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【アメリカ州制度】自動車産業や軍事産業で栄えた州「ミシガン州」解説

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ミシガン州


アメリカの自動車産業を支えた世界的な都市デトロイトがあり、アメリカ五大湖に囲まれたミシガン州は時代の流れに合わせて良くも悪くも大きな変貌を遂げた州のひとつです。

恵まれた自然環境を活かして発展してきた経済ですが、現在ではアメリカで最も治安が悪いとされる不名誉な称号がついているほどに変化しました。その背景にはどのようなことがあるのかも含めて、今回はミシガン州について解説します。

目次

ミシガン州の特徴

2018年時点でのミシガン州の総人口は約996万人です。人口の多さではアメリカのトップ10に入るほどで、1950年代から急激に人口が増加しています。その理由に、ミシガン州の産業が挙げられます。主に自動車産業や貿易の中心として栄えていたため、多くの人がミシガン州を目指してやってきました。

ミシガン州の最大都市であるデトロイトは、世界的にもよく知られたアメリカ自動車産業の中心です。「ビッグ3」と呼ばれるゼネラルモーターズ(GM)、フォード、クライスラーが拠点を構えており、アメリカの自動車産業においてデトロイトは代表名詞と言えます。ちなみに、デトロイトはトヨタ自動車の拠点である愛知県豊田市と姉妹都市の契約を結んでおり、両国の自動車産業と深い繋がりがあります。

そんなデトロイトですが、アメリカ国内の自動車販売の悪化や、リーマンショックの影響を受けて自動車産業は衰退していきます。2009年にはゼネラルモーターズとクライスラーが破綻し、ゼネラルモーターズの負債総額だけで1728億ドル(約19兆円)という製造業における過去最悪の損失を出しました。

連鎖的に関連企業も破綻し、デトロイトは失業者で溢れかえる事態に陥りました。2013年にはデトロイト市は債務超過に陥り、財政危機を発表します。職を失った人が住んでいた郊外のエリアはゴーストタウン化し、犯罪を防ぐための苦肉の策として警察が家に火をつけるという状況にまで発展しました。

結果的に、GMはアメリカとカナダ政府の援助を受けて経営再建しますが、デトロイトに与えた影響は大きなものになりました。現在でもデトロイト市の警察やゴミの収集などのサービスは縮小されており、警察は通報から現場到着まで1時間ほどかかるとされています。

一方で、ミシガン州は五大湖に囲まれていることや、カナダに隣接していることから観光業が盛んな州でもあります。五大湖のうち4つに囲まれており、ロウアー半島とアッパー半島のふたつで構成されているのが特徴です。ミシガンという州名はインディアンの言葉で「大きな湖」や「偉大な水」という意味があり、フランス語のアクセントに近くなったことが起源です。

近年では研究開発投資に力を入れており、既存の自動車産業に関連した研究開発などが進められています。これらがもたらす雇用は大きく、アメリカの自動車産業の総雇用数の10パーセントを占めているほどです。また、企業誘致にも積極的で、様々な企業が進出を検討する際の候補地で全米トップ3に入るほどで、明るい兆しも見えています。

このようにミシガン州はデトロイトを中心にして自動車産業で発展してきましたが、自動車産業によって衰退しつつある場所です。しかし、観光や研究施設、企業誘致などに積極的な州と言えます。

ミシガン州の歴史

ミシガン州は、1837年に26番目の州として認められました。もともとは氷河に覆われていた場所でしたが、氷河が溶けて五大湖を生成し、陸地にはインディアンが住み始めたことが始まりです。1620年に、フランス人探検家のエティエンヌ・ブルレがこの地を訪れたことが先住民族と白人の初めての接触と考えられています。


1688年にはフランス人宣教師のジャック・マルケットによって現在のスーセントマリーに開拓地が開かれました。1701年、フランス人のアントワーヌ・ド・ラモト・キャディラックは、デトロイト川を使ってインディアンと毛皮などの交易を始め、布教活動もおこなっていました。この時代のミシガンはフランス色が濃いエリアとして発展していきます。

1754年にはフランスとインディアンの同盟軍とイギリス同盟軍が争った「フレンチ・インディアン戦争」が勃発、イギリスが勝利しフランスはイギリスにミシガンの地を割譲しました。

1775年にはイギリスから独立を目指す「13植民地」とイギリスが争った「アメリカ独立戦争」が始まり、戦時中はイギリスがデトロイトを占領します。1783年のパリ条約をもってして終戦しますが、交易にこだわり続けたイギリスは1796年までデトロイトを占領し続けました。

ミシガンの地は、1800年まではインディアナ準州の一部でしたが、1805年にミシガン準州に昇格します。1812年、米英戦争の際にはカナダに控えていたイギリス軍がいち早くデトロイトを占領し、インディアンたちにアメリカ政府に対抗するように煽動しました。翌年にはアメリカ政府がデトロイトを取り返しますが、デトロイトはこれほどまでに重要な場所だったことが分かります。

1821年、アメリカ政府に対抗していたインディアンはすべての土地をアメリカ政府に売却することを強制され、ミシガンで生活していたインディアンはミシガンから追放され、ミシガンより西のインディアン居留地に強制移住させられました。

1861年、南北戦争が始まりミシガン州は奴隷制度に反対する北軍として参加します。南北戦争終結後には、ミシガン北部で銅と鉄鋼石の鉱脈が見つかり多くの労働者がミシガンにやってきます。この労働者によって人口は倍増し、自動車産業の街、軍事産業の街としての発展へ繋がります。

1929年には世界恐慌に見舞われ、自動車産業、鉄鋼業は急速に減退し、多くの失業者が出ました。1941年の第二次世界大戦による特需で経済は持ちかえしますが、社会情勢の影響を受けやすい産業が多いことが露呈しました。この時に、ミシガン州の主産業である自動車産業は全米自動車労働組合を設立し、現在でもこの労働組合はアメリカ最大の組合として知られています。

第二次世界大戦終結後は、アメリカ南部から黒人が職を求めて集まってきます。わずか20年で300万人近くも人口が増え、財政を圧迫していきました。とくに教育や健康などの予算が削減され、デトロイトでは市民の半数が読み書きが出来ない水準とされています。

自動車産業や軍事産業などに依存し続けてきたミシガン州ですが、近年では単一産業に依存する政策ではなく、多様な企業や文化を誘致することに力を入れています。

ミシガン州の政治情勢

ミシガン州では2012年の大統領選では民主党、2016年では共和党を支持する結果になりました。2016年の大統領選では、僅差でトランプが勝利したことに対し、地方裁判所が再集計を命じる事態になりました。

再集計の結果においても共和党が勝利しますが、歴史的に民主党が強いミシガン州で共和党が勝利したことは大きな話題になりました。主産業への依存が大きいミシガン州で、自国優先を訴え続けたトランプが支持された結果となり、国民の感情を表した典型となりました。

ミシガン州の経済

2018年時点、ミシガン州の失業率は4.7パーセントです。アメリカの平均値よりもやや高い傾向ですが、デトロイトの失業率の悪さが影響していると言えます。デトロイトの失業率は依然と7.8パーセントと平均よりも高いものの、リーマンショック直後の26.7パーセントからは改善されていると言えます。

ミシガン州を支えているのはビッグ3が率いる自動車産業、アムウェイ、ドミノピザなどですが、近年の州による取り組みで情報技術、航空産業、自動車の研究開発なども発展しつつあります。

ミシガン州の税金

2018年時点で、ミシガン州の消費税は6パーセントです。ただし、食材や医療は非課税です。個人に対しては一律で4.5パーセントの所得税がかかり、地方所得税が1パーセント上乗せされます。また、企業誘致の取り組みの一環として、2011年には事業税を撤廃し、企業の税負担が軽いのが特徴です。

近年、州の歳入に貢献しているのが観光業で、五大湖などの自然環境に恵まれているため「アメリカで最も観光業のウェブサイト閲覧数が多い州」とされているほどです。


ミシガン州の銃や薬物問題

ミシガン州は医療目的に限りマリファナは合法とされています。人口の15パーセント程度の人が医療目的で過去1年間にマリファナを吸引したことがあるとし、国内トップ10に入るほどの使用率です。

ミシガン州の銃の取り組み格付けは「C」グレードとされており、州民10万人に対する銃による犠牲者は12人程度です。デトロイトでは銃による犯罪率が高く、全米で最も治安が悪いエリアとされています。

ミシガン州の教育または宗教事情

ミシガン州の教育水準はアメリカのなかで平均以下とされています。ミシガン州では160万人が幼稚園から12年生(中学3年生)まで公立学校に通っていますが、デトロイトでは教育が行き届いていない地域もあり、教育は州の課題です。

ミシガン州ではキリスト教が半数以上で、カトリックが30パーセントを占めています。アメリカ国内で有数のイスラム教が多い州で、イスラム教の市議会議員が誕生した際には話題になりました。この背景にはイエメンやバングラデシュからの移民が増えたことがあります。

まとめ

ミシガン州は自動車産業や軍事産業で栄えたアメリカを代表する州です。時代ごとに社会情勢の影響を受け続けてきましたが、近い将来には新しいミシガン州のスタイルが確立されると期待されています。

本記事は、2018年8月21日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

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この記事を書いた人

公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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