公務員になるなら知っておきたい「公務員の天下り」について

公務員の再就職について、しばしば「天下り」が問題視されますが、「天下り」とは何か、法律でどのように禁止されているのかを解説します。

また、公務員の再就職について、多くの定年退職者が利用する「再任用制度」についてもご紹介します。

公務員の「天下り」とは?

公務員の「天下り」とは、国家公務員や地方公務員の職員が退職後に、勤務していた行政機関の関連の深い企業に就職し、幹部職などの高給ポストに就くことです。中には、公務員退職後に2社以上を渡り歩き、高額な退職金を受け取る、通称「渡り」と呼ばれる人がいるようです。

「天下り」の公務員OBを迎える民間企業としては、例えば自社が何らかの公共事業を受注できるよう、高額な報酬の見返りとして、天下り職員の古巣である中央官庁や地方自治体に「口利き」をして有利な状況を作ってほしい、という狙いがあると言われています。これは、口利き無しで公共事業に入札しようと努力している一般企業に対して不公平であり、本来公務員が保つべき中立性からかけ離れてしまう問題がありました。

このようにして、こういった問題を生み出す「天下り」は、公正な行政を妨げるため、現在では現職の国家公務員による退職者の再就職のあっせんは、法律で禁止されています。

国家公務員の「再就職あっせん」は規制されている

平成20年12月31日の改正国家公務員法の施行によって、現職の公務員職員による退職者への「再就職あっせん」は全面禁止になりました。

平成20年以前は、公務員の再就職について「離職後は2年間、離職前は5年間、在職していた国の機関と、密接な関係のある営利企業への再就職が原則禁止」という規制があるのみで、この規制についても、人事院に事前に承認を得れば解除できる事前承認制が取られていたようです。

平成20年12月31日以降は、現職の公務員に代わって「官民人材交流センター」に再就職のあっせんが一元化されました。また現職職員が在職中に求職活動をすることや、営利企業の地位につく退職職員が在職していた部局等の組織に対して働きかけをすることも規制されました。

国家公務員の「天下り」を取り締まる再就職等監視委員会とは

国家公務員法の改正で、現職公務員による退職者への「再就職あっせん」が全面禁止になったのと同時に内閣府に設置されたのが、再就職などの規制を取り締まる「再就職等監視委員会」です。

「再就職等監視委員会」は、公正・中立の立場で再就職の規制違反についての調査を行ったり、各府省の人事任命権を持った職員に対して調査協力を要求し、結果によっては勧告を行ったりします。改正法への移行期間として、平成21年の12月31日までは、求職活動の例外承認も行っていましたが、現在その機能は無くなっています。

国家公務員の中で再就職等規制の対象になるのは?

国家公務員の中で再就職等規制の対象の職種について、解説します。(*平成19年改正、平成20年施行の改正国家公務員法)

この規制の対象の職種として最も大きい割合を占めているのが、国家公務員の中でも一般職給与法が適用されている事務職などの職員で、「非現業職員」とも呼ばれる職員です。「非現業職員」は合計で約27万人ほどいるので、国家公務員の中でも代表的な職員と言えます。

「非現業職員」とは?

国家公務員の「非現業職員」とは、公務員の中の主に「事務職」「行政職」を指し、大臣名などで公文書を作成できるような「公権力」に直接関わる公務員のことです。

国家公務員の「非現業職員」についてですが、民間でも存在する仕事を「現業」といい、学校用務員や調理師、公用車の運転手などは公務員の中でも「現業職員」と呼びます。それらの仕事に対して、民間では代わることのできない公務に携わる事務職職員を「非現業職員」と呼ぶことがあります。

「公権力」に直接関わるということは、例えば何か許可証を発行するなど民間には無いような権限を持つ場合もあるということです。「非現業職員」は、その立場を利用して、求職先など民間企業に便宜を図ることや、再就職先から元の職場である府省等に働きかけを行うことで、民間企業を不当に優遇することができてしまう仕事であり、社会に大きな影響を与えることが予想されます。

このように、「非現業職員」が再就職を理由に自身のそれまでの立場を利用して就職先をあっせんしてもらうことは、公務員の大原則である公正・中立のバランスを壊しかねないため、非現業職員には再就職等規制が適用されているようです。

「検察官」なども再就職等規制の対象

非現業の国家公務員の他にも、約2,700人の「検察官」や約4,600人の「国有林野事業職員」、約6万人の「特定独立行政法人職員」あわせて、合計で約7万人ほどに再就職規制が適用されています。

また、特定独立行政法人の役員についても、「独立行政法人通則法」によって一般職と同様の再就職等規制が適用されています。「裁判所職員」についても「裁判所再就職等監視委員会」が再就職あっせんなど不当な行為が無いかを監視しており、再就職などの規制が行われています。

「自衛隊員」も平成27年から再就職等規制が適用された

また平成27年の10月からは、自衛隊職員にも再就職等規制が適用され、自衛隊員が企業等に他の隊員の再就職を依頼したり、他の隊員の再就職を目的に企業に情報提供したりすることが規制され始めたようです。そのほか在職中に利害関係企業等に求職活動することや、自衛隊員のOBによる自衛隊への働きかけを規制するなど、国家公務員の一般事務職員と似たような規制があります。

「国会職員」には再就職の規制が無い

国家公務員の中でも、特別職の「国会職員」や、その他の「大臣」「副大臣」「政務官」などの特別職には再就職等の規制が適用されません。

「特定地方警務官」は例外

「地方警務官」は都道府県警察のうち警視正以上の階級にあたる警察官のことを指しますが、「特定地方刑務官」はこの地方警務官のうち、その属する都道府県警察で巡査から警視まで順次昇任して、解任後も引き続き地方警務官になる警察官のことです。

この「特定地方警務官」には、国家公務員法の再就職等規制のうち、在職中の求職活動禁止については適用されますが、再就職あっせんの規制は適用されないようです。退職職員の働きかけ規制については一部を除き適用されない項目もあるため、合法に働きかけできる場面もあると考えられます。

再就職等で違反するとどうなる?制裁措置について

再就職等規制に違反したと「再就職等監視委員会」に認定されてしまった場合、どのような制裁措置が下されるのかをまとめます。

まず、再就職あっせん規制違反と求職活動規制違反の場合、職務上不正な行為をしたかどうかで懲役刑になる場合があります。「不正な行為」とは再就職あっせん規制違反や求職活動禁止規制に違反する行為を除いた、その他の職務上の不正行為を指します。

上記の不正な行為が伴わない場合には懲戒処分、不正な行為が伴う場合には懲戒処分や3年以下の懲役、またはその両方が課される場合があります。

働きかけ規制違反についても、不正な行為が伴わない場合は10万円以下の過料、働きかけ規制がかかる契約などの事務について営利企業などの再就職者が不正な行為をするよう要求・依頼した場合には1年以下の懲役、または50万円以下の罰金が課されます。また働きかけをした退職職員だけでなく、働きかけを受けた職員側にも懲戒処分が下されることがあるようです。

懲戒処分についてはいずれも現職職員にしか適用できませんが、違反行為が退職後に発覚した場合にも、退職手当の支給制限や返納命令などの措置が取られることがあるようです。

国家公務員のほとんどが退職後に再就職している

国家公務員は現在60歳定年ですが、年金の支給開始年齢が原則65歳であることから、ほとんどの人が退職後、年金が支給されるまでの期間に働き生活費を稼ぐために再就職しているという状況にあります。

国家公務員の「再任用制度」を利用した再就職

定年を迎えた国家公務員のほとんどは、国家公務員の「再任用制度」を利用して再就職しています。「再任用制度」とは、公務員が加入する公的年金の支給開始年齢が平成25年から段階的に60歳から原則65歳に引き上げられていることに伴い、60歳で定年退職を迎えた公務員退職者が、年金を受け取れるまでの期間に無収入になることのないよう、国家公務員として再任用、つまり再就職できる制度です。

再任用制度を利用すると、基本的にはフルタイム勤務の職員として採用されますが、個別の事情や、配属部署の状況をふまえて短時間勤務の職員として再任用される場合もあります。

このように、国家公務員の再任用制度は、雇用期間と年金支給開始年齢にの間に開きが無いよう、「雇用と年金の接続」のために作られた制度です。

公務員以外の民間企業等への再就職

定年を迎えた国家公務員の中には、国家公務員の再任用制度を利用せず、民間企業等に再就職する人もいます。民間企業に再就職する場合は、天下りを避け合法的でなければなりません。民間企業等に再就職する公務員退職者は、自分の力でハローワークに通い求職活動をしたり、天下りとは関係のない知人の紹介を受けたりして、再就職を果たしているようです。

再就職の目的としては、年金を受け取るまでの生活費を稼ぐため、貯蓄をするため、という面もある一方で、自身の健康のためであったり生きがいを求めたりという意味で働きたいという意識を持つ方もいるようです。

公務員の再就職で人手不足解消という狙いも

公務員の再就職について「天下り問題」などの歓迎し難い話題もある一方で、労働力人口の減少に伴う人手不足の解消の解決策としても注目されているようです。

人手不足は公務員の職場でも問題になってきているようで、長年勤務経験がありあらゆるノウハウを持つベテランの職員が、定年を理由に辞めてしまうのはもったいないという考え方もあり、即戦力としても期待されているようです。

ただし、勤務を続ける職員の人件費分の財源はどのように確保するのか、役職定年などを設けて高額の給与が発生しないような措置を取るのかなど、議論が続いているようです。

まとめ

このページでは、公務員の再就職について、しばしば批判の対象となる「天下り」の問題や、天下りを規制する国家公務員の再就職等の規制の内容や、再就職等監視委員会の仕事についてご紹介しました。また、国家公務員の中でも、どのような職種が規制の対象となっているのかも解説しました。

現在、定年を迎えた国家公務員のほとんどは、再任用制度などを利用して再就職をしていると言われています。これは公務員が加入する公的年金の支給開始年齢が段階的に定年である60歳から65歳に引き上げられていることも原因の1つのようです。

現在の国家公務員退職者は60歳で定年を迎えた後すぐに年金を受け取ることができず、無収入の期間が発生してしまう事情があるので、多くの方が再就職を希望するのも頷けます。

しかし、再就職を目指す際には、公権力を濫用することのないよう、あくまでも合法的に活動しなくてはなりません。国家公務員の定年退職者は、長年の経験やノウハウを持つ貴重な人材であり、人手不足が深刻化しつつある現場での即戦力として期待されているという面もあるようです。

「天下り」などの違法行為に頼らずとも、活躍できる場は広がりつつあります。国家公務員の退職者が皆、不正行為をせずに再就職して活躍されることを願います。

本記事は、2018年7月8日時点調査または公開された情報です。
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