MENU

侵攻から一週間、アメリカではロシアとウクライナの問題をどう報じられている?在米日本人レポート(2022年3月)

当ページのリンクには広告が含まれています。
アメリカ国旗


目次

2022年2月24日、ロシアはウクライナに対して軍事侵攻に踏み切りました。

ロシアがウクライナへ侵攻してから1週間経過した2022年3月2日時点、一般市民を含む多くの犠牲者が出ており、一部では「核戦争に繋がる」と懸念の声もあがっています。

日本でも連日にわたって報道されているウクライナ情勢ですが、バイデン大統領やトランプ元大統領の動向も含め、アメリカ国内ではどのように報じられているのか、現地在住の日本人がまとめました。

アメリカでの報道の様子

アメリカでは、ロシアによる侵攻が始まって以降、三大ネットワークとして知られているABC、CBS、NBCの主要メディアをはじめ、CNNやFOX NEWSなどのニュース専門チャンネルでも昼夜を問わず報じています。

どのメディアでも主に現地の状況を伝えていますが、CNNやFOX NEWSといった特定の政権に偏ったメディアでは、ロシアに対してバイデン政権がどのように立ち振る舞うかについて掘り下げて報じています。

例えば、民主党寄りメディアとして知られているCNNでは、バイデン大統領(民主党)が戦争を防ぐために様々な働きかけをしたことや、アメリカ政府による再三の警告を無視して侵攻に踏み切ったロシアを非難する報道が続いています。

一方、共和党寄りのメディアとして知られているFOX NEWSでは、現地の様子を報じている傍らで「世界におけるアメリカの影響力が弱まっている」と、バイデン政権に否定的な報道も見られます。

侵攻に先立つ2月22日、バイデン大統領はロシア国営大手2銀行との取引を制限する金融制裁を決断しました。また、親ロシア派のウクライナ東部地域との貿易および金融取引も禁止しています。しかし、これらの経済制裁でロシアの行動を抑止する効果は見られず、2日後にロシアは侵攻を開始しました。追加措置として天然ガスパイプライン会社に経済制裁を加えていますが、経済的な圧力による行動抑止は難しいと見られています。

このように共和党寄りメディアでは、経済制裁は迅速に行われたものの肝心な「ロシアの行動抑止」に繋がっていないと指摘する声が多く「民主党(バイデン大統領)ではダメだ」と感じさせる内容に寄っていると言えるでしょう。

ウクライナ情勢を巡るアメリカ国内の報道からは「アメリカ国内政治へ影響」を意識した様子が透けて見えます。

民主党寄りのメディアでは、対話や結束による平和的な解決を実現させようとする民主党を取り上げて、協調的なアメリカを広めたいところです。対照的に、共和党寄りメディアでは、強いアメリカ(武力だけでない)を示す機会として捉えているようです。トランプ元大統領のスローガンだった「MAGA(Make America Great Again)」を連想させます。

関わりたくないアメリカ国民

メディアごとに報じる内容や傾向は異なるものの「ロシアの行為は許されるものではない」という点は一致しています。ただし、アメリカがウクライナ情勢に関与することについては、アメリカ国民の間で否定的な声が多いようです。


2月24日、AP通信が発表した調査結果によると、アメリカ国民の26%が「主体的に関わるべき」と回答したのに対し、52%が「一部で関わるべき」と回答しました。このことは、アメリカ国民の大半は関与を否定的に考えており、ロシアとの対立や戦争を避けたい表れと考えられています。

支持率低下が顕著なバイデン政権としては、国民の声をくみ取った方針を打ち出すことでこれ以上の支持率低下を避けたいところでしょう。一方で、共和党からすれば「アメリカがしっかりしないから大変なことになってしまった」と攻め入る隙が生じるのも事実です。

2022年3月1日、バイデン大統領による一般教書演説

ウクライナ侵攻が続いている2022年3月1日(日本時間3月2日)、バイデン大統領は政権の施政方針を示す一般教書演説を行いました。

この演説は同年11月に実施される中間選挙を意識した内容で、エネルギー高騰問題への対応、公約の公共事業(インフラ整備)といったことに触れる予定とされていましたが、直前でウクライナ侵攻が起きたため、バイデン大統領が演説の中でどのように触れるかに注目が集まり、各メディアが生放送で一斉に報じました。

演説の冒頭で「独裁者は侵略の代償を払わせなければ混乱し、アメリカと世界に対する恐怖は高まる」と述べ、ロシアのプーチン大統領を批判しました。また、プーチン大統領の敬称を省いたうえで「プーチンは間違った」や「不当な戦争」、そして「(アメリカは)同盟国と協力し、ロシアを孤立させて経済を圧迫させる」とも述べています。

アメリカのメディアは、バイデン大統領がプーチン大統領を呼び捨てにしたことを強調している一方、ロシアに対する非難だけでアメリカが主体性を持って行動を起こすというメッセージはなかったとも伝えられています。(そもそも一般教書演説の趣旨と違うため仕方ないとする声もある)

また、演説のなかでは「ウクライナへの米軍派遣」を再度否定し、ロシアによる東欧侵攻に備えて、ポーランドやルーマニアといったNATO同盟国を守るための派兵を実施するとしました。ウクライナへ派兵しないと強調したことは、一部のアメリカ国民を安堵させた一方、一部のアメリカ国民に対してロシアに弱腰なアメリカを見せたことになります。

注目を集めるトランプ元大統領の発言

ウクライナ情勢を巡ってはトランプ元大統領の発言も注目を集めています。トランプ元大統領は2月26日、フロリダ州で実施された政治集会の演説内で「(バイデン大統領は)プーチンの思うままにあしらわれている」と述べ、さらには「(自分が大統領であれば)こんな事態は簡単に避けられた」とし、現政権を批判しました。

トランプ元大統領はウクライナ侵攻が始まる前に、プーチン大統領がウクライナ東部の新ロシア支配地域を独立承認したことに対し「天才的だ」と称賛するような発言をしていたため、国内外から批判されていましたが「プーチンが賢いことが問題なのではなく、アメリカの指導者(バイデン大統領)が馬鹿なことが問題だ」とし、改めてバイデン大統領の対応を批判しています。同時に、バイデン大統領によるロシアに対する制裁は「弱い」と述べ、アメリカが抑止力を発揮できていないことを指摘しました。

興味深い点として、トランプ元大統領の一連の発言はごく一部のメディアでのみ紹介された程度です。

事実、民主党寄りメディアの多くは発言や政治集会については一切報じていません。民主党寄りのメディアは、同氏が大統領だった時期から大統領演説のテレビ放送を途中で打ち切ったり、同氏の印象を下げるような報道をいまもなお続けています。裏を返せば、トランプ元大統領の影響力がいかに大きいかを懸念していると言えるでしょう。

アメリカにおけるウクライナ情勢をめぐる懸念点

昼夜を問わず連日にわたってウクライナ情勢を報道しているアメリカのメディアですが、繰り返し報道される内容について懸念点があります。それがロシア人に対する差別です。

ウクライナ情勢については、アメリカのメディアに限らず「ロシア=悪」や「プーチン=悪」といった報道一色になっているため、一般人レベルではロシア人差別に繋がると懸念されています。

同様の事例はコロナの時にも起こりました。具体的には、コロナウイルスは中国が発生源という報道が続けられたあまり、アメリカ各地でアジア人差別が多発しています。また、コロナワクチンの接種をめぐっても、接種を積極的に促す報道が続いたあまり「ワクチン非接種者=悪」という構造ができ、いまも対立が続いています。

アメリカ国内には300万人を超えるロシア人が生活しており、偏った報道を続けているとロシア人差別が始まるかもしれません。


筆者の知人にニューヨーク州で暮らすロシア人がいます。その人はプーチン大統領の支持者で、現時点では恐怖こそないものの、喋るとロシア訛りが出てバレてしまうことや、ロシア人らしい顔つきなので厄介だ、とジョークを交えつつ、アメリカ国内で肩身が狭い思いをしていることを教えてくれました。

まとめ

アメリカでは日本と比較するとウクライナ情勢を伝える報道量は多いと思います。一方で、それらの報道が国内政治に影響を与えていることや、同じことを繰り返し報道することで国民に先入観を植え付け、差別問題を引き起こす懸念もあります。

ウクライナ情勢をはじめロシアの動向に関する報道に対して、冷静にそして平等な視点で接する重要性を感じさせる状況です。

本記事は、2022年3月4日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

コメント

コメントする

目次