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日本の「生活保護制度」の受給者増加問題(2019年度調査)

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「生活保護制度」とは?

「生活保護」とは、生活に困っている国民に、その困窮の程度に応じた保護を行なって最低限度の生活を保障し、自立を促すための制度です。

最低限度の生活とは、憲法25条で「健康で文化的な最低限度の生活を保障する」と示されており、この憲法に基づいて国は「生活保護制度」を運用しています。

▼参考:厚生労働省ホームページ「生活保護制度」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatuhogo/index.html

生活保護受給世帯は減少傾向。しかし高齢者の受給者は増加している。

2018年4月時点の、厚労省による生活保護世帯の被保護者調査によると、生活保護受給者人数と世帯数はともに減少傾向にあります。

人口百人あたりの保護率も、2017年の4月の1.68%から、2018年4月は1.66%と減少しています。

生活保護を受ける世帯には、主に「高齢者世帯」「高齢者世帯を除く世帯」があり、「高齢者世帯」には「単身世帯」と「2人以上の世帯」、「高齢者世帯を除く世帯」には「母子世帯」「障害者・傷病者世帯」「その他の世帯」という内訳があります。

全体の傾向と同じように、ほどんどの内訳が減少傾向ですが、「高齢者」かつ「単身世帯」だけが前年に比べて増加しています。

生活保護の被保護者調査(平成 30 年4月分概数)の結果

厚生労働省「生活保護の被保護者調査(平成 30 年4月分概数)の結果を公表します」

「生活保護の被保護者調査(平成 30 年4月分概数)の結果」(総務省) (https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/hihogosya/m2018/dl/04-01.pdf)を画像データに加工して公務員総研にて作成

「生活保護制度」が存続の危機!?その理由とは?

2019年度には2018年からさらに減少して、「生活保護受給者数」は約209万人でした。2015年度にピークの約214万人を記録して以降が、減少傾向にあるようです。

しかし、受給者数の減少にもかかわらず、今この「生活保護制度」が存続の危機にあると指摘する声が上がっています。

その理由は、主に「就職氷河期世代の高齢化による受給者の増加」と、「外国人の受給者増加」「不正受給の増加」にあると言われています。


就職氷河期世代の高齢化による「生活保護」の受給者増加

「生活保護制度」の存続を難しくする要因として考えられている1つの問題が、「就職氷河期世代の高齢化」です。

「就職氷河期世代」とは、1990年代後半から2000年代にかけて、各種学校を卒業し、社会に出た世代です。彼らは正規雇用での就職を目指しましたが、その時代は景気が悪化し雇用が少なかったことから「就職氷河期」と呼ばれており、不本意にも非正規雇用や、無職の状態に追いやられました。

「就職氷河期世代」は、2020年現在40歳前後に至っていますが、彼らの10人に1人はいわゆる「中年フリーター」と呼ばれる非正規雇用の状態です。

「中年フリーター」の多くは貯蓄もままならず、年金も払えてないと言われています。もし今後高齢化することで体調を崩したり、体力が低下して働けなくなれば、「生活保護」に頼らざるを得ないのです。

就職氷河期世代のうち、「中年フリーター」の状況にある人は、約270万人もいると言われています。そのうち、「生活保護」に頼らざるを得ない人は7割にも達するという試算も出ているようです。

国が「就職氷河期世代支援プログラム」を始動!その中身とは?

令和元年、厚生労働省の集中支援プログラムとしてスタートした「就職氷河期世代支援プログラム」について、その政策が非常に賛否をよぶ内容となりました。 今回はその政策の内容から、意見までを、まとめました。

就職氷河期世代に限らず「非正規雇用」は増えている

就職氷河期世代に限らず、非正規雇用で働く労働者の数と割合は増加しています。非正規労働者は1989年に817万人で、労働者全体の約2割でしたが、2014年には1962万人まで増加し、労働者全体に占める割合もこの時点で37%と、4割近くに迫っています。

この状況は、老後のための貯蓄に必要な待遇の向上を望む氷河期世代の正規雇用化の妨げにもなっています。より若年層の就職希望者を押しのけて、中年フリーターと呼ばれる人たちが「生活保護」を受給しなくてもいいだけの仕事を得るのはとても難しくなっています。

また、就職氷河期世代以降にも非正規労働者の層が一定数いるため、「生活保護制度」のための財源確保や、「同一労働同一賃金制度」などの導入によって、この先も「生活保護」に頼らず自立できる社会制度をつくることも課題となっています。

しかし、「同一労働同一賃金」を達成するためには企業の負担も大きく、その制度運用に耐えられる企業は現実的に少ないという指摘もあります。

外国人による「生活保護」の受給者増加問題

「生活保護制度」の存続を脅かしているのが、外国人による「生活保護」の受給者増加問題です。

外国人は生活保護法が定める「国民」には含まれませんが、永住者や日本人の配偶者、特別永住者について、生活に困窮していれば保護を行うよう国が通知しており、各自治体でもその通知のとおり「生活保護」を適用しています。

外国人の「生活保護受給者」は年々増えています。これはバブル期の人手不足で労働者として入国、雇用されていた日系南米人などが、リーマン・ショック以降の景気悪化で解雇されてしまい、その後も日本語が話せないため再就職が難しく「生活保護」に頼らざるを得ないことなどが原因と考えられています。

また、昭和57年に「難民条約発効」に伴って「国民年金法の国籍条項」が撤廃されたことで、在日外国人は老齢年金の支給対象から除外されたのですが、それ以降も日本にとどまった人々が高齢化し、「無年金状態」であることも大きいとみられています。外国人は年金の代わりに「生活保護」に頼ることになってしまいます。

外国人の生活保護受給者の割合は、日本人の約3.3倍

外国人登録者全体は、リーマン・ショック以降減少しているので、生活保護を受給できる永住者や日本人の配偶者などの数も減少しています。

それにもかかわらず、外国人の生活保護受給者は増加しています。2011年の総務省の資料によれば、外国人のうち最も生活保護受給者が多いのは「韓国・朝鮮」の国籍を持つ世帯であり、次いで「フィリピン」「中国・台湾」「ブラジル」の順になっているようです。


「外国人登録者数(生活保護対象在留資格保有者数)の推移」

「外国人登録者数(生活保護対象在留資格保有者数)の推移」(総務省) (https://www.soumu.go.jp/main_content/000305409.pdf)を画像データに加工して公務員総研にて作成

 

被保護外国人世帯数の推移(世帯主の国籍別)

「被保護外国人世帯数の推移(世帯主の国籍別) 」(総務省) (https://www.soumu.go.jp/main_content/000305409.pdf)を画像データに加工して公務員総研にて作成

▼参考:総務省「生活保護に関する実態調査」
https://www.soumu.go.jp/main_content/000305409.pdf

外国人による「生活保護」の不正受給問題もある

外国人の中にも、永住者など、正当な理由で生活保護の対象になる方はいます。

しかし、外国人の中には、自国で生活するより「生活保護」を受給しながら、日本に滞在している方がよいという理由で滞在するケースや、隠れて仕事をしているケースも見られます。

隠れて仕事をしているのは日本人にも見られますが、「生活保護」を受けることも最初から計画した上で来日し、自国に送金するケースも一部見受けられ、残念ながら本当にやむをえない状況で生活に困窮し、日本に留まらざるを得ない永住者などの印象まで悪くしています。

現在、生活保護受給者全体のうち外国人の割合はわずか3%ですが、外国人の増加率よりも生活保護受給者数の増加率の方が高く、日本人の生活保護受給率よりも外国人の生活保護受給率の方が約3倍多いというデータもあります。

外国人に対しても生活保護を適用すること自体には問題はありませんが、この受給者の増加に国の財源が追いつくのか、そして不正受給について取り締まっていけるのかということも課題になっています。

まとめ

このページでは、日本の「生活保護制度」が抱える問題についてまとめました。生活に困窮する国民を保護し、自立を促すための「生活保護制度」が存続の危機にあると言われています。

その要因としては「就職氷河期世代の高齢化による受給者」や、「外国人の受給者増加」に対して、国の財源が追いつかない、制度が対応し切れないということが挙げられます。

国による「就職氷河期世代」への自立支援対策も始まろうとしていますので、「生活保護」に頼らずとも生活できる環境が整えば、状況は改善するかもしれません。

また、外国人の生活保護受給者については、日本語の教育や、年金に代わる福祉制度の充実などが必要であり、また不正受給の取り締まりによる適切な制度運用も求められています。

日本の「生活保護制度」が存続できるのか、厚生労働省を中心に検討は続いています。

本記事は、2020年3月24日時点調査または公開された情報です。
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この記事を書いた人

公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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