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茨城県つくば市が全国の自治体初の「RPA」導入で働き方改革へ

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目次

はじめに

茨城県つくば市では、つくば市役所の一部の業務を効率化し、職員の負担を軽減するために、RPAという情報通信技術による事務処理の自動化の導入検証が民間との共同研究というかたちで行われました。

自治体にも広がりつつあるイノベーションによる「働き方改革」はどのような業務に導入できる可能性があり、どのような効果を生むのか、つくば市からの発表をもとにご紹介します。

自治体にも広がる「働き方改革」

日本では少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少問題に対応していく必要性や、育児や介護をしながら多様な働き方ができることが求められている背景から、厚生労働省を中心に「働き方改革」が進められています。

働き方改革では、投資やイノベーションによって生産性向上を図り、就業機会の拡大や働き手の意欲や能力を充分に発揮できる環境を整えることが目指されているようです。

働き方に多様性を持たせることで、選択肢を増やし、国民がよりよい将来への展望を抱くことが目標とされている「働き方改革」は、全国の自治体でも課題となっています。

茨城県つくば市は全国の自治体初の取組みで「働き方改革」

茨城県つくば市では「働き方改革」の手段として、RPAの導入を目指し共同研究が実施されました。その研究により、RPAを活用することで研究対象となった業務について、約8割のもの時間削減が可能との結果が出たようです。

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)とは?

つくば市で導入に向け研究された「RPA」とは「ロボティック・プロセス・オートメーション」のことで、人工知能などを利用し、企業内の総合職が行ってきたような業務で必要なパソコンの操作を自動化する技術です。

ロボットという言葉が入っていますが、実際にはパソコンにソフトウェアとして機能するもので、工場の自動化のように物理的にロボットが動くものではありません。RPAはパソコンの操作を自動的に行い、情報の登録や審査、対象ファイルの印刷など、従来ロボットには複雑で処理が難しいとされてきた業務をこなすことができるようです。

このRPAについて、民間の中には擬人化をして名前を付けたり、辞令をだす企業もあり、人間と共に働くデジタルレイバー(仮想労働者)としての活用が期待されています。

「RPAを活用した定型的で膨大な業務プロセスの自動化」とは?

つくば市によるRPA研究の背景として、つくば市の市役所の業務の中には、単純で定型的な作業ではあるものの、その量が多いために、職員の多くの労働時間を費やしている業務があり、課題となっていました。

特に確定申告の時期の税務処理作業では、担当課職員に多くの時間外労働が課せられている状況にあるようです。


その一方で、民間では次々に導入が進むICT技術(情報通信技術)が、自治体による公共サービスの領域での導入は進んでおらず、つくば市など自治体が目指す業務効率化を図る技術が、民間には十分に展開されているという可能性もありました。

これらの課題解決のために、ICT技術の1つであるRPAを活用することで「作業時間の短縮(効率化)」が可能なのか、「ミスの少ない正確で的確な処理」が実現できるのかということと、実現した際の効果を研究が行われました。

共同研究の概要について

つくば市による「RPAを活用した定型的で膨大な業務プロセスの自動化」研究の共同研究者については、平成29年10月に公募が行われ、12月に「株式会社NTTデータ」「株式会社クニエ」「日本電子計算株式会社」が選定されました。

研究が実施され実際にRPAの効果が検証された期間は平成30年1月~4月上旬で、つくば市役所内の「市民税課」「市民窓口課」「ワークライフバランス推進室」「財政課(RPAの適応可能性調査のみ)」が研究対象となりました。そしてその研究結果が平成30年5月に公表されました。

つくば市役所におけるRPAの活用方法と主な実績について

つくば市では「市民税課」と「市民窓口課」を中心にRPAの導入検証が行われました。詳しい研究結果については下記のつくば市のホームページで紹介されています。

つくば市ホームページ「共同研究実績報告書」
http://www.city.tsukuba.lg.jp/jigyosha/oshirase/1003854.html

つくば市役所「市民税課」でのRPA活用方法と実績

つくば市の市民税課では、個人住民税の新規登録業務や電子申告の印刷業務など全部で5つの業務を対象ににRPAを導入しました。

具体的には、個人住民税に関する業務では、事業所から送られてくる新規事業者データを基幹系システムへ登録する「事業所の新規登録業務」や、電子申告された給与支払報告書などの回送先を登録し更新する「回送先情報の登録業務」、そして「納税通知書、更生決議書・宛名封筒などの印刷業務」の3業務が対象です。法人市民税に関する業務では、法人市民税の電子申告「印刷業務」と「審査業務」の2業務が対象です。

以上の5業務についてRPAを導入したところ、業務処理時間が3ヶ月で116時間削減され、年間に換算すると約330時間削減できるという結果が得られたようです。

つくば市の市民税課ではRPA導入前には5業務合計で約424時間かかっていましたが、RPA導入後には約88時間しかかからず、削減率は約79%にもなりました。これを日数に換算すると、約43日の削減が期待できるようです。

つくば市役所「市民窓口課」でのRPA活用方法と実績

つくば市の市民窓口課では、「異動届受理通知業務」の1業務についてRPAが導入されました。検証した結果、3ヶ月で21時間の削減となり、年間に換算すると71時間の削減が見込まれます。処理時間の削減率は約83%にものぼり、RPA導入前は85時間かかっていた業務が14時間で処理されました。日数に換算すると、約9日分削減されたことになるようです。

つくば市役所職員の反応は?

つくば市役所市民税課の職員は、RPAの導入検証について、業務として処理件数が年々増えていく一方で、対応できる職員数は限られている状況の中、RPA導入により簡易な入力・確認作業が軽減できてとても助かったと語っているようです。

また、つくば市役所市民窓口課の職員からは単純な事務作業にかける時間が他の業務に回せるようになるとして、早期導入を期待する声があがっているようです。

今後のRPA本格導入を目指して

つくば市では、今回の共同研究成果を踏まえ、平成30年度中にRPAの本格導入を目指しています。RPAの本格導入にあたっては、市議会での審議が必要なので審議の内容によっては導入時期が前後する可能性がありますが、つくば市役所としては平成30年度中には市民税課・市民窓口課に加え、納税課・資産税課へのRPA導入を予定し、次年度以降も効果が見込まれる部署を対象に順次導入を行う予定で動いているようです。

仮に、つくば市の市民税課業務全体の5%にRPAが適用できた場合、年間で約1,400時間の作業時間が削減できる見込みで、現在職員に支払っている約370万円相当の時間外勤務手当が削減できるため、つくば市では作業効率化や職員の負担軽減に加えて、人件費の削減というメリットも期待できる可能性があります。


まとめ

茨城県つくば市では、自治体としてはまだ珍しい領域である、情報通信技術を活用しての働き方改革に乗り出しました。従来、つくば市役所では年々増加していく事務処理作業量と、それに伴う職員の時間外労働の削減などが課題となっていました。

そこで、つくば市の公共サービスの分野が抱える課題を解決できる技術を持つ民間の力を借り、その代わりに民間がなかなか実験を行えない自治体の領域を研究対象として提供し、共同研究を行うという取り組みが行われました。結果として自治体では全国初となるRPA導入が実現し、一部の対象では処理時間が8割削減できる可能性があるという結果が得られました。

このつくば市の発表をきっかけに、今後つくば市のように先端ICT技術を利用した働き方改革が実施される自治体が増えていくかもしれません。公務員の業務負担を軽減することを想定した仮想労働者RPAですが、将来的には市役所の窓口が自動化・無人化するなど、公務員の在り方も変化していく可能性が考えられます。投資やイノベーションによる「働き方改革」は自治体も例外ではない、ということがわかります。

本記事は、2018年6月13日時点調査または公開された情報です。
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この記事を書いた人

公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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