない場合)
21:10 7限目/大学院講義終了
21:30 講義終了作業後移動
21:45 帰宅
22:00 夕食
22:30 夕食後入浴
23:00 研究活動
26:00 就寝

大学の授業や講義はおおよそ9時開始が多いため、遅くても8時15分ぐらいまでには研究室へ入ります。家が学校から遠い場合はその分早く出なければなりません。しかし、1限目を担当しないのであれば、講義開始時間の40分前には着くようにすれば大丈夫です。

ベテランの教員であれば授業の準備もさほど多くなく、すでに行なってきた授業の内容やレジュメを更新すればよいため、一度の授業を無難にこなすことはさほど難しくありません。

大学の講義や授業は90分となっています。しかし、90分フルに使用する先生は少なく、大教室で行う場合などは、出席をとったり資料を配布したりする時間に結構手間がかかります。

そう考えると、構成を90分で準備した場合は、授業内容の全てが時間内に収まらない可能性がありますので、実質は60分強で構成されなくてはなりません。その他ミニテストやミニレポートなどを課す場合には時間の構成に工夫が必要となります。

そんなこんなで1週間のうち3日ほどの出講日をこなします。つまり、全6コマという計算です。他の2日を研究や他大学の非常勤講師として使うことが一般的です。しかし、ブラックといわれる大学では、12コマを持たされ、5日間を全て授業や講義に費やし、学生の進路指導や研究活動などもその中で行わなければならないという現実も存在します。実質2日が出講に及ばずということですが、実際には学生の面談が入ったり、委員会が入ったりで、休みとはならない場合も多くなるのです。

また学校によっても異なりますが、実際に講義で使用する資料などは、自分で作成するか、教務課の方にお願いするか、研究室の院生に頼むかという選択になります。数が多くなると講義間の10分や15分程度では作成する時間もありません。自分の研究室へ戻って準備する暇もないほどですので、2講義が連続する場合には、2講義分の資料などを事前に作成しておくことになります。昼食時間も余裕を持って確保することは難しく、学生と将来を語り合いながらの優雅な食事はなかなか実現しません。

授業が終わってからも当日の出席確認、レポートの確認、採点などが待っています。それらを終えても、場合によっては大学院の学生に対する授業が残っている場合もあります。大きな大学では、大学院は大学院研究科という学部とは別の組織になり、専門の教員が配置されていますが、中小の大学では掛け持ちで担当することになるのです。ですから大学の授業数が決まっていても、そこに大学院の授業が加わることもあります。当然のことながら修士課程の場合には修士論文、博士課程の場合は前期、後期があって、共に演習が組まれているのです。その開講時間は一般の社会人を含めている場合に18時か18時30分からとなり、そこから90分の授業を2コマ行うと終了時間は21時30分にもなってしまうのです。

その日が朝9時からの授業になる場合には、業務時間は12時間を突破してしまいます。実際にはこの辺の労務管理については、何とも難しいところです。これは毎日ではありませんが、極端な日ではこのようなことも起こりうるわけです。

今日も一杯行く? 大学と教授の価値

このように教授の1日を見ると、一般企業のように「今日も一杯行くか?」なんて事にはなかなかならないのが現状です。これらの例は、極めて一般的な事例です。厳しいところはこれが1週間続くような学校もあるようですから、「大学教授であればどこでも」というわけにはいきませんね。よく事情を調べて進むべき道を選択しなければ、それこそ地獄に足を踏み入れることになりかねません。

また、近年「Nランク大学」などという評価基準が出回っているようですが、大学の偏差値と先生の質には相関はありません。

学校の偏差値は高くなくても真面目で民主的な教育体制を構築している大学は数多くあります。


学校の先生は仕事量が少なく収入が多いことを望み、専任教員になって数年経過するとほとんど何もしなくなる先生もおられます。これは普通なのかもしれませんが、大学の価値や学生に対する訴求力を表現するのは大学の教員や教育内容に他なりません。そう考えると教員や研究者であると同時に重要な商品であることも忘れてはいけません。自らの存在が所属する大学にとって唯一無二の価値となるよう最大の努力が必要なのです。

最後に

さて、大学教授の仕事はどのように思われましたか。教授までの道のりは険しく厳しいものでもありますが、やり遂げる価値があるとお考えの方は、高い目標に向かって是非チャレンジしてみていただきたいと思います。

本記事は、2017年4月24日時点調査または公開された情報です。
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