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【アメリカ州制度】自然環境に恵まれた州「モンタナ州」解説

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モンタナ州


アメリカとカナダの国境に面しているモンタナ州ですが「大きな空」や「宝の州」などのニックネームがあるほど自然環境に恵まれた州です。東西に1,000キロ以上もある広大な土地の西側にはロッキー山脈があり、夏は避暑地、冬はスキーリゾートとしても人気がある国内観光産業が栄えている州です。

そんなモンタナ州ですが、アメリカ史のなかでも物議を醸すインディアンと白人の争いや仕打ちがありました。それらはモンタナ州を理解するうえで欠かせないことですので、モンタナ州の特徴や歴史を交えて紹介します。

目次

モンタナ州の特徴

2018年時点でのモンタナ州の総人口は約104万人です。アメリカで4番目に広い面積でありながら、人口はカリフォルニア州の3,954万人と比較して非常に少ないのが特徴です。人口密度が低いことや、多くの自然環境が残っていることから「アメリカ最後の最良地」とも言われています。

モンタナ州の人口は1990年代頃から一年に1万人程度のペースで増加していますが、90パーセントは白人で、他州よりも圧倒的に黒人の割合が少ないことが特徴です。(0.4パーセント)さらに、インディアンを先祖に持った人たちが6パーセント程度いるため、インディアンとの縁が深い州と言えます。

州名のモンタナはスペイン語で「山」を意味しており、州には77の山脈が走っています。なかでもロッキー山脈はアメリカを代表する山岳地帯で多くの観光客が訪れる場所です。また、イエローストーン国立公園の一部がモンタナ州をまたいでいるためこちらでも観光産業が盛んです。

モンタナ州北部にあるグレイシャー国立公園は1,000種類以上の植物や動物が生息しており、人類によって生態系が壊されることなくいまも巨大生態系を保っている貴重な場所とされています。1995年には世界遺産に登録され、高さ457メートルの巨大堆積岩のチーフマウンテンは、その姿が王冠に似ていることから「大陸の王冠」とも呼ばれています。

その他に、イエローストーン国立公園もモンタナ州にまたがっており、5つある入り口のうち3つはモンタナ州からアクセス可能です。イエローストーン国立公園は全米で最も人気がある国立公園としても知られており、隣接しているカナダからも訪れる人が多く、アメリカ北部の観光名所です。

自然に溢れている広大な土地は古くから農業や鉱石業などの場所として栄えました。平原が広がる州の東側では牧畜、小麦の栽培などが行われ、山脈が集中している西側では林業や鉱石などの採掘業が発展してきました。また、アメリカでは数少ない石油や石炭の採掘場があることでも知られています。

現在でも農業を主産業としていますが、観光産業も台頭してきておりモンタナ州の一人当たりの収入を押し上げています。実際に、2000年頃までは平均所得が全米で47番目でしたが、近年では30番台にまで浮上しており、観光産業が大きな影響を与えていると言えます。

このようにモンタナ州はアメリカ最後の最良地と評されるだけあって、雄大な自然やそれらを生かした観光産業が州を支えているのが特徴です。

モンタナ州の歴史

モンタナ州は、1889年に41番目の州として準州から昇格しました。もともと、この地では数千年前から数多くのインディアン部族が生活していました。現在でもフォートペック、クロウ、ロッキーボーイなどの7つのインディアン居留地があり、インディアンの子孫が近代的な生活を送っています。


モンタナ州ではネ・ペルセ族、アラパホー族などの部族が生活していましたが、アメリカ政府が開拓を突き進めた1800年代には、モンタナは白人とインディアンの最後の戦いの舞台と言われていました。

アメリカの東海岸から始まった開拓は、太平洋を目指すようにして西に向かいました。その途中にあったモンタナの地には他州から逃げてきたインディアンや、生活していた場所を追い出されたインディアンが集結していました。

この頃は開拓者にとってインディアンは開拓を進める際の障害で、インディアンにとっては自分たちの住処を強制的に追い出され仲間を殺されるという、双方で憎み合う状態が続いていました。開拓者たちは近代的な武器や政府の許可を盾にしてインディアン掃討を続けました。そして、モンタナの地では「リトルビッグホーンの戦い(グリージーグラス川の戦い)」と「ネ・ペルセ戦争」が起こりました。

とりわけ「リトルビッグホーンの戦い(グリージーグラス川の戦い)」はモンタナで起きた白人とインディアンの争いを象徴する出来事です。戦略ミスや兵が疲弊していたため侵攻がうまくいかず敗者になった白人は、インディアンに奇襲をかけられたと主張し、新聞を使って悲劇を演じました。

この時、アメリカ軍を率いて戦死したカスター隊長の夫人は、自伝を出版し「インディアンは悪」と印象づけることに尽力しました。カスター夫妻は自らの行動を報道機関を利用して美化させることに長けていたと言います。この情報操作の真実は後に判明しますが、この時代においてはカスター隊長は英雄扱いされました。

国内ではすぐにモンタナで白人が残虐を受けたという情報が流れ、インディアンを追放する気運が高まります。これに乗じて白人は交易をしていた部族に支援と称して天然痘の病原菌が付着した毛布を送りつけたり、1851年にはアメリカ政府はインディアンの感情を抑えるために形だけの終身年金支給や食料手配を約束します。(スティーブンス条約)

1862年、西部を中心にしたゴールドラッシュに湧いた後、アメリカ政府はインディアンと結んだスティーブンス条約を勝手に反故し、モンタナの地への開拓者の流入を進めます。これによりインディアンと開拓者の小競り合いが度々繰り返されましたが、どのインディアン部族にも勝ち目はなく、多くのインディアンは凍死や餓死したとされています。

政府に裏切られて行き場を失ったインディアンたちは戦うことをやめて、白人に服従するようになりました。バッファローなどの動物を食料にしていた部族は狩猟を禁じられ、農業を強制させられます。また、政府に対し好意的に従う人物にだけ食料が補給され、農業に不慣れだったインディアンは数を減らしていきました。

インディアンは大半の土地を政府に明け渡しますが、アメリカ政府が価値がないと判断した場所だけは「インディアン居留地」として残されました。現在のモンタナ州では過去のインディアンへの仕打ちに対する保証の意味合いも込めて、居留地内でインディアンの家系だけが経営を許可されるカジノが運営されています。

モンタナは、1864年に金鉱が発見されたことを機会に準州になり、1889年には州に昇格しました。リンカーン大統領が成立させた「ホームステッド法」と呼ばれる土地の無償払い下げにより、公有地だった土地で農業を始められるようになりました。アメリカ国土の10パーセントがホームステッド法の対象になり、農業はモンタナ州などを中心にして現代まで主産業として栄えています。

モンタナ州の政治情勢

モンタナ州では2012年、2016年の大統領選でいずれも共和党を支持しています。第二次世界大戦以前までは国政にはリベラルを送り、州政には保守派を送ることが慣例でしたが、1980年頃からは一環して保守派が強い傾向があります。

大統領選においても民主党と共和党が拮抗する州でしたが、2000年以降は共和党が安定した票を獲得しています。モンタナ州ではアメリカの経済を最優先する政策が支持されていると言えます。

モンタナ州の経済

2018年時点、モンタナ州の失業率はアメリカの平均と同値の4.1パーセントです。畜産業、農業、鉱業が主産業ですが、近年では年間100万人を超える観光客による収入が比率を高めています。また、地ビールの生産では全米3位とされておりアルコール製造も盛んな場所として知られています。

モンタナ州の税金

2018年時点、モンタナ州は消費税を課していません。連邦税も地方税もかからないため無税です。個人にかけられる所得税は1パーセントから6.9パーセントの累進課税制です。消費税や固定資産税など税に対しては他州よりも緩いことが特徴です。なかでも住宅家財への固定資産税は非課税です。税金の面では住みやすい州と言えます。

モンタナ州の銃や薬物問題

モンタナ州では医療目的に限りマリファナは合法とされています。このことは住民投票によって可決されたため、今後は娯楽用のマリファナも議題にあがるとされています。銃による犯罪率は高く、州民10万人に対して銃の犠牲者は19人と最悪水準です。これを受け、銃に対する取り組み格付けでは最低ランクの「F」とされています。


モンタナ州の教育または宗教事情

モンタナ州の教育水準は国内平均よりも僅かに上とされていますが、学費が全米で6番目に安いため学校に通いやすい環境であることが特徴です。インディアンの家系が通うコミュニティカレッジもあり、政府から学費や生活費のサポートを受けられます。

モンタナ州の宗教はキリスト教とカトリックが大半を占めています。政治の面では保守的な印象が強いですが、無宗教の人の割合が20パーセント近いことが特徴です。アメリカ南部の保守派は信仰心が強い事実と比較すると興味深い傾向と言えるでしょう。

まとめ

モンタナ州は自然環境に恵まれた場所である反面、過去にはインディアンと白人による暗い歴史がある州です。モンタナ州の開拓の影で起きたことは本当のアメリカ史を知る上で大切なことと言えるでしょう。

本記事は、2018年8月25日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

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公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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