はじめに
世界的に爆発的な流行を見せている「新型コロナウイルス」。日本でも新たな感染者が増え、休校が始まるなど、危機感が高まっています。
香港・マカオは90年代に中国に返還されましたが、習慣や考え方などの違いから「中国とは別のもの」と考えている現地の人が多いです。
中国と陸続きかつ、世界でもっとも人口密度が高いとされる「マカオ」では、感染拡大を防ぐためにどのような対策が取られているのでしょうか?
本記事では、現地在住日本人による「マカオ」の防疫対策や、医療事情などをレポートします。
湖北省の次に感染者数が多い広東省
香港・マカオが属する広東省は、湖北省の次に感染者の多い地域です。マカオは中国と陸続きで、食料品なども中国に依存しているため、中国との行き来を完全にストップすることはできません。マカオと隣接する珠海市は、約100名の感染者数が報告されました。幸い、現在は95名が回復して退院済みです。
武漢からのチャーターが帰国
3月7日に、湖北省に取り残された57名のマカオ市民を救出するため、チャーター機が出発しました。迅速にチャーター機を手配した日本と比べると、ずいぶん時間が経ってからの行動のように思えます。湖北省やマカオでの感染者数の推移が、一山越えるのを待っていたのでしょう。乗客はマカオに戻ってから2週間、隔離施設で医学観察を受けます。
人口密度世界一のマカオでは感染爆発の危険あり!
マカオは東京都世田谷区の半分ほどの狭い地域に、68万人が住んでいます。人口密度は世界一高く、1㎢あたり2万人以上です。人が密集したマカオのような地域では、感染爆発の危険があります。そこでマカオでは、感染の拡大を防ぐため、強硬な防疫対策が取られてきました。
官民一体の強硬な防疫政策の数々をうっています。
マカオでは、1月末から湖北省から来た旅客を強制隔離するとともに、湖北省発行のパスポート所持者や、14日以内に湖北省を訪れた人の入国を拒否しています。2月20日からは、感染多発地域とみなされた中国の10省3市からの旅客に、6時間以上かかる医学検査を義務付けました。
また3月10日から、イタリア、韓国、イラン、フランス、ドイツ、スペイン、日本を14日以内に訪れた人に対し、2週間の医学観察隔離が実施されます。隔離は自費で、約12万円ほど必要です。検査を拒否した場合は出発地へ送り返され、隔離を拒否した場合は強制隔離の対象となります。
マカオ内では、1月末の春節関連イベント中止に始まり、臨時休校、交通機関の運休・減便、屋内・屋外の公共施設閉鎖など、次々に対策を打ち立ててきました。企業では、出社人数を減らす間引き営業や、リモートワークを行う所が増えました。また、連日テレビで手洗いの手順や、マスクの正しいつけ方・捨て方を繰り返し流し、市民に周知を徹底しています。
バスなど、公共の交通機関を利用する際はマスクの着用を義務付けられ、マスクをしていないと乗車できません。銀行やカジノ、郵便局など、屋内施設を利用する際は、マスクの着用と検温が必須です。自宅マンションの出入りもマスク着用を必須にしている場所が多く、外出の際のマスク着用率は100%です。マカオでは、政府が住民向けに原価でマスクを提供しています。不正できないよう身分証に購入を紐づけ、10日に1回10枚を約100円で購入できるため、マスクの転売や買い占めなどの混乱は起きていません。
衝撃のカジノ長期閉鎖
マカオの防疫対策の中でもインパクトが強かったのは、2月に半月間カジノを閉鎖したことです。マカオの税収の柱であり、観光の要であるカジノの閉鎖は、市民にとって大きなショックでした。これにより30軒近くのホテルが休業を余儀なくされました。2月度のカジノ売上は、前年比のわずか1割程度です。
カジノ閉鎖を受け、マカオを訪れる観光客や街を出歩く人は瞬く間に少なくなりました。がらんとした巨大なカジノリゾートは、まるで廃墟のように生気がなく、感染症の恐怖を肌で感じたマカオ市民は多かったです。
外に出ても公園すら封鎖してあるので、大人も子供も外出を自粛して家にこもっていた時期が長く、1か月ほどありました。2月末にカジノの営業が再開してから3月初旬にかけて、体感では一山越えた雰囲気があります。営業を再開する場所が増え、街を歩く人や飲食店の利用者もずいぶん多くなりました。
10人の陽性患者は全員治癒
マカオの新型コロナウイルス感染者数は累計10名で、3月6日までに全員が退院済みです。その内の7名は武漢からの旅行客で、すでにマカオを離れました。3名のマカオ市民は、退院後も2週間隔離を続け、経過を観察しています。2月4日から1か月以上新規感染者は報告されておらず、マカオでは新型コロナウイルスの封じ込めにほぼ成功したと考えていいでしょう。
現在はマカオ外で感染した可能性が高いクルーズ船からの帰国者と、武漢からのチャーター便乗客について、隔離の上医学観察が行われています。
マカオで新型コロナウイルス治療にかかる医療費
マカオでは、感染者が何日間入院して、治療にどのくらいの費用がかかったのか詳細が発表されました。武漢からの旅行者は2~4週間の入院で、およそ30万円から70万円かかりました。
マカオ市民は3週間~1か月以上入院しましたが、医療費は無料です。指定感染症ということで、マカオ市民には医療費がかかりませんでした。
マカオの経済回復が課題
新型コロナウイルスによる脅威は一旦去ったと思えるマカオですが、現在直面している問題は、経済活動が停滞していることです。マカオは観光都市なので、旅行会社やツアーガイド、観光バスやタクシーの運転手など、仕事がなく失業状態に陥った人が街にあふれています。中国全体では峠を越えたイメージですが、多くの日本人観光客がマカオに戻ってくるまで、まだまだ時間がかかりそうです。
マカオ政府はカジノ税で蓄えた潤沢な政府準備金を利用して、全世帯の電気水道料金を3か月無料にすることや、市民1人当たり約4万円の電子商品券を配布すること、毎年恒例の現金配布を3か月前倒しすることを決定しました。これらは多少市民の生活の助けになるものの、公的資金による援助にも限界があります。
唯一の産業である観光を失ったマカオの経済回復は、いつ頃になるのでしょうか。感染の拡大が進むにつれ、世界中で不況の波が広がっています。先の見通しが立たず、未だ予断を許さない状況です。
まとめ - 感染症を乗り越えよう
中国では、世界に先駆けて一足先に感染症の収束ムードが漂っています。もちろん世界で終息宣言が出るまで油断はできませんが、現在マカオでは感染症の次の課題、経済危機に直面しているところです。
新型コロナウイルスの感染拡大防止について、マカオで生活していて良かったと感じたことがあります。政府が危機感を持って次々に対策を取ってくれたので、それに従うだけで安心できたという点です。日本ではマカオほど強硬な対策が取れない部分がありますから、自分の判断が大切になると思います。
どのくらい影響が続くのかわからない非常事態でつらい時期ですが、人が多いイベントや屋内の娯楽施設は一時的に避けるなど、自分と周りを守るためにできることを最大限やっていきましょう。
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