2020年度「国家予算」(一般会計)は2年連続の100兆円超え
国家予算案として国会で審議され、報道でも大きく取り上げられるのは、「国家予算」のうち、「一般会計」の部分です。
一般会計のほかに、目的ごとに設置されて担当省庁が管理する「特別会計」もあります。
特別会計も一般会計と同じように国会で審議されますが、会計ごとに個別に審議されるため、国家の財政状況の全体を見通せるのは「一般会計」の方です。そのため、一般的に「国家予算案」という時は、通常「一般会計予算」のことを指す場合が多いようです。
2020年度に国会で審議された「国家予算案」は、2019年度に引き続き100兆円を超え、ますます規模が大きくなりつつあります。
なお、「特別会計」については以下の記事もご参考ください。
》2007年に成立した「特別会計法」とは?不明瞭な特別会計制度の立て直しを目的に制定
日本の国家予算は大きく「一般会計」と「特別会計」がありますが、度々使い道が不明確だと批判されるのが「特別会計」です。2007年(平成19年度)に制定された「特別会計法」によって改革が行われ、明確になったと言われますが、まだ問題点もあるようです。
10年で10兆円増加、一般会計100兆円になるまでの推移
日本の「国家予算」の一般会計歳出は一貫して増え続けています。1990年度には約69兆円だったのが、2000年には80兆円を超え、2010年には90兆円を超えています。わずか10年で10兆円伸びています。
一方で、一般会計歳入の税収部分は、1990年度にバブル経済が崩壊して以来、伸び悩んでいて、グラフはワニの口のように開いています。
なお、国家予算成立までの流れは、以下の記事をご参考ください。
日本の「国家予算」が成立するまでの流れを、9つのステップにわけて解説します。国家の予算の編成・審議は、前年夏頃から既に始まり、前年度3月末日までの成立を目指します。
「国家予算」の見方:歳入と歳出について
「国家予算」には、どこからお金が入ってくるのかを示す「歳入」と、何にお金を使っているのかを示す「歳出」があります。
「一般会計」「特別会計」とも、大きくは「歳入」と「歳出」から成り立っています。ちなみに、国全体の財政規模を知るために公表されている、「一般会計」と「特別会計」の歳出予算を合計したものを経費別純計といいます。
2018年度(平成30年度)については、上記のグラフのように「国家予算」の歳入と歳出はそれぞれ約240兆円もの規模となっています。
このうち歳出については「国債費」と「社会保障関係費」がそれぞれ4割程を占めているので、全体として7割以上が「国債費」+「社会保障関係費」という内訳になっていることがわかります。
2020年度「国家予算」の歳入の内訳について
「国家予算」の全体像については上記の通りですので、続いては部分的な内訳についてご説明します。
2020年度の「国家予算」の一般会計の歳入は、以下のような内訳になっています。
税収(租税及び印紙収入) 63兆5130億円
公債金 32兆5562億円
その他収入 6兆5888億円
歳入の項目と割合について
「国家予算」の歳入の内訳について、具体的にどのようなお金が入ってきているのかを解説します。
租税及び印紙収入(歳入全体の61.9%)について
「租税及び印紙収入」という項目のうち、租税というのは消費税や相続税、たばこ税などの税による収入のことです。
印紙収入は主に「印紙税」を支払うために購入された印紙の収入のことです。
印紙税は契約書や、領収書などの文書を作成したときにかかる税金のことですが、印紙税を納める際には、郵便局やコンビニエンスストアなどで「印紙」を購入して書類に貼る仕組みになっています。
契約書の種類や契約金額などによって、税率が定められており、例えば5万円以上で100万円以下の領収書には、200円分の印紙を貼る必要があります。
その他にも、土地や住宅購入についての売買契約書には通常、印紙が貼られています。
2020年度予算では、「租税及び印紙収入」のうち、最も多い「消費税」は21兆7190億円で、全体の21.2パーセント、「所得税」が19兆5290円で全体の19パーセント、「法人税」が12兆円650億円で全体の11.8パーセント、その他の税収がおよそ10兆円でした。
「税」の教育活動のために「東京法人会連合会」が作成した「法人会税かるた」が話題になっています。納税者である大人にとっては苦笑いしてしまうような札もあるようですが、その札の内容や、「税かるた」の歴史などについてもご紹介します。
公債金(歳入全体の31.7%)について
公債金とは、国が国債を発行して借りられたお金、元本のことを意味しています。
2020年度の予算では公債費が約32兆円となっているので、新規発行される国債が32兆円分ある予定だということが読み取れます。
その他収入(歳入全体の6.4%)について
歳入のうち、その他収入に入るのは、前年度の余剰金や、国有財産の利用料など、国営の病院収入や国有林野事業の収入などです。
そのような雑収入を合計すると、約6兆円もの金額になるようです。
2020年度「国家予算」の歳出の内訳について
2020年度の「国家予算」の一般会計の歳出は、以下のような内訳になっています。
社会保障関係費 35兆8608億円
国債費 23兆3515億円
地方交付税交付金 15兆8093億円
公共事業関係費 6兆8571億円
文教及び科学振興費 5兆5055億円
防衛 5兆3133億円
その他 9兆9605億円
歳出の項目と割合について
「国家予算」の歳出の内訳について、具体的にどのようなお金の使い道があるのかを解説します。
社会保障関係費(歳出全体の34.9%)について
社会保障関係費とは、年金、 医療、 介護、 子ども・子育て政策等のための支出です。
日本の社会保障制度は基本的には保険料によって成り立っていますが、保険料では足りない部分があり、そこを国費で補っています。
具体的には、2019年度の場合、年金の支給のために使われたのが約57兆円、介護に使われたのが約11兆円、医療費は約40兆円、保育所の整備や子ども手当など、子育てにあてられたのが約15兆円ありました。
以上を合計すると、社会保障制度全体で約124兆円もの支出があったのですが、保険料でまかなえたのは、このうち約72兆円ほどであり、残りはほとんど税金や国債として、毎年の「国家予算」の歳出の一部として、組み込まれています。
また、2020年に関しては、高齢化の影響で年金・医療・介護の分野で約4千億円増額したほか、高等教育の一部無償化や、幼児教育無償化に伴い、約7千億円が増額されるなど、社会保障関係費は年々増え続けています。
1990年度の社会保障関係費は約11兆円だったことと比較すると、この30年で約3倍に膨れ上がっています。
国債費(歳出全体の22.7%)について
国債費とは、国の借金である国債の利子や、返還に使われる支出のことです。国債に関する事務手数料なども含まれます。
国債の新規発行残高は年々増加しており、2020年度末は906兆円にまで到達する見込みです。
国債費については、過去に借りた分の返金や、利子にかかる費用ですので、ただちに増額するわけではありませんが、国債そのものが増えている以上、将来的に国債費が増えていくのは確実です。
国債費について詳しくはこちらもご覧ください。
地方交付税交付金(歳出全体の15.4%)について
地方交付税交付金とは、国が調整し、都道府県や市区町村といった地方公共団体に配分するための経費です。地方交付税交付金があることによって、住んでいる地域の税収が多いか少ないに関わらず、日本中のどこでも、一定のサービス水準が維持されるようなしくみになっています。
具体的には、警察・消防費や、ゴミ処理の費用、国民医療費の公費負担分などが含まれています。
地方交付税交付金は、1990年度には15.3兆円で、2019年度は16兆円だったので、社会保障関係費や国債費と比較すると、大きく変わらずに横ばいで推移しているようです。
公共事業関係費(歳出全体の6.7%)について
公共事業関係費は、道路に使われる道路整備事業費や、港湾などの整備に使われる港湾空港鉄道等整備事業費、住宅都市環境整備費、下水道や公園の整備に使われる公園水道廃棄物処理等施設整備費、河川の堤防やダムなどを整備する治山治水対策事業費などで構成されています。
2019年度は約7兆円に近い費用が支出されました。
最も大きい費用は、町の整備や住宅支援を行う社会資本総合整備事業費で、2019年度は約2兆円が計上されました。
このように公共事業関係費は、国民の社会経済活動や国民生活、国土保全の基盤となる施設の整備に使われてきましたが、1998年度に計上した約15兆円をピークに減少傾向にあり、2020年度についても「国家予算」としては6兆円台に落ち着いています。
文教及び科学振興費(歳出全体の5.4%)について
文教及び科学振興費とは、文教科学費などと略されることもある、国の教育や科学技術の発展のために使われる費用です。
2019年度の内訳では、例えば、公立の小・中学校教員の給与などの約3分の1を負担している「義務教育費国庫負担金」に1兆5200億円、そして教科書の配付や国公立大学法人・私立学校の援助のための「教育振興助成費」に2兆4158億円が使われました。
そのほかにも公立の小・中・高等学校の校舎改築などのための支出として文教施設費や、育英事業費などの費目があります。
過去10年について、文教及び科学振興費は5兆円台をキープしており、安定した支出として毎年予算に組み込まれています。2020年度の「国家予算」についても、大きく変わらず、約5.5兆円の支出が予定されています。
防衛関係費(歳出全体の5.2%)について
防衛関係費とは、国防のために使用されるお金のことです。一般的には防衛費と呼ばれています。
2020年度の防衛費5.3兆円という予算は、過去最大となっており、6年連続で過去最大を更新し続けています。
日本の防衛費については、GDP(国内総生産)の1パーセントにとどめるという暗黙のルールのようなものがあります。
これは1976年に三木内閣が軍事化に歯止めをかける意味で、当時はGNP(国民総生産)の1パーセントに軍事費をとどめるよう閣議決定したことが今日まで影響しているようです。
この「防衛費1パーセント枠」と呼ばれる制限は、1986年に中曽根内閣によって撤廃されましたが、それ以降も「国家予算」では暗黙のルールとして守られてきました。
ただし、2017年に安倍首相が1パーセントに抑える考え方はないと明言しているように、第二次安倍内閣発足以降は、1パーセントに迫る勢いで防衛費が増えています。
そのほか(歳出全体の9.7%)について
「国家予算」の歳出には、そのほか開発途上国の経済援助を目的とした経済協力費や、恩給制度を支える恩給関係費、そして予見できない支出に備える費用である予備費など、合計で9兆円以上が予定されています。
▼参考URL:国税庁「財政のしくみと役割」
https://www.nta.go.jp/taxes/kids/hatten/page03.htm
まとめ
このページでは、2020年度の「国家予算」の一般会計の歳入と歳出の構成と、それぞれどのような収入だったり、支出なのかということを、費目ごとに解説しました。
また、増加傾向にある「国家予算」が遂に100兆円に至るまでの推移についてもご紹介しました。
日本では、高齢化とともに社会保障関係費が膨らんでいますが、保険料や税収には限りがあるので、不足分を国債で補っている状態だというのはご説明した通りです。
歳出を見てみると、10年前とあまり増減が無い費用と、急増している費用があることがわかりますが、この急増する支出そのものを節約するか、税収を多くしての財政の健全化が目指されています。
その一方で、国債は国内で完結している借金だから問題ないと考える専門家もいるようです。
国家予算の成立の流れについてなど、詳しくはこちらもご覧ください。
日本の「国家予算」が成立するまでの流れを、9つのステップにわけて解説します。国家の予算の編成・審議は、前年夏頃から既に始まり、前年度3月末日までの成立を目指します。
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